75 / 105
ノア(2)
しおりを挟む
本当は約束なんてしていないけれど。
来週の初めに都をたつといえば、ノアは『じゃあ予めこのあたりで待っている』と言ったのだ。ただ、それだけ。そんな簡単な取り決めだけだったので、ほんとうに会えるとは思ってなかった。ノアは珍しくローブのフードを払うと、私を見た。
「じゃ、いこっか」
「え?え?ノア……さん?ノアさんも行かれるんですか?ちょっと、ネアモネ様、どういうことですか………!」
僅かに責める声音を混ぜながらリリアベルが言う。リリアベルはすっかりノアのことが気に入っているようだった。リリアベルの興奮した様子に、苦笑する。こうなるのがわかっていたから黙っていたのだ。
リリアベルはとても気の利く侍女だが、顔に出やすい。ノアと落ち合う約束があるといえばきっと出発の時からソワソワしていたに違いない。
「私もまさか会えるなんて思ってなかったの」
だから当たり障りなくごまかすが、すぐにずしりと背中に重みを感じた。見なくてもわかる。ノアだ。
「えー?約束したじゃーん。ネアちゃんってば冷たいなぁ」
「………ネアって呼ばないでください。あと重いです」
「えー?いいじゃん、ネア。呼びやすいし可愛い」
「………」
この人一度、距離感というものを学んだ方がいい。後ろからリリアベルが「私はリリアベルと言います、リアって呼んでください!」とすかさずアプローチをかける。リリアベルの気持ちはわからなくもない。確かに、ノアは顔だけはいいから。距離感がおかしくて軟派で、人の話を聞かないけれど。
「あ、じゃあリアちゃんはここで待っててよ」
「え!?」
「あ………」
リリアベルが驚き、私は気づく。そうだ。魔女と会うということは、私の過去戻りについてもきっと知られるということ。リリアベルにそれをしられたくない………。
今回、魔女に会うと言った時もリリアベルは驚いていた。そしてなぜ会いたいのかという彼女の質問に、私はこう答えたのだ。
『あってみたいから』
かなり苦しい言い訳だが、実際魔女との会話を聞かれたら誤魔化しようがない。確かにリリアベルにはここにいてもらった方がいいだろう。言い出してくれたノアに感謝する。
来週の初めに都をたつといえば、ノアは『じゃあ予めこのあたりで待っている』と言ったのだ。ただ、それだけ。そんな簡単な取り決めだけだったので、ほんとうに会えるとは思ってなかった。ノアは珍しくローブのフードを払うと、私を見た。
「じゃ、いこっか」
「え?え?ノア……さん?ノアさんも行かれるんですか?ちょっと、ネアモネ様、どういうことですか………!」
僅かに責める声音を混ぜながらリリアベルが言う。リリアベルはすっかりノアのことが気に入っているようだった。リリアベルの興奮した様子に、苦笑する。こうなるのがわかっていたから黙っていたのだ。
リリアベルはとても気の利く侍女だが、顔に出やすい。ノアと落ち合う約束があるといえばきっと出発の時からソワソワしていたに違いない。
「私もまさか会えるなんて思ってなかったの」
だから当たり障りなくごまかすが、すぐにずしりと背中に重みを感じた。見なくてもわかる。ノアだ。
「えー?約束したじゃーん。ネアちゃんってば冷たいなぁ」
「………ネアって呼ばないでください。あと重いです」
「えー?いいじゃん、ネア。呼びやすいし可愛い」
「………」
この人一度、距離感というものを学んだ方がいい。後ろからリリアベルが「私はリリアベルと言います、リアって呼んでください!」とすかさずアプローチをかける。リリアベルの気持ちはわからなくもない。確かに、ノアは顔だけはいいから。距離感がおかしくて軟派で、人の話を聞かないけれど。
「あ、じゃあリアちゃんはここで待っててよ」
