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ソフィア

思い出を辿る日

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少年ロウディオの目覚めは早かった。
興奮して眠りが浅かったのか、ソフィアよりも早くに彼は目が覚めた。
彼は眠る彼女を起こす傍ら、ふと思い立ってソフィアの頬に指先を滑らせた。

ロウディオが知る彼女よりも大人びていて、幼い頃とは違ってその頬にまるみはない。少女特有のふっくらとした頬は女性を示すほっそりとした輪郭となり、通った鼻筋や伏せられた目元を見れば、まるで知らない大人の女性のように見えた。ソフィアの手前、彼女をソフィアと扱いそのように接してきたが、いまだロウディオは戸惑っていた。当然だ。
突然、十三歳の婚約者が二十五歳になったとなれば混乱もするし、すぐに順応できるかと言えばそうではない。
しかしロウディオは王太子として、演じることには慣れていた。いや、そのように対応することを覚えていた。だからこそ彼は違和感なくソフィアをソフィアと受け入れたフリ・・をすることが出来たし、戸惑いを見せることなく飲み込むことが出来た。
だけどまだ、混乱しているのだ。
目の前の女性がソフィアとは、やはり簡単には認識できない。ようやく二十五歳の彼女に慣れてきたものの、それは見知らぬ二十五歳の淑女になれた、ということであって十三歳のソフィアと関連づけられた訳では無い。
ロウディオはどうしても知りたかった。
彼女の頑なな態度と、二十五歳の自分の真意を。

言ったことは無いが、ロウディオはソフィアを好ましく思っていたし、将来自分たちは婚姻するものだと疑っていなかった。

自分が彼女以外に触れることなど、考えたことすらない。
なのに、なぜ。
ロウディオはどうしてもその答えが知りたい──。
しかし、その答えを知るのは二十五歳のロウディオだけだ。

「……悪い夢なら良かったのに」

ぽつり、とロウディオは呟いた。
そしてその声を、タイミングの悪いことにソフィアは聞いてしまっていた。

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