だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜

十和とわ

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第二章・監国の王女

142.狙うはハッピーエンド おまけ

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「嵐のような御方だったな……」

 専属侍女に説教をされながら皇宮まで帰って行った、現帝国唯一の王女の背中を見送りながらダルステンは呟いた。
 騎士達に持ち場に戻るよう伝えていたケイリオルは、ダルステンのその呟きに楽しげに反応する。

「間違いなく、今後の帝国の台風の目となる御方ですよ」
「へぇ、ケイリオル殿がそう言うならそうなんだろうな。で、何で僕はここに呼ばれたのかね?」

 ダルステンはケイリオルに質問を投げかけた。そう、ただでさえ裁判の後処理で忙しい彼がこの場に現れた理由、それはケイリオルに呼ばれたからだったのだ。

「アルベルトの事ですよ。彼を例の場所へと一度案内する事になっているので、司法部部署長として付き添っていただければなと」

 ケイリオルはダルステンへと返事をしながら扉を開け、部屋に足を踏み入れる。その時ダルステンは、一瞬「うげぇ」とカエルが潰れるような声を漏らしたものの、渋々それに付き合う事にした。まぁ、最初からダルステンに拒否権など無いのだが。

「それではアルベルト、貴方の終身奉仕の場所へと向かいましょうか」

 まだ赤く泣き跡が全然残る顔のアルベルトに、ケイリオルは何の躊躇いもなく宣言する。しかしアルベルトは文句一つ言わずにそれに従った。
 そしてケイリオルとダルステンに挟まれ、アルベルトは終身奉仕の場所──諜報部の部署へと向かった。

(ヌルとの約束の時間までまだ少しありますが、アレの事ですからもういるでしょう。頼んでおいた件もきちんと済ませておいてるといいですが)
(終身奉仕……死ぬまで帝国に全てを捧げて生きるんだよな……叶うなら、俺はあの御方に俺の全てを捧げたい。でもそんなの罪人には許されないか…)
(あー、僕もう帰っていいかな。まだ片付けないといけない仕事が山のようにあるんだが)

 息が詰まるような無言の空間。それはただ、それぞれが思い思いに考えに耽っていたが故に会話が発生していないだけにすぎなかった。
 しかしそれでも周囲の者達からすれば中々に異色の組み合わせ。それに無言で歩いているときた。

(なんであの人達一言も話さないんだろう)
(ケイリオル様と司法部の方って仲悪いのかな……)
(真ん中の人誰)
(あの二人に挟まれてるという事は、もしやめちゃくちゃ偉い人なのでは……?)

 すれ違いざまに城勤めの侍女や役人達が疑問符を頭に浮かべる。本当に何故か三人共話さない。全員が真顔に無言で並んで歩いているのだ。
 隷従の首輪に苦しめられていたときならばまだしも、ここ一週間近くカイルの活躍もあって隷従の首輪の効力で苦しまず、シルヴァスタ男爵の元より引き離された事もあってかなり精神面も回復したアルベルトは、今や全然人並みに話せるようになった。
 まぁ、意外と涙脆い一面のあるアルベルトはアミレスの前ではよく涙を流して言葉が詰まる事もままあったが……というか、つい先程までそうだったのだが。
 今は全然話せる。話せるがその必要が無いのでアルベルトは話さなかった。ケイリオルとダルステンが話さないからと言う理由もあるが、それ以外にももう一つ、アルベルトには話したがらない理由があった。
 自分の言葉を相手が信じてくれないかもしれない。相手の言葉が嘘なのかもしれない。シルヴァスタ男爵に騙され虐げられた恐怖トラウマから、アルベルトは人と話す事を無意識に避けていた。
 何故アミレスだけは初対面でも信じて話そうと思えたのか、彼自身にも今はまだ、分かっていない事なのである。

