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第五章・帝国の王女
563,5.Interlude Story:Elemental
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一方のその頃、妖精殲滅隊は──……。
「ん~~っ! 久々だわー。こんなに暴れられるの」
赤い三つ編みを揺らしてぐぐぐっと背を伸ばし、気の抜けた声を漏らすのは火の最上位精霊エンヴィー。彼は東部地区にて作り上げた、穢妖精の骸の山頂で、スッキリとした表情になっていた。
(女王近衛隊の奴等が出張ってくると思ってたんだが……今のところ、雑魚しか出てこねーな。他も同じ状況みてーだし……なんつーか──嵐の前の静けさって感じがするな)
鎌首をもたげるような敵の指揮。これがどうにも、武人たるエンヴィーは引っ掛るらしい。
権能の使用に関しては、今のところ問題無い。精霊王によって展開された極光結界によって、常時吸収→エネルギー変換→魔力原子として宙の星雲に放出され──極限まで、人間界に被害が出ないようになっている。
その為、大船に乗ったつもりの最上位精霊達は、ここぞとばかりに権能を使っているようだ。
「……──ま、何が来ようが関係ねぇ。俺は姫さんの為に妖精共を鏖殺するだけだ。おしっ、やるぞー!」
骸の山から飛び降りエンヴィーは鋭く笑う。その視線の先には、燃え盛る圧に逃げ惑う穢妖精がいた……。
♢♢
「──うわぁあああああああああっ!?」
「ひ、ひぃ! 化け物……!!」
「荷台が────ッ!」
商人が集まる南部地区にて。穢妖精の襲撃に遭う国民達の元に、ヒーローのごとく最上位精霊が駆けつける。
「どーん」
可愛らしい声は、おままごとに興じる少女のよう。いやまさに、彼女にとっては全てが児戯なのだ。
醜く憐れな生き物の海に飛び込んでは、その命を純白の一閃で刈り取る。周囲の人間達の髪が無様な様相になる程に、強力な静電気が一帯に浸透した。
「な、何が起きたんだ……」
「化け物が全部死んでる?!」
「見ろ! あれは──、女の、こ?」
金髪の幼女の登場に困惑する大人達。見た目は明らかに、どこかの貴族令嬢のようなのだが……その手に持つ武器と、穢妖精を一網打尽にした事実が、彼等の判断を鈍らせる。
「おしごとがんばるぞー」
雷の最上位精霊エレノラは、雷召の大槌“トール”を掲げ、ふわふわとした気合いを入れる。
……その後の光景を見た者は、口を揃えてこう言う。──あれって夢じゃなかったの? と。
♢♢
(…………怯えて、いるな)
ガシャン、ガシャン、と甲冑を鳴らして歩く、闇の最上位精霊ゲランディオール。彼は、周囲の人間達の反応に密かに傷ついていた。
北部地区の人間達は、穢妖精から己を救った彼に感謝を抱くと同時に、その不気味な様相に恐怖している。──それもその筈。何故なら彼は、漆黒の甲冑で全身を包み、大きな大剣を手に、無言で穢妖精を処刑し続けているのだから。
そりゃあ、ゲランディオールが精霊であると知らない者達からすれば、『魔族?!』『なんなのあれ!』と怯えるのも無理はない。
(……カラリアーノのお墨付きなのだがな、この鎧は…………)
しゅん、としながら漆黒の甲冑を見下ろす。
個人的にはかなり格好良いと思っていた甲冑が人間達には不評だと分かり、ゲランディオールはがくりと項垂れた。
♢♢
「あれは、姫じゃないか」
氷のティーカップを片手に、氷のテーブルセットで優雅に紅茶を嗜む、氷の最上位精霊フリザセア。
西部地区担当となった彼は、西部地区と中央通りの境界付近で戦うアミレス・ヘル・フォーロイト一行に気づくやいなや、紅茶を啜りつつ呑気に観戦に向かった。
(叶うなら、姫の元に行き手伝ってやりたいところなのだが……また、姫関連で勝手な行動に出た場合、陛下に半殺しにされかねない)
はぁ。と白いため息を零しながらも、妖精殲滅などそっちのけで、フリザセアはアミレスの活躍を眺める。
っと、その時だった。彼の背後に複数の影が忍び寄る。
「……──名の通り、穢らわしいな」
たった一言。振り向きざまにフリザセアがそう呟き、早々に踵を返した途端。
穢妖精は凍土に呑まれ、即死した。だがフリザセアの興味はそこになく、彼は既に新たなティーカップを作り上げ、自前の紅茶を注いでいる。
(頑張りたまえ、姫。もしもの時は、おじいちゃんも助けに入るからな。応援しているぞ)
その様子、まさに授業参観。紅茶を味わいながら微笑む、青銀の長髪の美丈夫──その姿はまさに芸術のようだったと、目撃者は語ったとか、語ってないとか……。
「ん~~っ! 久々だわー。こんなに暴れられるの」
赤い三つ編みを揺らしてぐぐぐっと背を伸ばし、気の抜けた声を漏らすのは火の最上位精霊エンヴィー。彼は東部地区にて作り上げた、穢妖精の骸の山頂で、スッキリとした表情になっていた。
(女王近衛隊の奴等が出張ってくると思ってたんだが……今のところ、雑魚しか出てこねーな。他も同じ状況みてーだし……なんつーか──嵐の前の静けさって感じがするな)
鎌首をもたげるような敵の指揮。これがどうにも、武人たるエンヴィーは引っ掛るらしい。
権能の使用に関しては、今のところ問題無い。精霊王によって展開された極光結界によって、常時吸収→エネルギー変換→魔力原子として宙の星雲に放出され──極限まで、人間界に被害が出ないようになっている。
その為、大船に乗ったつもりの最上位精霊達は、ここぞとばかりに権能を使っているようだ。
「……──ま、何が来ようが関係ねぇ。俺は姫さんの為に妖精共を鏖殺するだけだ。おしっ、やるぞー!」
骸の山から飛び降りエンヴィーは鋭く笑う。その視線の先には、燃え盛る圧に逃げ惑う穢妖精がいた……。
♢♢
「──うわぁあああああああああっ!?」
「ひ、ひぃ! 化け物……!!」
「荷台が────ッ!」
商人が集まる南部地区にて。穢妖精の襲撃に遭う国民達の元に、ヒーローのごとく最上位精霊が駆けつける。
「どーん」
可愛らしい声は、おままごとに興じる少女のよう。いやまさに、彼女にとっては全てが児戯なのだ。
醜く憐れな生き物の海に飛び込んでは、その命を純白の一閃で刈り取る。周囲の人間達の髪が無様な様相になる程に、強力な静電気が一帯に浸透した。
「な、何が起きたんだ……」
「化け物が全部死んでる?!」
「見ろ! あれは──、女の、こ?」
金髪の幼女の登場に困惑する大人達。見た目は明らかに、どこかの貴族令嬢のようなのだが……その手に持つ武器と、穢妖精を一網打尽にした事実が、彼等の判断を鈍らせる。
「おしごとがんばるぞー」
雷の最上位精霊エレノラは、雷召の大槌“トール”を掲げ、ふわふわとした気合いを入れる。
……その後の光景を見た者は、口を揃えてこう言う。──あれって夢じゃなかったの? と。
♢♢
(…………怯えて、いるな)
ガシャン、ガシャン、と甲冑を鳴らして歩く、闇の最上位精霊ゲランディオール。彼は、周囲の人間達の反応に密かに傷ついていた。
北部地区の人間達は、穢妖精から己を救った彼に感謝を抱くと同時に、その不気味な様相に恐怖している。──それもその筈。何故なら彼は、漆黒の甲冑で全身を包み、大きな大剣を手に、無言で穢妖精を処刑し続けているのだから。
そりゃあ、ゲランディオールが精霊であると知らない者達からすれば、『魔族?!』『なんなのあれ!』と怯えるのも無理はない。
(……カラリアーノのお墨付きなのだがな、この鎧は…………)
しゅん、としながら漆黒の甲冑を見下ろす。
個人的にはかなり格好良いと思っていた甲冑が人間達には不評だと分かり、ゲランディオールはがくりと項垂れた。
♢♢
「あれは、姫じゃないか」
氷のティーカップを片手に、氷のテーブルセットで優雅に紅茶を嗜む、氷の最上位精霊フリザセア。
西部地区担当となった彼は、西部地区と中央通りの境界付近で戦うアミレス・ヘル・フォーロイト一行に気づくやいなや、紅茶を啜りつつ呑気に観戦に向かった。
(叶うなら、姫の元に行き手伝ってやりたいところなのだが……また、姫関連で勝手な行動に出た場合、陛下に半殺しにされかねない)
はぁ。と白いため息を零しながらも、妖精殲滅などそっちのけで、フリザセアはアミレスの活躍を眺める。
っと、その時だった。彼の背後に複数の影が忍び寄る。
「……──名の通り、穢らわしいな」
たった一言。振り向きざまにフリザセアがそう呟き、早々に踵を返した途端。
穢妖精は凍土に呑まれ、即死した。だがフリザセアの興味はそこになく、彼は既に新たなティーカップを作り上げ、自前の紅茶を注いでいる。
(頑張りたまえ、姫。もしもの時は、おじいちゃんも助けに入るからな。応援しているぞ)
その様子、まさに授業参観。紅茶を味わいながら微笑む、青銀の長髪の美丈夫──その姿はまさに芸術のようだったと、目撃者は語ったとか、語ってないとか……。
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