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第五章・帝国の王女

♢600.Chapter4 Prologue

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 ──ひと目惚れだった。
 はじめて見たあの時から……ずっとずっと、わたくしはあれが・・・ほし・・かった・・・

『───やぁやぁ! よくぞ集まってくれたね、我が子達!』

 太陽の神さまがさわぐ。そのまぬけな笑顔を見て、悪魔の王さまと彼は怒った顔になった。そんな顔すらも、彼は美しかったの。

『千五百円年に一度、人間界を除く各世界の王で集まり、今後の方針について話し合う……先代の手記にそう書かれてはいたが。まさか本当だったとはな』

 肩口で切り揃えられたくろ色としろ色の髪を掻いて、魔王は大きな息を吐いた。

『魔界は未だに後継者の教育を行っていないのか。三千年前にボクが老婆心で勧めてやったのに、忘れやがって』
『教育って(笑)。精霊王サマってば、冗談ジョークが下手だねぇ。おれさま・・・・達に限って、そーゆーのは有り得ねェって分かんない?』
『……今代の魔王は、目上の者への礼儀すらままならないようだ』
『ハハ、それも後継者の教育ってやつ? 生憎と、先代を殺してこの座に就いたばかりの新参者なんでね。多少の無礼は──旧き王の寛大な慈悲の心で、お許しいただきたく』
『……──話にならないな』

 魔王とのはなしあいに疲れたのか、彼はムスッとした顔でそっぽを向いた。そんな彼を、冷たい顔の精霊と、うちのラヴィーロに似た雰囲気の精霊が、宥める。
 魔王も誰か、変な男とじゃれ合っていた気がするけれど……ほとんど覚えていないわ。
 彼が──あの星がきらきらと輝く景色を。わたくしは、ただじぃっと見つめていたの。愛でていたの。

『あっはっはっ! 代替わりしたばかりだからかな、魔王も妖精女王も初々しいねぇ~~』

 神さまがゲラゲラと笑うと、魔王と彼はまたふきげんになった。でも、彼のそんな顔も素敵だと、あの時のわたくしは見惚れていた。
 これが『恋』というものだと気づいた時。わたくしの胸はかつてないほどにドキドキしたわ!

 あの日から千年。妖精界からは見えもしないお星さまに想い焦がれてきた。何度も何度も彼方ソラに手を伸ばしたし、部下の妖精たちにお願いして、お星さまにプレゼントを贈ったりもした。
 だって、妖精女王わたくしは神さまに手を引いてもらわないと妖精界から出られないから。
 この方法でしか、お星さまへの『恋』を伝えられなかった。会っておはなしがしたかったし、ちゃんとわたくしの言葉で、この『恋』を告げたかった。
 でも、できないの。わたくしが妖精女王である限り──それは叶わないと、ほんとうはわかっていたわ。

 でも、どうしても諦められなくて。
 もう一度あいたい・・・・。お星さまを手の届く場所に落としたい。
 だからね。わたくしは──……『お星さまがほしい』と、みんなにお願いしたの!

 ラヴィーロやみんながとーっても頑張ってくれて。こうしてわたくしは……千年ぶりに、お星さまと同じ世界に来られた。
 ──それなのに。
 お星さまのお気にいりの分際で、あの女はわたくしの邪魔をした。ただ、お星さまにあいたいだけのわたくしを、お星さまにあいされている女が、邪魔したの。
 瞳以外に、いいところなんてなにも無いのに。あのお星さまのお気にいりということすら信じられない、ふつうの子なのに。

 どうして、わたくしではなくあなたが?
 どうして、わたくしを差し置いて、お星さまにあいされているの?
 どうして、わたくしの邪魔をするの?
 どうして、どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてッ!?

 ……──ゆるせない。そんなのって、ないわ。
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