19 / 34
2章
じゅーろく
しおりを挟む厨房に向かう途中、金髪の少年に捕まった。
少年は私を見ると警戒するような目付きになった。
「こんなとこで何してんの?」
お腹が減ってそれどころじゃないけど、相手をしないと離してくれなそう。
ブラコン少年と話すのは少し疲れるが仕方ない。
「ご飯を食べに行くところです」
答えると少年は驚いた顔をした。
疑問点も解けただろうしどいてくれないかな。
少年との会話を早く終わらせたい私は少年が納得してくれるのを待っていたが、少年はどこか驚いたような顔をしながら「なんで?」と聞いてきた。
ご飯を食べちゃいけないのか。
陛下は少年の言うことは本意ではないと言っていた。
でもこの言葉はきっと本心だろう。
私はご飯も食べちゃいけないのか。
むっとした私は少年に「ダメですか」と聞いた。
ダメと言われてもこっそり食べに行くつもりだ。お腹減ってるし。
だけど少年は
「え?なんでご飯……そもそもどこ行くの?」
と聞いてきた。
少年は厨房の場所を知らないのだろうか。
いつもどうやってご飯を食べているか知らないが知っておいて損は無いだろう。厨房の場所を教えると少年は愕然としたように黙ってしまった。
「何でそんなことになってるの」
そんなこととはなんの事だ。
少年は言葉足らずで上手く話が繋がらない。もっと言葉を勉強した方がいいと思う。
お腹が減ったしもういいかなと思っていると、「兄上は?」と少年に聞かれた。
「ご飯食べに行くくらいは大丈夫なんじゃないでしょうか」
素直に言ったらやっぱり少年は黙ってから「何が大丈夫なの」と聞いてくる。やけに食いついてくるな。
そんなに陛下関連の話をするのが好きか。
やっぱりブラコンはめんどくさいと思ったが、答えないと納得してくれなそうな雰囲気だったので答える。
「怪しい行動をしたら首をはねられるので」
でも殺し方が斬首刑なのって優しさだよね。打ち殺しとか拷問の類じゃなくて良かった。
血なまぐさいのってやだよね。血の匂いってなかなか落ちないし。
答えると少年は黙ってしまった。
赤い瞳がこれ以上なく開かれている。何に驚いているのだろう。
あ、もしかしてこれも怪しい行動にカウントされちゃうのかな。
それは困るな。
私は誤魔化すように「これは生命維持に必要な行動です」と言っておいた。
少年は何も言わなかった。
黙ってる少年を見てもう行っていいかなと思う。このまま何食わぬ顔で横通っても何も言われないかな。
お腹空いた。
「兄上は一体何を……」
今陛下が何してるかなんて知らない。多分少年の方が詳しいと思う。
「分かりません」
答えるとますます少年は黙ってしまった。
思春期の男の子って難しい。
50
お気に入りに追加
2,517
あなたにおすすめの小説
公爵令嬢は婚約破棄を希望する
ごろごろみかん。
恋愛
転生したのはスマホアプリの悪役令嬢!
絶対絶対断罪なんてされたくありません!
なのでこの婚約、破棄させていただき…………………できない!なんで出来ないの!もしかして私を断罪したいのかしら!?
婚約破棄したい令嬢と破棄したくない王太子のじゃれつきストーリー。
くだらない毎日に終止符を
ごろごろみかん。
恋愛
公爵令嬢フランチェスカ・ヴィヴィアナは既に何回目かの婚約破棄騒動に挑んでいた。この流れは既に知っているものである。なぜなら、フランチェスカは何度も婚約破棄を繰り返しているからである。フランチェスカから婚約破棄しても、王太子であるユーリスから婚約破棄をされてもこのループは止まらない。
そんな中、フランチェスカが選んだのは『婚約を継続する』というものであった。
ループから抜け出したフランチェスは代わり映えのない婚姻生活を送る。そんな中、ある日フランチェスカは拾い物をする。それは、路地裏で倒れていた金髪の少年でーーー
これが私の兄です
よどら文鳥
恋愛
「リーレル=ローラよ、婚約破棄させてもらい慰謝料も請求する!!」
私には婚約破棄されるほどの過失をした覚えがなかった。
理由を尋ねると、私が他の男と外を歩いていたこと、道中でその男が私の顔に触れたことで不倫だと主張してきた。
だが、あれは私の実の兄で、顔に触れた理由も目についたゴミをとってくれていただけだ。
何度も説明をしようとするが、話を聞こうとしてくれない。
周りの使用人たちも私を睨み、弁明を許されるような空気ではなかった。
婚約破棄を宣言されてしまったことを報告するために、急ぎ家へと帰る。
宝石姫は二度死ぬ
ごろごろみかん。
恋愛
涙が、血が、宝石となる世にも珍しい宝石姫ーーーだけど彼女は生まれが所以で長らく虐げられていた。一度は死んだ身、どうやら過去に戻ったようなので好き勝手させてもらいます!
王子様の呪い
ごろごろみかん。
恋愛
「お前との婚約を破棄する!!リーゼロッテ!!」
突如告げられたのは婚約破棄を告げる言葉だった。しかしリーゼロッテは動じず、むしろこの状況を喜ばしく思っていた。なぜなら彼女には、やりたいことがあったから。
*ざまぁから始まるあっさり恋愛小説です。短くおわる
妹に婚約者を奪われ、聖女の座まで譲れと言ってきたので潔く譲る事にしました。〜あなたに聖女が務まるといいですね?〜
雪島 由
恋愛
聖女として国を守ってきたマリア。
だが、突然妹ミアとともに現れた婚約者である第一王子に婚約を破棄され、ミアに聖女の座まで譲れと言われてしまう。
国を頑張って守ってきたことが馬鹿馬鹿しくなったマリアは潔くミアに聖女の座を譲って国を離れることを決意した。
「あ、そういえばミアの魔力量じゃ国を守護するの難しそうだけど……まぁなんとかするよね、きっと」
*この作品はなろうでも連載しています。
死にたくないので真っ当な人間になります
ごろごろみかん。
恋愛
公爵令嬢セシリアは《王妃の条件》を何一つ守らなかった。
16のある日、セシリアは婚約者のレイアルドに「醜悪だ」と言われる。そしてレイアルドはセシリアとの婚約を無に帰し、子爵令嬢のエミリアと婚約を結び直すと告げた。
「龍神の贄としてセシリア。きみが選ばれた」
レイアルドは人柱にセシリアが選ばれたと言う。しかしそれはただ単純に、セシリアを厄介払いする為であった。龍神の贄の儀式のため、セシリアは真冬の冷たい湖の中にひとり飛び込み、凄まじい痛みと凍えを知る。
痛みの中、セシリアが思うのは今までの後悔と、酷い悔しさだった。
(やり直せるものならば、やり直したいーーー)
そう願ったセシリアは、痛みのあまり意識を失ってしまう。そして、目を覚ますとそこは自室でーーー。
これは屑で惰性な人生を歩んでいたセシリアが、何の因果か10歳に戻り、死なないために真っ当な人間になろうとするお話です。
婚約破棄された王女が全力で喜びましたが、何か問題でも?
yukiya
恋愛
ファントム王国の第一王子、アスロンから、夜会で婚約破棄を叫ばれたエルステーネ(隣国であるミリガン王国の第二王女)だが。
「それ、ほんとうですか!?」
喜ぶエルステーネにアスロンが慌てて問いかける。
「え、何故喜んでいるか?そりゃ、馬鹿なこの国の馬鹿な王子に婚約破棄されたら嬉しいでしょ」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる