33 / 55
ソフィア
エピローグのその後に
しおりを挟む呪いは、解けなかった。
宮廷魔術師の見解によると、呪いを解く前に魔女を斃したことで呪いにねじれが生じたのではないか、ということだった。
これを聞いて蒼白になったのはソフィアだ。ふらりと傾いだ彼女の体を後ろで控えていた侍女が支えた。ロウディオの呪いが解けなければ、大変なことになる。国の問題、王太子としての立場。そもそも呪いの解呪にほかになにか必要な条件があるのか。
同席した国王夫妻もまた、息を飲んで様子を伺っていた。国王夫妻には子がひとりしかおらず、それはロウディオだ。もしロウディオを廃嫡するとなれば、次の王位継承者は王弟となり、現公爵に移る。政治的背景を鑑みてもそれは避けたいところだった。
張り詰めた空気の中、自身のペースを崩さない宮廷魔術師は、ロウディオを不可思議な光で包んだ。ふわりと青白い光が飛ぶ。
その光が収束を見せ、くるりと彼の周りを回った後、魔術師は間の抜けた声を出した。
「おや?これは……」
「何かわかったのか」
続けたのは国王だ。
魔術師はじっとロウディオを見た後、首を振った。
「解呪は成功です」
「では……!」
「ですが、呪い自体にねじれが生じていることによって、不完全な代物と化している」
「簡潔に言うがいい。回りくどい言葉は不要」
国王は僅かに苛立ちを見せたようだった。
その言葉に魔術師はこくりと頷く。
「王太子殿下は二十五歳のお姿に戻ることはありません。それは精神面においても同様。ですが」
魔術師は奇妙な珍獣でも見るような顔でロウディオを眺めた。まるで見世物にでもなったかのような気分になったロウディオはわずかに眉を寄せる。魔術師はじろじろとロウディオを眺めることはやめずに、さも貴重な研究対象にあたった、というふうにも──宇宙人とであった時の人間のようにも視線を忙しなく動かした。しかしその口調はやはり緩慢だ。
「王太子殿下は、今後、日に日に成長していくでしょう。ふつうの十三歳と同じように」
「!!」
それは部屋にいた、誰もが驚くべき事実だった。
82
お気に入りに追加
974
あなたにおすすめの小説
麗しのラシェール
真弓りの
恋愛
「僕の麗しのラシェール、君は今日も綺麗だ」
わたくしの旦那様は今日も愛の言葉を投げかける。でも、その言葉は美しい姉に捧げられるものだと知っているの。
ねえ、わたくし、貴方の子供を授かったの。……喜んで、くれる?
これは、誤解が元ですれ違った夫婦のお話です。
…………………………………………………………………………………………
短いお話ですが、珍しく冒頭鬱展開ですので、読む方はお気をつけて。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
皇太子夫妻の歪んだ結婚
夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。
その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。
本編完結してます。
番外編を更新中です。
セレナの居場所 ~下賜された側妃~
緑谷めい
恋愛
後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。
『別れても好きな人』
設樂理沙
ライト文芸
大好きな夫から好きな女性ができたから別れて欲しいと言われ、離婚した。
夫の想い人はとても美しく、自分など到底敵わないと思ったから。
ほんとうは別れたくなどなかった。
この先もずっと夫と一緒にいたかった……だけど世の中には
どうしようもないことがあるのだ。
自分で選択できないことがある。
悲しいけれど……。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
登場人物紹介
戸田貴理子 40才
戸田正義 44才
青木誠二 28才
嘉島優子 33才
小田聖也 35才
2024.4.11 ―― プロット作成日
💛イラストはAI生成自作画像
性欲のない義父は、愛娘にだけ欲情する
如月あこ
恋愛
「新しい家族が増えるの」と母は言った。
八歳の有希は、母が再婚するものだと思い込んだ――けれど。
内縁の夫として一緒に暮らすことになった片瀬慎一郎は、母を二人目の「偽装結婚」の相手に選んだだけだった。
慎一郎を怒らせないように、母や兄弟は慎一郎にほとんど関わらない。有希だけが唯一、慎一郎の炊事や洗濯などの世話を妬き続けた。
そしてそれから十年以上が過ぎて、兄弟たちは就職を機に家を出て行ってしまった。
物語は、有希が二十歳の誕生日を迎えた日から始まる――。
有希は『いつ頃から、恋をしていたのだろう』と淡い恋心を胸に秘める。慎一郎は『有希は大人の女性になった。彼女はいずれ嫁いで、自分の傍からいなくなってしまうのだ』と知る。
二十五歳の歳の差、養父娘ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる