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序章
9.ある王女の決意
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朝起きたら、目の前に白金の美しい毛並みを持つ猫がいました。
窓から迷い込んで来たのかな…と猫を眺めていると、猫の両目がパチリと開かれた。その目は見れば見る程不思議なものだった。
見る時々によって色が違って見える。光の当たり方によって輝きも変わる。……そんな、有り体に言えば虹色に見える不思議な目だった。
不思議でどうしても心惹かれるその目をじっと見つめていると、猫もまた私を見つめ返しているように、微動だにせずこちらを見上げていた。
「…にゃ、にゃー……猫さんはどこから来たの?」
何だこの大人しすぎる猫はと思いつつ、私は猫に話しかける。しかし猫は一切動かず、ただずっとこちらを見上げているだけだ。
……なんだろう、とても恥ずかしいし怖いわ。一体どういう状況なのかしら、これ。
と、一人で考えを巡らせていた時。
「精霊界だよ」
──猫が、喋った。めちゃくちゃ普通に、なんの前触れもなく、猫が人の言葉を喋った。
そんなものを目の当たりにして驚かない筈もなく…私は布団を押しのけて飛び起きて、物の見事に頭から落下した。
「~~っ!」
「アミィ?!」
ドンッという音と共に床に落ち、私は後頭部を抱えてのたうち回る。
痛い、あまり痛くない気もするけれどやっぱり痛い。床にカーペットが敷かれて無かったら危うく大怪我だったわ。
ん? というか今、シルフの声がしたような気が…でもあの光はどこにもいないし……あれ、そういえばさっきの猫の声、どことなくシルフに似ている気が……。
「……ねぇ、猫さん。あなたってシルフなの?」
軽やかにベッドから降りて来た猫に、私はそんな馬鹿みたいな事を尋ねる。
すると猫はこくんと頷いて、
「そうだよ。ただの光じゃあ出来ない事が多いから、この姿に変えたんだ…ってボクの事よりも、アミィ大丈夫? 今頭から落ちたよね?」
そのぷにぷにとした肉球で私の頭を何度か撫でた。どうやら心配してくれているらしい。
私はそれに大丈夫だよと返して、ゆっくりと起き上がる。いつの間にか服が寝間着になっている…ハイラさんかな……。
猫を抱き上げてから私はベッドに腰を下ろす。そしておもむろに猫を掲げ、私は感嘆の息をもらす。
「可愛い…」
やっぱり猫はどの世界でも可愛いものね、とても可愛いわ。癒される、とても和む…。
しかしこの猫、ただの猫じゃあない。ご存知の通り喋るのだ。しかも割と自由に。
「可愛いのはアミィの方だよ、ほら、さっきのにゃーってやつとか凄いかわ…」
「その事なら今すぐ忘れてちょうだい本当に恥ずかしい! 猫さんがシルフだって分かってたら絶対やらなかったって…っ!!」
「えぇ、それは残念だ。凄く可愛かっ…」
「だから忘れてって!」
なんとこの猫、人の黒歴史を平然と語ろうとする。野生の猫だと思ってあんな事言っちゃったのに、まさか野生でもなんでもなく友達の精霊だったとかもう恥ずかしすぎる……っ!
何度も何度も可愛いなどとぬかすシルフの言葉を毎度食い気味で遮っては、もうやめろと言わんばかりに両手で持っていた猫シルフを上下に思い切り振った。
上下にシェイクされ続けている猫シルフから次第に「ちょっ、もうやめっ」「ねぇアミィごめんってば」「やめ、これ意外と酔う…っ」とギブアップが聞こえてきたので、流石に動物を虐待している気分になるのでやめた。
ようやくシェイクから解放された猫シルフはとてもぐったりしていて、きっともう冗談とか軽口とかを叩く余裕なんて無いだろうと私も安心した。
その後しばらく猫シルフの背を撫で続けていると、ハイラさんが朝食を持ってやって来た。
まだ体調が悪いだろうからと食べやすいものばかりを用意してくれたようで、ハイラさんの優しさが心に染みるようだった。…しかし先程の一連の事からそんな気はしていたが、今の私はかなり元気で、熱も大して無いのだ。
不思議な事に、たった一晩ぐっすり寝ただけで私は全快したらしい。どれだけ回復能力が高いんだろうか、アミレスは。
ハイラさんが用意してくれた朝食を食べ終わったにも関わらず、私のお腹は恥ずかしい音を発した。それを聞いたハイラさんは「他にも用意してきますね」と暖かい目で微笑み、シルフには「仕方ないよ、昨日は昼食も夕食もとってないんだから」と慰められた。
20分程して戻って来たハイラさんはサンドイッチを作って来てくれた。それを食べてようやく私の胃は満たされた。
…本当に恥ずかしい事この上ないわね。サンドイッチを食べている間もハイラさんに微笑ましく見守られて……。
顔から火が出そうとはこの事なのね、身を以て体験したわ。
朝食を食べた後、私はハイラさんなら信用出来るとシルフの事を話した。この猫は実は精霊さんなの、と話すとハイラさんは驚いたように目を丸くしていたが、すぐさまこれを受け入れ、『姫様をよろしくお願い致します、精霊様』と恭しくお辞儀をしたのだ。
受け入れるのが早い…流石は仕事人……。あぁ、勿論、他言無用だと念押しした。
そしてハイラさんが朝食の後片付けに向かい、部屋には私と猫シルフが取り残される。猫シルフを抱えたままソファで横に寝転がり、私は思う。
──本当に私はアミレスになったんだ、と。
一晩経って、改めて現実なのだと実感する。私は本当にアミレスになって…このままだとフリードルか皇帝に殺される運命にある。この体が愛してやまない、あの二人に。
とりあえずあの二人に殺されないように色々努力しようとは決めたけれど、本当に上手くいくだろうか。ちゃんと生き延びる事が出来るだろうか。
ちゃんと──、
「──幸せに、なれるのかなぁ…」
無意識のうちに、私はそうこぼしていた。
景色も、食べ物も、建物も、人も、服も、何もかも私の知る世界とは異なるこの世界で……私は本当に、目的を果たす事が出来るのだろうか。
それが心配で、不安でたまらないんだ。しかもただ生き延びるだけでなく、私の目的は幸せになる事。
ゲームで非業の死を遂げたアミレスの為にも、私は幸せになりたいんだ。
…本当に叶えられるかも分からない夢に、もう既に足が竦んでいる。でも……私に出来る事は運命に抗ってがむしゃらに努力し、何としてでもハッピーエンドを掴み取る事だけ。
ならそれをやり遂げるしかない。それしか、私には道が無いんだ。
「どうしたの、アミィ? 何か不安な事でもあるの?」
猫シルフの肉球が、私の頬をぷにぷにとつつく。…声だけでなく、表情にも私の不安が漏れ出ていたらしい。
私は猫シルフを抱きしめて、
「…あのね、シルフ。私……その内、父か兄のどちらかに殺されちゃうんだ。でもね…死にたくないの。生きて、幸せになりたい」
転生者だという事は伏せたまま、胸中を吐露する。
シルフは私の言葉を静かに聞いてくれていた。途中で言葉を挟まず、ただ、相槌のように何度も頷いていた。
「だからね、私、これから沢山努力するね。いっぱい努力して、頑張って、そして生き延びてみせるから……応援してて欲しいの。一人じゃあきっと無理だから、シルフに傍で応援してて欲しいの」
私の言葉にシルフはとても優しい声音で、
「いいよ。ずっと君の傍にいる」
と答えてくれた。
「…それでもね。結局私の努力が水の泡になっちゃったら……その時は、父や兄に殺される前にシルフが私を殺して。あの二人に殺されるのは、嫌だから」
「………嫌なお願いだね。そうはならない事を祈るよ」
シルフは私の言葉を全て聞き届けてくれた。こんなにも突拍子も無く、訳の分からない頼みなのに…シルフは聞き入れてくれた。
それに、傍で応援してくれるとも約束してくれた。それだけで私は頑張れる。先程まで私を縛り付けていた不安の鎖が消え去ったかのように、私の心は軽やかだった。
「ありがとうシルフ。私、これできっと頑張れるよ。絶対に幸せになるから…最後まで見守っていてね」
もう一度猫シルフを抱きしめて、私は少しばかりの笑みをこぼす。
「うん、楽しみにしてるよ。君が幸せいっぱいに笑ってる姿を見られる日をね」
シルフもきっと、同じように笑ってくれているだろう。目の前には猫しかいないから、そういう表情とかはよく分からないけれど…本当に楽しみにしてくれている。
それなら私は頑張れる。きっと、最後まで頑張れる。
動機はこれで十分だ。私は幸せになりたくて、それを応援してくれる人が傍にいる……それだけで私は頑張れる。沢山努力出来るんだ。
「シルフって魔法を使えるんだよね、教えて欲しいな~なんて」
「それぐらいなら構わないよ。教えるのは魔法でいいのかい?」
「あっ、じゃあ剣術も! 後体術に処世術に……」
「剣術もだけれど、体術と処世術は普通に難しいなぁ…」
精霊さんが魔力を司る存在である事を思い出し、私は思い切って師事を頼む。すると、何と快諾して貰えたのだ。
調子に乗って剣術と体術と処世術も頼んでみた所、シルフを困らせてしまったらしい。しかし、体術や処世術はまだしも剣術だけは会得したいので私はまだまだ食い下がる。
「せめて剣術だけでも…だめ?」
「あああもう、君って本当にそういう所あるよね! 分かったよ、剣術はちょっと知り合いに頼んでみるから…」
シルフが重苦しいため息と共に意外と早く折れてくれた。何とお知り合いまでも動員してくれるそうだ、何と有難い事か…!
「ありがとうシルフっ!」
感極まった私は何度目かも分からないが、猫シルフをぎゅーっと抱きしめる。
「…本当に単純だなぁ、ボクって……」
やったやったと騒ぐ私の胸元で抱き潰されそうな猫シルフから、微かな哀愁を感じたのだが、多分気のせいだろう。
……目が覚めたら、私は大好きな乙女ゲームに出てくる悲運の王女になっていた。
愛する家族に殺される彼女の運命をねじ曲げて、私は生き延びて幸せになると決意した。
私は幸せになりたい。死にたくない。出来る限りの未来を守りたい。
だから私は努力する。超努力家のアミレスに転生したんだから、努力してこそじゃない!
──目指せ、ハッピーエンド!
窓から迷い込んで来たのかな…と猫を眺めていると、猫の両目がパチリと開かれた。その目は見れば見る程不思議なものだった。
見る時々によって色が違って見える。光の当たり方によって輝きも変わる。……そんな、有り体に言えば虹色に見える不思議な目だった。
不思議でどうしても心惹かれるその目をじっと見つめていると、猫もまた私を見つめ返しているように、微動だにせずこちらを見上げていた。
「…にゃ、にゃー……猫さんはどこから来たの?」
何だこの大人しすぎる猫はと思いつつ、私は猫に話しかける。しかし猫は一切動かず、ただずっとこちらを見上げているだけだ。
……なんだろう、とても恥ずかしいし怖いわ。一体どういう状況なのかしら、これ。
と、一人で考えを巡らせていた時。
「精霊界だよ」
──猫が、喋った。めちゃくちゃ普通に、なんの前触れもなく、猫が人の言葉を喋った。
そんなものを目の当たりにして驚かない筈もなく…私は布団を押しのけて飛び起きて、物の見事に頭から落下した。
「~~っ!」
「アミィ?!」
ドンッという音と共に床に落ち、私は後頭部を抱えてのたうち回る。
痛い、あまり痛くない気もするけれどやっぱり痛い。床にカーペットが敷かれて無かったら危うく大怪我だったわ。
ん? というか今、シルフの声がしたような気が…でもあの光はどこにもいないし……あれ、そういえばさっきの猫の声、どことなくシルフに似ている気が……。
「……ねぇ、猫さん。あなたってシルフなの?」
軽やかにベッドから降りて来た猫に、私はそんな馬鹿みたいな事を尋ねる。
すると猫はこくんと頷いて、
「そうだよ。ただの光じゃあ出来ない事が多いから、この姿に変えたんだ…ってボクの事よりも、アミィ大丈夫? 今頭から落ちたよね?」
そのぷにぷにとした肉球で私の頭を何度か撫でた。どうやら心配してくれているらしい。
私はそれに大丈夫だよと返して、ゆっくりと起き上がる。いつの間にか服が寝間着になっている…ハイラさんかな……。
猫を抱き上げてから私はベッドに腰を下ろす。そしておもむろに猫を掲げ、私は感嘆の息をもらす。
「可愛い…」
やっぱり猫はどの世界でも可愛いものね、とても可愛いわ。癒される、とても和む…。
しかしこの猫、ただの猫じゃあない。ご存知の通り喋るのだ。しかも割と自由に。
「可愛いのはアミィの方だよ、ほら、さっきのにゃーってやつとか凄いかわ…」
「その事なら今すぐ忘れてちょうだい本当に恥ずかしい! 猫さんがシルフだって分かってたら絶対やらなかったって…っ!!」
「えぇ、それは残念だ。凄く可愛かっ…」
「だから忘れてって!」
なんとこの猫、人の黒歴史を平然と語ろうとする。野生の猫だと思ってあんな事言っちゃったのに、まさか野生でもなんでもなく友達の精霊だったとかもう恥ずかしすぎる……っ!
何度も何度も可愛いなどとぬかすシルフの言葉を毎度食い気味で遮っては、もうやめろと言わんばかりに両手で持っていた猫シルフを上下に思い切り振った。
上下にシェイクされ続けている猫シルフから次第に「ちょっ、もうやめっ」「ねぇアミィごめんってば」「やめ、これ意外と酔う…っ」とギブアップが聞こえてきたので、流石に動物を虐待している気分になるのでやめた。
ようやくシェイクから解放された猫シルフはとてもぐったりしていて、きっともう冗談とか軽口とかを叩く余裕なんて無いだろうと私も安心した。
その後しばらく猫シルフの背を撫で続けていると、ハイラさんが朝食を持ってやって来た。
まだ体調が悪いだろうからと食べやすいものばかりを用意してくれたようで、ハイラさんの優しさが心に染みるようだった。…しかし先程の一連の事からそんな気はしていたが、今の私はかなり元気で、熱も大して無いのだ。
不思議な事に、たった一晩ぐっすり寝ただけで私は全快したらしい。どれだけ回復能力が高いんだろうか、アミレスは。
ハイラさんが用意してくれた朝食を食べ終わったにも関わらず、私のお腹は恥ずかしい音を発した。それを聞いたハイラさんは「他にも用意してきますね」と暖かい目で微笑み、シルフには「仕方ないよ、昨日は昼食も夕食もとってないんだから」と慰められた。
20分程して戻って来たハイラさんはサンドイッチを作って来てくれた。それを食べてようやく私の胃は満たされた。
…本当に恥ずかしい事この上ないわね。サンドイッチを食べている間もハイラさんに微笑ましく見守られて……。
顔から火が出そうとはこの事なのね、身を以て体験したわ。
朝食を食べた後、私はハイラさんなら信用出来るとシルフの事を話した。この猫は実は精霊さんなの、と話すとハイラさんは驚いたように目を丸くしていたが、すぐさまこれを受け入れ、『姫様をよろしくお願い致します、精霊様』と恭しくお辞儀をしたのだ。
受け入れるのが早い…流石は仕事人……。あぁ、勿論、他言無用だと念押しした。
そしてハイラさんが朝食の後片付けに向かい、部屋には私と猫シルフが取り残される。猫シルフを抱えたままソファで横に寝転がり、私は思う。
──本当に私はアミレスになったんだ、と。
一晩経って、改めて現実なのだと実感する。私は本当にアミレスになって…このままだとフリードルか皇帝に殺される運命にある。この体が愛してやまない、あの二人に。
とりあえずあの二人に殺されないように色々努力しようとは決めたけれど、本当に上手くいくだろうか。ちゃんと生き延びる事が出来るだろうか。
ちゃんと──、
「──幸せに、なれるのかなぁ…」
無意識のうちに、私はそうこぼしていた。
景色も、食べ物も、建物も、人も、服も、何もかも私の知る世界とは異なるこの世界で……私は本当に、目的を果たす事が出来るのだろうか。
それが心配で、不安でたまらないんだ。しかもただ生き延びるだけでなく、私の目的は幸せになる事。
ゲームで非業の死を遂げたアミレスの為にも、私は幸せになりたいんだ。
…本当に叶えられるかも分からない夢に、もう既に足が竦んでいる。でも……私に出来る事は運命に抗ってがむしゃらに努力し、何としてでもハッピーエンドを掴み取る事だけ。
ならそれをやり遂げるしかない。それしか、私には道が無いんだ。
「どうしたの、アミィ? 何か不安な事でもあるの?」
猫シルフの肉球が、私の頬をぷにぷにとつつく。…声だけでなく、表情にも私の不安が漏れ出ていたらしい。
私は猫シルフを抱きしめて、
