王妃の鑑

ごろごろみかん。

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魔女の家

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「お待ちしてました。まさか本当に来るとは思わなかったわ」

魔女の家は、本当にあった。
鬱蒼とした森をかきわけた先に佇む一軒家。ノアは躊躇せずに入り、私も向かった。
扉をノックすること二回。中からは黒髪の女性が出てきた。穏和そうなイメージを受ける女性だった。
この人が、魔女………。ごくり、と生唾を飲み込んだ。

「は、じめまして」

慎重に挨拶を口にした私だが、横にいた人物はあっさりと室内に踏み入った。何の断りもなく。

「久しぶり~、元気だった?」

固くなる私とは反対に、ノアがフランクに告げる。
えっ待って、あなた面識あったの……!?思わず驚く私に、魔女と思える女性が息を吐く。

「ノア。あなたいつまでフラフラしているの?」

「はは。お小言は勘弁。今日はそのために来たんじゃないよ、ミス ウィッチ」

そして、ノアがこちらを見る。私は視線を向けられて動揺したものの、呼吸を正して彼女と向き合った。黒髪に、黒いドレスをきた彼女。だけど怖い、とは思わない。どちからというと可愛い、という印象だ。歳は、恐らく二十代かしら………。大人びているようで、可愛さもある。不思議な女性だわ………。彼女は私を見るとすっと瞳を細めた。

「ふぅん?へえ?」

やがて品定めするように見ると、彼女は一息で言った。

「ーーー面白い!こんなこと、本当にあるのね?これ、やったのあなた?」

彼女は私を家の中に促しながらノアに声をかける。ノアは「んーんー」と投げやりな返事を返している。家の中は至って普通の構造だった。魔女の家、と言われて想像するようなおどろおどろしいものはない。

「俺じゃないよ。俺ならもっと上手くやる」

「そっか、それもそうね」

「………?」

なんの話をしているのだろう。
彼女はくるりと私を見ると、ソファに座るよう促した。

「初めまして。私は魔女のアイ。そこのソファに座って?」

「ありがとうございます。………あの。突然で申し訳ないのですけれど、」

私の過去巡りは、あなたと関わりがあるのですかーーー?そう聞きたかった。だけど私の前に座った彼女は私の発言を遮る。ノアは何も言わずに私の横に座った。どこか慣れた様子をみるに、やはり魔女………アイさんとは知り合いなのだろう。

「ふふ、まずは。可愛いお嬢さん。あなた、今の現状をどう理解しているの?」

「現状………?」

「過去に戻ってる」

その言葉に思わず目を見張る。ノアもこちらを見ているのがわかった。私が見ると、アイさんは楽しそうに笑った。
その様子がネイヴァーさんと被る。言葉を失った私に、アイさんが「あーもう」と言葉を続ける。

「どうしたものかしらね」

楽しげに言うけれど、その表情はどこか晴れやかではない。横からにゅっと手が伸びてきたりノアだ。ノアはいつの間に用意されたのか、テーブルの上のお菓子に手をつけた。ダクワーズだった。

「とりあえずヒントちょうだいよ。ネアちゃんもそう思ってここに来たんでしょう?」
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