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第五章・帝国の王女
585.Yummis VS Macbethta,Kile
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鋼製の拳撃鍔と聖剣ゼースが火花を散らす。
まるで徒手空拳とは思えぬその連撃に、さしものマクベスタとて困惑を隠せない。
(細剣もかなりの実力だったが──この男の本来の得物は、拳のようだな。身のこなしも、攻撃毎の威力も、先程とは段違いだ)
だが、
(負けるつもりは毛頭ない)
とマクベスタは攻めに転じた。落雷での撹乱を止め、全身に雷を巡らせる。彼の体は雷と同化し、翼を用いるよりも更に速く行動する事が可能になった。
落雷と同等の速度で肉薄するマクベスタ。ユーミスの雁首目掛け、電気を撒き散らす純白の一閃を放つも、ユーミスは体を逸らして奇跡的に回避する。
しかし撒き散らされた電気はユーミスを襲い、彼の体に若干の麻痺を残す。
「よくぞ、今の攻撃を避けたな。敵ながら見事だ」
「そちらこそ……妖精じゃなきゃ避けれない技とか。容赦ってモンがねェな、人間」
一度距離を取り、二人は睨み合う。
だが程なくして正面衝突は再開し、彼等は激しい異種格闘を繰り広げていた。
その援護をするのは、神に愛されすぎた天才、カイル。お手製の魔導兵器サベイランスちゃんを起動し、彼はぶつぶつとパスコードを唱える。
「──よし。いくぜ、サベイランスちゃん」
創造者の言葉に従い、その魔導兵器は不可思議な旋律を紡ぐ。
《星間探索型魔導監視装置、仮想起動。魔導変換開始。事前指定、目次参照完了。魔力総括機構、全面起動。【妖精】の遺伝子解析、八十パーセント完了。特殊機能解放条件を満たしました。──特下術式、開帳。破壊対象を妖精に限定。無機物保護術式、並行起動。周囲に強力な結界を観測。……干渉不可。術式発動への影響を演算──問題無し。術式構成、全行程完了》
サベイランスちゃんの真上に展開された魔法陣はたったの二つ。何色にも見える鮮やかな魔法陣が交差するように重なり、くるくると回ったかと思えば──その、遥か上空。
視界に収まりきらない巨大な虹色の魔法陣が、時計の内部機構のように、大小織り交ぜ何重にも輝きだした。
「──は?」
絶句。魔法と縁遠い妖精でも、それが俗に言う魔法とは程遠い何かであることを、瞬時に理解した。
思わず攻撃の手が止んだユーミスと同様に、マクベスタもまた、ふと上空を見上げては開いた口が塞がらなくなる。
(……──あの男は、またとんでもない事を)
帝都の一角に避難した民達も、穢妖精と戦う兵士や騎士達も、城で事態の対応に追われる役人達も、女王近衛隊と対峙する者達も、誰もがその大魔術に呆気に取られた。
「サベイランスちゃん。撃て」
《標的、固定。攻撃準備、開始。三、二、一……──奇跡串刺す虹の雫、投下》
上空の魔法陣より溶け出すように射出される、魔力を固めた弾丸の雨。あまりの速さによるものか、残像が生まれ槍のようにも見える。
(なんだこれは……!? 人間ってのは奇跡力も無しにこんなめちゃくちゃな事が出来るのか?! だが、この程度であれば難なく避けられる。ほら見ろ、ほとんどの弾がそのまま地面に──)
ユーミスは安堵した。してしまった。
凄まじい速度で落下する無数の弾。それは地面を抉る直前で、方向を変える。四方八方あらゆる方向から、ただ一点を目指して飛んで行く。
「ッ嘘だろ……!? ──弾が、追いかけてきやがった……っ!?」
迫り来る殺意を認識した瞬間、彼は考えるよりも先に跳躍した。
ユーミスが先程まで立っていた場所では、飛来した魔力弾同士が衝突し、小規模な爆発が頻発する。少し離れた場所に着地してその光景を見たユーミスの頬に、つぅっと脂汗が滲む。
(ばーか。俺の作った魔法がその程度で終わるかよ。しっかり追尾機能も備えてるからな。精々、必死に逃げ惑え)
カイルの視線の先では、追尾する魔力弾から逃げ回るユーミスと、その背を追って残像の幾何学模様を描く魔力弾が熾烈な勝負を演じる。
(しかし……予定よりも魔力の減りが遅いというか、予測よりも効率がめちゃくちゃいいというか。サベイランスちゃんが結界がどうのって観測結果を弾き出していたが、それの影響か?)
