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第四章・興国の王女
301.ある側近の懊悩2
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「はい。では、比較的良い情報からにします。実は先日、妹との交流を図るべく二度目のお茶会を行ったのですが」
え、そんな事してるんですかこの人。何ですかその興味惹かれる催し事は。第三回があれば見に行きたい……!
「一度目のお茶会と比べ、会話が増えました。そこで判明したのですが……どうやらアレは皇位に欠片も興味が無いようです。『兄様の覇道の邪魔はしませんので、貴方も私の邪魔はしないでくださいます?』と言われました」
何とも微笑ましい報告だ……と思うも束の間、サラッと目玉が飛び出るような会話をしていた事が明らかになる。
一年前より、フォーロイト帝国の社交界はシャンパージュ家とララルス家を筆頭にした王女派と、元々社交界の大半を占めていた皇太子派の二つに分かれ、二極化していた。
それまで、皇位争いがないからと中立の立場に立っていた二つの侯爵家と、帝国建国初期からずっと中立であり続けた伯爵家。その三つの家門が突如として、砂上の楼閣だった王女殿下を支える強固な要塞となる事を選び、皇太子派との対立を選んだ。
何が恐ろしいって、ララルス家と仲の良いオリベラウズ家とフューラゼ家までララルス家の影響で王女派に傾き、最近ではテンディジェル家までもが王女派に与したと噂されている。
つまり、帝国貴族の大半が皇太子派に属していようとも……その対抗馬となり得てしまう強い後ろ盾を、彼女は得てしまったのだ。
皇太子派が質より量ならば、王女派は量より質。まさに少数精鋭だった。王女殿下にはほんの僅かな家門しか追従していないが、その僅かな家門が一つ残らず社交界で絶大な影響力を有するものだから、始末に負えない。
そんな厄介な対抗馬が現れたから、彼女に継承権が無いと分かっていても、フリードル殿下に追従していた貴族達は酷く焦った。
もし万が一、約束されていたフリードル殿下の覇道が突如湧いて出た王女派に邪魔されでもしたら──。そう考え、王女派を何とか失脚させようとしては尽く返り討ちに遭うなんて事がこの一年で何度もあったのですが……。
「まさか、彼女はそんな重要な事をただのお茶会でサラッと言ったのですか? 一体、その一言で社交界にどれだけ影響が出る事か…………」
僕は驚きから口元を押さえた。
彼女のその一言で社交界の代理戦争は終わり、それと同時に王女派の存在意義が問われる事になる。それもその筈……本当に、王女派は突然頭角を現したのだ。
氷結の聖女の噂が帝国にも広がり始めた頃。
その噂を利用して、彼女を皇位争いに参加させようとしているのかと誰もが勘繰る程に、あまりにも鮮やかに破竹の勢いで王女派は社交界にその存在を知らしめた。
シャンパージュ家、ララルス家、ランディグランジュ家、オリベラウズ家、フューラゼ家、テンディジェル家。
これらの有力家門ばかりを自派閥に引き込んで、皇位を争うのではないのなら、王女は何を企んでいるのか──。
そう、誰もが王女派を……王女殿下を恐れる事となるだろう。フリードル殿下の覇道が約束されているにも関わらず、もしかしたらまた王女派に安寧を脅かされるやもしれない…………そんな恐怖に、怯え続けなくてはならなくなるのだ。
一度生まれたが最後、完全に滅するまでは延々と恐怖を振り撒き続ける存在。それが──フォーロイト帝国が社交界の、王女派閥である。
だからこそ事の真相が酷く呆気ないものに思える。ララルス侯爵とシャンパージュ伯爵がそんな派閥を作った理由が、『王女殿下を権謀術数から守りたいから』と言うものですからねぇ。
派閥の主導者が、王女殿下の為に爵位簒奪をした女侯爵と絶対中立を捨てた伯爵なだけはありますよ。こんな事、貴族達が聞いたら怒髪天を突きそうだ。
「妹の派閥の真意は未だ図りかねてますが、本人にその意思が無いので皇位継承に関しては何の問題も無いかと。妹がああもハッキリと『邪魔はしない』と断言したという事は、王女派の貴族達も僕の皇位継承には異論が無いものと考えております」
「……まぁ、そうですね。所感ですが……恐らくはフリードル殿下が王女殿下に何もしない限り、王女派の貴族達も異論は無いと思いますよ。王女派の貴族は損得勘定ではなく人情で動く者が多いようなので」
というか人情で動きすぎなんですよ。特にシャンパージュ家は。調べさせた所によると、彼女の為だけに技術革命を起こしていましたし。更には彼女に巨大鉱山を丸々一つ譲渡するし。
こんな事誰が予想出来ましたか?
