だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜

十和とわ

文字の大きさ
上 下
649 / 790
第五章・帝国の王女

582.Main Story:Ameless

しおりを挟む
 魔法少女のように変身した師匠の、鏖殺宣言の直後。四体の精霊が姿を消し、

「ぐぁあああああああああああッ!」
「あッ~~~~~~!?」
「ぎぃいッッッ?!」
「ピャァ、ッ──────」

 妖精の群の各所から、血飛沫と断末魔が上がるようになった。それだけではない。業火や、雷撃や、氷河や、深淵といった、人の手には負えない超上的な自然現象が、次々と巻き起こる。
 その光景、まさに地獄のよう。

「くっ……精霊が……!」
「今すぐ女王陛下をお守りしろ!! 星騎士せいきしが暴れ出しては我々も分が悪い!!」
「饗宴を荒らす邪魔者共め──!」

 師匠達のあまりの猛攻に、妖精は統制を乱して逃げ惑う。中にはなんとか抵抗している妖精もいるのだが、師匠とフリザセアさんの連携には歯が立たず、あっという間に命を散らしていた。
 だが、依然として妖精の数は多い。そして妖精の中には、

「女王陛下はあの人間の眼球をご所望だ」
「献上しよう。献上しなければ」
「精霊なんてどうでもいい。大事なのは女王様の望みを叶える事だけだ!」

 妖精女王がそう望んだから、私の目を採取しようとする者達もいて。精霊さん達だけに戦闘を任せ、ハイ終了とはいかなさそうだ。

「……戦わないと」

 白夜を佩いてからアマテラスを喚び、構える。この剣の能力がどれ程、妖精の奇跡を上回れるか定かではないが……やるしかない。
 守られてばかりでは駄目だ。自分の身くらい、自分で守る!

「──おいおい親友。一人で戦おうとするなよ。寂しいじゃねぇか」
「そうだぞアミレス。なんの為にオレ達が共にいると思っているんだ」
「カイル? マクベスタも……」

 アンヘルを抱えているカイルと、堕天族ルシフェルらしく翼と光輪を携えるマクベスタが、一歩前に踏み出して横に並ぶ。
 すると、

「退け、カイル・ディ・ハミル。邪魔だ」
「姫君からの心象回復の為、ここは一つ頑張りましょうか」
「妖精かぁ……私に倒せるかなぁ」

 自称天使その二とその三、フリードルとミカリアに続き、リードさんも前に出た。

「もう疲れたんだけど……」
「嘘をつくな。オマエがこんなにも早く疲れる訳がない」
「バレたか」
「息一つ切らさずに、よく言うな」

 ユーキとセインカラッドが小突き合う傍らで、

「頑張ろうね、兄ちゃん」
「うん。俺達も、俺達に出来る限りのことをしよう」

 打って変わって、サラとアルベルトが拳をこつんと合わせていた。

「イリオーデ。俺に、何か出来ることはあるだろうか」
「……空気中に毒を蔓延させる、とか」
「それは普通に俺達も危険だと思うぞ」
「言葉が足りなかったな。妖精にとって毒であるものを撒き散らせばいいのでは、と私は言いたかったのだ」
「なるほど。それはいい作戦だ」

 シャルとイリオーデが、何やらバイオテロに手を染めようとしている。が、人間に害が出ないのなら……まあ、いいか。非常時だし。と極悪非道な考えのもと、スルーする。

「あのっ! 治癒とか、それぐらいしか出来ないけど……あたしも、一緒に戦う……ます!!」
「……ミシェルがこう言ってるから。おれも、ミシェルを守るために、戦う」
「ミシェルちゃん、ロイ……っ、ありがとう。一緒に頑張ろうね」
「はっ、はい!」
「フン」

 彼女自身もかなり疲労の色が見えているというのに。それでもミシェルちゃんは立ち上がってくれた。
 ……『彼女』は、私が愛した本物のミシェルちゃんではないけれど。元々、ミシェルちゃん乙女ゲーのヒロインになっても問題ないぐらい、優しくて責任感のある女の子だったようだ。

「──もしもの時はオレサマだって介入してやる。だから好きなだけ暴れて来い、アミレス」
「わっ!」

 ニヤリと笑うシュヴァルツの大きな手が、頭の上に置かれる。ごつごつとした指が引っ付くように頭部を這い、ヘアセットなどお構い無しでぐしゃぐしゃと頭を撫で回された。
 髪を結っていたので、頭のぐしゃぐしゃっぷりは想像に難くない。
 でも、不思議と嫌な気分ではない。──これが彼なりの激励であると、その手から伝わってきたから。

