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第四章・興国の王女
359.伯爵家のパーティー
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明くる日。ついにシャンパージュ伯爵家主催のパーティー当日となった。
私は朝からパーティーに行く為のドレスを着て、軽くお化粧をした。今日の私はローズの後援者としてパーティーに行くのだ、フリードルの誕生パーティー程ではないがそれなりに着飾ったとも。
パーティーと言ってもたかがホームパーティー……と侮る事なかれ。何せ主催があのシャンパージュ伯爵家であり、なんと開催場所はシャンパージュ伯爵家所有の帝都有数の社交場・夢想の宮殿。
なんでもこれはシャンパージュ伯爵家が帝国建国時に管理が面倒だと感じた初代皇帝から賜ったものとかで、代々シャンパージュ伯爵家で受け継がれているのだとか。
この宮殿は帝都内で最も広く美しい社交場と呼ばれ、その絢爛豪華っぷりからは想像のつかない安価で貸出を行っているからかその予約は常に埋まっている。
パーティー嫌いの皇帝陛下が全然パーティーを開いてくれないので……貴族達は自宅でパーティーを開くか、この夢想の宮殿を借りてパーティーを開いているそうな。
そんな夢想の宮殿で行われるシャンパージュ伯爵家主催のパーティーの噂は瞬く間に帝国中に広まり、多くの人がシャンパージュ伯爵家と親しくなるべく気合いを入れて参加する。
そして、この規模のパーティーは帝国内でも珍しいので当然各家門の令嬢や令息も集まる。つまり──このパーティーに出会いを求めている者も数多くいるという事だ!
果たしてそんな所にうちのイケメン達を連れて行っていいものなのか……と不安に思うものの、いざ当日に護衛は不要だと告げると、『絶対にお供致します』と二人共かなり食い気味に拒否した。
変に頑固だからなあ、この子達。と私はもはや諦めの境地。二人を連れて行くのはいいとして、じゃあパートナー問題はどうしようかと思い悩む。
その結果、
「ごめんね、マクベスタ。貴方まで付き合わせてしまって」
「いや、いいんだ。オレもシャンパージュ伯爵家からの招待状は受け取っていたし……こうして、お前のパートナーになれたのだから」
私は、たまたま同じパーティーに参加予定だったマクベスタにエスコートを頼んだ。エスコートと言っても、一緒に入場するだけなんだけどね。
最初はフリードルの誕生パーティーよろしくイリオーデに頼もうかと思ったのだが、そう何度も私がパートナーになってはイリオーデの出会いの機会を潰してしまうのではという懸念もあった。
いやまあ、イリオーデの顔やその肩書きしか見ないような女なら絶対交際は許さないけども。私が責任持って品定めさせていただくけども。
なので、とりあえず今日はイリオーデをフリーにし、アルベルトと共に護衛として来て貰った。
ちなみに本日はアルベルトも私兵団の団服を着ている。なんとなく、護衛の服を統一したいと思ったのだ。
まだ衣替え前なので、保管したままだったというイリオーデの私兵団団服(冬仕様)を渋々アルベルトに貸し出してもらって、すったもんだの末今日限定の護衛騎士コンビが完成した。
その二人で仲良く馬車の手綱を握り、こうして私達は馬車の中でのんびりと会場への道を進んでいた。
「確か、この後テンディジェル大公家の兄妹を迎えに行ってそのまま会場に向かうんだったか」
「ええそうよ。二人共凄くいい子達だから、マクベスタもきっと仲良くなれるわ」
「……そうか。仲良くなれるよう頑張るよ」
どこか含みのあるマクベスタの笑みに少し違和感を覚えつつ、テンディジェル大公家の邸に着いたのか馬車が一時停車する。
そこでマクベスタには私の隣に移動してもらい、嬉しそうにはにかむマクベスタと共に、レオとローズが来るのを待つ。
もしかして、新しい友達が出来るかもってはしゃいでる……? やだ、マクベスタったら可愛い!
