431 / 786
第四章・興国の王女
387.ある竜の夢
しおりを挟む
ゆらゆらと。ぬくぬくと。
冷たいけれど、どこか温かい。
そんな不思議な揺籃の中で命が芽吹くのを待ちながら、みどりはずっと眠っていた。
ようやく、満を持して、みどりが姿を得てこの目を開いた時。目を輝かせてみどりを覗き込んでくる何かがいた。
その生き物達はみどりを見てたくさん笑った。ぎゅっと抱きしめて、何度も『緑』とみどりを呼んでくれた。
まだ何も知らないみどりが、この者達を同じ竜種であると理解し、この世界でたった四体だけの兄姉であると知ったのは、少し後の事じゃった。
己の権能を学び、この世界を学び、いつの間にか築かれていた人間社会を学び、勉強に飽きた我は白の姉上と共に花畑を作る事にした。
赤の兄上と駆け回れる広大な花畑。青の兄上とたくさんの花冠を作れる花畑。黒の兄上と一緒に昼寝出来る花畑。白の姉上と選定した花々の咲く花畑。
我の大好きな花々と、我の大好きな家族に満たされるあの花畑が大好きだった。
あの日々が本当に幸せだった。ずっと、これから先の未来もこの日々が続くものだと思っていた。
──そんなの、夢のまた夢じゃった。
我の宝物はことごとく潰され、我の夢は全て打ち砕かれる。
花畑も、兄上も、姉上も、かつて愛した人間達も……全部、全部、全部全部全部全部全部! 我の手からこぼれ落ちていった。
何一つ守れなかった。
宝物でさえ、家族でさえ。弱い我は、大事なものの一つすらも守れない最低最悪の愚者だった。
……偉大な竜となると誓ったのに。もう人間を信用したりはしないと誓ったのに。
それでもかつて愛し、共に笑いあって生きていた人間の事が忘れられなくて……何度も人間を信じては、その度に兄上達に迷惑をかけてしまった。
その愚行の代償が、あの百年の孤独だった。
訳も分からず姉上に眠らされ、気がついた時には体が酷く衰弱しており生存本能で呪いを振り撒いていた。
よりにもよって、我はこの自然豊かな国を──我等の花畑があったこの地を、我が自然の権能で侵し滅ぼそうとしてしまった。
何かの種族に花畑を荒らされ怒り狂った過去があるというのに、それをも超える罪を我は犯してしまいそうだったのだ。
もし、あの時アミレスが我を見つけてくれなければ……きっと我はあの地の自然を全て枯らしてまで生き長らえ、そして一万年の思い出が詰まるあの地をこの手で滅ぼした事実に狂い理性を失っていた事だろう。
それだけでも、アミレスには感謝してもしきれぬというのに。
あやつは、あろう事か我の意思を尊重してきた。
いつも自分勝手で我儘であった人間が、我等の声を聞いた事など数千年と無かった。
我が何でも叶えてやると言うたのに、あやつは自分の為になどならんであろう事を願い、あまつさえ我に手を差し伸べてきた。
我は竜だ。一万年の時を生きる純血なりし竜。
だから本当は分かってしまうのだ。分かりたくもなくて、ずっと目を逸らしていたのだが──目を合わせれば、相手が心に抱く裏の言葉がなんとなく分かってしまう。
アミレスの裏の言葉は何故か全然理解出来なかったのだが、その際の感情はなんとなく読み取れた。
なんの打算も、意図もなく。ただ純粋に、アミレスは我と一緒にいたいと思っていた。
それがどれ程我にとって嬉しい事だったか……きっと、鈍いあやつは知らんのだろうな。
──我は、人間を憎み恨む気持ちだってあるものの、それと同時に何千年もの間、在りし日のように人間と信じ合い笑い合える日がまた来る事を待ち続けていた。
ただ一人だけでよい。たった一人、もう一度信じる事が出来る人間が現れてくれる事をずっと願ってた。
強欲でも、無欲でも、王勇でも、蛮勇でも何だって構わない。
我を竜種としてではなく、ただの緑として見てくれる友が欲しかった。
数千年前人間との決別を選んだあの日から、もう二度と叶う事はないと思いつつ夢見ていたもの。それに、アミレスはなってくれたのじゃ。
黒の兄上は人間をいまいち信用しておらぬようじゃが……アミレスは、我を裏切らない。
きっといつまでも我の良き友でいてくれると、漠然とそう確信出来た。
だってアミレスだから。
悲運に付き纏われているのに、それを必死に否定しようといつも笑って障害を薙ぎ倒し、過去を悔やむ事無くただひたむきに前へと進む愚直で眩しい生き様の人間。
死を恐れる癖に、後先考えずに誰彼構わず助ける生粋の善人だから。
そんなあやつだから、我はアミレスに着いていこうと──……あやつを信じ、友になりたいと思った。
我の想像通り……というか、想像以上にアミレスと過ごす日々は楽しかった。
何もかもが真新しくて、予想外の事の連続で。
少し窮屈に感じる事もあった。頭を使う事が苦手な我は現代文化を学ぶのもかなり疲れた。でも、アミレスと共に生きる為ならばどれも苦ではなかった。
本当に、本当に幸福な日々だった。
毎朝アミレスの元を訪れ、寝起きでボサボサの頭で『おはよう、ナトラ』と我に笑いかけてくれる事が本当に嬉しかった。毎日、その平穏と幸せを噛み締めていた。
だから、アミレスが暫く目を覚まさなかった時は本当に辛かった。毎朝毎晩あやつの元を訪れ、名前を呼びながら体を揺らしてもあやつは目覚めない。
我の名を呼んでくれない。我に笑いかけてくれない。
もしも、このままアミレスが永遠に目覚めなかったら。
もしも、赤の兄上や青の兄上のように、死んで二度と会えなくなってしまったら──。
そう、考えた時。我の目からは恐怖がポロポロと零れ落ちていた。怖かった。また我は独りになるのかと……もう二度とアミレスに我の名を呼んでもらえぬのかと、恐怖のあまりアミレスの傍で一晩中泣いていた。
我は、アミレスの笑顔が好きだ。
黒の兄上とも、白の姉上とも、赤の兄上とも、青の兄上とも違う……とても眩しい笑顔。思い出の中の七色の花畑を彷彿とさせる、キラキラと輝くそれを見る事が大好きだ。
もっともっと笑って欲しいし、あわよくば我の名を呼びながら笑って欲しい。
これから先もずっと、我に向けて笑いかけて欲しい。その為なら、我は何だってするから。
これから先もずっと、我の名前を呼んで頭を撫でて欲しい。その為なら、我は頑張れるから。
運命だって理だって、何だって変えてみせる。お前が一生笑って幸せに暮らせるよう、我はお前の往く道を阻む障害を全て破壊しよう。
今度こそ、大事なものを守れるように我はいっぱいいーっぱい頑張るから。
大丈夫じゃ! 今は少し、いやかなり弱体化しておるが、それでも我は緑の竜──この世に三体しかいない純血なる竜種だ。
小さき命をぷちっと潰す事も、所構わず暴れるのも得意……な筈だとも。
そんな、本来何者とも相容れぬ我等を受け入れ、好きだと言ってくれる者がただ一人だけでもいるのなら、我はもう十分だ。
それ以外の者達からどう思われても構わない。お前の為なら、災害にだってなってもいい。この世界に嫌われてもいい。
ただ、お前が──……お人好しで、馬鹿で、愚直で、馬鹿で、生粋の善人のお前が、なんの憂いもなく望むままに幸せを享受してくれるのなら。
それは、我がこの世界を敵に回すに値する理由になるから。
♢♢♢♢
我が魔界の扉に干渉して、【世界樹】がどのような対応を取ってくるか分からなかったが……我は、アミレスのお願いを叶える為に世界と世界を繋ぐ扉に干渉した。
ただでさえ弱体化していた我は、本来不可能な扉への干渉を成し遂げるべく自然の権能の一部を担保にして足りない魔力や力を【世界樹】からもぎ取り、扉を閉めた。
どうやら【世界樹】は、あくまでもこちらには不干渉の姿勢を貫くらしい。
我が母でもある【世界樹】については、アミレスに非情な運命を背負わせおって! と少し恨めしく思っていたものの……このまま不干渉であってくれるのならば寧ろ助かる。
──これから、もし我がアミレスの運命を捻じ曲げたとしても、我等が母上は知らぬ振りをしてくれる事だろうから。
「ありがとう、ナトラ。お疲れ様」
我ながら無茶をした。これはアミレスに褒めてもらわねば割に合わない! と思い訴えかけたところ、アミレスは我を抱きしめ、笑って我の頭を撫でた。
本当はもっと褒めて褒めて褒めて欲しかったが……これだけでもう十分だと思った。
久しく聞いて来なかった、その五文字の簡単な言葉だけでも嬉しかったのだ。
「むふふ。我、やっとお前の願いを一つ叶えられたのじゃ」
あの時、我ではない人間の手で我が呪いの種は消滅した。だから明確には、我はアミレスの願いを叶えられていなかったのだ。
だからこそ、無欲なあやつの数少ない願いをようやく叶えてやれた事が個人的にとても嬉しい。まあ、我を救ってくれた事への恩返しには到底及ばぬ些細な願いじゃったが。
だからこれからも、我はアミレスの願いを叶える。
利用されたって構わない。こやつが望むだけ、望むままに願いを叶えてやろう。
それでアミレスのあの笑顔が見られるのなら、見返りなど何も要らぬとも。
……──ふわふわと。ぬくぬくと。
アミレスの腕の中で我は眠る。
とても心地よい、このゆりかごの中で夢を見る。
もう二度とおはようもおやすみも言えない相手を思い出し、寂しさに包まれる。だからこそ、もうこれ以上こんな思いはしたくない。
頭の悪い我でも決して忘れぬよう、そしてお前が長生き出来るよう。我の最後の夢が叶うよう、そしてお前の夢が叶うよう。
目が覚めたら、お前の顔を見て我はこう言うのじゃ。
おはよう、アミレス────と。
冷たいけれど、どこか温かい。
そんな不思議な揺籃の中で命が芽吹くのを待ちながら、みどりはずっと眠っていた。
ようやく、満を持して、みどりが姿を得てこの目を開いた時。目を輝かせてみどりを覗き込んでくる何かがいた。
その生き物達はみどりを見てたくさん笑った。ぎゅっと抱きしめて、何度も『緑』とみどりを呼んでくれた。
まだ何も知らないみどりが、この者達を同じ竜種であると理解し、この世界でたった四体だけの兄姉であると知ったのは、少し後の事じゃった。
己の権能を学び、この世界を学び、いつの間にか築かれていた人間社会を学び、勉強に飽きた我は白の姉上と共に花畑を作る事にした。
赤の兄上と駆け回れる広大な花畑。青の兄上とたくさんの花冠を作れる花畑。黒の兄上と一緒に昼寝出来る花畑。白の姉上と選定した花々の咲く花畑。
我の大好きな花々と、我の大好きな家族に満たされるあの花畑が大好きだった。
あの日々が本当に幸せだった。ずっと、これから先の未来もこの日々が続くものだと思っていた。
──そんなの、夢のまた夢じゃった。
我の宝物はことごとく潰され、我の夢は全て打ち砕かれる。
花畑も、兄上も、姉上も、かつて愛した人間達も……全部、全部、全部全部全部全部全部! 我の手からこぼれ落ちていった。
何一つ守れなかった。
宝物でさえ、家族でさえ。弱い我は、大事なものの一つすらも守れない最低最悪の愚者だった。
……偉大な竜となると誓ったのに。もう人間を信用したりはしないと誓ったのに。
それでもかつて愛し、共に笑いあって生きていた人間の事が忘れられなくて……何度も人間を信じては、その度に兄上達に迷惑をかけてしまった。
その愚行の代償が、あの百年の孤独だった。
訳も分からず姉上に眠らされ、気がついた時には体が酷く衰弱しており生存本能で呪いを振り撒いていた。
よりにもよって、我はこの自然豊かな国を──我等の花畑があったこの地を、我が自然の権能で侵し滅ぼそうとしてしまった。
何かの種族に花畑を荒らされ怒り狂った過去があるというのに、それをも超える罪を我は犯してしまいそうだったのだ。
もし、あの時アミレスが我を見つけてくれなければ……きっと我はあの地の自然を全て枯らしてまで生き長らえ、そして一万年の思い出が詰まるあの地をこの手で滅ぼした事実に狂い理性を失っていた事だろう。
それだけでも、アミレスには感謝してもしきれぬというのに。
あやつは、あろう事か我の意思を尊重してきた。
いつも自分勝手で我儘であった人間が、我等の声を聞いた事など数千年と無かった。
我が何でも叶えてやると言うたのに、あやつは自分の為になどならんであろう事を願い、あまつさえ我に手を差し伸べてきた。
我は竜だ。一万年の時を生きる純血なりし竜。
だから本当は分かってしまうのだ。分かりたくもなくて、ずっと目を逸らしていたのだが──目を合わせれば、相手が心に抱く裏の言葉がなんとなく分かってしまう。
