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ソフィア

変わる日 6

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「ロロ、でしょ。ソフィア」

ソフィアが息を飲んでる間に、イゾルデは手の端から灰に変わっていく──。ロウディオが言ったように。イゾルデはぎりぎりとロウディオを睨んだ。そして、ソフィアに視線を向ける。

「お前さえ居なければ!お前さえ……!美しいわたくしが死ぬなど有り得ない!わたくしは死なない!わたくしは……」

「例えソフィアがいなくても、僕は魔女と共に在ろうとはしない」

「何ですって!」

言いながらも、魔女はどんどん朽ち果てていく。遂には胸元から下が全て灰になると、イゾルデは狂乱した。

「わたくしの身体が!!わたくしの、至高を詰めた身体が!!ロウディオ、後悔するわ。美しいわたくしを殺すなんて!きっと貴方は後悔する!あああああ!」

イゾルデはそれだけ告げると、崩れ去ってしまった。残った灰も、強く吹いた風によって吹き飛ばされてしまう。かすみ草の花園はまるで何も無かったかのように、いつも通りの様相を呈している。唖然とするソフィアに、ロウディオが低く言った。

「後悔なんてするはずがない。するとしたらそれは……」

ロウディオは座り込んだソフィアを振り返った。視線が絡んで、彼はいつもより柔らかく微笑んだ。それは十三歳の彼ではなく、二十五歳のロウディオの笑みに近しいものがあった。ますますソフィアは混乱する。

「ロ……ウディオ殿下……。呪いが解けたの」

震える声でソフィアは尋ねる。
姿形は十三歳のままだが、魔女イゾルデを斃したことで呪いに変異があってもおかしくない。混乱するソフィアに、ロウディオは彼女の前にかがみ、質問を返した。

「ソフィア。お前はどっちだと思う?……どっちの僕を求めてるの?」

「ーー」

問われたソフィアは答えられない。
喉がひりついたように張り付いて、言葉が出てこない。目を見開いて息を飲む彼女にロウディオは薄く笑った。

「冗談だよ。僕はまだ、十三歳のまま。体も心もね」

「そう……なの」

「安心した?」

「安心、なんて」

「言ってよ。ソフィア。今の僕が好きだって」

「………」

「言って」

ロウディオは先程ソフィアの薬指に巻き付けたかすみ草の指輪に口付けるようにして、彼女に希う。ソフィアは声が出ない。
何より、初めて十三歳に戻った日の彼と、今のロウディオでは全く様子が違っていた。その様子は、二十五歳の彼に近いと言っていい。
ソフィアは奇妙な焦燥を感じた。

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