649 / 790
第五章・帝国の王女
582.Main Story:Ameless
しおりを挟む
魔法少女のように変身した師匠の、鏖殺宣言の直後。四体の精霊が姿を消し、
「ぐぁあああああああああああッ!」
「あッ~~~~~~!?」
「ぎぃいッッッ?!」
「ピャァ、ッ──────」
妖精の群の各所から、血飛沫と断末魔が上がるようになった。それだけではない。業火や、雷撃や、氷河や、深淵といった、人の手には負えない超上的な自然現象が、次々と巻き起こる。
その光景、まさに地獄のよう。
「くっ……精霊が……!」
「今すぐ女王陛下をお守りしろ!! 星騎士が暴れ出しては我々も分が悪い!!」
「饗宴を荒らす邪魔者共め──!」
師匠達のあまりの猛攻に、妖精は統制を乱して逃げ惑う。中にはなんとか抵抗している妖精もいるのだが、師匠とフリザセアさんの連携には歯が立たず、あっという間に命を散らしていた。
だが、依然として妖精の数は多い。そして妖精の中には、
「女王陛下はあの人間の眼球をご所望だ」
「献上しよう。献上しなければ」
「精霊なんてどうでもいい。大事なのは女王様の望みを叶える事だけだ!」
妖精女王がそう望んだから、私の目を採取しようとする者達もいて。精霊さん達だけに戦闘を任せ、ハイ終了とはいかなさそうだ。
「……戦わないと」
白夜を佩いてからアマテラスを喚び、構える。この剣の能力がどれ程、妖精の奇跡を上回れるか定かではないが……やるしかない。
守られてばかりでは駄目だ。自分の身くらい、自分で守る!
「──おいおい親友。一人で戦おうとするなよ。寂しいじゃねぇか」
「そうだぞアミレス。なんの為にオレ達が共にいると思っているんだ」
「カイル? マクベスタも……」
アンヘルを抱えているカイルと、堕天族らしく翼と光輪を携えるマクベスタが、一歩前に踏み出して横に並ぶ。
すると、
「退け、カイル・ディ・ハミル。邪魔だ」
「姫君からの心象回復の為、ここは一つ頑張りましょうか」
「妖精かぁ……私に倒せるかなぁ」
自称天使その二とその三、フリードルとミカリアに続き、リードさんも前に出た。
「もう疲れたんだけど……」
「嘘をつくな。オマエがこんなにも早く疲れる訳がない」
「バレたか」
「息一つ切らさずに、よく言うな」
ユーキとセインカラッドが小突き合う傍らで、
「頑張ろうね、兄ちゃん」
「うん。俺達も、俺達に出来る限りのことをしよう」
打って変わって、サラとアルベルトが拳をこつんと合わせていた。
「イリオーデ。俺に、何か出来ることはあるだろうか」
「……空気中に毒を蔓延させる、とか」
「それは普通に俺達も危険だと思うぞ」
「言葉が足りなかったな。妖精にとって毒であるものを撒き散らせばいいのでは、と私は言いたかったのだ」
「なるほど。それはいい作戦だ」
シャルとイリオーデが、何やらバイオテロに手を染めようとしている。が、人間に害が出ないのなら……まあ、いいか。非常時だし。と極悪非道な考えのもと、スルーする。
「あのっ! 治癒とか、それぐらいしか出来ないけど……あたしも、一緒に戦う……ます!!」
「……ミシェルがこう言ってるから。おれも、ミシェルを守るために、戦う」
「ミシェルちゃん、ロイ……っ、ありがとう。一緒に頑張ろうね」
「はっ、はい!」
「フン」
彼女自身もかなり疲労の色が見えているというのに。それでもミシェルちゃんは立ち上がってくれた。
……『彼女』は、私が愛した本物のミシェルちゃんではないけれど。元々、ミシェルちゃんになっても問題ないぐらい、優しくて責任感のある女の子だったようだ。
「──もしもの時はオレサマだって介入してやる。だから好きなだけ暴れて来い、アミレス」
「わっ!」
ニヤリと笑うシュヴァルツの大きな手が、頭の上に置かれる。ごつごつとした指が引っ付くように頭部を這い、ヘアセットなどお構い無しでぐしゃぐしゃと頭を撫で回された。
髪を結っていたので、頭のぐしゃぐしゃっぷりは想像に難くない。
でも、不思議と嫌な気分ではない。──これが彼なりの激励であると、その手から伝わってきたから。