アミレスの裏の言葉は何故か全然理解出来なかったのだが、その際の感情はなんとなく読み取れた。
なんの打算も、意図もなく。ただ純粋に、アミレスは我と一緒にいたいと思っていた。
それがどれ程我にとって嬉しい事だったか……きっと、鈍いあやつは知らんのだろうな。
──我は、人間を憎み恨む気持ちだってあるものの、それと同時に何千年もの間、在りし日のように人間と信じ合い笑い合える日がまた来る事を待ち続けていた。
ただ一人だけでよい。たった一人、もう一度信じる事が出来る人間が現れてくれる事をずっと願ってた。
強欲でも、無欲でも、王勇でも、蛮勇でも何だって構わない。
我を竜種としてではなく、ただの緑として見てくれる友が欲しかった。
数千年前人間との決別を選んだあの日から、もう二度と叶う事はないと思いつつ夢見ていたもの。それに、アミレスはなってくれたのじゃ。
黒の兄上は人間をいまいち信用しておらぬようじゃが……アミレスは、我を裏切らない。
きっといつまでも我の良き友でいてくれると、漠然とそう確信出来た。
だってアミレスだから。
悲運に付き纏われているのに、それを必死に否定しようといつも笑って障害を薙ぎ倒し、過去を悔やむ事無くただひたむきに前へと進む愚直で眩しい生き様の人間。
死を恐れる癖に、後先考えずに誰彼構わず助ける生粋の善人だから。
そんなあやつだから、我はアミレスに着いていこうと──……あやつを信じ、友になりたいと思った。
我の想像通り……というか、想像以上にアミレスと過ごす日々は楽しかった。
何もかもが真新しくて、予想外の事の連続で。
少し窮屈に感じる事もあった。頭を使う事が苦手な我は現代文化を学ぶのもかなり疲れた。でも、アミレスと共に生きる為ならばどれも苦ではなかった。
本当に、本当に幸福な日々だった。
毎朝アミレスの元を訪れ、寝起きでボサボサの頭で『おはよう、ナトラ』と我に笑いかけてくれる事が本当に嬉しかった。毎日、その平穏と幸せを噛み締めていた。
だから、アミレスが暫く目を覚まさなかった時は本当に辛かった。毎朝毎晩あやつの元を訪れ、名前を呼びながら体を揺らしてもあやつは目覚めない。
我の名を呼んでくれない。我に笑いかけてくれない。
もしも、このままアミレスが永遠に目覚めなかったら。
もしも、赤の兄上や青の兄上のように、死んで二度と会えなくなってしまったら──。
そう、考えた時。我の目からは恐怖がポロポロと零れ落ちていた。怖かった。また我は独りになるのかと……もう二度とアミレスに我の名を呼んでもらえぬのかと、恐怖のあまりアミレスの傍で一晩中泣いていた。
我は、アミレスの笑顔が好きだ。
黒の兄上とも、白の姉上とも、赤の兄上とも、青の兄上とも違う……とても眩しい笑顔。思い出の中の七色の花畑を彷彿とさせる、キラキラと輝くそれを見る事が大好きだ。
もっともっと笑って欲しいし、あわよくば我の名を呼びながら笑って欲しい。
これから先もずっと、我に向けて笑いかけて欲しい。その為なら、我は何だってするから。
これから先もずっと、我の名前を呼んで頭を撫でて欲しい。その為なら、我は頑張れるから。
運命だって理だって、何だって変えてみせる。お前が一生笑って幸せに暮らせるよう、我はお前の往く道を阻む障害を全て破壊しよう。
今度こそ、大事なものを守れるように我はいっぱいいーっぱい頑張るから。
大丈夫じゃ! 今は少し、いやかなり弱体化しておるが、それでも我は緑の竜──この世に三体しかいない純血なる竜種だ。
小さき命をぷちっと潰す事も、所構わず暴れるのも得意……な筈だとも。
そんな、本来何者とも相容れぬ我等を受け入れ、好きだと言ってくれる者がただ一人だけでもいるのなら、我はもう十分だ。
それ以外の者達からどう思われても構わない。お前の為なら、災害にだってなってもいい。この世界に嫌われてもいい。
ただ、お前が──……お人好しで、馬鹿で、愚直で、馬鹿で、生粋の善人のお前が、なんの憂いもなく望むままに幸せを享受してくれるのなら。