「こちらです、少し頭上気をつけて下さいね」

 ケイリオル案内の元訪れたのは城の大図書室。この国で随一の蔵書率を誇る大きな書庫だ。そこの一角にある早々人が寄り付かないであろう古代書の本棚で、ケイリオルが特定の本を二冊取り出しその場所を入れ替えると、本棚がまるで幻だったかのように消え始めた。
 その光景にダルステンとアルベルトが目をパチパチと瞬かせていると、ケイリオルはそう言って本棚の先に見えた通路に二人を案内した。

「って、勝手に道が塞がったぞおい…」
「アレは魔導具に近いものですからね。その時本棚の前に立っていた人間が全員通路に入ったならば、先程入れ替えた本は元通りの位置に戻り本棚も出現するのです」
「それ僕達に言ってもいいモンなのか? これ、諜報部へ続く通路とかなんだろ?」
「まぁそうですけど……貴方は口が堅いですし問題は無いかと。それに、この通路も所詮数あるうちの一つに過ぎませんからね」

 三人が通路に入ってすぐ、後方には本棚が出現して出口を塞がれた。それに驚いたダルステンに向け、ケイリオルが丁寧に…されどどこか適当に説明を行う。
 ようやく無言から解き放たれた珍道中、しかし未だに喋ろうとしないアルベルトはふと思う。

(………俺の終身奉仕の場所は諜報部と言うのか。雑用とか…出来るかな、俺。人を傷つける以外の事が、俺にちゃんと出来るのかな)

 ぎゅっ、と自分の片腕を掴みながらアルベルトは俯いた。ようやくシルヴァスタ男爵から解き放たれたアルベルトではあったが、その精神面には未だにあの男の言葉が巣食っていた。
 ──役立たず。顔と力しか能の無い男。拉致監禁や人殺し以外の事は満足に出来ない出来損ない。人としても道具としても欠陥品。
 シルヴァスタ男爵から浴びせられて来た言葉の数々がアルベルトの心に巣食い、彼を蝕む。

『貴方は何だって出来るの。貴方は何だってしていいの』

 しかし。アルベルトの脳裏に浮かぶアミレスの言葉が、その微笑みが……アルベルトを勇気づけた。

(…うん、そうだ。あの御方が言っていた。俺ならきっとやれるって………あの御方が言うのだから違い無い。きっと、俺ならやれる)

 アミレスは知らなかった……というより、予見出来なかった。あの時目の前の男を元気づける為に放った言葉が、まさか言葉通りアルベルトの何だって出来る才能を開花させる事になるなど、アミレスが知る筈もなかった。
 そう、この男──…後に自重する事を忘れ、己が目的の為に思い切りその才覚を発揮する事になるのだが、それはまだ先の話。

(頑張ろう……死ぬ事以外はかすり傷みたいなものだし、大抵の痛みには慣れてるから。どんな雑用でもこなして、あの御方の役に立てる人間になろう。間接的にでもあの御方の役に立てるのなら俺は満足だ。そしていつかエルを捜し出してエルに会って…罪を償って、最後に、あの御方の為に死にたいな)

 ふんっと鼻息を漏らしてアルベルトは決意した。かなり危うい決意である。
 そしてしばしば隠し通路を歩いていると、ようやく開けた場所に出た。そこは円形の空間で、壁には四つの扉がある。

「なんだぁ、この空間は………」

 何やら少し前の自分と同じ言葉を漏らすダルステンは、眉を顰めて周りをキョロキョロと見渡していた。そんな彼に向け、ケイリオルから説明がされる。

「見ての通りの通路ですよ。ちなみに四つ中三つの扉は外れでして、誤ってそこに入れば何処に飛ばされるか我々にも分かりません」
「何でそんな危ねぇモンが城に?!」
「我がフォーロイト帝国は元々ハミルディーヒ王国と並ぶ魔導機構カラクリの大国たるフォーロイト王国だったのですから、これはその時代の名残ですよ。帝国政に舵を切ったとは言えど、この氷の城は王国時代から使われているものですから、知られていないだけで城の内部には当時の魔導機構カラクリがかなり残っているのです」
魔導機構カラクリなんて物がまだ残ってたのか……歴史家とかが聞けば垂涎ものだろうな」
「まぁ、この通り諜報部などが結構普通に使ってしまっているので世間には公表出来ませんがね」

 そう話しながらケイリオルは右から二番目の扉を開いた。その先には更に通路が続いており、意外と長い道のりを彼等は軽い会話をしつつ進んだ。

「そうだ、アルベルトに聞きたい事があったのです」
「……何ですか?」
「生き別れの弟がいるのでしょう? 名前ぐらいは私も聞いておこうかと思いまして。さすればこちらで探す事も可能ですし」

 ケイリオルがアルベルトに会話を振ると、僅かに期待に満ちた目でアルベルトは布で隠されたケイリオルの顔を見た。そして、少し躊躇う素振りを見せつつもエルハルトの話を始めた。

「エルハルト、と言う名前で………俺とそっくりな顔をした三つ歳下の弟…です。ただ………」
「ただ?」

 妙に引っ張る言い方をするアルベルトに、ケイリオルとダルステンの視線が注がれる。

「……記憶喪失、らしくて。弟が俺と生き別れた後に、記憶喪失の弟と会った人がいて、その人から…聞いたんです。帝都に来るまでの事を、何も覚えてないって」

 まだ消えぬ痣のある整った顔の上で、眉一つ動かさずアルベルトは淡々と話した。それを聞いたダルステンは予想以上に報われない目前の男に対してやるせなさを抱く。

(生き別れの弟を捜しに地方から一人で帝都まで来て、悪人に騙されてあんな首輪嵌められた末に殺しまでやらされて……更にはその捜してる弟が記憶喪失とか、いくらなんでも虚しすぎるだろ)

 アルベルトからの事情聴取でその背景を聞いていたダルステンは、それを把握しているからこそ、あまりにも報われないアルベルトに同情してしまった。
 司法部部署長たる彼が元であろうと何であろうと罪人に同情するなど初めての事であった。今回は事情が事情なだけに、つい憐憫を感じたのだ。

「………それはとても辛いでしょう。私にも、少し覚えがありますので分かります」

 物憂げなケイリオルの言葉に、アルベルトが反応する。

「貴方も、身内に何か…」
「…そうですね。身内に色々あったのです、私も。大好きな兄とはもう………幼き頃のように話し過ごす事など、永遠に叶わなくて。それを思い出し、恥ずかしながら感傷に浸ってしまいました」

 初めて見せたケイリオルと言う男の弱みに、ダルステンは戸惑った。一人っ子で兄弟に関するそう言ったエピソードの無いダルステンは、一人いたたまれない気持ちであった。

(僕、ここにいて本当にいいのか? 場違いじゃないか? つぅか、ケイリオル殿兄弟がいたのか…あんな超人の兄弟なんだから多分そいつも相当な化け物なんだろうな)

 きっとそうに違いない。とダルステンは自分を納得させる。こうでもしていないとあまりのいたたまれなさに胃が痛くなりそうなのだ。
 しんみりとした空気の中彼等は進み、ようやく目的地へと到着する。謎の扉を開けるとそこには一人の老人が立っていた。
 ケイリオルが軽く会釈をすると、その老人もまた同じように会釈を返した。

「ケイリオル様、そちらが例の?」
「えぇ。きっと貴方も気に入る事でしょう」
「…………そうですな。儂の気に入る系統の人間のようです」

 シルバーグレーの老紳士が含みのあるにこやかな笑みをアルベルトに向ける。

「儂はヌル、諜報部の部署長をしておる者だ。これからは少年の上司となる。ああ、だが顔と名前は覚えなくて良い。この顔もいつまで使うか分からんのでな」
「……はい、分かりまし…た?」
「諜報部の人間は仕事柄普段から変装をしている者が大半だ。それ故、相手の顔や声が変わる事など日常茶飯事。我々は他者の細かい癖や心音などから相手を特定する必要がある。だから顔と名前は覚えんで良い……まぁ、名前ぐらいは覚えておいた方が良いかもしれんが」

 カッカッカッ! とその紳士的な見た目にそぐわない豪快な笑い声を上げて、ヌルは顎髭を撫でる。目の前で分かりやすく困惑しているアルベルトを見て楽しんでいるようだ。

「こら、ヌル。そう捲し立てては彼も戸惑うでしょう。ただでさえ人手不足の諜報部に来た期待の新人が逃げ出したらどうするんですか」
「む、それは困りますな。折角、彼奴にも話の通じる後輩が出来ると思っておったのに」
「…ああ、ではやはり?」
「このような事が起きるとは、いやはや。世間とは存外狭いものですな」

 ケイリオルとヌルが二人の世界で談笑する。話に追いつかず、それをボーッと眺めていたダルステンは思う。

(──僕、もう帰っていいか?)

 だがそれは叶わない。ヌルの案内でアルベルト達はついに諜報部の部署へと足を踏み入れる。存在する事だけは皆知っているが、何処にあるかなどは誰も知らない最も謎に包まれた部署、諜報部に。
 中はどこにでもあるような普通の職場。多くの机が並び、その上には乱雑に資料が置かれている。そして、人っ子一人誰もいない。

「ハハハ、実は現在諜報部所属の者の多くが任務で出払っておってな。紹介などは奴等と会い次第進めよう」
「分かりました」

 物分りのいいアルベルトに満足しつつ、ああそれでな、とヌルは続ける。

「だが誰も先輩を知らないというのは些かどうかと思ってな。少年と同じように闇の魔力を持つ者がうちにも丁度いたので、それを少年の教育係とする事にしたのだ。おい、出番だぞ」
「──はい」
(俺以外の闇の魔力所持者……凄いな。そんな偶然、が──……)

 ヌルの言葉に呼ばれ、部屋の奥にある扉から一人の男が出てきた。黒い髪に灰色の瞳。とても色白で整った顔の男。
 その人を認識した瞬間、アルベルトの瞳は見開かれた。彼の脳が、口が、瞳が反応するよりも先にアルベルトの体が動き出した。

「僕は諜報部所属、偽名コードネームサ──っ!?」
「エルッ!!」

 その男が名乗ろうとした時、アルベルトは男に抱き着いていた。自分よりも少しだけ小さい、自分とそっくりな男を……アルベルトは涙を浮かべ、体と声を震わせて抱き締めていた。
 男は困惑する。だが、どうしてだろうか。

(…………分からない、どうして、僕はこの人を…引き剥がせないんだ)

 男は、初対面にも関わらず知らぬ名を叫びながら抱き着いて来たこの不審者を拒めなかった。それどころか受け入れていた。

「エル、エル……っ! まさ、か…こんな所で、会える……なんっ、て…!!」
(エル──…どうしてか、とても聞き馴染みがある。それにこの人も……分からないけど、僕はずっと、この人に会いたかった気がする)

 今日だけで枯れてしまう程に涙を流すアルベルトにつられてか、男も光を宿す灰色の瞳に小粒の涙を浮かべた。それで色白の頬を濡らし、男は無意識のうちに呟いていた。

「にい、ちゃん」
「エル? エル、そうだよ。兄ちゃんだよ。ごめん、ごめん……! 今までずっと、捜し出せなくて…っ、こんな弱くて愚かな兄ちゃんで、ごめんなぁ……!!」
「…………ああ、そうか。貴方は、僕の兄ちゃん…なのか」
(やっぱり記憶が無い…でも、こうしてエルと会えただけで、俺は……っ)

 完全なる無意識領域の言葉。それを発した男は、どうしてだかその言葉に深く納得していた。涙を流し、目の前の初対面の筈の男を抱き締めて男は思う。

(この人を兄ちゃんと言った瞬間、どうしようもなく愛おしいと思えた。ずっとずっと探していた宝物を見つけ出せたような、そんな気分だ。あの時からずっと何処かに無くしていた僕の心の穴は、きっと──…この人なんだ。記憶が無くても、忘れていても分かる。僕はこの人の事が大好きだったんだ)

 例え記憶が喪われていたとしても。彼の心の奥底に眠る家族への愛は確かに残っていた。記憶喪失と同時に無意識領域に押し込められ、彼自身認識出来なくなっていたそれが、かけがえの無い家族との出会いで解き放たれた。
 彼の偽名コードネームはサラ──その本名はエルハルト。九年ぶりに生き別れの兄と再会し、これから徐々にその記憶と失われた時間を取り戻してゆく事になる。
 至近距離で闇の魔力の暴走を受け、同じく闇の魔力を持つからか生き残ったエルハルトは代償とばかりにその記憶を奪われ、愛情を心の奥底に封じられた。だがしかし、九年という時間を経てエルハルトはそれらを取り戻す。
 あの日の償いのように、最愛の兄の存在によって。心に抱えていた喪失感を失い、その代わりに彼は兄への愛情を記憶と共に思い出したのだ。

(は…? 処罰の結果諜報部に行く事になった奴が、たまたま諜報部にいた生き別れの弟と再会するとか………おいおいおい、どうなってんだそれ、偶然にしちゃ出来すぎだろ?!)

 兄弟の感動の再会。それを目の当たりにしたダルステンは驚愕を顔に浮かべながら当惑した。

「……驚くべき事に、これらは全て偶然なのです。恐らくは誰かの意図によって捻じ曲げられた必然なのでしょう、しかし我々の視点では、どう足掻いてもこれは偶然でしかないのです」

 まるでダルステンの思考を読んだかのように、ケイリオルが小声で語る。しかし、その顔は未だに真っ直ぐ兄弟の熱い抱擁へと向けられている。

「っ、あんたは知ってたのか…この事」
「ええ、初めてアルベルトを見た時に見覚えのある顔だ、とは思っていたのですが…事情聴取の際に彼の話を聞き、確信しました。八年前にヌルが連れて来た記憶喪失の少年と彼の捜す弟が同一人物だと。なのでいつか機を見て再会させてやれればと思っていたのですが……まさかアルベルトが諜報部に行く事になるとは思わず」
「それが決まってからケイリオル様より儂の方に命令が下りたんだ。『今度そちらに新人が入る事になるので、その教育係にはサラを用意して下さい』ってな」
「じゃあ諜報部の、あんたも……」
「ケイリオル様が儂にわざわざあんな命令を下したからには、な。新人が気になって夜中にこっそり地下監獄まで見に行った所、見事予想通りだったと言う訳だ」

 あまりにも意味不明で信じられないような偶然に、ダルステンは息を飲んだ。限りなく奇跡に近い偶然。そんなものが目の前で起きたのだから当然だ。

(……やはり、どうにもこれをただの偶然と片付けるにはあまりにも…)

 誰もが奇跡的な偶然だと思う中、ケイリオルだけはこれを必然だと疑っていた。だがそれを確信に至らせる情報材料が足りない。そんな、拭い切れない疑念だけがケイリオルの中に残る。

(──まさか、ね…)

 ふとケイリオルの脳裏をよぎる一人の少女の顔。この事件に一番深く関わる彼女が意図した偶然なのでは、とケイリオルは考えたのだが………流石に無理のある事かと彼は結論づける。
 その判断が誤りである事など、この時のケイリオルには知る由もない事であった。

「エル…っ、これからは、ずっと…ずっと一緒にいような……!」

 アルベルトはエルハルトを力強く抱き締めて、大粒の涙と共にそう繰り返した。そんな号泣する男の肩で、エルハルトは「うん」と幸せそうに微笑んだ。
 こうしてアルベルトの望みは叶った。誰も気づかぬような水面下で仕組まれた偶然により、奇跡的な再会を果たしたのだ。
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