だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜

十和とわ

文字の大きさ
上 下
752 / 786
第五章・帝国の王女

669.Side Story:The men's party that came back.9

しおりを挟む
 レオナードによるレギュレーション違反疑惑のある荒技。ある者はそう来たかとレオナードの策に舌を巻いたが、その一方で、当然だが主催者はこれに難色を示す。

「おいレオナード。お前、ボクの話を聞いてたのか? 一人を指名して質問するって決まりだっただろ」
「分かってますよ。ですがこれはただの確認・・です。前提の確認は皆さんだってしていたと思いますが……俺だけ、許されないのでしょうか」

 レオナードの言い分は間違っていない。確かに何人かは質問するにあたって『確認』を行なっていた。だがそれは質問相手にのみで、その場の全員への『確認』など大胆不敵にも程がある。
 これまでは許されていたにも関わらず、自分だけ許されないのはおかしいと主張されては、シルフもそう易々と却下する訳にはいかない。

「……小賢しい真似をしやがって。わかった、その確認は許可しよう。ほら、さっさと確認しろ」
「ありがとうございます、シルフ様。それで、あの……この中に王女殿下に“愛の告白”をした方はいらっしゃいますか……? 挙手していただけますと幸いです」
(──恋敵ライバルはあらかた炙り出せているからこそ、一歩リードしてやがる抜け駆け野郎──ッゴホン、勇者を特定してその方向性・・・武器・・を参考にさせてもらおうじゃないか!)

 自分が相当鬼畜な確認をしているという自覚が無いのか、レオナードはえらく楽しげに、恋敵ライバルの分析に臨んでいた。

(アミレスへの告白……はまだしてねぇし、俺は手を挙げなくて良さそうだな)
(姫君に告白した男がいるだと……? 僕の運命に告白したところで、最後に彼女は運命ぼくの元に来るのだから無意味なのに……)

 恋心を自覚しつつも今はまだ秘めているアンヘルとミカリアは手を挙げないようだ。
 なお、ミカリアは以前一度酔った勢いでうっかり告白しているのだが……なんと、ミカリアとアミレスの両者共にそのことをすっかり忘れているのである。

(んー……俺、告白はしてないよな? ただ一生一緒にいろって言われて、一生一緒にいるって伝えただけだし。ほな違うかぁ)

 寧ろどこからどう見てもアイラブユーなのだが、カイル的には違うらしい。

(主君に告白……騎士君が聞いたら卒倒しそうだな)

 アルベルトがふっと苦笑する一方で、

(レオナードの奴、なんて命知らずな……!? 姫さんに唾をつけようとした奴なんて、名乗り出たが最後我が王に殺されかねんぞ!? 誰も抜け駆けしていないといいんだが…………)

 エンヴィーはチラチラとシルフの様子を窺いながら、そんな馬鹿な真似をした男がいないことを祈った。──が。彼の祈りも虚しく、

「「…………」」

 二人の男が同時に無言で手を挙げた。
 片や堂々と。片や目を逸らしつつ。嘘がつけない状況下ではあるものの、黙秘・・すれば・・・回答を回避することだって出来たはずだ。しかし彼等はそうしなかった。フリードルもマクベスタも根が実直なため、正直に名乗り出てしまったのだ!

(マクベスターーーーーーーーッッッ!?)

 愛弟子の一人が勇者であると知ったエンヴィーはあんぐりと口を開け、マクベスタを凝視した。

(ほー……オセロマイトの第二王子と皇太子は既にアミレスに告白してるのか。若いってすげぇなぁー、なんでもかんでもテンポが早い。俺みたいなおっさんと違って、一秒一瞬を大切にしてるんだろうな…………ん? 待てよ?)
「──なんで皇太子が告白してるんだ? おまえの妹だろ、アミレスは」

 眉を顰めたアンヘルが、皆等しく疑問に思っていたことについて言及すると、

「兄が妹を愛することの何がおかしいんだ? 至って普通のことだろう」

 マクベスタからの『お前も告白してたのかよ』と言わんばかりの視線もものともせず、フリードルは冬の清流のような声で言い放った。
 そのあまりの堂々とした態度に、エンヴィーやロアクリードやカイルといった常識的な価値観を持つ男達も、言葉が出てこないようだ。

