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第二章・監国の王女
123,5.ある殺人鬼の切望
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「心臓を刺さした相手が逃げ出したぁ? 何ふざけた事を言ってるんだ貴様は!!」
「申し訳、ございません……ですがこれが事実で」
「黙れ! 命令もまともにこなせない屑が!!」
「ッ!」
醜い男の怒号と人の肌が叩かれた音が、夜闇に暮れる室内に響く。
男に頬を叩かれたその者は、赤く腫れた頬に手を当てて力なく項垂れる。その際に目深に被っていたローブがズレ落ち、その顔が外界に晒される。
色の無い黒髪に、光の無い灰色の瞳。何度も何度も暴力を振るわれているのか青痣だらけの顔。しかしその顔は一般的に見ても整っている。
そしてその首元には趣味の悪い不気味な首輪。それは、他者を強制的に隷従させる違法の産物。
この者は隷従の首輪なる物でもって、この男に支配されていた。
「全く……赤しか見えない貴様の為にわざわざ赤髪の人間を探し出してやってると言うのに! シャンパージュ伯爵夫人ぐらいさっさと殺さんか! 失敗したなら失敗したと言え、下手な言い訳など我輩には通じんぞ」
偉そうな口調の男は唾を飛ばし、懐から鞭を取り出した。それは男が躾をする時に用いる鞭。その鞭を見た黒髪の青年はビクッ、と恐怖から無意識に体が反応する。
もう何度されたかも分からない躾──と称された男の憂さ晴らし。その痛みや恐怖を思い出し、青年は顔を青ざめさせ、俯いた。
(……男爵は、きっと、どう言っても俺の言葉を信じてくれない。本当に、心臓を刺した筈の相手が走って逃げたのに。男爵は…俺の言葉をちゃんと聞いてくれた事なんて、一度も無かった──…)
青年は全てを諦めたように静かに目を伏せた。それはさながら、この後待ち受ける痛々しい現実から目を背けようとしているようであった。
「いいからッ、貴様はッ、我輩の命令を聞いていればいいんだ!」
床に四つん這いになる青年の背中に執拗に叩きつけられる鞭。男は醜悪で汚らしい笑みを浮かべて何度もそれを振るった。
バチンッ、ダンッ、ベチンッ、と音が鳴る。青年はその痛みから叫びたくなったが、必死に我慢した。
叫べばもっと鞭を打たれる。もっとキツい躾をされてしまう。
だから青年は耐えた。耐えて、耐えて、耐えた。涙を流し、心が壊れそうになっても。体中が悲鳴を上げても。
貴様の望みを叶えてやるから我輩の望みを叶えろ──そんな明らかに怪しい口約束に縋り、騙され隷従の首輪を嵌められても。また心が壊れそうになるぐらい、酷い目に遭っていても。
青年はずっとその口約束を信じていた。自分の望みがいつか叶うと信じて、耐え続けていた。
十分程が過ぎ、満足した男は「次は失敗するなよ」と言い残して自室に戻った。残され青年は痛みを我慢しながら、ふらつく体で自身もまた、与えられた部屋に戻った。
なんとか服を脱ぎ、まだ痛みがジンジンと残る背中に手を回すと……彼の手には僅かに血が付着した。月明かりに照らされたそれは、青年の眼によく映る。
「………っ、痛い。痛いよ……エル…っ!」
青年の瞳から涙が溢れ出す。それと同時に彼の口から飛び出たのはずっと我慢していた言葉、そして──彼を突き動かすたった一つの名。
「…にいちゃんは、いつになったらお前を…見つけてやれるのかな………会いたいよ、エル…」
まるで幼い子供のように涙を流し、寝台の上で何かに怯えるように体を丸く、縮こまらせて青年は独り言をこぼす。
色の無い世界に生きる彼が、"赤"以外の色を失った原因たる少年──それが、彼の弟のエルであった。本名をエルハルトと言い、九年程前に生き別れて以来ずっと青年が探し続けている存在。
青年と同じ黒髪に、青年より濃い灰色の瞳。顔立ちもよく似た三つ歳下の可愛い弟。
彼は生き別れの弟を探し出す為に、自分の心を壊しかけてまであの男に従っていた。そう、全ては──たった一人の家族に会いたいが為に。
青年の名はアルベルト。生まれつき色覚の魔眼というものを持ち、全ての生物の感情や状態を色で視る事の出来る少年だった。
生まれはハミルディーヒ王国との国境にほど近い小さな村。異質そのものとも言える魔眼を持って生まれたにも関わらず、それを受け入れた優しい両親と可愛い弟に囲まれてささやかながらも幸せに暮らしていた、ごく普通の少年。
しかしその幸せはある日突然壊された。野盗達によって村が襲われた。家々は焼かれ、男衆は皆殺し。女子供は野盗達にいいように弄ばれた。
そんな中で、人々の感情が色として視えるアルベルトは、その眼に映る夥しいまでの負の感情の情報量に頭が狂いそうになった。
恐怖、憎悪、悲哀、憤怒、絶望……それらがおどろおどろしい色となり混ざりあってアルベルトの眼に映る。
ただでさえ眼前に広がる地獄のような光景に心が蝕まれているのに、色覚と言う独自の情報源からその頭までもを蝕まれたアルベルトは………他の者達よりも遥かに酷く苦しんでいた。
狂いそうな程痛む心と頭に、アルベルトは何も出来ず苦しんでいた。もう後僅かでも負荷がかかれば壊れてしまいそうな、そんな寸前の状態にまで至っていた。
そこに最後の追い討ちがかけられる。
『やめろ! 兄ちゃんに手を出すな!!』
当時まだ九歳とか八歳であった弟が、アルベルトを庇い野盗の攻撃を受けた。自分が守るべきだったその存在より溢れ出す真っ赤な血。
それを強く、鮮明に見てしまったアルベルトはその瞬間。
『あ……エ、ル──』
発狂してしまった。静かに、狂うように壊れた。
彼の色鮮やかであった視界から色が喪われ、白と黒の二色に染まる。だが一つだけ、まるで目を逸らす事を許さないとばかりに鮮明に移るは、最愛の弟が流した真っ赤な血──。
色覚の魔眼より色が喪われる前代未聞の事件。それは魔力暴走とも魔力欠乏ともまた違う、過剰反応。
彼の一時的な精神崩壊により誘発された、彼の持つ闇の魔力の暴走。それにより彼の中にあった魔力が欠乏寸前まで消費された。
ほんの一瞬の事であったが、彼の持つ全ての力が限界まで酷使された事による反動……それにより起きたものが色覚の喪失という過剰反応だ。
暴走した彼の闇の魔力は辺りを包み込み、野盗達はそれにより死んだ事だろう。
『……エ、ル………っ?!』
次にアルベルトが目を覚ました時。アルベルトは見知らぬ大人達に囲まれていた。その大人達は帝国の騎士であり、そこはアルベルトの住んでいた村からもそう遠くはない地方の砦であった。
『目が覚めたかい? 良かった、君に色々と話が聞きたかったんだ』
(──何だ、この目。まるで作り物のような……)
『まず君の名前を聞いていいかな?』
(こんなにもやつれて…それ程に凄惨な事があの村では…)
騎士達は目を覚ましたアルベルトに優しく語りかけた。その胸中には目前で弱々しく息をする幼い少年への同情があった。
しかし、アルベルトは困惑していた。今まで眩い程彩やかだった世界から色が喪われていたから。
『名前…はアル、ベルト……エルはっ、弟は無事ですか?!』
だが色が喪われた事よりもアルベルトにとって重要な事があった。それはあの時自分を庇って怪我を負ったエルハルトの事。
光を失った濁る灰色の瞳で、必死に弟の事を聞いて来たアルベルトに……騎士達は顔を見合わせて眉尻を下げた。
『君の弟……と思しき子供は見つかっていない。そもそも、あの村には君以外の生き残りはいなかったんだ。こんな事を急に言ってはいけないと思うけれど…君以外の全ての大人も子供も死んでいたんだ』
『──そん、な…』
『弟君…ええと、エル君だったかな? 念の為にどんな見た目なのか教えて貰ってもいいかい? あの場にいなかったという事は、どこか別の場所にいる可能性もあるからね』
申し訳なさそうに語る騎士の言葉に、アルベルトは絶望した。その顔からも色が失われ、どんどん青白くなってゆく。
それを見兼ねた騎士の一人が、何とか気を取り直してもらおうとアルベルトにそんな希望を見せた。
アルベルトはその希望に縋ろうと、ポツリポツリと話し始めた。
『……俺と同じ、黒い髪に、灰色の目で…首元に二つ、黒子がある………九歳の弟。名前は、エル…ハルト』
『エルハルト君というんだね。分かった、おじさん達の方でも探してみるよ』
『っ! お願い、します……っ! エルは、俺を、庇って……!!』
瞳を潤わせて涙ながらに懇願する少年。その姿を見た騎士達は、あの村で何があったのかを聞くに聞けなかった。
(………詳しい話は、また後にしよう。家族も村の人達も皆殺しにされたんだ、その上生きている可能性のある弟が行方不明なんて…子供には耐えられまい)
(まだ暫く時間を置く必要がありそうだな、とりあえずエルハルト君の捜索を始めておこう)
(ああ、頼んだ)
騎士達が小声で話す。ある程度の方針を決めた所で、騎士達は『おじさん達は一旦仕事に行くから、何かあったら気軽に呼んでくれ』と言い残しアルベルトを一人にしてあげる事にした。
砦の中、アルベルトの休む部屋より離れた場所で騎士達は話す。
『…なぁ、この件についてどう思う。あの通報……闇の魔力の暴走なんてものが本当に起きたと思うか?』
『結局それを報せた老人とやらも、辺りを探しても見つからなかったからな。エルハルト君…が本当に行方不明なら、その通報者の老人が連れて行った可能性が………』
『もしもだ。もし、エルハルト君が闇の魔力を持っていて、それが暴走してあの村の人達を皆殺しにしたのなら──』
『……我々は、アルベルト君の弟を捕まえねばならない』
『クソっ………ただでさえ酷い目に遭ったってのに、これ以上あんな子供に苦痛を味わえってのかよ……!』
『仕方ないだろう、それが私達の仕事なのだから』
やるせない面持ちで話す騎士達。
闇の魔力とは希少属性に類する魔力であり、その主な力は精神破壊。人間性を破壊する事も可能な恐ろしい魔力…それが闇の魔力だ。
闇の魔力を持つ者は幼い頃より厳しい魔力操作の訓練を受けなければならないとされる所以であった。しかしこのような地方の村でそのような訓練を受けられる筈もない。
アルベルトとエルハルトは兄弟二人揃って闇の魔力を持っていたのだが…今まで不思議とそれが暴走した事は無かった。
しかし。そのツケが回って来たかのように、アルベルトの精神崩壊によって魔力暴走が誘発された。
闇の魔力を用いた他者の殺害はフォーロイト帝国において重罪に問われる事柄であり、一部を除いた村の死体は全てがその精神を破壊され死に至った。
その有様と『闇の魔力が暴走した』という謎の通報から、騎士達は行方不明となっているエルハルトが闇の魔力を持ち、それが暴走したが故に姿を眩ませている──と考えたのだ。
当たらからずも遠からず。エルハルトも確かに闇の魔力を持ってはいるものの、今回のそれはアルベルトの仕業であった。
だがアルベルトにはその自覚が無い。それが、この問題を難解さを助長するのであった。
アルベルトにも闇の魔力があると知った騎士達は、身寄りも無く希少な魔力を持つアルベルトを守ろうと、砦に住まわせる事にした。
相も変わらずエルハルトの行方は知れず、アルベルトは砦で騎士達に様々な事を教わりながらエルハルトが見つかったという報せを待ち続けていた。
アルベルトが赤以外の色を認識出来ないと分かっても、騎士達は気味悪がったりせず、それ程のショックをあの時…と彼に同情するだけであった。
ほんの一本の細い線で引っ張られてなんとか立って生きている。周囲の人間にそんな錯覚さえ引き起こさせる程、アルベルトはギリギリの状態で生きていた。ただ弟と会いたいという一心で。
そんな彼の為に騎士達は少しでも早く見つけてやりたいと思いつつ、もし見つけたら自分達はエルハルトを捕まえねばならない。という同情と使命とで板挟みとなっていた。
アルベルトが騎士達の元でただ一つの報せを待ち続ける事およそ八年……ついにその時が来た。
帝都の実家に帰っていた騎士がたまたま、帝都でアルベルトによく似た男を見たという。ただ、目深にローブを羽織っていて、一瞬しか顔が見られなかったから詳しくは分からないと。
それを聞いたアルベルトは一目散に帝都に向かった。騎士達の制止も聞かず、馬を走らせ、二ヶ月近くかけて帝都まで行った。
そして始めてで右も左も分からない帝都で彼は必死にエルハルトを探した。道行く人達にこの顔を知らないかと、不器用にも何度も聞き込んで。
『折角、ようやく手がかりが見つかったと思ったのに…っ、エル……どこにいるんだ…!』
結果は振るわず、物陰で縮こまって途方に暮れていた時。アルベルトは一人の男に声をかけられた。
『何か困ってるのか?』
いかにも意地の悪そうな顔をした裕福そうな男が、侮蔑を含んだ視線でアルベルトを見下す。
実直な騎士達に囲まれて暮らしていたアルベルトは、腹の探り合いというものを知らなかった。その為、馬鹿正直に話してしまった。
『………弟を、捜してるんです。生き別れた弟が、帝都にいると聞いて…』
『ほぅ、人捜しか。ふむ………どうしてもと言うのならば、我輩が捜してやっても構わんぞ』
『っ?! 本当ですか!? 本当に、本当に弟を捜してくれるのならっ、俺に出来る事は何でもします! だからどうか、弟を………ッ!』
(──何でも? こやつ…まぁまぁ女ウケの良さそうな顔をしておる。これを使って女共を……)
藁にもすがる思いで見知らぬ男に縋りついたアルベルト。そんなアルベルトの顔を見て良からぬ企みを思いついた男は、気味の悪い三日月を口元に描く。
『貴様の望みを叶えてやるから我輩の望みを叶えよ、良いな?』
『っはい!』
(ああ、これで、ようやくエルが見つかるんだ……!)
アルベルトは強く感謝した。弟と再会出来ると未来を信じ、喜んでいた。
──しかし。それはぬか喜びとなる。男はこの後アルベルトを騙して隷従の首輪を嵌め、そして一年以上自身の欲求発散が為にアルベルトに様々な事を行わせた。
それは犯罪のオンパレード。アルベルトの精神をどんどん摩耗させてゆく程の大罪ばかり。
どれだけアルベルトがそれを拒否しても、隷従の首輪の所為でそれは叶わない。
ある時アルベルトが闇の魔力を持つと知った男は、これ幸いとばかりにより一層犯罪行為にのめり込んだ。いとも容易く行われる、目も当てられないような無惨な行為の数々。
闇の魔力で隠密行動や証拠隠滅等が可能であったアルベルトは、当然のようにそれらの悪事の片棒を担がされた。
何度も何度も自らの心を闇の魔力で壊してしまおうと考えたアルベルトであったが、ただ一つ、『エルに会いたい』というその願いの為に何とか耐えて来た。
「…エル………こんな兄ちゃんで、ごめんな……」
──だが、もう、限界だ。
男の悪趣味な連続殺人計画。意味深に置かれたトランプはただいたずらに世間を怯えさせる為だけに置かれたものであり、被害者の選定基準はアルベルトが認識出来るようにと赤髪の人間を選んだだけに過ぎない。
そう、この事件にはなんの意味も無い。ただあの悪趣味な男が自分の欲を満たす為だけにアルベルトを顎で使った、最悪の殺人事件なのだ。
男はこの事件が終われば今度こそ弟を見つけてやると、もう何度目かも分からない言葉をアルベルトに与えた。だがもうアルベルトの心は限界であった。
擦り切れ崩壊する寸前で、何とかエルハルトへの思いで耐えているだけに過ぎない。もしまた崩壊し暴走したならば──今度こそ、彼は死に至るだろう。
「…だれっ…か………たす、けて……っ」
涙を流し、アルベルトは泡のように消えてしまいそうな声で言紡いだ。
それは、誰かの醜悪な欲望によって悪へと仕立てあげられた、悲しき殺人鬼の心からの叫びであった───。
「申し訳、ございません……ですがこれが事実で」
「黙れ! 命令もまともにこなせない屑が!!」
「ッ!」
醜い男の怒号と人の肌が叩かれた音が、夜闇に暮れる室内に響く。
男に頬を叩かれたその者は、赤く腫れた頬に手を当てて力なく項垂れる。その際に目深に被っていたローブがズレ落ち、その顔が外界に晒される。
色の無い黒髪に、光の無い灰色の瞳。何度も何度も暴力を振るわれているのか青痣だらけの顔。しかしその顔は一般的に見ても整っている。
そしてその首元には趣味の悪い不気味な首輪。それは、他者を強制的に隷従させる違法の産物。
この者は隷従の首輪なる物でもって、この男に支配されていた。
「全く……赤しか見えない貴様の為にわざわざ赤髪の人間を探し出してやってると言うのに! シャンパージュ伯爵夫人ぐらいさっさと殺さんか! 失敗したなら失敗したと言え、下手な言い訳など我輩には通じんぞ」
偉そうな口調の男は唾を飛ばし、懐から鞭を取り出した。それは男が躾をする時に用いる鞭。その鞭を見た黒髪の青年はビクッ、と恐怖から無意識に体が反応する。
もう何度されたかも分からない躾──と称された男の憂さ晴らし。その痛みや恐怖を思い出し、青年は顔を青ざめさせ、俯いた。
(……男爵は、きっと、どう言っても俺の言葉を信じてくれない。本当に、心臓を刺した筈の相手が走って逃げたのに。男爵は…俺の言葉をちゃんと聞いてくれた事なんて、一度も無かった──…)
青年は全てを諦めたように静かに目を伏せた。それはさながら、この後待ち受ける痛々しい現実から目を背けようとしているようであった。
「いいからッ、貴様はッ、我輩の命令を聞いていればいいんだ!」
床に四つん這いになる青年の背中に執拗に叩きつけられる鞭。男は醜悪で汚らしい笑みを浮かべて何度もそれを振るった。
バチンッ、ダンッ、ベチンッ、と音が鳴る。青年はその痛みから叫びたくなったが、必死に我慢した。
叫べばもっと鞭を打たれる。もっとキツい躾をされてしまう。
だから青年は耐えた。耐えて、耐えて、耐えた。涙を流し、心が壊れそうになっても。体中が悲鳴を上げても。
貴様の望みを叶えてやるから我輩の望みを叶えろ──そんな明らかに怪しい口約束に縋り、騙され隷従の首輪を嵌められても。また心が壊れそうになるぐらい、酷い目に遭っていても。
青年はずっとその口約束を信じていた。自分の望みがいつか叶うと信じて、耐え続けていた。
十分程が過ぎ、満足した男は「次は失敗するなよ」と言い残して自室に戻った。残され青年は痛みを我慢しながら、ふらつく体で自身もまた、与えられた部屋に戻った。
なんとか服を脱ぎ、まだ痛みがジンジンと残る背中に手を回すと……彼の手には僅かに血が付着した。月明かりに照らされたそれは、青年の眼によく映る。
「………っ、痛い。痛いよ……エル…っ!」
青年の瞳から涙が溢れ出す。それと同時に彼の口から飛び出たのはずっと我慢していた言葉、そして──彼を突き動かすたった一つの名。
「…にいちゃんは、いつになったらお前を…見つけてやれるのかな………会いたいよ、エル…」
まるで幼い子供のように涙を流し、寝台の上で何かに怯えるように体を丸く、縮こまらせて青年は独り言をこぼす。
色の無い世界に生きる彼が、"赤"以外の色を失った原因たる少年──それが、彼の弟のエルであった。本名をエルハルトと言い、九年程前に生き別れて以来ずっと青年が探し続けている存在。
青年と同じ黒髪に、青年より濃い灰色の瞳。顔立ちもよく似た三つ歳下の可愛い弟。
彼は生き別れの弟を探し出す為に、自分の心を壊しかけてまであの男に従っていた。そう、全ては──たった一人の家族に会いたいが為に。
青年の名はアルベルト。生まれつき色覚の魔眼というものを持ち、全ての生物の感情や状態を色で視る事の出来る少年だった。
生まれはハミルディーヒ王国との国境にほど近い小さな村。異質そのものとも言える魔眼を持って生まれたにも関わらず、それを受け入れた優しい両親と可愛い弟に囲まれてささやかながらも幸せに暮らしていた、ごく普通の少年。
しかしその幸せはある日突然壊された。野盗達によって村が襲われた。家々は焼かれ、男衆は皆殺し。女子供は野盗達にいいように弄ばれた。
そんな中で、人々の感情が色として視えるアルベルトは、その眼に映る夥しいまでの負の感情の情報量に頭が狂いそうになった。
恐怖、憎悪、悲哀、憤怒、絶望……それらがおどろおどろしい色となり混ざりあってアルベルトの眼に映る。
ただでさえ眼前に広がる地獄のような光景に心が蝕まれているのに、色覚と言う独自の情報源からその頭までもを蝕まれたアルベルトは………他の者達よりも遥かに酷く苦しんでいた。
狂いそうな程痛む心と頭に、アルベルトは何も出来ず苦しんでいた。もう後僅かでも負荷がかかれば壊れてしまいそうな、そんな寸前の状態にまで至っていた。
そこに最後の追い討ちがかけられる。
『やめろ! 兄ちゃんに手を出すな!!』
当時まだ九歳とか八歳であった弟が、アルベルトを庇い野盗の攻撃を受けた。自分が守るべきだったその存在より溢れ出す真っ赤な血。
それを強く、鮮明に見てしまったアルベルトはその瞬間。
『あ……エ、ル──』
発狂してしまった。静かに、狂うように壊れた。
彼の色鮮やかであった視界から色が喪われ、白と黒の二色に染まる。だが一つだけ、まるで目を逸らす事を許さないとばかりに鮮明に移るは、最愛の弟が流した真っ赤な血──。
色覚の魔眼より色が喪われる前代未聞の事件。それは魔力暴走とも魔力欠乏ともまた違う、過剰反応。
彼の一時的な精神崩壊により誘発された、彼の持つ闇の魔力の暴走。それにより彼の中にあった魔力が欠乏寸前まで消費された。
ほんの一瞬の事であったが、彼の持つ全ての力が限界まで酷使された事による反動……それにより起きたものが色覚の喪失という過剰反応だ。
暴走した彼の闇の魔力は辺りを包み込み、野盗達はそれにより死んだ事だろう。
『……エ、ル………っ?!』
次にアルベルトが目を覚ました時。アルベルトは見知らぬ大人達に囲まれていた。その大人達は帝国の騎士であり、そこはアルベルトの住んでいた村からもそう遠くはない地方の砦であった。
『目が覚めたかい? 良かった、君に色々と話が聞きたかったんだ』
(──何だ、この目。まるで作り物のような……)
『まず君の名前を聞いていいかな?』
(こんなにもやつれて…それ程に凄惨な事があの村では…)
騎士達は目を覚ましたアルベルトに優しく語りかけた。その胸中には目前で弱々しく息をする幼い少年への同情があった。
しかし、アルベルトは困惑していた。今まで眩い程彩やかだった世界から色が喪われていたから。
『名前…はアル、ベルト……エルはっ、弟は無事ですか?!』
だが色が喪われた事よりもアルベルトにとって重要な事があった。それはあの時自分を庇って怪我を負ったエルハルトの事。
光を失った濁る灰色の瞳で、必死に弟の事を聞いて来たアルベルトに……騎士達は顔を見合わせて眉尻を下げた。
『君の弟……と思しき子供は見つかっていない。そもそも、あの村には君以外の生き残りはいなかったんだ。こんな事を急に言ってはいけないと思うけれど…君以外の全ての大人も子供も死んでいたんだ』
『──そん、な…』
『弟君…ええと、エル君だったかな? 念の為にどんな見た目なのか教えて貰ってもいいかい? あの場にいなかったという事は、どこか別の場所にいる可能性もあるからね』
申し訳なさそうに語る騎士の言葉に、アルベルトは絶望した。その顔からも色が失われ、どんどん青白くなってゆく。
それを見兼ねた騎士の一人が、何とか気を取り直してもらおうとアルベルトにそんな希望を見せた。
アルベルトはその希望に縋ろうと、ポツリポツリと話し始めた。
『……俺と同じ、黒い髪に、灰色の目で…首元に二つ、黒子がある………九歳の弟。名前は、エル…ハルト』
『エルハルト君というんだね。分かった、おじさん達の方でも探してみるよ』
『っ! お願い、します……っ! エルは、俺を、庇って……!!』
瞳を潤わせて涙ながらに懇願する少年。その姿を見た騎士達は、あの村で何があったのかを聞くに聞けなかった。
(………詳しい話は、また後にしよう。家族も村の人達も皆殺しにされたんだ、その上生きている可能性のある弟が行方不明なんて…子供には耐えられまい)
(まだ暫く時間を置く必要がありそうだな、とりあえずエルハルト君の捜索を始めておこう)
(ああ、頼んだ)
騎士達が小声で話す。ある程度の方針を決めた所で、騎士達は『おじさん達は一旦仕事に行くから、何かあったら気軽に呼んでくれ』と言い残しアルベルトを一人にしてあげる事にした。
砦の中、アルベルトの休む部屋より離れた場所で騎士達は話す。
『…なぁ、この件についてどう思う。あの通報……闇の魔力の暴走なんてものが本当に起きたと思うか?』
『結局それを報せた老人とやらも、辺りを探しても見つからなかったからな。エルハルト君…が本当に行方不明なら、その通報者の老人が連れて行った可能性が………』
『もしもだ。もし、エルハルト君が闇の魔力を持っていて、それが暴走してあの村の人達を皆殺しにしたのなら──』
『……我々は、アルベルト君の弟を捕まえねばならない』
『クソっ………ただでさえ酷い目に遭ったってのに、これ以上あんな子供に苦痛を味わえってのかよ……!』
『仕方ないだろう、それが私達の仕事なのだから』
やるせない面持ちで話す騎士達。
闇の魔力とは希少属性に類する魔力であり、その主な力は精神破壊。人間性を破壊する事も可能な恐ろしい魔力…それが闇の魔力だ。
闇の魔力を持つ者は幼い頃より厳しい魔力操作の訓練を受けなければならないとされる所以であった。しかしこのような地方の村でそのような訓練を受けられる筈もない。
アルベルトとエルハルトは兄弟二人揃って闇の魔力を持っていたのだが…今まで不思議とそれが暴走した事は無かった。
しかし。そのツケが回って来たかのように、アルベルトの精神崩壊によって魔力暴走が誘発された。
闇の魔力を用いた他者の殺害はフォーロイト帝国において重罪に問われる事柄であり、一部を除いた村の死体は全てがその精神を破壊され死に至った。
その有様と『闇の魔力が暴走した』という謎の通報から、騎士達は行方不明となっているエルハルトが闇の魔力を持ち、それが暴走したが故に姿を眩ませている──と考えたのだ。
当たらからずも遠からず。エルハルトも確かに闇の魔力を持ってはいるものの、今回のそれはアルベルトの仕業であった。
だがアルベルトにはその自覚が無い。それが、この問題を難解さを助長するのであった。
アルベルトにも闇の魔力があると知った騎士達は、身寄りも無く希少な魔力を持つアルベルトを守ろうと、砦に住まわせる事にした。
相も変わらずエルハルトの行方は知れず、アルベルトは砦で騎士達に様々な事を教わりながらエルハルトが見つかったという報せを待ち続けていた。
アルベルトが赤以外の色を認識出来ないと分かっても、騎士達は気味悪がったりせず、それ程のショックをあの時…と彼に同情するだけであった。
ほんの一本の細い線で引っ張られてなんとか立って生きている。周囲の人間にそんな錯覚さえ引き起こさせる程、アルベルトはギリギリの状態で生きていた。ただ弟と会いたいという一心で。
そんな彼の為に騎士達は少しでも早く見つけてやりたいと思いつつ、もし見つけたら自分達はエルハルトを捕まえねばならない。という同情と使命とで板挟みとなっていた。
アルベルトが騎士達の元でただ一つの報せを待ち続ける事およそ八年……ついにその時が来た。
帝都の実家に帰っていた騎士がたまたま、帝都でアルベルトによく似た男を見たという。ただ、目深にローブを羽織っていて、一瞬しか顔が見られなかったから詳しくは分からないと。
それを聞いたアルベルトは一目散に帝都に向かった。騎士達の制止も聞かず、馬を走らせ、二ヶ月近くかけて帝都まで行った。
そして始めてで右も左も分からない帝都で彼は必死にエルハルトを探した。道行く人達にこの顔を知らないかと、不器用にも何度も聞き込んで。
『折角、ようやく手がかりが見つかったと思ったのに…っ、エル……どこにいるんだ…!』
結果は振るわず、物陰で縮こまって途方に暮れていた時。アルベルトは一人の男に声をかけられた。
『何か困ってるのか?』
いかにも意地の悪そうな顔をした裕福そうな男が、侮蔑を含んだ視線でアルベルトを見下す。
実直な騎士達に囲まれて暮らしていたアルベルトは、腹の探り合いというものを知らなかった。その為、馬鹿正直に話してしまった。
『………弟を、捜してるんです。生き別れた弟が、帝都にいると聞いて…』
『ほぅ、人捜しか。ふむ………どうしてもと言うのならば、我輩が捜してやっても構わんぞ』
『っ?! 本当ですか!? 本当に、本当に弟を捜してくれるのならっ、俺に出来る事は何でもします! だからどうか、弟を………ッ!』
(──何でも? こやつ…まぁまぁ女ウケの良さそうな顔をしておる。これを使って女共を……)
藁にもすがる思いで見知らぬ男に縋りついたアルベルト。そんなアルベルトの顔を見て良からぬ企みを思いついた男は、気味の悪い三日月を口元に描く。
『貴様の望みを叶えてやるから我輩の望みを叶えよ、良いな?』
『っはい!』
(ああ、これで、ようやくエルが見つかるんだ……!)
アルベルトは強く感謝した。弟と再会出来ると未来を信じ、喜んでいた。
──しかし。それはぬか喜びとなる。男はこの後アルベルトを騙して隷従の首輪を嵌め、そして一年以上自身の欲求発散が為にアルベルトに様々な事を行わせた。
それは犯罪のオンパレード。アルベルトの精神をどんどん摩耗させてゆく程の大罪ばかり。
どれだけアルベルトがそれを拒否しても、隷従の首輪の所為でそれは叶わない。
ある時アルベルトが闇の魔力を持つと知った男は、これ幸いとばかりにより一層犯罪行為にのめり込んだ。いとも容易く行われる、目も当てられないような無惨な行為の数々。
闇の魔力で隠密行動や証拠隠滅等が可能であったアルベルトは、当然のようにそれらの悪事の片棒を担がされた。
何度も何度も自らの心を闇の魔力で壊してしまおうと考えたアルベルトであったが、ただ一つ、『エルに会いたい』というその願いの為に何とか耐えて来た。
「…エル………こんな兄ちゃんで、ごめんな……」
──だが、もう、限界だ。
男の悪趣味な連続殺人計画。意味深に置かれたトランプはただいたずらに世間を怯えさせる為だけに置かれたものであり、被害者の選定基準はアルベルトが認識出来るようにと赤髪の人間を選んだだけに過ぎない。
そう、この事件にはなんの意味も無い。ただあの悪趣味な男が自分の欲を満たす為だけにアルベルトを顎で使った、最悪の殺人事件なのだ。
男はこの事件が終われば今度こそ弟を見つけてやると、もう何度目かも分からない言葉をアルベルトに与えた。だがもうアルベルトの心は限界であった。
擦り切れ崩壊する寸前で、何とかエルハルトへの思いで耐えているだけに過ぎない。もしまた崩壊し暴走したならば──今度こそ、彼は死に至るだろう。
「…だれっ…か………たす、けて……っ」
涙を流し、アルベルトは泡のように消えてしまいそうな声で言紡いだ。
それは、誰かの醜悪な欲望によって悪へと仕立てあげられた、悲しき殺人鬼の心からの叫びであった───。
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