それは、我がこの世界を敵に回すに値する理由になるから。
♢♢♢♢
我が魔界の扉に干渉して、【世界樹】がどのような対応を取ってくるか分からなかったが……我は、アミレスのお願いを叶える為に世界と世界を繋ぐ扉に干渉した。
ただでさえ弱体化していた我は、本来不可能な扉への干渉を成し遂げるべく自然の権能の一部を担保にして足りない魔力や力を【世界樹】からもぎ取り、扉を閉めた。
どうやら【世界樹】は、あくまでもこちらには不干渉の姿勢を貫くらしい。
我が母でもある【世界樹】については、アミレスに非情な運命を背負わせおって! と少し恨めしく思っていたものの……このまま不干渉であってくれるのならば寧ろ助かる。
──これから、もし我がアミレスの運命を捻じ曲げたとしても、我等が母上は知らぬ振りをしてくれる事だろうから。
「ありがとう、ナトラ。お疲れ様」
我ながら無茶をした。これはアミレスに褒めてもらわねば割に合わない! と思い訴えかけたところ、アミレスは我を抱きしめ、笑って我の頭を撫でた。
本当はもっと褒めて褒めて褒めて欲しかったが……これだけでもう十分だと思った。
久しく聞いて来なかった、その五文字の簡単な言葉だけでも嬉しかったのだ。
「むふふ。我、やっとお前の願いを一つ叶えられたのじゃ」
あの時、我ではない人間の手で我が呪いの種は消滅した。だから明確には、我はアミレスの願いを叶えられていなかったのだ。
だからこそ、無欲なあやつの数少ない願いをようやく叶えてやれた事が個人的にとても嬉しい。まあ、我を救ってくれた事への恩返しには到底及ばぬ些細な願いじゃったが。
だからこれからも、我はアミレスの願いを叶える。
利用されたって構わない。こやつが望むだけ、望むままに願いを叶えてやろう。
それでアミレスのあの笑顔が見られるのなら、見返りなど何も要らぬとも。
……──ふわふわと。ぬくぬくと。
アミレスの腕の中で我は眠る。
とても心地よい、このゆりかごの中で夢を見る。
もう二度とおはようもおやすみも言えない相手を思い出し、寂しさに包まれる。だからこそ、もうこれ以上こんな思いはしたくない。
頭の悪い我でも決して忘れぬよう、そしてお前が長生き出来るよう。我の最後の夢が叶うよう、そしてお前の夢が叶うよう。
目が覚めたら、お前の顔を見て我はこう言うのじゃ。
おはよう、アミレス────と。
15
お気に入りに追加
638
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
婚約したら幼馴染から絶縁状が届きました。
黒蜜きな粉
恋愛
婚約が決まった翌日、登校してくると机の上に一通の手紙が置いてあった。
差出人は幼馴染。
手紙には絶縁状と書かれている。
手紙の内容は、婚約することを発表するまで自分に黙っていたから傷ついたというもの。
いや、幼馴染だからって何でもかんでも報告しませんよ。
そもそも幼馴染は親友って、そんなことはないと思うのだけど……?
そのうち機嫌を直すだろうと思っていたら、嫌がらせがはじまってしまった。
しかも、婚約者や周囲の友人たちまで巻き込むから大変。
どうやら私の評判を落として婚約を破談にさせたいらしい。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
困りました。縦ロールにさよならしたら、逆ハーになりそうです。《改訂版》
新 星緒
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢アニエス(悪質ストーカー)に転生したと気づいたけれど、心配ないよね。だってフラグ折りまくってハピエンが定番だもの。
趣味の悪い縦ロールはやめて性格改善して、ストーカーしなければ楽勝楽勝!
……って、あれ?
楽勝ではあるけれど、なんだか思っていたのとは違うような。
想定外の逆ハーレムを解消するため、イケメンモブの大公令息リュシアンと協力関係を結んでみた。だけどリュシアンは、「惚れた」と言ったり「からかっただけ」と言ったり、意地悪ばかり。嫌なヤツ!