「主君。公女と公子をお連れしました」
ノックの音がしたと思ったら、アルベルトが扉を開けて顔を出した。そして、その後ろから待ち人が。
「お待たせしました、王女殿……下?」
「どうしましたの、お兄様──えっ、だ、誰ですかこのキラキラした王子様みたいな男性は!?」
「俺が聞きたいよそんな事」
順番に馬車に乗り込み、二人は目を丸くしていた。慌ててレオの腕にしがみついたローズが何かもごもごと叫んでいたようなのだが、ほとんど聞こえない。
私の隣に座るマクベスタに二人の視線は注がれていた。そしてマクベスタの視線もまた、レオとローズに向けられていて。
「私からお互いについて紹介するわね。こちらは友達のマクベスタで、こちらもまた友達のローズニカとレオナードです」
ここは私が橋渡し役を担わなければ! と、意気揚々と他己紹介を行う。
「紹介にあずかりました、マクベスタ・オセロマイトです。アミレスの友達──いや、親友です」
ニコリと微笑みながらマクベスタが挨拶する。何か凄く珍しい笑顔だな、初めて見たかもしれない。
マクベスタも緊張してるのかなぁ。
「親友……!?」
レオが何かにギョッとする。
「わっ、私はローズニカ・サー・テンディジェルです! アミレスちゃんの友だっ……し、親友です!」
「ローズ……?! あ、えと、俺はレオナード・サー・テンディジェルです。その、恐れ多くも王女殿下のご友人と認めていただきました」
凄く気合いの入った挨拶をするテンディジェル兄妹。二人も新たな友達を作ろうと頑張ってるのね!
「お二方の話は以前アミレスより聞きました。とても優秀な方とか……これからも、彼女の臣下として彼女に尽くしてくれると助かるよ。何せ、アミレスは無茶ばかりするからな」
「────ええ、勿論。時に、貴方様はオセロマイト王国の第二王子であらせられるお方ですよね。お噂はかねがね。何でも王女殿下とは鍛錬を共にする間柄とか……外野が口を挟むものではないとも思いますが、ずっと帝国に留まられて大丈夫ですか?」
「ああ、気を揉ませてしまったようですまない。オレの事は気にしなくて構わないよ、レオナード公子。オレとアミレスの関係だって、貴殿の気にするような事ではないだろう?」
「……ハハ、出過ぎた真似をしてしまい、申し訳ございません。ただ俺も王女殿下の臣下として、王女殿下に付きまとう噂やその対外関係はどうにも気になってしまって」
やけにキラキラとした笑顔で会話する二人を眺め、私は考える。
皆、緊張してるんだなぁ。声にもかなり力が入ってるわ。共通の話題が私しかないから、私の話で頑張って盛り上がろうとしているみたいだし。
もっと肩の力を抜いても大丈夫なんだけど……やっぱり初対面の相手との会話は緊張するものね、仕方無いか。私は皆を陰ながら応援するだけよ!
「頑張ってくださいお兄様……っ!」
ローズもレオの事を応援しているようだし、私も応援しよう。頑張れ、皆!
