だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜

十和とわ

文字の大きさ
上 下
602 / 790
第五章・帝国の王女

541.Side Story:Others

しおりを挟む
 奇跡力とは、とどのつまり──……言った・・・もん勝ち・・・・なのだ。

 そして今、たった一人の少女の願いの為、全人類の人格、魂、記憶──それを包含する精神に対しての極悪な後出しジャンケンが行われている。たとえ後出しジャンケンの能力が無くなろうが、彼女が一度、そのジャンケンに勝利した事実は変わらない。
 そのジャンケンが行われたという事象をそもそも無かった事にするしか、奇跡力の無効化は不可能なのである。

「──だから、本人を殺すしか道はない。奇跡力の欠点とは、行使者の死と同時にそれが消失する事であろう。行使者の死と同時に奇跡力が失われる為、その時点で因果が逆転し、過去に・・・おいても・・・・その・・奇跡力・・・が無か・・・った・・事になる・・・・。そうじゃったな、シルフ?」
「ああそうだ。それが、妖精共に課せられた制約の一つだからな。何せ運命や理にすら干渉し得る力だ、なんの代償もなく使わせる訳にはいかないだろ? だからアイツ等は何よりも死ぬ事を恐れる。死んだら──……全てが、無かった事になるから」

 ナトラから話を振られ、シルフはニヒルに笑った。
 神々によって無理矢理結ばされた忌々しき制約ではあるが、まさかこのような形で役に立つ日が来ようとは。
 しかし、根本的な解決策は未だ見当たらず。寧ろシャルルギルとフリザセアの証言から、アミレスとミシェルが知り合いなのでは──……という最悪な説が浮上し、アミレスの性格を鑑みてミシェルの殺害はやめた方がよいと、手段が更に削られた程。
 もはやどうする事も出来ないかもしれない。ここで詰みか。──と諦めムードが僅かに漂った時。ここでローズニカがおずおずと手を挙げ、酷い顔色のまま口を開く。

「……ひとつ、いいですか」
「なんだ、言ってみろ」
「その……お兄様が妖精に攫われた理由が、分かるかも、しれないです」
「レオナードが攫われた理由?」

 こくりと頷き、ローズニカは続ける。

「皆さんのお話を聞いてて、ふと、思いました。妖精は、例の女性を利用して何かを企んでいて……それを、どうしても邪魔される訳にはいかないんじゃないかなって」
「どうしてそう思ったんだ」
「これしか、納得がいかなくて。妖精は例の女性の殺害を防ぐ事は出来ても、たぶん、音だけは・・・・防ぎようがないと判断したから、お兄様を攫ったんだと思います」

 そこまで聞いて、シルフ含め誰もが顔を顰めるなか、モルスだけは何かを察したのか、はっとなり、「まさか……」と呟きながら汗をぶわっと滲ませた。

「お兄様の言葉は、人も動物も、意思疎通が不可能な魔物にさえも通用してしまう、奇跡の音そのもの。耳を塞ごうが、耳を失おうが、お兄様の言葉は相手に絶対に届きます」

 まるで見た事があるかのように断言するローズニカを見て、最上位精霊達も固唾を呑む。

「空を音が飛ぶように、海を音が泳ぐように、地を音が駆けるように──……お兄様が言葉を届けたいと願った相手には、必ず言葉が届く。それが、お兄様の願望を体現した言霊まほうなのです」
「にわかには信じ難い話だが……今は言及しないでおこう。それで、それがアイツが攫われた理由だと?」
「はい。だって、どれだけ例の女性を守っていようが──……お兄様の言霊まほう彼女自身・・・・の意思を・・・・変えら・・・れたら・・・、妖精の計画が頓挫してしまうじゃないですか」
『────っ!!』

 その時、シャルルギル(と眠るアミレスとジェジ)以外の者の頭の中では点と点とが繋がった。誰もがレオナード誘拐の予想外の理由と、そして、妖精の用意周到っぷりに衝撃を受ける。

「知性ある生命体すべてに有効な言葉の魔法──……なぁ、精霊。これ、普通に不味いと思うけど」

 静観していたクロノが面倒だと書かれた顔を引っ提げ、ここで口を挟む。

「その人間、下手すれば僕達上位種にまでその魔法の言葉とやらを届けられるかもしれないんだぞ。それをあの妖精達が抱えている。この意味が分からないとは言わせないよ」
「……勿論分かってるさ。ボク達の切り札になるかもしれなかったアイツが、妖精の切り札にならない訳がない。ただでさえ向こうには奇跡力があるっていうのに、知的生命体特攻の魔法を使える奴まで向こうの手の内だって? あぁ~~~~っ、もう! こんな事になるのなら、制約に抵触してでもあの色ボケ女を殺しておけばよかったッッッッ!!」