でも実はリュシアンは訳ありらしく……
逃げて、追われて、捕まって
あみにあ
恋愛
平民に生まれた私には、なぜか生まれる前の記憶があった。
この世界で王妃として生きてきた記憶。
過去の私は貴族社会の頂点に立ち、さながら悪役令嬢のような存在だった。
人を蹴落とし、気に食わない女を断罪し、今思えばひどい令嬢だったと思うわ。
だから今度は平民としての幸せをつかみたい、そう願っていたはずなのに、一体全体どうしてこんな事になってしまたのかしら……。
2020年1月5日より 番外編:続編随時アップ
2020年1月28日より 続編となります第二章スタートです。
**********お知らせ***********
2020年 1月末 レジーナブックス 様より書籍化します。
それに伴い短編で掲載している以外の話をレンタルと致します。
ご理解ご了承の程、宜しくお願い致します。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
3年前にも召喚された聖女ですが、仕事を終えたので早く帰らせてもらえますか?
せいめ
恋愛
女子大生の莉奈は、高校生だった頃に異世界に聖女として召喚されたことがある。
大量に発生した魔物の討伐と、国に強力な結界を張った後、聖女の仕事を無事に終えた莉奈。
親しくなった仲間達に引き留められて、別れは辛かったが、元の世界でやりたい事があるからと日本に戻ってきた。
「だって私は、受験の為に今まで頑張ってきたの。いい大学に入って、そこそこの企業に就職するのが夢だったんだから。治安が良くて、美味しい物が沢山ある日本の方が最高よ。」
その後、無事に大学生になった莉奈はまた召喚されてしまう。
召喚されたのは、高校生の時に召喚された異世界の国と同じであった。しかし、あの時から3年しか経ってないはずなのに、こっちの世界では150年も経っていた。
「聖女も2回目だから、さっさと仕事を終わらせて、早く帰らないとね!」
今回は無事に帰れるのか…?
ご都合主義です。
誤字脱字お許しください。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
モブはモブらしく生きたいのですっ!
このの
恋愛
公爵令嬢のローゼリアはある日前世の記憶を思い出す
そして自分は友人が好きだった乙女ゲームのたった一文しか出てこないモブだと知る!
「私は死にたくない!そして、ヒロインちゃんの恋愛を影から見ていたい!」
死亡フラグを無事折って、身分、容姿を隠し、学園に行こう!
そんなモブライフをするはずが…?
「あれ?攻略対象者の皆様、ナゼ私の所に?」
ご都合主義です。初めての投稿なので、修正バンバンします!
感想めっちゃ募集中です!
他の作品も是非見てね!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
前世では美人が原因で傾国の悪役令嬢と断罪された私、今世では喪女を目指します!
鳥柄ささみ
恋愛
美人になんて、生まれたくなかった……!
前世で絶世の美女として生まれ、その見た目で国王に好かれてしまったのが運の尽き。
正妃に嫌われ、私は国を傾けた悪女とレッテルを貼られて処刑されてしまった。
そして、気づけば違う世界に転生!
けれど、なんとこの世界でも私は絶世の美女として生まれてしまったのだ!
私は前世の経験を生かし、今世こそは目立たず、人目にもつかない喪女になろうと引きこもり生活をして平穏な人生を手に入れようと試みていたのだが、なぜか世界有数の魔法学校で陽キャがいっぱいいるはずのNMA(ノーマ)から招待状が来て……?
前世の教訓から喪女生活を目指していたはずの主人公クラリスが、トラウマを抱えながらも奮闘し、四苦八苦しながら魔法学園で成長する異世界恋愛ファンタジー!
※第15回恋愛大賞にエントリーしてます!
開催中はポチッと投票してもらえると嬉しいです!
よろしくお願いします!!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
今日も学園食堂はゴタゴタしてますが、こっそり観賞しようとして本日も萎えてます。
柚ノ木 碧/柚木 彗
恋愛
駄目だこれ。
詰んでる。
そう悟った主人公10歳。
主人公は悟った。実家では無駄な事はしない。搾取父親の元を三男の兄と共に逃れて王都へ行き、乙女ゲームの舞台の学園の厨房に就職!これで予てより念願の世界をこっそりモブ以下らしく観賞しちゃえ!と思って居たのだけど…
何だか知ってる乙女ゲームの内容とは微妙に違う様で。あれ?何だか萎えるんだけど…
なろうにも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる