だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜

十和とわ

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第五章・帝国の王女

614.Main Story:Ameless3

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 カイルの語る攻略対象をたくさん攻略したという件について、ミシェルちゃんと、『心当たりある?』『ないかなぁ……』などと視線で会話したところで、カイルからツッコミが。

「もうほんとこのポンコツは…………」
「んなっ、失礼ね」
「寧ろお前のが失礼まであるよ。アイツ等に」
「何の話よ」

 カイルが難癖をつけてくる。なんだこの、やれやれ系アスキーアートみたいな鼻につく表情。本当に鼻につく。
 まるで私が攻略対象達を攻略したみたいに言うじゃないの。………………ん? あれ、でも──、

『僕は──……お前の事を愛している。人生で最も幸せな瞬間を共に迎えたいとすら思う程、お前の事を愛しているんだ!』
『……──お前が好きだ、アミレス。人としても、友達としても、もちろん異性としても。オレはお前の事が好きで好きで堪らないんだ』

 あれって、乙女ゲーム的に言えば攻略したってことに……なってしまうのでは? 頭がおかしい我が兄は置いといて、もしかして私、マクベスタの事を攻略してしまっていたの───!?

 とんでもない事に気付き、ハッとなる。いやしかし、しかしだ。私が攻略してしまった(多分)のはマクベスタだけであって、残りの攻略対象とは基本的に友好的な間柄でしかない。
 フリードル……は頭がおかしいでしょ? カイルは親友で、ミカリアは友達。アンヘルはスイーツ同盟で、残りの三人──ロイ、セインカラッド、サラとはそもそも交流がほとんど無い。
 じゃあカイルが言ってた『攻略対象を片っ端から攻略してくれやがった』云々は私ではないか。

「そこのポンコツの話は置いといて。とにかく、困ったことに特定の人物によって攻略対象の半数近くが攻略されつつある。これは由々しき事態であり、同時に俺達にとっての切り札・・・になると俺は考えた」

 ポンコツ呼ばわりとはなんと失礼な。

「攻略対象達から愛される──それは、乙女ゲーム転生界隈では定番中の定番!」

 どこの界隈よ、それ。

「攻略対象同時攻略を成し遂げたお前にしか創り出せない結末エンドが必ずある!!」
「……私にしか創り出せないもの……?」
「ああ。この演目の名前はズバリ、【逆ハーレムエンド】! 攻略対象共を侍らせ、お前だけのオリジナルのハッピーエンドを迎えるんだ!」

 勢いよく立ち上がり、握り拳を掲げ、思いもよらぬ熱量でカイルは力説する。

「逆ハーレムって……百歩譲って攻略対象達が私を好いていたとしたら、相手の心を弄ぶことになるじゃない」
「一旦真面目か。ほら、なんて言うの? 一妻多夫的な? 相思相愛かつ彼氏同士も仲良ければ問題無いと俺思うわけ」

 そもそも、と彼は着席して続ける。

「この世界、ハーレムなんてどこの国でも国王やら女王やらがやってんだから。王女のお前が彼氏侍らせても、モーマンタイモーマンタイ」

 その場合私はまーた色狂いの王女とか言われるようになるんですが……。
 カイルの理論がまかり通るのは相当なやむを得ない事情がある時ぐらいだろう。たとえば、現後継者──フリードルになんらかの問題が発生して、私がどうにかして世継ぎを産む必要がある。とかそれぐらいの理由がなければ、ハーレム形成なんて許されなかろうよ。

「仮に、仮によ。貴方の言う通り攻略対象達が私を……す、好きだとして。彼等でハーレムを形成してみなさいよ」
「顔面偏差値ワールドカップ優勝候補だな」
「何言ってんのあんた? ──ほら、考えてみなさい。あの個性豊かなイケメン達が、仲良く出来ると思う?」
「アッ」
「…………無理そうだね……!」

 カイルの理論の穴。それを突けば、彼は「そうだ……それはそうだわ……」と悔しげに呻く。
 ミシェルちゃんからも無理との太鼓判を押され、カイルは更にしょんぼりとしてしまった。

「くそぅ……夢の【アミレス総愛されいちゃラブハッピー逆ハーレム】を眺めたかったのに……! やはり無理にでもマクアミの世界線ルートを作るしかねぇのか……ッ!!」

 ぶつぶつと何を呟いているのだろう、この男は。えらく真剣な顔だが…………触らぬ神に祟りなしって言うし、暫く放っておこう。

「ところでミシェルちゃん。ロイとは最近どう?」
「ふぇっ!? ろ、ロイと……? ええと……」

 アミレスより一つ歳下の彼女は、幼さの残る愛らしい顔を真っ赤に染めて視線を泳がせた。

「毎日のように口説かれてる?」
「!? な、なんで……分かっ……!?」
「ゲームでも告白後のロイはそんな感じだったからね」
「あ…………分かってて聞いたの、ずるいよ」

 か、かわいい~~っ! ほんのり赤く染まった頬をぷくって膨らませて弱々しく睨んでくるの、あまりにもい!!

「……ロイが四六時中、場所を問わず『好きだよ』とか『あいしてる』とか言ってきて……心臓が止まりそうデス……」
「ドキドキし過ぎて、ってこと?」
「う、うん。……こんなにもまっすぐ、普通に誰かに愛してもらえたのは、初めてだから」
「──そっか。ミシェルちゃんはロイのこと、好きなの?」
「好き……だけど。まだ、友達として、だと思う」

 そうは語るがミシェルちゃんの表情はどう見ても、友達として好きな相手を想ってのものではない。

「…………もうすぐ陥落しちゃいそう?」
「……我ながら単純だなぁ、とは思う」

 彼女にもどうやらその自覚があるらしい。ふにゃりと眉を下げ、ミシェルちゃんは小さく笑った。
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