745 / 786
第五章・帝国の王女
662.Side Story:The men's party that came back.2
しおりを挟む
男子会開催二回目にして早速王様ゲーム形式を廃止し、それはそれで困る新たな形式を提案したシルフ。拒否権の無い指名制!? と、引き続き参加している面々が王様ゲームより酷い新形式に目を丸くするそばで、
「なんか思ってたのと違うな。姫さんについての語らいだってのに、指名制の質問形式ってどういうことだ?」
「……姫についていかに詳しいかを問い、その浅はかな知識と回想を、俺の重厚なる姫にまつわる記憶で捩じ伏せてやればいいのか?」
「フリザセア。そーゆーの人間界ではマウントって言うらしいぞー。めちゃくちゃ嫌われるらしいぜ、それ」
「そうか。他者に嫌われようが俺には関係の無い事だが、姫の前では気をつけるとしよう」
前回の男子会で行われた地獄の王様ゲームを知らぬ二体は、相変わらず呑気に話している。
それを見かねて、シルフはやれやれと眉尻を下げて切り出した。
「それじゃあまずはボクが見本でやってみよう。──おいそこの吸血鬼」
「ん? なんだ、精霊さん」
「お前、昨日は一日アミィと仲良くデートをしていたらしいな。どういった意図でアミィをスイーツなんたらに誘ったのか、全部吐け」
見本というか、もはやそれが目的だったのだろう。シルフは迷わずアンヘルを指名して、畳み掛けるように質問を投げかけた。
アンヘルとアミレスが(アルベルトも同席していたが、)デートをしていたという証言に、普段のアンヘルを知る者達は瞬き、アンヘルを凝視する。
「そりゃあ、アミレスに会いたかったからだけど。あわよくば一緒に過ごして、思い出を作って……それで、彼女の笑顔が見たかった。だから彼女も喜んでくれそうなスイーツバイキングに誘ったんだ」
元々嘘をつくつもりは特になかったが、嘘を許さぬ星空の紅茶の力で見事丸裸にされたアンヘルの心に、男達は確信した。
──あの男もアミレスに想いを寄せているのか、と……。
「ふーん。鼻につくな、お前。金輪際アミィに近寄るなよ」
「それは聞けない相談だな。アミレス本人からそう言われたのならまだしも、第三者のあんたから言われたところで強制力は無いだろ?」
「チッ…………」
聞いておきながらなんとも自由な反応だ。
それとは打って変わり、舌打ちされてもなおアンヘルは毅然としており、優雅に紅茶を味わっているではないか。これが五百年分の記憶を取り戻した男の余裕か。
「……まあ、こんな感じに時計回りで順番に質問していくってことで。はい次はエンヴィーね」
「急に俺っすか。えー、誰に何聞いてやろうかな」
シルフの左隣に座していたのはエンヴィーだった。突如として役を振られたにもかかわらず、彼は特に困った様子も見せず質問内容を吟味する。
「じゃあ、マクベスタで。前から気になってたんだが……お前がいつからか持っていたあの黒い剣。アレは、何の為に誰から譲り受けた物なんだ?」
(──あの趣味が悪ぃ見知らぬ剣術についても聞きたいところだが、質問は一つまでだからな。次の機会にするか)
雰囲気がガラリと変わり真剣な様子のエンヴィーに問われ、マクベスタは表情を固くした。だが程なくして、彼は答える。
「……もっと強くなる為。彼女の幸福を脅かす全てを殺せるようになる為だ。あの剣は、数年前にシュヴァルツから貰ったんだ」
「ほーう。シュヴァルツがアレを? なんで悪魔があんな剣を持ってんだか」
「それはオレも気になっていた。彼曰く、処分に困っていたらしいが」
「処分ねぇ……ま、弟子のお前が強くなればなる程俺の評価も上がるし? 姫さんの為の剣なら、何も言うこたぁねーよ」
(──聖剣を魔界が奪った理由は、人類の戦力を削ぐ為だろうが……それを現魔王の野郎があっさり手放した理由が分からねぇな)
魔界の動きを警戒するに越したことはないか。と、エンヴィーはその軽薄な笑みの下で、未だ姿を見せないシュヴァルツへの疑念を膨らませる。
(マクベスタ相手なら、この間アミィと二人で出かけていたことについて聞くべきだろ。何を聞いてるんだか……)
「──エンヴィーの番も終わったな? じゃあ次はマクベスタだ」
不満げなシルフがそう促すと、
「……それじゃあ。カイルに質問しよう」
「俺? もうなんでも質問してくれちゃっていいんだぜ、マクベスタ!」
意外にもマクベスタはすぐさま質問相手と内容を決めた。どうやら、はじめから誰に何を聞くか決めていたようだ。
普段は素っ気ない推しが自分に興味を持ってくれた喜びからか、カイルは喜色満面で応じた。その様子に呆れつつ、マクベスタは切り出す。
「……カイル。お前にとってアミレスはどんな存在なんだ? お前は……アミレスを愛しているんじゃないのか?」
まるで時が止まったかのよう。ピタリとカイルが硬直すると同時に、その場に居合わせた男達の大半から全身がひりつく程の殺意が溢れ出した。
特に、あの男のそれは他の参加者達のものより格段に恨みつらみが込められた──呪いの塊のような殺意で。
(カイル・ディ・ハミルがあの女を愛しているだと? もし、それが真なのであれば──……僕はあの男をこの世から消し去らねばならない。我が妹が獣共の手に渡るなど、あってはならないからな)
フリードルは未だに信じていた。ある冬の日にアミレスが放った、『その……一目惚れしちゃったんですよね! カイル王子に!!』という出まかせを。
勿論彼とてそのような事はあり得ないと一笑に付したかったが、いかんせんアミレスとカイルの距離感があまりにも近すぎて、それが本当のことなのだと思い込んでしまった。
それ故に──押し倒したり、口付けたり。とにかくアミレスを体から篭絡してしまおうと、彼は躍起になっているのである。
そんな、フリードルの身勝手な焦燥などつゆ知らず。カイルはルールに則り、問いに対する答えを語りだした。
「なんか思ってたのと違うな。姫さんについての語らいだってのに、指名制の質問形式ってどういうことだ?」
「……姫についていかに詳しいかを問い、その浅はかな知識と回想を、俺の重厚なる姫にまつわる記憶で捩じ伏せてやればいいのか?」
「フリザセア。そーゆーの人間界ではマウントって言うらしいぞー。めちゃくちゃ嫌われるらしいぜ、それ」
「そうか。他者に嫌われようが俺には関係の無い事だが、姫の前では気をつけるとしよう」
前回の男子会で行われた地獄の王様ゲームを知らぬ二体は、相変わらず呑気に話している。
それを見かねて、シルフはやれやれと眉尻を下げて切り出した。
「それじゃあまずはボクが見本でやってみよう。──おいそこの吸血鬼」
「ん? なんだ、精霊さん」
「お前、昨日は一日アミィと仲良くデートをしていたらしいな。どういった意図でアミィをスイーツなんたらに誘ったのか、全部吐け」
見本というか、もはやそれが目的だったのだろう。シルフは迷わずアンヘルを指名して、畳み掛けるように質問を投げかけた。
アンヘルとアミレスが(アルベルトも同席していたが、)デートをしていたという証言に、普段のアンヘルを知る者達は瞬き、アンヘルを凝視する。
「そりゃあ、アミレスに会いたかったからだけど。あわよくば一緒に過ごして、思い出を作って……それで、彼女の笑顔が見たかった。だから彼女も喜んでくれそうなスイーツバイキングに誘ったんだ」
元々嘘をつくつもりは特になかったが、嘘を許さぬ星空の紅茶の力で見事丸裸にされたアンヘルの心に、男達は確信した。
──あの男もアミレスに想いを寄せているのか、と……。
「ふーん。鼻につくな、お前。金輪際アミィに近寄るなよ」
「それは聞けない相談だな。アミレス本人からそう言われたのならまだしも、第三者のあんたから言われたところで強制力は無いだろ?」
「チッ…………」
聞いておきながらなんとも自由な反応だ。
それとは打って変わり、舌打ちされてもなおアンヘルは毅然としており、優雅に紅茶を味わっているではないか。これが五百年分の記憶を取り戻した男の余裕か。
「……まあ、こんな感じに時計回りで順番に質問していくってことで。はい次はエンヴィーね」
「急に俺っすか。えー、誰に何聞いてやろうかな」
シルフの左隣に座していたのはエンヴィーだった。突如として役を振られたにもかかわらず、彼は特に困った様子も見せず質問内容を吟味する。
「じゃあ、マクベスタで。前から気になってたんだが……お前がいつからか持っていたあの黒い剣。アレは、何の為に誰から譲り受けた物なんだ?」
(──あの趣味が悪ぃ見知らぬ剣術についても聞きたいところだが、質問は一つまでだからな。次の機会にするか)
雰囲気がガラリと変わり真剣な様子のエンヴィーに問われ、マクベスタは表情を固くした。だが程なくして、彼は答える。
「……もっと強くなる為。彼女の幸福を脅かす全てを殺せるようになる為だ。あの剣は、数年前にシュヴァルツから貰ったんだ」
「ほーう。シュヴァルツがアレを? なんで悪魔があんな剣を持ってんだか」
「それはオレも気になっていた。彼曰く、処分に困っていたらしいが」
「処分ねぇ……ま、弟子のお前が強くなればなる程俺の評価も上がるし? 姫さんの為の剣なら、何も言うこたぁねーよ」
(──聖剣を魔界が奪った理由は、人類の戦力を削ぐ為だろうが……それを現魔王の野郎があっさり手放した理由が分からねぇな)
魔界の動きを警戒するに越したことはないか。と、エンヴィーはその軽薄な笑みの下で、未だ姿を見せないシュヴァルツへの疑念を膨らませる。
(マクベスタ相手なら、この間アミィと二人で出かけていたことについて聞くべきだろ。何を聞いてるんだか……)
「──エンヴィーの番も終わったな? じゃあ次はマクベスタだ」
不満げなシルフがそう促すと、
「……それじゃあ。カイルに質問しよう」
「俺? もうなんでも質問してくれちゃっていいんだぜ、マクベスタ!」
意外にもマクベスタはすぐさま質問相手と内容を決めた。どうやら、はじめから誰に何を聞くか決めていたようだ。
普段は素っ気ない推しが自分に興味を持ってくれた喜びからか、カイルは喜色満面で応じた。その様子に呆れつつ、マクベスタは切り出す。
「……カイル。お前にとってアミレスはどんな存在なんだ? お前は……アミレスを愛しているんじゃないのか?」
まるで時が止まったかのよう。ピタリとカイルが硬直すると同時に、その場に居合わせた男達の大半から全身がひりつく程の殺意が溢れ出した。
特に、あの男のそれは他の参加者達のものより格段に恨みつらみが込められた──呪いの塊のような殺意で。
(カイル・ディ・ハミルがあの女を愛しているだと? もし、それが真なのであれば──……僕はあの男をこの世から消し去らねばならない。我が妹が獣共の手に渡るなど、あってはならないからな)
フリードルは未だに信じていた。ある冬の日にアミレスが放った、『その……一目惚れしちゃったんですよね! カイル王子に!!』という出まかせを。
勿論彼とてそのような事はあり得ないと一笑に付したかったが、いかんせんアミレスとカイルの距離感があまりにも近すぎて、それが本当のことなのだと思い込んでしまった。
それ故に──押し倒したり、口付けたり。とにかくアミレスを体から篭絡してしまおうと、彼は躍起になっているのである。
そんな、フリードルの身勝手な焦燥などつゆ知らず。カイルはルールに則り、問いに対する答えを語りだした。
20
お気に入りに追加
638
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
異世界成り上がり物語~転生したけど男?!どう言う事!?~
繭
ファンタジー
高梨洋子(25)は帰り道で車に撥ねられた瞬間、意識は一瞬で別の場所へ…。
見覚えの無い部屋で目が覚め「アレク?!気付いたのか!?」との声に
え?ちょっと待て…さっきまで日本に居たのに…。
確か「死んだ」筈・・・アレクって誰!?
ズキン・・・と頭に痛みが走ると現在と過去の記憶が一気に流れ込み・・・
気付けば異世界のイケメンに転生した彼女。
誰も知らない・・・いや彼の母しか知らない秘密が有った!?
女性の記憶に翻弄されながらも成り上がって行く男性の話
保険でR15
タイトル変更の可能性あり
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
婚約したら幼馴染から絶縁状が届きました。
黒蜜きな粉
恋愛
婚約が決まった翌日、登校してくると机の上に一通の手紙が置いてあった。
差出人は幼馴染。
手紙には絶縁状と書かれている。
手紙の内容は、婚約することを発表するまで自分に黙っていたから傷ついたというもの。
いや、幼馴染だからって何でもかんでも報告しませんよ。
そもそも幼馴染は親友って、そんなことはないと思うのだけど……?
そのうち機嫌を直すだろうと思っていたら、嫌がらせがはじまってしまった。
しかも、婚約者や周囲の友人たちまで巻き込むから大変。
どうやら私の評判を落として婚約を破談にさせたいらしい。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
困りました。縦ロールにさよならしたら、逆ハーになりそうです。《改訂版》
新 星緒
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢アニエス(悪質ストーカー)に転生したと気づいたけれど、心配ないよね。だってフラグ折りまくってハピエンが定番だもの。
趣味の悪い縦ロールはやめて性格改善して、ストーカーしなければ楽勝楽勝!
……って、あれ?
楽勝ではあるけれど、なんだか思っていたのとは違うような。
想定外の逆ハーレムを解消するため、イケメンモブの大公令息リュシアンと協力関係を結んでみた。だけどリュシアンは、「惚れた」と言ったり「からかっただけ」と言ったり、意地悪ばかり。嫌なヤツ!
でも実はリュシアンは訳ありらしく……
逃げて、追われて、捕まって
あみにあ
恋愛
平民に生まれた私には、なぜか生まれる前の記憶があった。
この世界で王妃として生きてきた記憶。
過去の私は貴族社会の頂点に立ち、さながら悪役令嬢のような存在だった。
人を蹴落とし、気に食わない女を断罪し、今思えばひどい令嬢だったと思うわ。
だから今度は平民としての幸せをつかみたい、そう願っていたはずなのに、一体全体どうしてこんな事になってしまたのかしら……。
2020年1月5日より 番外編:続編随時アップ
2020年1月28日より 続編となります第二章スタートです。
**********お知らせ***********
2020年 1月末 レジーナブックス 様より書籍化します。
それに伴い短編で掲載している以外の話をレンタルと致します。
ご理解ご了承の程、宜しくお願い致します。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
3年前にも召喚された聖女ですが、仕事を終えたので早く帰らせてもらえますか?
せいめ
恋愛
女子大生の莉奈は、高校生だった頃に異世界に聖女として召喚されたことがある。
大量に発生した魔物の討伐と、国に強力な結界を張った後、聖女の仕事を無事に終えた莉奈。
親しくなった仲間達に引き留められて、別れは辛かったが、元の世界でやりたい事があるからと日本に戻ってきた。
「だって私は、受験の為に今まで頑張ってきたの。いい大学に入って、そこそこの企業に就職するのが夢だったんだから。治安が良くて、美味しい物が沢山ある日本の方が最高よ。」
その後、無事に大学生になった莉奈はまた召喚されてしまう。
召喚されたのは、高校生の時に召喚された異世界の国と同じであった。しかし、あの時から3年しか経ってないはずなのに、こっちの世界では150年も経っていた。
「聖女も2回目だから、さっさと仕事を終わらせて、早く帰らないとね!」
今回は無事に帰れるのか…?
ご都合主義です。
誤字脱字お許しください。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
モブはモブらしく生きたいのですっ!
このの
恋愛
公爵令嬢のローゼリアはある日前世の記憶を思い出す
そして自分は友人が好きだった乙女ゲームのたった一文しか出てこないモブだと知る!
「私は死にたくない!そして、ヒロインちゃんの恋愛を影から見ていたい!」
死亡フラグを無事折って、身分、容姿を隠し、学園に行こう!
そんなモブライフをするはずが…?
「あれ?攻略対象者の皆様、ナゼ私の所に?」
ご都合主義です。初めての投稿なので、修正バンバンします!
感想めっちゃ募集中です!
他の作品も是非見てね!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
前世では美人が原因で傾国の悪役令嬢と断罪された私、今世では喪女を目指します!
鳥柄ささみ
恋愛
美人になんて、生まれたくなかった……!
前世で絶世の美女として生まれ、その見た目で国王に好かれてしまったのが運の尽き。
正妃に嫌われ、私は国を傾けた悪女とレッテルを貼られて処刑されてしまった。
そして、気づけば違う世界に転生!
けれど、なんとこの世界でも私は絶世の美女として生まれてしまったのだ!
私は前世の経験を生かし、今世こそは目立たず、人目にもつかない喪女になろうと引きこもり生活をして平穏な人生を手に入れようと試みていたのだが、なぜか世界有数の魔法学校で陽キャがいっぱいいるはずのNMA(ノーマ)から招待状が来て……?
前世の教訓から喪女生活を目指していたはずの主人公クラリスが、トラウマを抱えながらも奮闘し、四苦八苦しながら魔法学園で成長する異世界恋愛ファンタジー!
※第15回恋愛大賞にエントリーしてます!
開催中はポチッと投票してもらえると嬉しいです!
よろしくお願いします!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる