だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜

十和とわ

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第四章・興国の王女

341.キョーダイの約束3

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「アミレス、話は終わったかの? 兄上もだいぶ落ち着いて来たからそろそろ話し合いをしようぞ」

 すると、明後日の方を向いて固まる男性陣の間をくぐり抜け、ナトラが私の懐までやって来た。その肩はぐっしょりと濡れていて、黒の竜がかなり泣いていた事が見て取れる。
 そんなナトラの後方──少し離れた所では、黒の竜が涙の跡が残るバツの悪そうな顔で立っていた。落ち着いたというのは本当らしい。

「それじゃあ、東宮に帰りましょうか。かき氷もまだ途中だったものね」
「はっ、そう言えば我、せっかくのかき氷を床に落としてしまったのじゃった……」
「あれぐらい、また作ればいいじゃないの。えっと、黒の竜……さん? もかき氷食べますか?」
「……何だ、それは」
「甘くてふわふわな氷のお菓子じゃよ、兄上。夏にしか食えぬのが難点な程、凄く美味いのじゃ」
「そうなんだ。緑がそう言うなら、きっと凄く美味しいんだろうね」

 黒の竜がナトラに向けて小さく微笑む。多分、黒の竜もかき氷を食べてくれるのだろう。しっかし、ナトラに対する表情と私に対する表情の温度差が凄いわね。グッピーが死ぬわよ、こんなの。
 閑話休題。それじゃあかき氷を食べてジュースでも飲みながら、腰を据えて話し合いといきますか。

「そういう事だから、東宮に戻ったら追加でかき氷を作ってくれるかしら、ルティ」
「は、お任せください。そして後でいっぱい褒めてください。頭を撫でてくださってもいいですよ」
「はいはい。魔人化の影響とやらね、分かったわ」

 アルベルトが実は普段からこんなに褒められたがっていたのだと知り、何だか微笑ましい気持ちになる。
 シュヴァルツに頼み、全員で東宮に転移する。元いた場所に戻ると、扉を蹴破ってセツが飛びついてきた。その勢いで尻もちをついてしまったのだが、心配するイリオーデ達にはひとまず「大丈夫よ」と伝えた。
 ぺろぺろと私の顔を舐め、まるで抱き締めるかのように前足を私の肩にかけてくる。きっと、セツの昼寝中にいなくなった私を心配してくれたのだろう。

 セツの体をわしゃわしゃとしつつ、かき氷の用意に向かったアルベルトの背を見送る。用意してと言ったのは私だけど、彼あの姿のままかき氷を作りに行ったわ。あの姿を見た侍女達がさぞ驚く事だろうな。
 というか、氷室の中にまだ氷って余ってるのかな……まあ、無かったら無いって言いに来るでしょう。
 なのでとりあえずお客様である黒の竜を長椅子ソファに座らせて、私も向かいに腰掛ける。ナトラは黒の竜の隣で、シュヴァルツとマクベスタがそれぞれ私の両隣に座る。
 セツは私の膝の上。そして、イリオーデは長椅子ソファの後ろで控えている。
 まだ紅茶等の用意もないので、ワンクッションに茶をしばく事も出来ないのだが……とりあえず、軽く切り出しておこう。

「ええと、黒の竜さん。あなたは人類を恨んでいて、当初の目的ではこの世界諸共人間を滅ぼそうとしていた……という事でよろしいでしょうか?」
「ああそうだ」
「でもナトラに諭されて、ひとまず思いとどまってくださったのですよね?」
「ああ……それより、先程から気になっていたんだけど、何だ、そのナトラという呼び方は」

 不機嫌そうな黒の竜がこちらを睨むと、彼の隣に座っていたナトラが食い気味に反応した。

「これはのぅ、アミレスが我にくれた名じゃ! 我等は色が名前じゃったから、こうして人間達のような名前を貰えて、我すっごく嬉しくての! 兄上も我の事はナトラと呼んでくれ!!」
「えっ? う、うん……分かった。ええと、ナトラ?」
「うむ! そうじゃ、兄上もせっかくなら名前をつけてもらうがよい。アミレスは聡いから、きっと良い名をくれる事じゃろう」
「名前…………」

 本当にナトラに弱いのか、黒の竜は態度をころりと変えてナトラの言う通りにしていた。だがここで、黒の竜がこちらを一瞥し、

「僕にも、そのようなものが一応ある……よ。僕の事をクロノって呼んでくる奴がいたから」

 ナトラの方を向いてボソリと零した。

「そうか、それが兄上の名か……良い名じゃの。まぁ我のナトラという名には及ばぬがな!」
「みど……ナトラは新しい名前で呼び合いたいの?」
「うむ。せっかく数百年ぶりに人間社会におるのじゃから、我は今の生活をめいいっぱい楽しみたいのじゃ。なんじゃったのかのぅ、ごーにいってはごーにしたがえ? アミレスもそんな事を言うておったわい」

 郷に入っては郷に従え、かしら。そんな一度や二度しか使った事ない言葉をよく覚えてたわね。

「……──君が、そう望むのなら。無理に魔界に連れて行く事も叶わなかったし……これから先の未来はずっと君と共に在ると決めたから、僕はナトラのやり方に合わせるよ」
「本当か? 本当の本当に、これからは我と共にいてくれるのか?」
「うん。これまでずっと独りにしてごめんね」
「よい、よいのじゃ。こうしてまた兄上と再会出来たのじゃから! 我はオトナじゃから、過去の事は水に流せるのじゃよ!!」

 ナトラは満面の笑みで黒の竜──……クロノに抱き着いた。
 私達を置いて、二体の竜は兄妹愛を確かめ合う。この空間には、話し合いどころじゃない空気が流れていた。
 そこに、かき氷やティーセットをワゴンに乗せて運ぶアルベルトが現れた。彼の背中や頭部からはあの悪魔っぽい特徴が無くなっていたものの、その瞳だけは変わらず不気味なまま。どうやらあの角や羽は出し入れ可能らしい。

 アルベルトが、人数分のかき氷を机に置いていく。ナトラが瞳を輝かせてそれを頬張ったので、クロノもそれに倣うようにかき氷を食べ、目を丸くして首を傾げていた。
 アルベルトは自分とイリオーデの分は用意してなかったようで、紅茶の用意を済ませるとそそくさと長椅子ソファの後ろに控えた。
 紅茶とかき氷で軽いお茶会状態となり、場が温まって来たところで話を再開する。

「ごほん。クロノさんは、まだ人類を滅ぼすおつもりなのでしょうか?」
「当たり前だ。僕達は、それ程の仕打ちを人間共から何度も受けて来たからな」
「成程……じゃあ、あの、一つ提案なのですが」

 竜種に対して人間がどれ程の裏切りを重ねて来たのか、まだこの世界に生まれ変わって八年とかの私には全然分からない。
 だけど、ナトラの様子やクロノの憎悪から鑑みるに、相当人間はやらかしてきたらしい。その憎悪を完璧になくす事などまず不可能。それこそ世界を滅ぼすまでその復讐の炎は消え去らない事だろう。
 だが、それは私達にとっても困る事。竜達からすれば酷く自分勝手な考えだと罵られそうだが、これは人間サイドなら誰だって同じ思いだ。
 だからこそ、私は提案する。

「人類を滅ぼし世界を破壊するだけで終わらせていいのですか? あなたの憎悪は、そんな一瞬で終わらせてもいいものなのですか?」
「──は?」

 私の言葉が予想外だったのか誰もが唖然としている。この冷えきった空気など気にせず、私は語り続けた。

「人間を滅ぼしたい程憎いのでしょう? なら、考えうる限り最も苦しむ方法で死よりも深い絶望を味合わせてやった方が、スッキリする・・・・・・と思いませんか?」
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