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第一章・救国の王女
78.束の間の休息4
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「よし、結界完成ー! 皆、終わったよ!」
我ながらなんと素晴らしい結界。これならきっと皆褒めてくれるだろう! ウッキウキで振り返った私に待っていたものは──
「「「「「「………………」」」」」」
──唖然とした人達による、長い沈黙だけだった。
え、何で?! 褒めてよ、私褒められてもおかしくない事したのよ! 何で誰も褒めてくれないのよ!!
むぅ………この場にシルフや師匠がいたら絶対褒めてくれたのに…『流石だねアミィ! ボクが見込んだだけはある! 天才!!』とか『やっぱ姫さんには敵わないっすわァ……恐れ入りますよホント』って褒めてくれたもん!
まぁあのヒト達は私に甘い所あるから、実はいつもお世辞で言ってただけで本当は別にそんな大した事も無かったのかもしれないけど…。
でもお世辞でも褒めてくれたっていいじゃん…私みたいなチョロい王女は適当にヨイショしとけばいいのに何でそうしないんだろうディオ達は。
接待とか忖度知らないんだろうなぁ……今度教えてあげよう。そしたら多分今度からは褒めてくれるから。うん、そうしよう。
その後、めんどくさい性格の私は全然褒めて貰えなかった事を根に持ち拗ねていた。その所為かちょっとだけつっけんどんな態度を取ってしまった。
そのまま夕食を食べそのまま荷台で一人で寝た。最初は皆と同じように外で寝ようとしたが、それだけは駄目だとリードさんとイリオーデに言われ、マクベスタが激しくそれに同意していたのでこうなった。
この荷台、座っている分には何人かいられるものの、足を広げて寝転がるとなれば…大人二人と子供一人が限界といった所。
なので私一人。シュヴァルツも一緒に荷台で寝るかと聞いたのだが、ディオとイリオーデとリードさんが駄目だと主張したので、渋々シュヴァルツも皆と一緒に外で寝る事にしたらしい。
まぁ私拗ねてたし。一人で丁度いいというか。助かるといいますか。えぇ。
そうして、私は一人きりの荷台で初めての野宿の夜を迎えた……。
♢♢♢♢
何だこれは……もしや夢か? 今日は昼寝をたっぷりしたからあんまり夜は眠れないかと思ったのだけれど。
どうやら私は夢を見ているらしい…それも、自分の姿が鮮明に見えるとても珍しい夢。
なんだろう…嫌な予感がする。
「よっ、久しぶりだな精霊の愛し子」
背後から妙に癇に障る声が聞こえて来る。ゆっくりと振り返ると、そこには顔がペンでぐちゃぐちゃに塗り潰された男が空中で胡座をかいて頬杖をついていた。
空いている手は私に向けて振られている。その口元は愉しげに弧を描いていた。
これ……あれよね、自称凄い悪魔さん。本当にまた来やがったわ。
「オイオイ。感動の再会だろ~? もっと感涙に咽び泣けよ」
は? マジで何言ってんのかしらこいつ。
「くっ…はっははは! お前本当にずりぃな、普段からそれもっと前面に出そうぜ?」
悪魔が大きな口でギザギザの歯を見せびらかすように、腹の底から笑う。
嫌よ、誰がこんな醜い内面を外に出すのよ。そんなの私は絶対無理、絶対嫌。皆に嫌われて当然だもの。
「えー勿体ねぇ…アイツ等に嫌われてもオレサマがいるから問題無いぞ、つったらお前はどうする?」
寝言は寝て言え。少なくとも、私は悪魔に魂を売るような事はしたくないわ。
悪魔に向けて言い放つ……まぁ口をパクパクしてるだけで実際には喋れていないのだけれど。どうやら夢の中では声が出ないらしいのだ。
「つまんねぇの。まぁ安心しろ、少なくともお前の魂は死ぬまで貰わねぇから。簡単に奪っちまうには惜しいからな、お前の生き様は」
………本当に何を言ってるのかしら、この悪魔。まぁ魂を取られないのならいいか。
いや待って。そもそもどうして私の夢に悪魔が現れるのかしら。魔族の中でも悪魔は召喚しない限り人間界に来ないんじゃなかったの…?
