王妃の鑑

ごろごろみかん。

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実感(2)

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聖宮暦2179年 4月 9日ーーー
リリアベル・ラ・ドゥセル 死亡

「…………ッ!」

その名前を見つけて、思わずへたりこんだ。ばさばしっと本が落ちる。見つけて、しまった。死亡、というくっきりとした文字。黒いインクで綴られたそれは、リリアベルの名前に間違いない。

「あ、………ァ」

見つけて、しまった。リリアベルはやはり、この世界では死んでいたーーー。目の前が真っ暗になって、息が上手くできない。苦しい。悲しい。悔しい。色んな感情が綯い交ぜになる。
私が座り込むと、中途半端に開かれた本のページが目に入った。呆然とそれを見る。
そして、またしても私は息を詰めた。

【死因】セイレトン病の悪化、持病あり。併発の可能性

「…………え、」

小さく呟いた声は、私の耳にすら入らなかった。教会は、朝早いせいか誰もいなかった。私だけが本棚の前で座り込んでいる。

「じ、びょう………?」

リリアベルに持病があるなんて、知らなかった。リリアベルは、病気だった………?嘘、そんなの知らないわ。長く一緒にいたけれど、リリアベルにそんな素振りはなかった!
なら、この記載は何!?陛下が嘘の記載を命じた………!?違う、彼はそんなことをしない人だとわかっている。でも、理解できない。
その時、ふと思い出した。定期的に、リリアベルは休みを貰っていた。それは侍女として働いているのであれば当たり前だが、休みが近づく度にリリアベルは憂鬱そうな顔をしていた。待って。もしかして、あれは…………

「通院、していた………?」

今となってはもはやわからない。いや、わかる。まだ手がかりはある。リリアベルが行っていた病院が分かれば。
私はその時、ようやく立ち上がった。大きく息を吐く。

ーーーネアモネ様

彼女の声が聞こえるような気がする。もちろん、幻聴だ。でも幼いときから一緒だった。私と、一緒にいてくれた。もはや家族のような存在だった彼女。もう、会えないなんて。
分かっていたけれど、彼女の死を初めて実感した瞬間だった。
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