 オーロラのごとき長髪を振り乱し、シルフが絶叫する。その様子を慣れた表情で見守る最上位精霊達だったが、エンヴィーは違った。

「結局振り出し──いや、面倒な敵が増えたんで振り出し以前まで戻されたんだが、これ、マジでどーすりゃいいんだ?」

 後頭部を掻きつつシルフの奇行をスルーし、議論を進める。すると、覚悟を宿した真剣な面持ちを作り、ローズニカが口を切った。

「……──お兄様の件は、私に任せてください」
しおりを挟む
感想 93

あなたにおすすめの小説

なんか、異世界行ったら愛重めの溺愛してくる奴らに囲われた

いに。
恋愛
"佐久良 麗" これが私の名前。 名前の"麗"(れい)は綺麗に真っ直ぐ育ちますようになんて思いでつけられた、、、らしい。 両親は他界 好きなものも特にない 将来の夢なんてない 好きな人なんてもっといない 本当になにも持っていない。 0(れい)な人間。 これを見越してつけたの?なんてそんなことは言わないがそれ程になにもない人生。 そんな人生だったはずだ。 「ここ、、どこ?」 瞬きをしただけ、ただそれだけで世界が変わってしまった。 _______________.... 「レイ、何をしている早くいくぞ」 「れーいちゃん!僕が抱っこしてあげよっか?」 「いや、れいちゃんは俺と手を繋ぐんだもんねー?」 「、、茶番か。あ、おいそこの段差気をつけろ」 えっと……? なんか気づいたら周り囲まれてるんですけどなにが起こったんだろう? ※ただ主人公が愛でられる物語です ※シリアスたまにあり ※周りめちゃ愛重い溺愛ルート確です ※ど素人作品です、温かい目で見てください どうぞよろしくお願いします。

困りました。縦ロールにさよならしたら、逆ハーになりそうです。《改訂版》

新 星緒
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢アニエス(悪質ストーカー)に転生したと気づいたけれど、心配ないよね。だってフラグ折りまくってハピエンが定番だもの。 趣味の悪い縦ロールはやめて性格改善して、ストーカーしなければ楽勝楽勝! ……って、あれ? 楽勝ではあるけれど、なんだか思っていたのとは違うような。 想定外の逆ハーレムを解消するため、イケメンモブの大公令息リュシアンと協力関係を結んでみた。だけどリュシアンは、「惚れた」と言ったり「からかっただけ」と言ったり、意地悪ばかり。嫌なヤツ! でも実はリュシアンは訳ありらしく……

異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?

すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。 一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。 「俺とデートしない?」 「僕と一緒にいようよ。」 「俺だけがお前を守れる。」 (なんでそんなことを私にばっかり言うの!?) そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。 「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」 「・・・・へ!?」 『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!? ※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。 ※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。 ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。

転生したら、実家が養鶏場から養コカトリス場にかわり、知らない牧場経営型乙女ゲームがはじまりました

空飛ぶひよこ
恋愛
実家の養鶏場を手伝いながら育ち、後継ぎになることを夢見ていていた梨花。 結局、できちゃった婚を果たした元ヤンの兄(改心済)が後を継ぐことになり、進路に迷っていた矢先、運悪く事故死してしまう。 転生した先は、ゲームのようなファンタジーな世界。 しかし、実家は養鶏場ならぬ、養コカトリス場だった……! 「やった! 今度こそ跡継ぎ……え? 姉さんが婿を取って、跡を継ぐ?」 農家の後継不足が心配される昨今。何故私の周りばかり、後継に恵まれているのか……。 「勤労意欲溢れる素敵なお嬢さん。そんな貴女に御朗報です。新規国営牧場のオーナーになってみませんか? ーー条件は、ただ一つ。牧場でドラゴンの卵も一緒に育てることです」 ーーそして謎の牧場経営型乙女ゲームが始まった。(解せない)

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~

恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん) は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。 しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!? (もしかして、私、転生してる!!?) そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!! そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

逃げて、追われて、捕まって

あみにあ
恋愛
平民に生まれた私には、なぜか生まれる前の記憶があった。 この世界で王妃として生きてきた記憶。 過去の私は貴族社会の頂点に立ち、さながら悪役令嬢のような存在だった。 人を蹴落とし、気に食わない女を断罪し、今思えばひどい令嬢だったと思うわ。 だから今度は平民としての幸せをつかみたい、そう願っていたはずなのに、一体全体どうしてこんな事になってしまたのかしら……。 2020年1月5日より 番外編:続編随時アップ 2020年1月28日より 続編となります第二章スタートです。 **********お知らせ*********** 2020年 1月末 レジーナブックス 様より書籍化します。 それに伴い短編で掲載している以外の話をレンタルと致します。 ご理解ご了承の程、宜しくお願い致します。

異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜

恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。 右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。 そんな乙女ゲームのようなお話。

どうして私が我慢しなきゃいけないの?!~悪役令嬢のとりまきの母でした~

涼暮 月
恋愛
目を覚ますと別人になっていたわたし。なんだか冴えない異国の女の子ね。あれ、これってもしかして異世界転生?と思ったら、乙女ゲームの悪役令嬢のとりまきのうちの一人の母…かもしれないです。とりあえず婚約者が最悪なので、婚約回避のために頑張ります!

処理中です...