王妃の鑑

ごろごろみかん。

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決別(2)

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殿下はふと私に視線を戻した。確信的な言葉に息が詰まる。言葉に迷う。いっそ、言えてしまえたら。聞けてしまえたら。
アデライードとは、まだ知り合っていないのかと。本当に殿下は、彼女を好きになるのかと。
それを聞けてしまえれば。
けれど、それだけはやはり言えなかった。ぐ、と言葉を飲む。

「………殿下は」

「うん?」

「わたくしのことを、好いてくださってますか?」

沈黙が広がる。聞いてはいけないことだっただろうか。前回の人生のような、甘い雰囲気はわたしたちにはなかった。確かに殿下は今回も私を大切にしてくれる。だけど、それが恋情かと聞かれたら答えに困るところだ。
殿下は少しだけ驚いた様子で、でもすぐに目をふせた。

「………好きだよ」

「本当ですか?」

「本当。ネアは?そう聞くきみは、どうなの。僕以上に、きみのほうが僕を好きには見えない」

それ、は………。
わからない。それが、答えだった。殿下のことは愛していた。好きだった。でも、それだけ。私が彼を好きというには、あまりにも色々なことがありすぎた。殿下には裏切られ、侍女を殺され。もう、彼への気持ちがどんなものかなんてわからなくなっていた。
静寂がみちる。私は、何とか口を動かした。

「わたくしは………」

そこで、言葉を切る。

「殿下は、わたくしを好きにさせてくださいますか?」

好きにさせてくれるか。殿下は、私を好きにさせてくれるのだろうか。
今の気持ちなどわからない。だから、あえてこう聞いてみる。私が彼をすきになるには、色々と重い感情を乗り越えなくてはならないだろう。それを、今は見て見ぬふりをしているだけ。

「………どうかな。難しいな」

殿下はそう答えたが、ティーカップを置いて私と目を合わせた。

「でも、そうなると信じてる」

それが、彼の答えだった。
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