「流石はアミレスだな。こんなにも忠義に厚い臣下がいるとは。尊敬に値するよ(特別意訳:分かってるなら臣民らしく身の程を弁えろ)」
「王女殿下の友人としてその立場に甘える事なく、王女殿下の力となりお仕えすべきと俺は思いまして(特別意訳:他所の王子の癖に親友だからって大きい顔するな)」
何だかピリピリとした空気を肌に感じるものの、初対面の会話としては概ね問題なかろう。
このまま仲良くなってくれたらいいんだけどなぁ……それにしても、いくら何でも私の話ばかりしすぎでしょう。もっと他に話題はないのかしら。
「……──本当に、このままこの顔ぶれでメイシア嬢に会いに行くのか……正気か?」
妙な空気の中、マクベスタが消え入りそうな声でボソリと何か呟いた。しかしそれは馬車の音に掻き消され、私の耳に届く事はない。
その後も暫く緊張した空気が流れ、夢想の宮殿に到着するまで和やかとは程遠い馬車道中となった。
私は朝からパーティーに行く為のドレスを着て、軽くお化粧をした。今日の私はローズの後援者としてパーティーに行くのだ、フリードルの誕生パーティー程ではないがそれなりに着飾ったとも。
パーティーと言ってもたかがホームパーティー……と侮る事なかれ。何せ主催があのシャンパージュ伯爵家であり、なんと開催場所はシャンパージュ伯爵家所有の帝都有数の社交場・夢想の宮殿。
なんでもこれはシャンパージュ伯爵家が帝国建国時に管理が面倒だと感じた初代皇帝から賜ったものとかで、代々シャンパージュ伯爵家で受け継がれているのだとか。
この宮殿は帝都内で最も広く美しい社交場と呼ばれ、その絢爛豪華っぷりからは想像のつかない安価で貸出を行っているからかその予約は常に埋まっている。
パーティー嫌いの皇帝陛下が全然パーティーを開いてくれないので……貴族達は自宅でパーティーを開くか、この夢想の宮殿を借りてパーティーを開いているそうな。
そんな夢想の宮殿で行われるシャンパージュ伯爵家主催のパーティーの噂は瞬く間に帝国中に広まり、多くの人がシャンパージュ伯爵家と親しくなるべく気合いを入れて参加する。
そして、この規模のパーティーは帝国内でも珍しいので当然各家門の令嬢や令息も集まる。つまり──このパーティーに出会いを求めている者も数多くいるという事だ!
果たしてそんな所にうちのイケメン達を連れて行っていいものなのか……と不安に思うものの、いざ当日に護衛は不要だと告げると、『絶対にお供致します』と二人共かなり食い気味に拒否した。
変に頑固だからなあ、この子達。と私はもはや諦めの境地。二人を連れて行くのはいいとして、じゃあパートナー問題はどうしようかと思い悩む。
その結果、
「ごめんね、マクベスタ。貴方まで付き合わせてしまって」
「いや、いいんだ。オレもシャンパージュ伯爵家からの招待状は受け取っていたし……こうして、お前のパートナーになれたのだから」
私は、たまたま同じパーティーに参加予定だったマクベスタにエスコートを頼んだ。エスコートと言っても、一緒に入場するだけなんだけどね。
最初はフリードルの誕生パーティーよろしくイリオーデに頼もうかと思ったのだが、そう何度も私がパートナーになってはイリオーデの出会いの機会を潰してしまうのではという懸念もあった。
いやまあ、イリオーデの顔やその肩書きしか見ないような女なら絶対交際は許さないけども。私が責任持って品定めさせていただくけども。
なので、とりあえず今日はイリオーデをフリーにし、アルベルトと共に護衛として来て貰った。
ちなみに本日はアルベルトも私兵団の団服を着ている。なんとなく、護衛の服を統一したいと思ったのだ。
まだ衣替え前なので、保管したままだったというイリオーデの私兵団団服(冬仕様)を渋々アルベルトに貸し出してもらって、すったもんだの末今日限定の護衛騎士コンビが完成した。
その二人で仲良く馬車の手綱を握り、こうして私達は馬車の中でのんびりと会場への道を進んでいた。
「確か、この後テンディジェル大公家の兄妹を迎えに行ってそのまま会場に向かうんだったか」
「ええそうよ。二人共凄くいい子達だから、マクベスタもきっと仲良くなれるわ」
「……そうか。仲良くなれるよう頑張るよ」
どこか含みのあるマクベスタの笑みに少し違和感を覚えつつ、テンディジェル大公家の邸に着いたのか馬車が一時停車する。
そこでマクベスタには私の隣に移動してもらい、嬉しそうにはにかむマクベスタと共に、レオとローズが来るのを待つ。
もしかして、新しい友達が出来るかもってはしゃいでる……? やだ、マクベスタったら可愛い!