まさか、これまで不可能と言われていた魚介類の長期間の鮮度維持を可能にするなんて……しかもその為だけの新たな移動技術まで開発して。本当におかしいですよあの家門。国の為ではなくただ一人の王女の為にやっている辺り本当におかしい。
何より、そんな軽い革命すら起こせる家門をそこまで心酔させた彼女が末恐ろしい。そりゃあ、皇位継承権も無いのに思わぬ対抗馬として警戒される訳だ。
(……ふむ。ならば、妹を殺すのは僕が皇位を継承してからの方がいいか。流石に、あれだけの家門を同時に相手にするのは骨が折れるだろうからな)
彼女の規格外のカリスマに思わず苦笑いを浮かべていると、フリードル殿下がまたとんでもない事を考えていて。
ああ……結局、彼等は彼女を殺そうとするのか。
そう、物悲しい思いになりつつも、僕は話を進めようと気持ちを切り替える。
「それで……比較的悪い情報、とは?」
僕の問に、フリードル殿下は真剣な面持ちで重々しく口を開く。
「魔界の扉が、かなり開いているようです」
「──ッ! 魔界の扉が……!?」
「以前、個人的な興味から部下に魔界の扉を調査して来るよう命じました。その調査から戻って来た部下の報告によると、既に中級程度の魔物が白の山脈内を闊歩しているようで、このまま魔界の扉が開かれていけば……魔物の行進が発生する可能性すらもあります」
「まさか、我々の代で魔物の行進が発生するなんて…………今すぐ対策を練らなければなりませんね」
フリードル殿下から聞かされるまさかの話に、僕は頭を働かせた。今後どうするべきかを簡単に考えていたのだ。
「ひとまず、これだけ伝える事が出来て良かったです。お忙しいでしょうに、引き止めてしまい申し訳ございませんでした」
「フリードル殿下の機転で、魔物の行進の対策を練る事が出来るのですからそう謝らないで下さい」
小さく顎を引いたフリードル殿下に、すかさず頭を上げるようフォローを入れる。
話が終わったからと、フリードル殿下は挨拶もそこそこに仕事に戻ったようだ。暫くは彼の背中を見送っていたが、ある程度時間が経ってから僕も自身の執務室に向かう。
そして──、
「……仕事が増えた。でも、やらなければ」
執務机上の仕事の山を見て、覚悟を決める。
どうしても無視出来ない大事件の可能性を前に、仕事がどうのと泣き言を言っている暇なんて無かった。今から急いで魔物の行進について洗い直し、対策を陛下に進言しなければ。
そうやって……僕は、まだ暫くは徹夜覚悟だと下位万能薬を常備し、いくつもの仕事を同時進行で捌いてゆくのだった。
え、そんな事してるんですかこの人。何ですかその興味惹かれる催し事は。第三回があれば見に行きたい……!
「一度目のお茶会と比べ、会話が増えました。そこで判明したのですが……どうやらアレは皇位に欠片も興味が無いようです。『兄様の覇道の邪魔はしませんので、貴方も私の邪魔はしないでくださいます?』と言われました」
何とも微笑ましい報告だ……と思うも束の間、サラッと目玉が飛び出るような会話をしていた事が明らかになる。
一年前より、フォーロイト帝国の社交界はシャンパージュ家とララルス家を筆頭にした王女派と、元々社交界の大半を占めていた皇太子派の二つに分かれ、二極化していた。
それまで、皇位争いがないからと中立の立場に立っていた二つの侯爵家と、帝国建国初期からずっと中立であり続けた伯爵家。その三つの家門が突如として、砂上の楼閣だった王女殿下を支える強固な要塞となる事を選び、皇太子派との対立を選んだ。
何が恐ろしいって、ララルス家と仲の良いオリベラウズ家とフューラゼ家までララルス家の影響で王女派に傾き、最近ではテンディジェル家までもが王女派に与したと噂されている。
つまり、帝国貴族の大半が皇太子派に属していようとも……その対抗馬となり得てしまう強い後ろ盾を、彼女は得てしまったのだ。
皇太子派が質より量ならば、王女派は量より質。まさに少数精鋭だった。王女殿下にはほんの僅かな家門しか追従していないが、その僅かな家門が一つ残らず社交界で絶大な影響力を有するものだから、始末に負えない。
そんな厄介な対抗馬が現れたから、彼女に継承権が無いと分かっていても、フリードル殿下に追従していた貴族達は酷く焦った。
もし万が一、約束されていたフリードル殿下の覇道が突如湧いて出た王女派に邪魔されでもしたら──。そう考え、王女派を何とか失脚させようとしては尽く返り討ちに遭うなんて事がこの一年で何度もあったのですが……。
「まさか、彼女はそんな重要な事をただのお茶会でサラッと言ったのですか? 一体、その一言で社交界にどれだけ影響が出る事か…………」
僕は驚きから口元を押さえた。
彼女のその一言で社交界の代理戦争は終わり、それと同時に王女派の存在意義が問われる事になる。それもその筈……本当に、王女派は突然頭角を現したのだ。
氷結の聖女の噂が帝国にも広がり始めた頃。
その噂を利用して、彼女を皇位争いに参加させようとしているのかと誰もが勘繰る程に、あまりにも鮮やかに破竹の勢いで王女派は社交界にその存在を知らしめた。
シャンパージュ家、ララルス家、ランディグランジュ家、オリベラウズ家、フューラゼ家、テンディジェル家。
これらの有力家門ばかりを自派閥に引き込んで、皇位を争うのではないのなら、王女は何を企んでいるのか──。
そう、誰もが王女派を……王女殿下を恐れる事となるだろう。フリードル殿下の覇道が約束されているにも関わらず、もしかしたらまた王女派に安寧を脅かされるやもしれない…………そんな恐怖に、怯え続けなくてはならなくなるのだ。
一度生まれたが最後、完全に滅するまでは延々と恐怖を振り撒き続ける存在。それが──フォーロイト帝国が社交界の、王女派閥である。
だからこそ事の真相が酷く呆気ないものに思える。ララルス侯爵とシャンパージュ伯爵がそんな派閥を作った理由が、『王女殿下を権謀術数から守りたいから』と言うものですからねぇ。
派閥の主導者が、王女殿下の為に爵位簒奪をした女侯爵と絶対中立を捨てた伯爵なだけはありますよ。こんな事、貴族達が聞いたら怒髪天を突きそうだ。
「妹の派閥の真意は未だ図りかねてますが、本人にその意思が無いので皇位継承に関しては何の問題も無いかと。妹がああもハッキリと『邪魔はしない』と断言したという事は、王女派の貴族達も僕の皇位継承には異論が無いものと考えております」
「……まぁ、そうですね。所感ですが……恐らくはフリードル殿下が王女殿下に何もしない限り、王女派の貴族達も異論は無いと思いますよ。王女派の貴族は損得勘定ではなく人情で動く者が多いようなので」
というか人情で動きすぎなんですよ。特にシャンパージュ家は。調べさせた所によると、彼女の為だけに技術革命を起こしていましたし。更には彼女に巨大鉱山を丸々一つ譲渡するし。
こんな事誰が予想出来ましたか?
まさか、これまで不可能と言われていた魚介類の長期間の鮮度維持を可能にするなんて……しかもその為だけの新たな移動技術まで開発して。本当におかしいですよあの家門。国の為ではなくただ一人の王女の為にやっている辺り本当におかしい。
何より、そんな軽い革命すら起こせる家門をそこまで心酔させた彼女が末恐ろしい。そりゃあ、皇位継承権も無いのに思わぬ対抗馬として警戒される訳だ。
(……ふむ。ならば、妹を殺すのは僕が皇位を継承してからの方がいいか。流石に、あれだけの家門を同時に相手にするのは骨が折れるだろうからな)
彼女の規格外のカリスマに思わず苦笑いを浮かべていると、フリードル殿下がまたとんでもない事を考えていて。
ああ……結局、彼等は彼女を殺そうとするのか。
そう、物悲しい思いになりつつも、僕は話を進めようと気持ちを切り替える。
「それで……比較的悪い情報、とは?」
僕の問に、フリードル殿下は真剣な面持ちで重々しく口を開く。
「魔界の扉が、かなり開いているようです」
「──ッ! 魔界の扉が……!?」
「以前、個人的な興味から部下に魔界の扉を調査して来るよう命じました。その調査から戻って来た部下の報告によると、既に中級程度の魔物が白の山脈内を闊歩しているようで、このまま魔界の扉が開かれていけば……魔物の行進が発生する可能性すらもあります」
「まさか、我々の代で魔物の行進が発生するなんて…………今すぐ対策を練らなければなりませんね」
フリードル殿下から聞かされるまさかの話に、僕は頭を働かせた。今後どうするべきかを簡単に考えていたのだ。
「ひとまず、これだけ伝える事が出来て良かったです。お忙しいでしょうに、引き止めてしまい申し訳ございませんでした」
「フリードル殿下の機転で、魔物の行進の対策を練る事が出来るのですからそう謝らないで下さい」
小さく顎を引いたフリードル殿下に、すかさず頭を上げるようフォローを入れる。
話が終わったからと、フリードル殿下は挨拶もそこそこに仕事に戻ったようだ。暫くは彼の背中を見送っていたが、ある程度時間が経ってから僕も自身の執務室に向かう。
そして──、
「……仕事が増えた。でも、やらなければ」
執務机上の仕事の山を見て、覚悟を決める。
どうしても無視出来ない大事件の可能性を前に、仕事がどうのと泣き言を言っている暇なんて無かった。今から急いで魔物の行進について洗い直し、対策を陛下に進言しなければ。
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