王妃の鑑

ごろごろみかん。

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ノア(2)

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本当は約束なんてしていないけれど。
来週の初めに都をたつといえば、ノアは『じゃあ予めこのあたりで待っている』と言ったのだ。ただ、それだけ。そんな簡単な取り決めだけだったので、ほんとうに会えるとは思ってなかった。ノアは珍しくローブのフードを払うと、私を見た。

「じゃ、いこっか」

「え?え?ノア……さん?ノアさんも行かれるんですか?ちょっと、ネアモネ様、どういうことですか………!」

僅かに責める声音を混ぜながらリリアベルが言う。リリアベルはすっかりノアのことが気に入っているようだった。リリアベルの興奮した様子に、苦笑する。こうなるのがわかっていたから黙っていたのだ。
リリアベルはとても気の利く侍女だが、顔に出やすい。ノアと落ち合う約束があるといえばきっと出発の時からソワソワしていたに違いない。

「私もまさか会えるなんて思ってなかったの」

だから当たり障りなくごまかすが、すぐにずしりと背中に重みを感じた。見なくてもわかる。ノアだ。

「えー?約束したじゃーん。ネアちゃんってば冷たいなぁ」

「………ネアって呼ばないでください。あと重いです」

「えー?いいじゃん、ネア。呼びやすいし可愛い」

「………」

この人一度、距離感というものを学んだ方がいい。後ろからリリアベルが「私はリリアベルと言います、リアって呼んでください!」とすかさずアプローチをかける。リリアベルの気持ちはわからなくもない。確かに、ノアは顔だけはいいから。距離感がおかしくて軟派で、人の話を聞かないけれど。

「あ、じゃあリアちゃんはここで待っててよ」

「え!?」

「あ………」

リリアベルが驚き、私は気づく。そうだ。魔女と会うということは、私の過去戻りについてもきっと知られるということ。リリアベルにそれをしられたくない………。
今回、魔女に会うと言った時もリリアベルは驚いていた。そしてなぜ会いたいのかという彼女の質問に、私はこう答えたのだ。

『あってみたいから』

かなり苦しい言い訳だが、実際魔女との会話を聞かれたら誤魔化しようがない。確かにリリアベルにはここにいてもらった方がいいだろう。言い出してくれたノアに感謝する。

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