「主君。公女と公子をお連れしました」
ノックの音がしたと思ったら、アルベルトが扉を開けて顔を出した。そして、その後ろから待ち人が。
「お待たせしました、王女殿……下?」
「どうしましたの、お兄様──えっ、だ、誰ですかこのキラキラした王子様みたいな男性は!?」
「俺が聞きたいよそんな事」
順番に馬車に乗り込み、二人は目を丸くしていた。慌ててレオの腕にしがみついたローズが何かもごもごと叫んでいたようなのだが、ほとんど聞こえない。
私の隣に座るマクベスタに二人の視線は注がれていた。そしてマクベスタの視線もまた、レオとローズに向けられていて。
「私からお互いについて紹介するわね。こちらは友達のマクベスタで、こちらもまた友達のローズニカとレオナードです」
ここは私が橋渡し役を担わなければ! と、意気揚々と他己紹介を行う。
「紹介にあずかりました、マクベスタ・オセロマイトです。アミレスの友達──いや、親友です」
ニコリと微笑みながらマクベスタが挨拶する。何か凄く珍しい笑顔だな、初めて見たかもしれない。
マクベスタも緊張してるのかなぁ。
「親友……!?」
レオが何かにギョッとする。
「わっ、私はローズニカ・サー・テンディジェルです! アミレスちゃんの友だっ……し、親友です!」
「ローズ……?! あ、えと、俺はレオナード・サー・テンディジェルです。その、恐れ多くも王女殿下のご友人と認めていただきました」
凄く気合いの入った挨拶をするテンディジェル兄妹。二人も新たな友達を作ろうと頑張ってるのね!
「お二方の話は以前アミレスより聞きました。とても優秀な方とか……これからも、彼女の臣下として彼女に尽くしてくれると助かるよ。何せ、アミレスは無茶ばかりするからな」
「────ええ、勿論。時に、貴方様はオセロマイト王国の第二王子であらせられるお方ですよね。お噂はかねがね。何でも王女殿下とは鍛錬を共にする間柄とか……外野が口を挟むものではないとも思いますが、ずっと帝国に留まられて大丈夫ですか?」
「ああ、気を揉ませてしまったようですまない。オレの事は気にしなくて構わないよ、レオナード公子。オレとアミレスの関係だって、貴殿の気にするような事ではないだろう?」
「……ハハ、出過ぎた真似をしてしまい、申し訳ございません。ただ俺も王女殿下の臣下として、王女殿下に付きまとう噂やその対外関係はどうにも気になってしまって」
やけにキラキラとした笑顔で会話する二人を眺め、私は考える。
皆、緊張してるんだなぁ。声にもかなり力が入ってるわ。共通の話題が私しかないから、私の話で頑張って盛り上がろうとしているみたいだし。
もっと肩の力を抜いても大丈夫なんだけど……やっぱり初対面の相手との会話は緊張するものね、仕方無いか。私は皆を陰ながら応援するだけよ!
「頑張ってくださいお兄様……っ!」
ローズもレオの事を応援しているようだし、私も応援しよう。頑張れ、皆!
「流石はアミレスだな。こんなにも忠義に厚い臣下がいるとは。尊敬に値するよ(特別意訳:分かってるなら臣民らしく身の程を弁えろ)」
「王女殿下の友人としてその立場に甘える事なく、王女殿下の力となりお仕えすべきと俺は思いまして(特別意訳:他所の王子の癖に親友だからって大きい顔するな)」
何だかピリピリとした空気を肌に感じるものの、初対面の会話としては概ね問題なかろう。
このまま仲良くなってくれたらいいんだけどなぁ……それにしても、いくら何でも私の話ばかりしすぎでしょう。もっと他に話題はないのかしら。
「……──本当に、このままこの顔ぶれでメイシア嬢に会いに行くのか……正気か?」
妙な空気の中、マクベスタが消え入りそうな声でボソリと何か呟いた。しかしそれは馬車の音に掻き消され、私の耳に届く事はない。
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