だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜

十和とわ

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第五章・帝国の王女

661.Side Story:The men's party that came back.

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 開幕早々大騒ぎを迎えたシルフ達のおつかいは、時に騒ぎを時に問題を起こしつつ紆余曲折経てなんとか完了した。
 精霊王故の価値観と傲慢さと美しさを隠そうともしないシルフ。良さげな雑貨屋や宝飾店を見つけてはすぐ寄り道をするエンヴィー。隙あらば単独行動する協調性皆無のフリザセア。この三体の手綱を握ることなど、おそらくアミレス以外には不可能だ。
 自分が最初から一人でやっておけばもっと早く何事もなく済んだんだろうな……と、アルベルトは何度も遠い目をしつつ、個性豊かな精霊達をなんとか案内してみせた。そんな彼が『早く主君の元に戻ろう。主君の笑顔に癒されたい』といの一番に東宮に向かおうとした時、

「どこに行くんだルティ。まだ用事は済んでいないだろ」

 その肩をシルフが鷲掴んだ。精霊王によるあまりの圧に、アルベルトは顔を引き攣らせて振り返る。

「で、デリアルド伯爵の滞在場所なら、皆様も主君からお聞きになっているのでは……?」
(──だからもう俺の案内なんて要らないよね? 頼むから一刻も早くこのヒト達から離れさせてほしい……!)

 だが、その願いは星に届かず。

「それとはまた別件で、お前にも参加してもらわないといけないものがあるんだよ」
「参加……?」
(──嫌な予感しかしない。逃げていいかな? いいよね?)

 どぷ、と自身の影に僅かに足を入れた途端、シルフがその影を勢いよく踏んだ。

「逃げさせないからな。お前も来るんだよ、ルティ。これ決定事項だから」
「う……っ、は、はい。わかりました……」

 心底嫌そうだ。
 精霊王の言葉に最上位精霊であるエンヴィーとフリザセアが異論を唱える筈もなく。彼等は特に文句も言わず(そもそもフリザセアは近くのパン屋を眺めていたので話を聞いてすらいないが)、シルフの独断で彼等はある場所へと向かった──。


 ♢♢♢♢


 おつかいを終えるべく、彼等はまずアンヘルを訪ねた。しかし、彼にあてがわれた王城の一室にその姿はなく、何故かアルベルトが彼の行方まで探す羽目に。
 そうして見つけたアンヘルの元へひとっ飛びし、シルフ達はまずアンヘルと、ついでにその場に居たミカリアを拉致した。
 更に、これまたアルベルトが滞在場所を知っていたロアクリード、王城滞在組のカイルとマクベスタ、仕事中のフリードルとレオナードが続々と拉致されてある一室に閉じ込められた。
 さて、ここまでくればもう何が起きるか想像に難くなかろう。
 集められた男達が何かを察して頭を抱え、時には呻き声に近いため息すら吐いている。そんな中でシルフが指を弾き、いつか見た円卓が出現すると、

(((あぁ……やっぱりそういうことか……)))

 カイルとロアクリードとアルベルトがいち早く項垂れ、

(まさかまたあの地獄が……!?)
(神よ……何故僕に試練をお与えになるのですか……)
(えぇ……? マジか)
(だからなんで俺までこの面子に巻き込まれるんだよ!! 胃がもたないって!)

 マクベスタ、ミカリア、アンヘル、レオナードもまたそれぞれ顔色を悪くした。

「──おい、精霊。まさかとは思うが……また、あのような無意義かつ無駄極まりない会合をするつもりじゃないだろうな」

 冷気ふきげん全開のフリードルが怒気も盛り盛りで問うと、シルフは麗しく微笑み、

「当たり前だクソガキ共。そうじゃなければボクの貴重な時間をお前等に割いてやるわけないだろ。調子に乗るなよボクのアミィに群がる虫の分際で」

 随分とまあ当たりの強い言葉を吐いた。この面子を前にして、猫を被るのが億劫になったようだ。にしても当たりが強すぎるぞ、この精霊王。びっくりする程大人げない。

「──まあ、そういうわけだから。やるぞ、男子会・・・

 やっぱりか────! と、人間達の心中は一致する。
 だが、彼等に精霊に逆らうという選択肢はなく。大人しく円卓に座り、例のごとく嘘をつけなくなる紅茶と茶請けを出された。飲まなくてもシルフが魔法で紅茶を操り無理矢理飲ませてくるので、彼等は渋々自らその紅茶を口にする。
 星空の紅茶は、相変わらず味だけは絶品だ。その見た目と効能さえ目を瞑れば最上級の美食と言えよう。

「そういや、前回の男子会ではイリオーデとかシュヴァルツとかクロノとかもいたと思うけど。なんでアイツ等は不参加なんだ?」
「いい質問だ、カイル。──イリオーデはアイツの実家まで迎えに行くのが面倒だったから。クソ悪魔は魔界にいるから。クロノは知らん。だからこの三名は不在なんだよね」
「アッハイ……さいですか……」
(──思ってたより適当な理由だったァ……)

 そんな理由で除外されるのなら、領地ないし祖国に戻っておけばよかったな。と他国出身の者達が思うと同時。男子会初参加のエンヴィーがおもむろに手を挙げた。

「シルフさーん。この男子会って何をするんですか?」
「アミィについて語り合う、みたいな?」
「おお。そりゃ良いじゃないっすか。姫さんについての語らい……フッ、姫さんの師匠たる俺の右に出る者はいねーだろうよ」
「聞き捨てならないな、エンヴィー。おじいちゃんたる俺よりも姫について詳しいと、本気でそう思っているのか」
「だからなんなんだよその『おじいちゃん』って!?」

 この度めでたく初参加と相成ったエンヴィーとフリザセアが、何も知らないが故の前向きな姿勢を見せる。

「はいはい雑談は終了ー。さっさと本題に移ろうじゃないか」

 シルフが仕切り直しとばかりに手を叩くと、かつての悪夢が蘇りつつある男達は生唾を呑み込んだ。

「王様ゲームは、相手が分からないからこそ大なり小なりの無茶振りが出来てしまって、非常に不評だったからね。今回は至って単純明快にいこうじゃないか。──相手をこの中から一名指名し、なんでも好きな質問をする。指名された者は必ずその質問に答える。これでどうだ?」

 言って、シルフは自信満々に笑った。
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