「任せて。思いっきりぶちかましてくるわ!」

 親指を立て、王女らしさなど欠片もない、無骨な笑顔と仕草で宣言する。
 するとシュヴァルツは目を丸くして、

「……本当に、お前さんはどこまでも…………」

 僅かに唇を動かしたかと思えば、

「──このオレサマが、お前達の戦いを見届けてやる。どうか楽しませてくれよ?」

 パッと不敵な笑みを浮かべ、そう言い残しては姿を消した。きっと、戦闘中邪魔にならないようにと気を配ってくれたのだろう。


 未だ意識不明の約一名を除いた攻略対象全員と、ヒロイン、悪役王女、特定ルートのラスボス、攻略対象のモブ同然な身内勢。
 この場には、リアルイベントや特典ドラマCDでも中々見ない顔ぶれが揃い踏みだ。
 ならばきっと、強大な敵にだって勝てるだろう。

「……──よくも、皆を巻き込んでくれたわね」

 諸悪の根源──妖精女王を睨み、大きく息を吸って、押し殺して来た感情を全て込めて叫ぶ。

「『私』のものに手を出したこと、絶対に後悔させてやる!!!!」

 こうして、戦いの火蓋は切って落とされた。
しおりを挟む
感想 93

あなたにおすすめの小説

困りました。縦ロールにさよならしたら、逆ハーになりそうです。《改訂版》

新 星緒
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢アニエス(悪質ストーカー)に転生したと気づいたけれど、心配ないよね。だってフラグ折りまくってハピエンが定番だもの。 趣味の悪い縦ロールはやめて性格改善して、ストーカーしなければ楽勝楽勝! ……って、あれ? 楽勝ではあるけれど、なんだか思っていたのとは違うような。 想定外の逆ハーレムを解消するため、イケメンモブの大公令息リュシアンと協力関係を結んでみた。だけどリュシアンは、「惚れた」と言ったり「からかっただけ」と言ったり、意地悪ばかり。嫌なヤツ! でも実はリュシアンは訳ありらしく……

婚約したら幼馴染から絶縁状が届きました。

黒蜜きな粉
恋愛
婚約が決まった翌日、登校してくると机の上に一通の手紙が置いてあった。 差出人は幼馴染。 手紙には絶縁状と書かれている。 手紙の内容は、婚約することを発表するまで自分に黙っていたから傷ついたというもの。 いや、幼馴染だからって何でもかんでも報告しませんよ。 そもそも幼馴染は親友って、そんなことはないと思うのだけど……? そのうち機嫌を直すだろうと思っていたら、嫌がらせがはじまってしまった。 しかも、婚約者や周囲の友人たちまで巻き込むから大変。 どうやら私の評判を落として婚約を破談にさせたいらしい。

異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?

すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。 一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。 「俺とデートしない?」 「僕と一緒にいようよ。」 「俺だけがお前を守れる。」 (なんでそんなことを私にばっかり言うの!?) そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。 「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」 「・・・・へ!?」 『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!? ※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。 ※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。 ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。

異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜

恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。 右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。 そんな乙女ゲームのようなお話。

転生したら乙女ゲームの主人公の友達になったんですが、なぜか私がモテてるんですが?

rita
恋愛
田舎に住むごく普通のアラサー社畜の私は車で帰宅中に、 飛び出してきた猫かたぬきを避けようとしてトラックにぶつかりお陀仏したらしく、 気付くと、最近ハマっていた乙女ゲームの世界の『主人公の友達』に転生していたんだけど、 まぁ、友達でも二次元女子高生になれたし、 推しキャラやイケメンキャラやイケオジも見れるし!楽しく過ごそう!と、 思ってたらなぜか主人公を押し退け、 攻略対象キャラからモテまくる事態に・・・・ ちょ、え、これどうしたらいいの!!!嬉しいけど!!!

逃げて、追われて、捕まって

あみにあ
恋愛
平民に生まれた私には、なぜか生まれる前の記憶があった。 この世界で王妃として生きてきた記憶。 過去の私は貴族社会の頂点に立ち、さながら悪役令嬢のような存在だった。 人を蹴落とし、気に食わない女を断罪し、今思えばひどい令嬢だったと思うわ。 だから今度は平民としての幸せをつかみたい、そう願っていたはずなのに、一体全体どうしてこんな事になってしまたのかしら……。 2020年1月5日より 番外編:続編随時アップ 2020年1月28日より 続編となります第二章スタートです。 **********お知らせ*********** 2020年 1月末 レジーナブックス 様より書籍化します。 それに伴い短編で掲載している以外の話をレンタルと致します。 ご理解ご了承の程、宜しくお願い致します。

美幼女に転生したら地獄のような逆ハーレム状態になりました

市森 唯
恋愛
極々普通の学生だった私は……目が覚めたら美幼女になっていました。 私は侯爵令嬢らしく多分異世界転生してるし、そして何故か婚約者が2人?! しかも婚約者達との関係も最悪で…… まぁ転生しちゃったのでなんとか上手く生きていけるよう頑張ります!

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~

恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん) は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。 しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!? (もしかして、私、転生してる!!?) そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!! そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

処理中です...