人間の夢だからノーカンとか? でも何で私の夢なんだろう、悪魔と縁があるとかかしら。まぁ確かにうちの父は魔王みたいな極悪非道な人間だけど。
「ハハッ、お前の父親は関係ねぇよ? んで、オレサマがどうしてお前の夢に干渉出来るかだったな…うーむ、まだ内緒って事でいいさな。どうせその内分かる事よ」
はぁ? 何でよ教えてよそれぐらい。
「いやァ、オレサマ達にも色々と制約があるんだわこれが。精霊共にも妖精共にもあるように魔族にもあるんだよ、制約ってのが」
悪魔が「制約の内容はどれもこれも千編一律で毎日つまんねぇったらありゃしねぇよ」と煙草を吐くようなため息と共にぼやく。
………制約って確かシルフや師匠も言ってた…それの影響で精霊さん達は人間でかなりの行動を制限されてるって言ってた。
その制約とやらが精霊だけでなく魔族や妖精にもあるというの?
「そうだなァ、神と各世界とで勝手に交わしやがったこれ以上無いくらい最悪の決まり事だ。だから精霊達は本来のものとは違う姿をしてる。特に精霊なんてものは、本来の存在で人間界に降り立てば人間にとって天災そのものだろうしな」
え、じゃあつまり私の知ってるシルフや師匠の姿は本当の姿じゃないって事……?
そうなのか、そんな事があるのか…と私は顎に手を当てて考える。それを悪魔はまじまじと見ていて。
「………お前、オレサマの事を過剰に毛嫌いする割にはオレサマの話は信じるのな。人間ってマジで意味不明だわ」
悪魔自体は胡散臭いけど、その言葉はあまり胡散臭くないから。それに…そもそも貴方が今ここで私に嘘つく理由が無いじゃない。そんな無意味な事を悪魔がする訳が無い。
そう心で思い口を動かすと、悪魔の口が小さく開いた状態で固まり、その声も体も微動だにしなかった。
私はここでふと思った。もしかしたら、先程の発言が悪魔の琴線に触れてしまったのかもしれない…と。
だとしたら不味い。すっごく不味いなぁと思いつつ私は固唾を呑んで悪魔のリアクションを待つ事にした。
「…何か杞憂してるみたいだから親切心で言っておいてやるが、別にオレサマは怒ってる訳じゃァねぇよ。ただ、なんだ……驚いただけさな」
ようやく悪魔が声を発したかと思えば、それはよく分からない内容だった。…とにかく怒ってないって事でいいのだろう、うん。
「あー…もういいわ、考えるのも億劫だ。本題に移るぞ」
悪魔はそう言いながら立ち上がり、目の前に二つの真っ白な椅子を出現させた。その片方にどっかり座り、悪魔は長くしなやかな足を組んだ。
そしてその正面、もう一つの椅子に座る事を強要してきた。何度も手招きされて断る事も出来ず、私もそこにゆっくり慎重に座る。
そして悪魔は物々しい雰囲気を纏い、腰を据えて話し始めた。
「お前が今から解決しようとしてる病…草死病っつったか。あれは病じゃねぇ、呪いだ」
っ!? ちょっと待ちなさい、どういう事なの?!
私は椅子を後ろに倒して勢いよく立ち上がった。しかし悪魔の力によって元の状態に押し戻される。それでも、どういう事なのかと悪魔を強く睨むと。
「竜の呪いだ、アレは。あの土地の地下深くに眠る緑の竜が自身の命が尽きぬよう自己防衛にと辺りに呪いを撒き散らし、人間共を植物に変えてはその魔力も運命力も生命力も全てを吸い取り、生き長らえようとしている。それが草死病の正体──だからこそアレは病では無く呪いだ」
竜の、呪い? 竜がオセロマイトにいるっていうの? そもそもどうしてこの悪魔はそんな事を知ってるのよ。
必死に頭を働かせるものの、あまり効果は無く。それを察した悪魔がご丁寧に色々と話してくれた。
「純血の竜種ってのは五体しか存在してなくてな、そのうち赤と青は数百年前に人間に討たれ、白は封印。緑と黒は行方知れずって事になってるらしい。まァ…オレサマとてこれはヒトづてに聞いただけに過ぎねぇからもうとっくに白も死んでるやもしれん。だがオセロマイトとやらに広まる呪いは竜の呪いで間違いない。これだけは明言出来るとも」
そうだ。赤と青の竜は勇者を名乗る者達が討伐した。白の竜はかつてリンデア教が総力を上げて封印した。それは歴史の授業で聞いた話だ。
しかし…確かに緑の竜と黒の竜の行く末はどの教本にも記されてなかった。本当に行方知れずとなっていたのなら…オセロマイト王国に竜がいてもおかしくはない。
だが、竜とも呼ばれる存在が死にかけた為に呪いを撒いて生き延びようとするのか……? そもそも誰がどうやって竜を死に追いやったんだ。どうしても疑問が残る。
この悪魔が草死病を竜の呪いと断言出来るその根拠も分からないし…。
「……割かしダセェから言いたくなかったんだが、オレサマも昔、竜の呪いを受けた事があるんだよ。だから竜の呪いには耐性があるし察知する能力にも長けてる。それ故、オセロマイトに近づいて来たからその病が竜の呪いだって分かった」
本当に恥ずかしいと思ってるのか、悪魔はふいっとそっぽを向きながら話した。
…竜の呪いを受けるとか何したんだろうこの悪魔。喧嘩売ったとか……? うわ不遜…。
「逆だ逆! オレサマが喧嘩売られたんだよあのクソ野郎に! 急に魔界来たかと思えば暴れだしやがって………あぁ思い出してもイラついて来た。次会ったらもう片方の腕もぶっ飛ばしてやる…ッ」
私の心の声が非常に気に食わなかったようで、悪魔は勢い良くそれに食い下がった。
そこで私は思う。緑の竜が草死病の原因でオセロマイトにいるのなら…悪魔の言う魔界に突然来たクソ野郎とやらは黒の竜なのでは?
竜程の存在が目撃情報も無く数百年行方知れずになってるのだ、別の世界に行っていたと言われれば納得出来る。
もう片方の腕『も』って言ってるという事は…つまりこの悪魔は突然魔界に現れた黒の竜の片腕をぶっ飛ばしたと…………もしかして、こいつ本当にヤバい悪魔なのでは?
我ながらなんと素晴らしい結界。これならきっと皆褒めてくれるだろう! ウッキウキで振り返った私に待っていたものは──
「「「「「「………………」」」」」」
──唖然とした人達による、長い沈黙だけだった。
え、何で?! 褒めてよ、私褒められてもおかしくない事したのよ! 何で誰も褒めてくれないのよ!!
むぅ………この場にシルフや師匠がいたら絶対褒めてくれたのに…『流石だねアミィ! ボクが見込んだだけはある! 天才!!』とか『やっぱ姫さんには敵わないっすわァ……恐れ入りますよホント』って褒めてくれたもん!
まぁあのヒト達は私に甘い所あるから、実はいつもお世辞で言ってただけで本当は別にそんな大した事も無かったのかもしれないけど…。
でもお世辞でも褒めてくれたっていいじゃん…私みたいなチョロい王女は適当にヨイショしとけばいいのに何でそうしないんだろうディオ達は。
接待とか忖度知らないんだろうなぁ……今度教えてあげよう。そしたら多分今度からは褒めてくれるから。うん、そうしよう。
その後、めんどくさい性格の私は全然褒めて貰えなかった事を根に持ち拗ねていた。その所為かちょっとだけつっけんどんな態度を取ってしまった。
そのまま夕食を食べそのまま荷台で一人で寝た。最初は皆と同じように外で寝ようとしたが、それだけは駄目だとリードさんとイリオーデに言われ、マクベスタが激しくそれに同意していたのでこうなった。
この荷台、座っている分には何人かいられるものの、足を広げて寝転がるとなれば…大人二人と子供一人が限界といった所。
なので私一人。シュヴァルツも一緒に荷台で寝るかと聞いたのだが、ディオとイリオーデとリードさんが駄目だと主張したので、渋々シュヴァルツも皆と一緒に外で寝る事にしたらしい。
まぁ私拗ねてたし。一人で丁度いいというか。助かるといいますか。えぇ。
そうして、私は一人きりの荷台で初めての野宿の夜を迎えた……。
♢♢♢♢
何だこれは……もしや夢か? 今日は昼寝をたっぷりしたからあんまり夜は眠れないかと思ったのだけれど。
どうやら私は夢を見ているらしい…それも、自分の姿が鮮明に見えるとても珍しい夢。
なんだろう…嫌な予感がする。
「よっ、久しぶりだな精霊の愛し子」
背後から妙に癇に障る声が聞こえて来る。ゆっくりと振り返ると、そこには顔がペンでぐちゃぐちゃに塗り潰された男が空中で胡座をかいて頬杖をついていた。
空いている手は私に向けて振られている。その口元は愉しげに弧を描いていた。
これ……あれよね、自称凄い悪魔さん。本当にまた来やがったわ。
「オイオイ。感動の再会だろ~? もっと感涙に咽び泣けよ」
は? マジで何言ってんのかしらこいつ。
「くっ…はっははは! お前本当にずりぃな、普段からそれもっと前面に出そうぜ?」
悪魔が大きな口でギザギザの歯を見せびらかすように、腹の底から笑う。
嫌よ、誰がこんな醜い内面を外に出すのよ。そんなの私は絶対無理、絶対嫌。皆に嫌われて当然だもの。
「えー勿体ねぇ…アイツ等に嫌われてもオレサマがいるから問題無いぞ、つったらお前はどうする?」
寝言は寝て言え。少なくとも、私は悪魔に魂を売るような事はしたくないわ。
悪魔に向けて言い放つ……まぁ口をパクパクしてるだけで実際には喋れていないのだけれど。どうやら夢の中では声が出ないらしいのだ。
「つまんねぇの。まぁ安心しろ、少なくともお前の魂は死ぬまで貰わねぇから。簡単に奪っちまうには惜しいからな、お前の生き様は」
………本当に何を言ってるのかしら、この悪魔。まぁ魂を取られないのならいいか。
いや待って。そもそもどうして私の夢に悪魔が現れるのかしら。魔族の中でも悪魔は召喚しない限り人間界に来ないんじゃなかったの…?
人間の夢だからノーカンとか? でも何で私の夢なんだろう、悪魔と縁があるとかかしら。まぁ確かにうちの父は魔王みたいな極悪非道な人間だけど。
「ハハッ、お前の父親は関係ねぇよ? んで、オレサマがどうしてお前の夢に干渉出来るかだったな…うーむ、まだ内緒って事でいいさな。どうせその内分かる事よ」
はぁ? 何でよ教えてよそれぐらい。
「いやァ、オレサマ達にも色々と制約があるんだわこれが。精霊共にも妖精共にもあるように魔族にもあるんだよ、制約ってのが」
悪魔が「制約の内容はどれもこれも千編一律で毎日つまんねぇったらありゃしねぇよ」と煙草を吐くようなため息と共にぼやく。
………制約って確かシルフや師匠も言ってた…それの影響で精霊さん達は人間でかなりの行動を制限されてるって言ってた。
その制約とやらが精霊だけでなく魔族や妖精にもあるというの?
「そうだなァ、神と各世界とで勝手に交わしやがったこれ以上無いくらい最悪の決まり事だ。だから精霊達は本来のものとは違う姿をしてる。特に精霊なんてものは、本来の存在で人間界に降り立てば人間にとって天災そのものだろうしな」
え、じゃあつまり私の知ってるシルフや師匠の姿は本当の姿じゃないって事……?
そうなのか、そんな事があるのか…と私は顎に手を当てて考える。それを悪魔はまじまじと見ていて。
「………お前、オレサマの事を過剰に毛嫌いする割にはオレサマの話は信じるのな。人間ってマジで意味不明だわ」
悪魔自体は胡散臭いけど、その言葉はあまり胡散臭くないから。それに…そもそも貴方が今ここで私に嘘つく理由が無いじゃない。そんな無意味な事を悪魔がする訳が無い。
そう心で思い口を動かすと、悪魔の口が小さく開いた状態で固まり、その声も体も微動だにしなかった。
私はここでふと思った。もしかしたら、先程の発言が悪魔の琴線に触れてしまったのかもしれない…と。
だとしたら不味い。すっごく不味いなぁと思いつつ私は固唾を呑んで悪魔のリアクションを待つ事にした。
「…何か杞憂してるみたいだから親切心で言っておいてやるが、別にオレサマは怒ってる訳じゃァねぇよ。ただ、なんだ……驚いただけさな」
ようやく悪魔が声を発したかと思えば、それはよく分からない内容だった。…とにかく怒ってないって事でいいのだろう、うん。
「あー…もういいわ、考えるのも億劫だ。本題に移るぞ」
悪魔はそう言いながら立ち上がり、目の前に二つの真っ白な椅子を出現させた。その片方にどっかり座り、悪魔は長くしなやかな足を組んだ。
そしてその正面、もう一つの椅子に座る事を強要してきた。何度も手招きされて断る事も出来ず、私もそこにゆっくり慎重に座る。
そして悪魔は物々しい雰囲気を纏い、腰を据えて話し始めた。
「お前が今から解決しようとしてる病…草死病っつったか。あれは病じゃねぇ、呪いだ」
っ!? ちょっと待ちなさい、どういう事なの?!
私は椅子を後ろに倒して勢いよく立ち上がった。しかし悪魔の力によって元の状態に押し戻される。それでも、どういう事なのかと悪魔を強く睨むと。
「竜の呪いだ、アレは。あの土地の地下深くに眠る緑の竜が自身の命が尽きぬよう自己防衛にと辺りに呪いを撒き散らし、人間共を植物に変えてはその魔力も運命力も生命力も全てを吸い取り、生き長らえようとしている。それが草死病の正体──だからこそアレは病では無く呪いだ」
竜の、呪い? 竜がオセロマイトにいるっていうの? そもそもどうしてこの悪魔はそんな事を知ってるのよ。
必死に頭を働かせるものの、あまり効果は無く。それを察した悪魔がご丁寧に色々と話してくれた。
「純血の竜種ってのは五体しか存在してなくてな、そのうち赤と青は数百年前に人間に討たれ、白は封印。緑と黒は行方知れずって事になってるらしい。まァ…オレサマとてこれはヒトづてに聞いただけに過ぎねぇからもうとっくに白も死んでるやもしれん。だがオセロマイトとやらに広まる呪いは竜の呪いで間違いない。これだけは明言出来るとも」
そうだ。赤と青の竜は勇者を名乗る者達が討伐した。白の竜はかつてリンデア教が総力を上げて封印した。それは歴史の授業で聞いた話だ。
しかし…確かに緑の竜と黒の竜の行く末はどの教本にも記されてなかった。本当に行方知れずとなっていたのなら…オセロマイト王国に竜がいてもおかしくはない。
だが、竜とも呼ばれる存在が死にかけた為に呪いを撒いて生き延びようとするのか……? そもそも誰がどうやって竜を死に追いやったんだ。どうしても疑問が残る。
この悪魔が草死病を竜の呪いと断言出来るその根拠も分からないし…。
「……割かしダセェから言いたくなかったんだが、オレサマも昔、竜の呪いを受けた事があるんだよ。だから竜の呪いには耐性があるし察知する能力にも長けてる。それ故、オセロマイトに近づいて来たからその病が竜の呪いだって分かった」
本当に恥ずかしいと思ってるのか、悪魔はふいっとそっぽを向きながら話した。
…竜の呪いを受けるとか何したんだろうこの悪魔。喧嘩売ったとか……? うわ不遜…。
「逆だ逆! オレサマが喧嘩売られたんだよあのクソ野郎に! 急に魔界来たかと思えば暴れだしやがって………あぁ思い出してもイラついて来た。次会ったらもう片方の腕もぶっ飛ばしてやる…ッ」
私の心の声が非常に気に食わなかったようで、悪魔は勢い良くそれに食い下がった。
そこで私は思う。緑の竜が草死病の原因でオセロマイトにいるのなら…悪魔の言う魔界に突然来たクソ野郎とやらは黒の竜なのでは?
竜程の存在が目撃情報も無く数百年行方知れずになってるのだ、別の世界に行っていたと言われれば納得出来る。
もう片方の腕『も』って言ってるという事は…つまりこの悪魔は突然魔界に現れた黒の竜の片腕をぶっ飛ばしたと…………もしかして、こいつ本当にヤバい悪魔なのでは?
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