「…あのね、シルフ。私……その内、父か兄のどちらかに殺されちゃうんだ。でもね…死にたくないの。生きて、幸せになりたい」
転生者だという事は伏せたまま、胸中を吐露する。
シルフは私の言葉を静かに聞いてくれていた。途中で言葉を挟まず、ただ、相槌のように何度も頷いていた。
「だからね、私、これから沢山努力するね。いっぱい努力して、頑張って、そして生き延びてみせるから……応援してて欲しいの。一人じゃあきっと無理だから、シルフに傍で応援してて欲しいの」
私の言葉にシルフはとても優しい声音で、
「いいよ。ずっと君の傍にいる」
と答えてくれた。
「…それでもね。結局私の努力が水の泡になっちゃったら……その時は、父や兄に殺される前にシルフが私を殺して。あの二人に殺されるのは、嫌だから」
「………嫌なお願いだね。そうはならない事を祈るよ」
シルフは私の言葉を全て聞き届けてくれた。こんなにも突拍子も無く、訳の分からない頼みなのに…シルフは聞き入れてくれた。
それに、傍で応援してくれるとも約束してくれた。それだけで私は頑張れる。先程まで私を縛り付けていた不安の鎖が消え去ったかのように、私の心は軽やかだった。
「ありがとうシルフ。私、これできっと頑張れるよ。絶対に幸せになるから…最後まで見守っていてね」
もう一度猫シルフを抱きしめて、私は少しばかりの笑みをこぼす。
「うん、楽しみにしてるよ。君が幸せいっぱいに笑ってる姿を見られる日をね」
シルフもきっと、同じように笑ってくれているだろう。目の前には猫しかいないから、そういう表情とかはよく分からないけれど…本当に楽しみにしてくれている。
それなら私は頑張れる。きっと、最後まで頑張れる。
動機はこれで十分だ。私は幸せになりたくて、それを応援してくれる人が傍にいる……それだけで私は頑張れる。沢山努力出来るんだ。
「シルフって魔法を使えるんだよね、教えて欲しいな~なんて」
「それぐらいなら構わないよ。教えるのは魔法でいいのかい?」
「あっ、じゃあ剣術も! 後体術に処世術に……」
「剣術もだけれど、体術と処世術は普通に難しいなぁ…」
精霊さんが魔力を司る存在である事を思い出し、私は思い切って師事を頼む。すると、何と快諾して貰えたのだ。
調子に乗って剣術と体術と処世術も頼んでみた所、シルフを困らせてしまったらしい。しかし、体術や処世術はまだしも剣術だけは会得したいので私はまだまだ食い下がる。
「せめて剣術だけでも…だめ?」
「あああもう、君って本当にそういう所あるよね! 分かったよ、剣術はちょっと知り合いに頼んでみるから…」
シルフが重苦しいため息と共に意外と早く折れてくれた。何とお知り合いまでも動員してくれるそうだ、何と有難い事か…!
「ありがとうシルフっ!」
感極まった私は何度目かも分からないが、猫シルフをぎゅーっと抱きしめる。
「…本当に単純だなぁ、ボクって……」
やったやったと騒ぐ私の胸元で抱き潰されそうな猫シルフから、微かな哀愁を感じたのだが、多分気のせいだろう。
……目が覚めたら、私は大好きな乙女ゲームに出てくる悲運の王女になっていた。
愛する家族に殺される彼女の運命をねじ曲げて、私は生き延びて幸せになると決意した。
私は幸せになりたい。死にたくない。出来る限りの未来を守りたい。
だから私は努力する。超努力家のアミレスに転生したんだから、努力してこそじゃない!
──目指せ、ハッピーエンド!
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