サベイランスちゃんの上に表示された現行魔法に関する数値を見つつ、真剣な表情で考え耽ける。
その予想は正しく、これはシルフが展開する極光結界の影響である。あの結界の影響で、結界内における魔力効率が格段に上がっているのだ。
戦闘中にもかかわらずぶつぶつと思考を止めないカイルを捉え、ユーミスはキッと眉を吊り上げる。
(あのガキさえ殺せば……!)
「──フッ! はぁああああああああああっ!!」
走って、屈んで、壊して、跳んで、滑って、躱して。降り注ぐ弾丸の雨を奇跡的に回避しながら突き進むは、集中のあまり周りが見えなくなっている、カイルの元。
握り締めた拳を振りかぶり、その一撃でカイルの頭蓋を吹き飛ばそうとする。
だが、そうは問屋が卸さない。ユーミスの拳がカイルに届く寸前。バチバチと雷を纏う黒き聖剣が、空間を裂くかのごとく振り下ろされた。それはユーミスの腕を断たんとしたが、間一髪。ユーミスは亀のように腕を引っ込めて、なんとかその攻撃をも回避した。
「そうはさせない」
「クソが……ッッッ!! またテメェか、金髪ゥ!!」
今度はギロリとマクベスタを睨み、ユーミスは魔力弾を避けながら、トントントンッと軽やかに後退する。
そんな敵方の攻撃を警戒しつつ、マクベスタはカイルに小言を言い募った。
「援護する、と言っておきながら手間をかけさせるな。考え事をするならせめて安全を確保してからにしろ、カイル」
「あ、ああ。すまん、ちょっと集中しすぎた」
と軽く謝罪して、カイルも気を取り直す。
「つーか、話には聞いてたが……奇跡力って厄介過ぎないか? ずっと解析してるが、未だに何一つ解明出来てないんだけど」
「あくまでもオレ達は、奇跡力が効かないというだけで。奇跡力そのものの無効化や強制奪取などは到底不可能だからな」
「アイツ、かなり強いみたいだし。穢妖精戦とは違って決定打に欠けるんだよなぁ~~」
まさか俺達の奇跡串刺す虹の雫をここまで避けられるなんて! と、カイルは悔しさを感じながらも笑っていた。
失敗/敗北とはそれ即ち、更なる改良の余地を提示されたようなもの。切り札を切ったカイルだけは、試合の勝敗問わず全てが糧となるのだ。
まるで徒手空拳とは思えぬその連撃に、さしものマクベスタとて困惑を隠せない。
(細剣もかなりの実力だったが──この男の本来の得物は、拳のようだな。身のこなしも、攻撃毎の威力も、先程とは段違いだ)
だが、
(負けるつもりは毛頭ない)
とマクベスタは攻めに転じた。落雷での撹乱を止め、全身に雷を巡らせる。彼の体は雷と同化し、翼を用いるよりも更に速く行動する事が可能になった。
落雷と同等の速度で肉薄するマクベスタ。ユーミスの雁首目掛け、電気を撒き散らす純白の一閃を放つも、ユーミスは体を逸らして奇跡的に回避する。
しかし撒き散らされた電気はユーミスを襲い、彼の体に若干の麻痺を残す。
「よくぞ、今の攻撃を避けたな。敵ながら見事だ」
「そちらこそ……妖精じゃなきゃ避けれない技とか。容赦ってモンがねェな、人間」
一度距離を取り、二人は睨み合う。
だが程なくして正面衝突は再開し、彼等は激しい異種格闘を繰り広げていた。
その援護をするのは、神に愛されすぎた天才、カイル。お手製の魔導兵器サベイランスちゃんを起動し、彼はぶつぶつとパスコードを唱える。
「──よし。いくぜ、サベイランスちゃん」
創造者の言葉に従い、その魔導兵器は不可思議な旋律を紡ぐ。
《星間探索型魔導監視装置、仮想起動。魔導変換開始。事前指定、目次参照完了。魔力総括機構、全面起動。【妖精】の遺伝子解析、八十パーセント完了。特殊機能解放条件を満たしました。──特下術式、開帳。破壊対象を妖精に限定。無機物保護術式、並行起動。周囲に強力な結界を観測。……干渉不可。術式発動への影響を演算──問題無し。術式構成、全行程完了》
サベイランスちゃんの真上に展開された魔法陣はたったの二つ。何色にも見える鮮やかな魔法陣が交差するように重なり、くるくると回ったかと思えば──その、遥か上空。
視界に収まりきらない巨大な虹色の魔法陣が、時計の内部機構のように、大小織り交ぜ何重にも輝きだした。
「──は?」
絶句。魔法と縁遠い妖精でも、それが俗に言う魔法とは程遠い何かであることを、瞬時に理解した。
思わず攻撃の手が止んだユーミスと同様に、マクベスタもまた、ふと上空を見上げては開いた口が塞がらなくなる。
(……──あの男は、またとんでもない事を)
帝都の一角に避難した民達も、穢妖精と戦う兵士や騎士達も、城で事態の対応に追われる役人達も、女王近衛隊と対峙する者達も、誰もがその大魔術に呆気に取られた。
「サベイランスちゃん。撃て」
《標的、固定。攻撃準備、開始。三、二、一……──奇跡串刺す虹の雫、投下》
上空の魔法陣より溶け出すように射出される、魔力を固めた弾丸の雨。あまりの速さによるものか、残像が生まれ槍のようにも見える。
(なんだこれは……!? 人間ってのは奇跡力も無しにこんなめちゃくちゃな事が出来るのか?! だが、この程度であれば難なく避けられる。ほら見ろ、ほとんどの弾がそのまま地面に──)
ユーミスは安堵した。してしまった。
凄まじい速度で落下する無数の弾。それは地面を抉る直前で、方向を変える。四方八方あらゆる方向から、ただ一点を目指して飛んで行く。
「ッ嘘だろ……!? ──弾が、追いかけてきやがった……っ!?」
迫り来る殺意を認識した瞬間、彼は考えるよりも先に跳躍した。
ユーミスが先程まで立っていた場所では、飛来した魔力弾同士が衝突し、小規模な爆発が頻発する。少し離れた場所に着地してその光景を見たユーミスの頬に、つぅっと脂汗が滲む。
(ばーか。俺の作った魔法がその程度で終わるかよ。しっかり追尾機能も備えてるからな。精々、必死に逃げ惑え)
カイルの視線の先では、追尾する魔力弾から逃げ回るユーミスと、その背を追って残像の幾何学模様を描く魔力弾が熾烈な勝負を演じる。
(しかし……予定よりも魔力の減りが遅いというか、予測よりも効率がめちゃくちゃいいというか。サベイランスちゃんが結界がどうのって観測結果を弾き出していたが、それの影響か?)
サベイランスちゃんの上に表示された現行魔法に関する数値を見つつ、真剣な表情で考え耽ける。
その予想は正しく、これはシルフが展開する極光結界の影響である。あの結界の影響で、結界内における魔力効率が格段に上がっているのだ。
戦闘中にもかかわらずぶつぶつと思考を止めないカイルを捉え、ユーミスはキッと眉を吊り上げる。
(あのガキさえ殺せば……!)
「──フッ! はぁああああああああああっ!!」
走って、屈んで、壊して、跳んで、滑って、躱して。降り注ぐ弾丸の雨を奇跡的に回避しながら突き進むは、集中のあまり周りが見えなくなっている、カイルの元。
握り締めた拳を振りかぶり、その一撃でカイルの頭蓋を吹き飛ばそうとする。
だが、そうは問屋が卸さない。ユーミスの拳がカイルに届く寸前。バチバチと雷を纏う黒き聖剣が、空間を裂くかのごとく振り下ろされた。それはユーミスの腕を断たんとしたが、間一髪。ユーミスは亀のように腕を引っ込めて、なんとかその攻撃をも回避した。
「そうはさせない」
「クソが……ッッッ!! またテメェか、金髪ゥ!!」
今度はギロリとマクベスタを睨み、ユーミスは魔力弾を避けながら、トントントンッと軽やかに後退する。
そんな敵方の攻撃を警戒しつつ、マクベスタはカイルに小言を言い募った。
「援護する、と言っておきながら手間をかけさせるな。考え事をするならせめて安全を確保してからにしろ、カイル」
「あ、ああ。すまん、ちょっと集中しすぎた」
と軽く謝罪して、カイルも気を取り直す。
「つーか、話には聞いてたが……奇跡力って厄介過ぎないか? ずっと解析してるが、未だに何一つ解明出来てないんだけど」
「あくまでもオレ達は、奇跡力が効かないというだけで。奇跡力そのものの無効化や強制奪取などは到底不可能だからな」
「アイツ、かなり強いみたいだし。穢妖精戦とは違って決定打に欠けるんだよなぁ~~」
まさか俺達の奇跡串刺す虹の雫をここまで避けられるなんて! と、カイルは悔しさを感じながらも笑っていた。
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