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所詮、他人
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フラフープに流されるまま、私は初めて自分から立候補して、文化祭実行委員に決まった。
クラスの人達はかなり驚いていた。同じく文化祭実行委員となったあかりちゃんや香澄ちゃんに驚かれながらも、確かに以前よりは彼女や、クラスメイトとの仲が深まったような気がした。
「知り合いが増えて良かったもん」
「友達って言えるほどの友達はいないけどね」
「浅い付き合いの知人が増えただけだもん~」
「あんたがやれって言ってやったのに友達できなかったんだけど!?っていうか一生後悔するとか言って、やったけど何もなかったよ!」
思わずふよふよと部屋を漂うフラフープの首根っこを掴んで近距離で見ると、つぶらな黒い瞳がこちらを見返した。
「やっぱり友達が欲しいもん?」
「なっ……そういう訳じゃないけど!でも、あんたがやったらって……」
「葉月ちゃん。今日もお父さんとお母さんは帰らないもん?葉月ちゃん兄弟はいないもん?」
「ーー」
フラフープの言葉に息を飲んだ。
この二ヶ月、フラフープはずっと私といる。だけどフラフープが両親を、そして姉を見た事はない。当然だ。両親はずっと泊まり込みで仕事をしているし、姉はーー。
「………お母さんたちは今日も仕事。出張なんだって」
「でも、二ヶ月一回も会ってないんだもん」
「夜とかは、荷物取りに来てるらしいよ……」
「でも、それじゃ葉月ちゃんが寂しいんじゃ……」
「あと、お姉ちゃんがいる。でも、お姉ちゃんは私が小学生の時に家出た。それから会ってない」
「お姉さんとは会ってないもん?」
フラフープがつぶらな瞳でこちらを見る。なんだか、フラフープといると言葉が考える間もなく滑り落ちていく。変に意地をはらなくていいからかもしれない。虚勢をはらなくていいからかも。フラフープは、私の言葉をただじっと受け止めてくれるから。
「……お姉ちゃんは、高校の時、お母さん達と仲違いして絶縁みたいな感じで、家を出たの。それから、会ってない」
「そうなんだもん……」
「でも、私はそれでいいと思ってる。あんな薄情な人、姉とは思いたくない」
私を、ひとりぼっちで置いてったお姉ちゃん。私に何も言わずに家を出た。ある日、学校から家に帰ったら姉の私物はなくなっていて、後日、母から姉が家を出たとだけ連絡があった。ショックだった。姉だけが、この家でお姉ちゃんだけが、私を相手にしてくれたのに。寂しかったんだ。
「………友達とか、いらないよ。トモダチなんて、所詮他人じゃん………」
「葉月ちゃん」
「ねぇ、あんたはずっと一緒にいてくれる?」
こんなに気負いせずに話せる相手はいない。思わずフラフープを見ると、フラフープはそのウサ耳もどきをぺったりと伏せさせた。
「何?どうしたの?」
「僕は………僕は、葉月ちゃんが必要とするまで、一緒にいるよ。でも、葉月ちゃんは……」
「何よ?なんかあんた、変だよ」
「葉月ちゃん、今しか出来ないこと、しよう。しないと、後悔するよ」
「何なの?あんたのその電波みたいな……。でも、今やらないと後悔する事ってなんだろう?」
フラフープは黙って答えない。自分で考えろということだろうか。私は考えながら、ふと思考が弾けた。そうだ。青春といえば恋愛!高校生といえば少女漫画!アオハル!!
がばっと起きた私に振り落とされたフラフープが布団にポテポテと転げる。
「うわぁっ、何だもん!?」
「フラフープ、恋愛だよ恋愛!」
「フラフープじゃないもん!フラワーフープだもん!」
「イケメンと恋愛したい!出会いを用意してよ!」
「僕はそんな万能魔法使いじゃないもん……」
フラフープの耳がまたもやしょげった。何だ、妖精なのにそんなことも出来ないのか。そんな目をしていると、ぱっとフラフープがこちらを見た。
「無能だと思ってるもん」
「思ってないよ。役に立たないと思ってるだけで」
「同じことなんだもん!!」
役に立たないフラフープは置いておいて、恋愛だ恋愛。友達を作るのはちょっと、難しいところがあるけれど、彼氏なら何とかなるかもしれない!このままだと何もなく終わる可能性が高い高校生活。少しでもアオハルしたい!
***
早速次の日、学校をぶらついて気になる人でもいたらチェックしようと思った私だったが、二時間目、現国の授業中、先生から呼び出しがかかった。授業中の教室の扉が急に開かれて、担任にこいこい、と手招きされる。
皆の視線を感じながら先生の元に行き、教室を出ると、先生は硬い顔をしていた。何だかその表情に嫌な予感がした。
「皆本さん。今病院から連絡があって…………」
先生に連れられて向かった教員室で、告げられた言葉は。
両親が事故に遭い、息を引き取ったという内容だった。
クラスの人達はかなり驚いていた。同じく文化祭実行委員となったあかりちゃんや香澄ちゃんに驚かれながらも、確かに以前よりは彼女や、クラスメイトとの仲が深まったような気がした。
「知り合いが増えて良かったもん」
「友達って言えるほどの友達はいないけどね」
「浅い付き合いの知人が増えただけだもん~」
「あんたがやれって言ってやったのに友達できなかったんだけど!?っていうか一生後悔するとか言って、やったけど何もなかったよ!」
思わずふよふよと部屋を漂うフラフープの首根っこを掴んで近距離で見ると、つぶらな黒い瞳がこちらを見返した。
「やっぱり友達が欲しいもん?」
「なっ……そういう訳じゃないけど!でも、あんたがやったらって……」
「葉月ちゃん。今日もお父さんとお母さんは帰らないもん?葉月ちゃん兄弟はいないもん?」
「ーー」
フラフープの言葉に息を飲んだ。
この二ヶ月、フラフープはずっと私といる。だけどフラフープが両親を、そして姉を見た事はない。当然だ。両親はずっと泊まり込みで仕事をしているし、姉はーー。
「………お母さんたちは今日も仕事。出張なんだって」
「でも、二ヶ月一回も会ってないんだもん」
「夜とかは、荷物取りに来てるらしいよ……」
「でも、それじゃ葉月ちゃんが寂しいんじゃ……」
「あと、お姉ちゃんがいる。でも、お姉ちゃんは私が小学生の時に家出た。それから会ってない」
「お姉さんとは会ってないもん?」
フラフープがつぶらな瞳でこちらを見る。なんだか、フラフープといると言葉が考える間もなく滑り落ちていく。変に意地をはらなくていいからかもしれない。虚勢をはらなくていいからかも。フラフープは、私の言葉をただじっと受け止めてくれるから。
「……お姉ちゃんは、高校の時、お母さん達と仲違いして絶縁みたいな感じで、家を出たの。それから、会ってない」
「そうなんだもん……」
「でも、私はそれでいいと思ってる。あんな薄情な人、姉とは思いたくない」
私を、ひとりぼっちで置いてったお姉ちゃん。私に何も言わずに家を出た。ある日、学校から家に帰ったら姉の私物はなくなっていて、後日、母から姉が家を出たとだけ連絡があった。ショックだった。姉だけが、この家でお姉ちゃんだけが、私を相手にしてくれたのに。寂しかったんだ。
「………友達とか、いらないよ。トモダチなんて、所詮他人じゃん………」
「葉月ちゃん」
「ねぇ、あんたはずっと一緒にいてくれる?」
こんなに気負いせずに話せる相手はいない。思わずフラフープを見ると、フラフープはそのウサ耳もどきをぺったりと伏せさせた。
「何?どうしたの?」
「僕は………僕は、葉月ちゃんが必要とするまで、一緒にいるよ。でも、葉月ちゃんは……」
「何よ?なんかあんた、変だよ」
「葉月ちゃん、今しか出来ないこと、しよう。しないと、後悔するよ」
「何なの?あんたのその電波みたいな……。でも、今やらないと後悔する事ってなんだろう?」
フラフープは黙って答えない。自分で考えろということだろうか。私は考えながら、ふと思考が弾けた。そうだ。青春といえば恋愛!高校生といえば少女漫画!アオハル!!
がばっと起きた私に振り落とされたフラフープが布団にポテポテと転げる。
「うわぁっ、何だもん!?」
「フラフープ、恋愛だよ恋愛!」
「フラフープじゃないもん!フラワーフープだもん!」
「イケメンと恋愛したい!出会いを用意してよ!」
「僕はそんな万能魔法使いじゃないもん……」
フラフープの耳がまたもやしょげった。何だ、妖精なのにそんなことも出来ないのか。そんな目をしていると、ぱっとフラフープがこちらを見た。
「無能だと思ってるもん」
「思ってないよ。役に立たないと思ってるだけで」
「同じことなんだもん!!」
役に立たないフラフープは置いておいて、恋愛だ恋愛。友達を作るのはちょっと、難しいところがあるけれど、彼氏なら何とかなるかもしれない!このままだと何もなく終わる可能性が高い高校生活。少しでもアオハルしたい!
***
早速次の日、学校をぶらついて気になる人でもいたらチェックしようと思った私だったが、二時間目、現国の授業中、先生から呼び出しがかかった。授業中の教室の扉が急に開かれて、担任にこいこい、と手招きされる。
皆の視線を感じながら先生の元に行き、教室を出ると、先生は硬い顔をしていた。何だかその表情に嫌な予感がした。
「皆本さん。今病院から連絡があって…………」
先生に連れられて向かった教員室で、告げられた言葉は。
両親が事故に遭い、息を引き取ったという内容だった。
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