「いや、それは普通だとしても。これはアミレスに愛の告白をしたことがあるか、って確認だろ?」
「愛の告白ならとうに済ませているが」
「嘘だろこいつ!?」

 ついにはアンヘルまで言葉を失ってしまった。

「告白云々で言えば……僕としてはお前が挙手したことに驚いているのだが。なあ、マクベスタ・オセロマイト」

 飼い犬に手を噛まれたような心境のフリードルは、じろりとマクベスタを睨む。

「……こちらの台詞ですよ。皇太子妃を決めないのは、アミレスに邪な感情を抱いていたからなのですね。フリードル殿」
「その件について妹は関係無い。ただ、その座に相応しき者が居なかったというだけの話だ」
「世継ぎ問題についてはどうなさるおつもりなのか」
「当然、最適解を用意してある。だがお前は違うだろう。僕の妹に告白したようだが……婚約者・・・はどう・・・する・・んだ・・? オセロマイトの王族はおよそ八の歳に婚約者を決めると聞くが」
「…………」

 マクベスタの顔が険しくなるのとほぼ同時。

(────────え? 婚約者? マクベスタに? そんな重大情報一切聞いたことがないんだが!?)

 カイルがわかりやすく狼狽えはじめた。ゲーム、ファンブック、コミカライズ、舞台、朗読劇、グッズ、ドラマCD、SSショートストーリー、スタッフコラム……どの媒体でも出てこなかった重大情報に、マクベスタ推しのオタクは愕然とする。

「……確かに昔は婚約者もいたが、今はいない。色々あって婚約は白紙になりましたので」
「婚約が白紙になるなど、余程の事がなければ有り得んと思うが」
「大した理由でもないですよ。ただ、オレが相手の不興を買って婚約破棄されたというだけなので」
「婚約破棄……お前が? ……不可解なこともあるものだな」

 フリードルが瞬くと、マクベスタは小さく頷いて続けた。

「いや……どうやら相手はオレと嫌々婚約していたようでな、オレがフォーロイト帝国に行くことが決まるやいなや、『婚約破棄してさしあげてもよくってよ?』と言われたから、そちらが婚約破棄したいのならとその場で承諾したのです」

 父王も同じ意見だったようで、いつ戻ってこられるかも分からない王子と婚約させたままというのは、どうにも申し訳ないと感じていたらしい。なので、相手からの申し出ならとすぐさま婚約破棄──もとい、婚約は白紙となったのだ。

(その後、何やら令嬢が『こんなはずじゃ』『違うの』と泣いていたそうだが、両者慰謝料無しの円満な婚約破棄だったことに不満でもあったのだろうか。あの後すぐにフォーロイトに来たからその後のことはよく知らないんだが、令嬢は気が強そうだったからな……もしかしたら強かに慰謝料なんかを狙っていたのかもしれない)

 と、朧げな記憶を振り返っているマクベスタを眺め、

(婚約破棄済! 祝独り身! 良かったァ~~~~ッ! これで気兼ねなくマクアミを推せる!!)

 カイルが心の中でガッツポーズを作る。その狂喜乱舞な心情を表に出さなかっただけでも、よくやったと褒めるべきだろう。
しおりを挟む
感想 92

あなたにおすすめの小説

婚約したら幼馴染から絶縁状が届きました。

黒蜜きな粉
恋愛
婚約が決まった翌日、登校してくると机の上に一通の手紙が置いてあった。 差出人は幼馴染。 手紙には絶縁状と書かれている。 手紙の内容は、婚約することを発表するまで自分に黙っていたから傷ついたというもの。 いや、幼馴染だからって何でもかんでも報告しませんよ。 そもそも幼馴染は親友って、そんなことはないと思うのだけど……? そのうち機嫌を直すだろうと思っていたら、嫌がらせがはじまってしまった。 しかも、婚約者や周囲の友人たちまで巻き込むから大変。 どうやら私の評判を落として婚約を破談にさせたいらしい。

困りました。縦ロールにさよならしたら、逆ハーになりそうです。《改訂版》

新 星緒
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢アニエス(悪質ストーカー)に転生したと気づいたけれど、心配ないよね。だってフラグ折りまくってハピエンが定番だもの。 趣味の悪い縦ロールはやめて性格改善して、ストーカーしなければ楽勝楽勝! ……って、あれ? 楽勝ではあるけれど、なんだか思っていたのとは違うような。 想定外の逆ハーレムを解消するため、イケメンモブの大公令息リュシアンと協力関係を結んでみた。だけどリュシアンは、「惚れた」と言ったり「からかっただけ」と言ったり、意地悪ばかり。嫌なヤツ! でも実はリュシアンは訳ありらしく……

逃げて、追われて、捕まって

あみにあ
恋愛
平民に生まれた私には、なぜか生まれる前の記憶があった。 この世界で王妃として生きてきた記憶。 過去の私は貴族社会の頂点に立ち、さながら悪役令嬢のような存在だった。 人を蹴落とし、気に食わない女を断罪し、今思えばひどい令嬢だったと思うわ。 だから今度は平民としての幸せをつかみたい、そう願っていたはずなのに、一体全体どうしてこんな事になってしまたのかしら……。 2020年1月5日より 番外編:続編随時アップ 2020年1月28日より 続編となります第二章スタートです。 **********お知らせ*********** 2020年 1月末 レジーナブックス 様より書籍化します。 それに伴い短編で掲載している以外の話をレンタルと致します。 ご理解ご了承の程、宜しくお願い致します。

3年前にも召喚された聖女ですが、仕事を終えたので早く帰らせてもらえますか?

せいめ
恋愛
 女子大生の莉奈は、高校生だった頃に異世界に聖女として召喚されたことがある。  大量に発生した魔物の討伐と、国に強力な結界を張った後、聖女の仕事を無事に終えた莉奈。  親しくなった仲間達に引き留められて、別れは辛かったが、元の世界でやりたい事があるからと日本に戻ってきた。 「だって私は、受験の為に今まで頑張ってきたの。いい大学に入って、そこそこの企業に就職するのが夢だったんだから。治安が良くて、美味しい物が沢山ある日本の方が最高よ。」  その後、無事に大学生になった莉奈はまた召喚されてしまう。  召喚されたのは、高校生の時に召喚された異世界の国と同じであった。しかし、あの時から3年しか経ってないはずなのに、こっちの世界では150年も経っていた。 「聖女も2回目だから、さっさと仕事を終わらせて、早く帰らないとね!」  今回は無事に帰れるのか…?  ご都合主義です。  誤字脱字お許しください。

……モブ令嬢なのでお気になさらず

monaca
恋愛
……。 ……えっ、わたくし? ただのモブ令嬢です。

モブはモブらしく生きたいのですっ!

このの
恋愛
公爵令嬢のローゼリアはある日前世の記憶を思い出す そして自分は友人が好きだった乙女ゲームのたった一文しか出てこないモブだと知る! 「私は死にたくない!そして、ヒロインちゃんの恋愛を影から見ていたい!」 死亡フラグを無事折って、身分、容姿を隠し、学園に行こう! そんなモブライフをするはずが…? 「あれ?攻略対象者の皆様、ナゼ私の所に?」 ご都合主義です。初めての投稿なので、修正バンバンします! 感想めっちゃ募集中です! 他の作品も是非見てね!

前世では美人が原因で傾国の悪役令嬢と断罪された私、今世では喪女を目指します!

鳥柄ささみ
恋愛
美人になんて、生まれたくなかった……! 前世で絶世の美女として生まれ、その見た目で国王に好かれてしまったのが運の尽き。 正妃に嫌われ、私は国を傾けた悪女とレッテルを貼られて処刑されてしまった。 そして、気づけば違う世界に転生! けれど、なんとこの世界でも私は絶世の美女として生まれてしまったのだ! 私は前世の経験を生かし、今世こそは目立たず、人目にもつかない喪女になろうと引きこもり生活をして平穏な人生を手に入れようと試みていたのだが、なぜか世界有数の魔法学校で陽キャがいっぱいいるはずのNMA(ノーマ)から招待状が来て……? 前世の教訓から喪女生活を目指していたはずの主人公クラリスが、トラウマを抱えながらも奮闘し、四苦八苦しながら魔法学園で成長する異世界恋愛ファンタジー! ※第15回恋愛大賞にエントリーしてます! 開催中はポチッと投票してもらえると嬉しいです! よろしくお願いします!!

今日も学園食堂はゴタゴタしてますが、こっそり観賞しようとして本日も萎えてます。

柚ノ木 碧/柚木 彗
恋愛
駄目だこれ。 詰んでる。 そう悟った主人公10歳。 主人公は悟った。実家では無駄な事はしない。搾取父親の元を三男の兄と共に逃れて王都へ行き、乙女ゲームの舞台の学園の厨房に就職!これで予てより念願の世界をこっそりモブ以下らしく観賞しちゃえ!と思って居たのだけど… 何だか知ってる乙女ゲームの内容とは微妙に違う様で。あれ?何だか萎えるんだけど… なろうにも掲載しております。

処理中です...