「任せて。思いっきりぶちかましてくるわ!」
親指を立て、王女らしさなど欠片もない、無骨な笑顔と仕草で宣言する。
するとシュヴァルツは目を丸くして、
「……本当に、お前さんはどこまでも…………」
僅かに唇を動かしたかと思えば、
「──このオレサマが、お前達の戦いを見届けてやる。どうか楽しませてくれよ?」
パッと不敵な笑みを浮かべ、そう言い残しては姿を消した。きっと、戦闘中邪魔にならないようにと気を配ってくれたのだろう。
未だ意識不明の約一名を除いた攻略対象全員と、ヒロイン、悪役王女、特定ルートのラスボス、攻略対象のモブ同然な身内勢。
この場には、リアルイベントや特典ドラマCDでも中々見ない顔ぶれが揃い踏みだ。
ならばきっと、強大な敵にだって勝てるだろう。
「……──よくも、皆を巻き込んでくれたわね」
諸悪の根源──妖精女王を睨み、大きく息を吸って、押し殺して来た感情を全て込めて叫ぶ。
「『私』のものに手を出したこと、絶対に後悔させてやる!!!!」
こうして、戦いの火蓋は切って落とされた。
「ぐぁあああああああああああッ!」
「あッ~~~~~~!?」
「ぎぃいッッッ?!」
「ピャァ、ッ──────」
妖精の群の各所から、血飛沫と断末魔が上がるようになった。それだけではない。業火や、雷撃や、氷河や、深淵といった、人の手には負えない超上的な自然現象が、次々と巻き起こる。
その光景、まさに地獄のよう。
「くっ……精霊が……!」
「今すぐ女王陛下をお守りしろ!! 星騎士が暴れ出しては我々も分が悪い!!」
「饗宴を荒らす邪魔者共め──!」
師匠達のあまりの猛攻に、妖精は統制を乱して逃げ惑う。中にはなんとか抵抗している妖精もいるのだが、師匠とフリザセアさんの連携には歯が立たず、あっという間に命を散らしていた。
だが、依然として妖精の数は多い。そして妖精の中には、
「女王陛下はあの人間の眼球をご所望だ」
「献上しよう。献上しなければ」
「精霊なんてどうでもいい。大事なのは女王様の望みを叶える事だけだ!」
妖精女王がそう望んだから、私の目を採取しようとする者達もいて。精霊さん達だけに戦闘を任せ、ハイ終了とはいかなさそうだ。
「……戦わないと」
白夜を佩いてからアマテラスを喚び、構える。この剣の能力がどれ程、妖精の奇跡を上回れるか定かではないが……やるしかない。
守られてばかりでは駄目だ。自分の身くらい、自分で守る!
「──おいおい親友。一人で戦おうとするなよ。寂しいじゃねぇか」
「そうだぞアミレス。なんの為にオレ達が共にいると思っているんだ」
「カイル? マクベスタも……」
アンヘルを抱えているカイルと、堕天族らしく翼と光輪を携えるマクベスタが、一歩前に踏み出して横に並ぶ。
すると、
「退け、カイル・ディ・ハミル。邪魔だ」
「姫君からの心象回復の為、ここは一つ頑張りましょうか」
「妖精かぁ……私に倒せるかなぁ」
自称天使その二とその三、フリードルとミカリアに続き、リードさんも前に出た。
「もう疲れたんだけど……」
「嘘をつくな。オマエがこんなにも早く疲れる訳がない」
「バレたか」
「息一つ切らさずに、よく言うな」
ユーキとセインカラッドが小突き合う傍らで、
「頑張ろうね、兄ちゃん」
「うん。俺達も、俺達に出来る限りのことをしよう」
打って変わって、サラとアルベルトが拳をこつんと合わせていた。
「イリオーデ。俺に、何か出来ることはあるだろうか」
「……空気中に毒を蔓延させる、とか」
「それは普通に俺達も危険だと思うぞ」
「言葉が足りなかったな。妖精にとって毒であるものを撒き散らせばいいのでは、と私は言いたかったのだ」
「なるほど。それはいい作戦だ」
シャルとイリオーデが、何やらバイオテロに手を染めようとしている。が、人間に害が出ないのなら……まあ、いいか。非常時だし。と極悪非道な考えのもと、スルーする。
「あのっ! 治癒とか、それぐらいしか出来ないけど……あたしも、一緒に戦う……ます!!」
「……ミシェルがこう言ってるから。おれも、ミシェルを守るために、戦う」
「ミシェルちゃん、ロイ……っ、ありがとう。一緒に頑張ろうね」
「はっ、はい!」
「フン」
彼女自身もかなり疲労の色が見えているというのに。それでもミシェルちゃんは立ち上がってくれた。
……『彼女』は、私が愛した本物のミシェルちゃんではないけれど。元々、ミシェルちゃんになっても問題ないぐらい、優しくて責任感のある女の子だったようだ。
「──もしもの時はオレサマだって介入してやる。だから好きなだけ暴れて来い、アミレス」
「わっ!」
ニヤリと笑うシュヴァルツの大きな手が、頭の上に置かれる。ごつごつとした指が引っ付くように頭部を這い、ヘアセットなどお構い無しでぐしゃぐしゃと頭を撫で回された。
髪を結っていたので、頭のぐしゃぐしゃっぷりは想像に難くない。
でも、不思議と嫌な気分ではない。──これが彼なりの激励であると、その手から伝わってきたから。
「任せて。思いっきりぶちかましてくるわ!」
親指を立て、王女らしさなど欠片もない、無骨な笑顔と仕草で宣言する。
するとシュヴァルツは目を丸くして、
「……本当に、お前さんはどこまでも…………」
僅かに唇を動かしたかと思えば、
「──このオレサマが、お前達の戦いを見届けてやる。どうか楽しませてくれよ?」
パッと不敵な笑みを浮かべ、そう言い残しては姿を消した。きっと、戦闘中邪魔にならないようにと気を配ってくれたのだろう。
未だ意識不明の約一名を除いた攻略対象全員と、ヒロイン、悪役王女、特定ルートのラスボス、攻略対象のモブ同然な身内勢。
この場には、リアルイベントや特典ドラマCDでも中々見ない顔ぶれが揃い踏みだ。
ならばきっと、強大な敵にだって勝てるだろう。
「……──よくも、皆を巻き込んでくれたわね」
諸悪の根源──妖精女王を睨み、大きく息を吸って、押し殺して来た感情を全て込めて叫ぶ。
「『私』のものに手を出したこと、絶対に後悔させてやる!!!!」
こうして、戦いの火蓋は切って落とされた。
4
お気に入りに追加
649
あなたにおすすめの小説

転生したら乙女ゲームの主人公の友達になったんですが、なぜか私がモテてるんですが?
rita
恋愛
田舎に住むごく普通のアラサー社畜の私は車で帰宅中に、
飛び出してきた猫かたぬきを避けようとしてトラックにぶつかりお陀仏したらしく、
気付くと、最近ハマっていた乙女ゲームの世界の『主人公の友達』に転生していたんだけど、
まぁ、友達でも二次元女子高生になれたし、
推しキャラやイケメンキャラやイケオジも見れるし!楽しく過ごそう!と、
思ってたらなぜか主人公を押し退け、
攻略対象キャラからモテまくる事態に・・・・
ちょ、え、これどうしたらいいの!!!嬉しいけど!!!
逃げて、追われて、捕まって
あみにあ
恋愛
平民に生まれた私には、なぜか生まれる前の記憶があった。
この世界で王妃として生きてきた記憶。
過去の私は貴族社会の頂点に立ち、さながら悪役令嬢のような存在だった。
人を蹴落とし、気に食わない女を断罪し、今思えばひどい令嬢だったと思うわ。
だから今度は平民としての幸せをつかみたい、そう願っていたはずなのに、一体全体どうしてこんな事になってしまたのかしら……。
2020年1月5日より 番外編:続編随時アップ
2020年1月28日より 続編となります第二章スタートです。
**********お知らせ***********
2020年 1月末 レジーナブックス 様より書籍化します。
それに伴い短編で掲載している以外の話をレンタルと致します。
ご理解ご了承の程、宜しくお願い致します。

困りました。縦ロールにさよならしたら、逆ハーになりそうです。《改訂版》
新 星緒
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢アニエス(悪質ストーカー)に転生したと気づいたけれど、心配ないよね。だってフラグ折りまくってハピエンが定番だもの。
趣味の悪い縦ロールはやめて性格改善して、ストーカーしなければ楽勝楽勝!
……って、あれ?
楽勝ではあるけれど、なんだか思っていたのとは違うような。
想定外の逆ハーレムを解消するため、イケメンモブの大公令息リュシアンと協力関係を結んでみた。だけどリュシアンは、「惚れた」と言ったり「からかっただけ」と言ったり、意地悪ばかり。嫌なヤツ!
でも実はリュシアンは訳ありらしく……

悪役令嬢に転生したら溺愛された。(なぜだろうか)
どくりんご
恋愛
公爵令嬢ソフィア・スイートには前世の記憶がある。
ある日この世界が乙女ゲームの世界ということに気づく。しかも自分が悪役令嬢!?
悪役令嬢みたいな結末は嫌だ……って、え!?
王子様は何故か溺愛!?なんかのバグ!?恥ずかしい台詞をペラペラと言うのはやめてください!推しにそんなことを言われると照れちゃいます!
でも、シナリオは変えられるみたいだから王子様と幸せになります!
強い悪役令嬢がさらに強い王子様や家族に溺愛されるお話。
HOT1/10 1位ありがとうございます!(*´∇`*)
恋愛24h1/10 4位ありがとうございます!(*´∇`*)
「殿下、人違いです」どうぞヒロインのところへ行って下さい
みおな
恋愛
私が転生したのは、乙女ゲームを元にした人気のライトノベルの世界でした。
しかも、定番の悪役令嬢。
いえ、別にざまあされるヒロインにはなりたくないですし、婚約者のいる相手にすり寄るビッチなヒロインにもなりたくないです。
ですから婚約者の王子様。
私はいつでも婚約破棄を受け入れますので、どうぞヒロインのところに行って下さい。

さようなら、わたくしの騎士様
夜桜
恋愛
騎士様からの突然の『さようなら』(婚約破棄)に辺境伯令嬢クリスは微笑んだ。
その時を待っていたのだ。
クリスは知っていた。
騎士ローウェルは裏切ると。
だから逆に『さようなら』を言い渡した。倍返しで。

3年前にも召喚された聖女ですが、仕事を終えたので早く帰らせてもらえますか?
せいめ
恋愛
女子大生の莉奈は、高校生だった頃に異世界に聖女として召喚されたことがある。
大量に発生した魔物の討伐と、国に強力な結界を張った後、聖女の仕事を無事に終えた莉奈。
親しくなった仲間達に引き留められて、別れは辛かったが、元の世界でやりたい事があるからと日本に戻ってきた。
「だって私は、受験の為に今まで頑張ってきたの。いい大学に入って、そこそこの企業に就職するのが夢だったんだから。治安が良くて、美味しい物が沢山ある日本の方が最高よ。」
その後、無事に大学生になった莉奈はまた召喚されてしまう。
召喚されたのは、高校生の時に召喚された異世界の国と同じであった。しかし、あの時から3年しか経ってないはずなのに、こっちの世界では150年も経っていた。
「聖女も2回目だから、さっさと仕事を終わらせて、早く帰らないとね!」
今回は無事に帰れるのか…?
ご都合主義です。
誤字脱字お許しください。
皇帝の番~2度目の人生謳歌します!~
saku
恋愛
竜人族が治める国で、生まれたルミエールは前世の記憶を持っていた。
前世では、一国の姫として生まれた。両親に愛されずに育った。
国が戦で負けた後、敵だった竜人に自分の番だと言われ。遠く離れたこの国へと連れてこられ、婚約したのだ……。
自分に優しく接してくれる婚約者を、直ぐに大好きになった。その婚約者は、竜人族が治めている帝国の皇帝だった。
幸せな日々が続くと思っていたある日、婚約者である皇帝と一人の令嬢との密会を噂で知ってしまい、裏切られた悲しさでどんどんと痩せ細り死んでしまった……。
自分が死んでしまった後、婚約者である皇帝は何十年もの間深い眠りについていると知った。
前世の記憶を持っているルミエールが、皇帝が眠っている王都に足を踏み入れた時、止まっていた歯車が動き出す……。
※小説家になろう様でも公開しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる