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ロウディオ
エピローグのその前に 9
しおりを挟む呪いが解けた翌日。
早々に宮廷魔術師を呼び出しソフィアの妊娠を確認すれば、まず第一に記憶が戻ったのかと問われた。
「奇妙ですね。記憶は戻らないはずですが……」
「記憶は戻ってない。情報だけ入手したんだ。ソフィアの呪いは解けたのか?」
宮廷魔術師は頷いて答えた。
「はい。先程確認しましたが、痕跡すらありません」
宮廷魔術師は言いにくそうにしながら言葉を探す。
「失礼ながら、この情報は、今の殿下にご報告することはどうかと考えまして、陛下に報告予定だったのです」
「陛下は知っておられるのか?ソフィアの呪いの件を」
宮廷魔術師は跪いたまま首を振って否定する。
「いえ、殿下より、口を固く引き結べと。私が相談相手に抜擢されたのも、口の硬さが一番の理由と仰っておりました」
「……そうか。まあいい。この件は僕から陛下に報告する。ソフィアの呪いは解けたんだよな」
再三に渡り確認すると、宮廷魔術師は深く頷いた。
「はい。妃殿下の子宮は時止まりの呪いを受けていたので、その呪いが解呪された今、妃殿下のお子をなす機能は十六歳の時と変わりありません。殿下同様、これから時を進めることでしょう」
「そうか……」
思わずため息が出る。
二十五歳のロウディオが、二十歳の頃から解呪を試みていた呪いだ。魔女イゾルテの死を持ってその呪いから開放されて、安堵のあまり足元がふらついた。自分の呪いよりもこちらの方が気がかりだったのだ。
「だけどなぜ、ソフィアの呪いは解呪できて、僕の呪いは不完全なものに変質したんだ」
「それはですね……。もともと、殿下の呪いは解呪が"性行為"と決まっておりました。だからこそ、呪いの根本である魔女を殺したことで、変則的に呪いが変化した」
「ソフィアの場合、時止まりの解呪の方法は魔女の死と決まっていたというのか?」
宮廷魔術師は驚いたような顔を見せて頷いた。
「その通りです!元々解呪方法が用意されていて、その通りに解呪したか、その根本となる存在を消したかで変わってくるのですよ。用意された正統な解呪方法以外での解呪を試みることはあまり勧められることではないのですが……」
「今回ばかりは良かったな」
「仰る通りで……とお答えしても宜しいのでしようかねぇ」
三十代半ばを超えた宮廷魔術師は立場を確認し、肯定しあぐねているようだった。僕は笑って彼に言う。
「いいに決まってる。ああ、そうだ。お前、ちょうどいいから、お使いを頼めるか?」
「は?」
顔を上げた宮廷魔術師に、僕はある頼み事をする。
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