「え!?」
「あ………」
リリアベルが驚き、私は気づく。そうだ。魔女と会うということは、私の過去戻りについてもきっと知られるということ。リリアベルにそれをしられたくない………。
今回、魔女に会うと言った時もリリアベルは驚いていた。そしてなぜ会いたいのかという彼女の質問に、私はこう答えたのだ。
『あってみたいから』
かなり苦しい言い訳だが、実際魔女との会話を聞かれたら誤魔化しようがない。確かにリリアベルにはここにいてもらった方がいいだろう。言い出してくれたノアに感謝する。
31
お気に入りに追加
1,405
あなたにおすすめの小説
年に一度の旦那様
五十嵐
恋愛
愛人が二人もいるノアへ嫁いだレイチェルは、領地の外れにある小さな邸に追いやられるも幸せな毎日を過ごしていた。ところが、それがそろそろ夫であるノアの思惑で潰えようとして…
しかし、ぞんざいな扱いをしてきたノアと夫婦になることを避けたいレイチェルは執事であるロイの力を借りてそれを回避しようと…
公爵令嬢の辿る道
ヤマナ
恋愛
公爵令嬢エリーナ・ラナ・ユースクリフは、迎えた5度目の生に絶望した。
家族にも、付き合いのあるお友達にも、慕っていた使用人にも、思い人にも、誰からも愛されなかったエリーナは罪を犯して投獄されて凍死した。
それから生を繰り返して、その度に自業自得で凄惨な末路を迎え続けたエリーナは、やがて自分を取り巻いていたもの全てからの愛を諦めた。
これは、愛されず、しかし愛を求めて果てた少女の、その先の話。
※暇な時にちょこちょこ書いている程度なので、内容はともかく出来についてはご了承ください。
追記
六十五話以降、タイトルの頭に『※』が付いているお話は、流血表現やグロ表現がございますので、閲覧の際はお気を付けください。
我慢してきた令嬢は、はっちゃける事にしたようです。
和威
恋愛
侯爵令嬢ミリア(15)はギルベルト伯爵(24)と結婚しました。ただ、この伯爵……別館に愛人囲ってて私に構ってる暇は無いそうです。本館で好きに過ごして良いらしいので、はっちゃけようかな?って感じの話です。1話1500~2000字程です。お気に入り登録5000人突破です!有り難うございまーす!2度見しました(笑)
生まれ変わっても一緒にはならない
小鳥遊郁
恋愛
カイルとは幼なじみで夫婦になるのだと言われて育った。
十六歳の誕生日にカイルのアパートに訪ねると、カイルは別の女性といた。
カイルにとって私は婚約者ではなく、学費や生活費を援助してもらっている家の娘に過ぎなかった。カイルに無一文でアパートから追い出された私は、家に帰ることもできず寒いアパートの廊下に座り続けた結果、高熱で死んでしまった。
輪廻転生。
私は生まれ変わった。そして十歳の誕生日に、前の人生を思い出す。
【完結】私はいてもいなくても同じなのですね ~三人姉妹の中でハズレの私~
紺青
恋愛
マルティナはスコールズ伯爵家の三姉妹の中でハズレの存在だ。才媛で美人な姉と愛嬌があり可愛い妹に挟まれた地味で不器用な次女として、家族の世話やフォローに振り回される生活を送っている。そんな自分を諦めて受け入れているマルティナの前に、マルティナの思い込みや常識を覆す存在が現れて―――家族にめぐまれなかったマルティナが、強引だけど優しいブラッドリーと出会って、少しずつ成長し、別離を経て、再生していく物語。
※三章まで上げて落とされる鬱展開続きます。
※因果応報はありますが、痛快爽快なざまぁはありません。
※なろうにも掲載しています。
【本編完結】婚約破棄されて嫁いだ先の旦那様は、結婚翌日に私が妻だと気づいたようです
八重
恋愛
社交界で『稀代の歌姫』の名で知られ、王太子の婚約者でもあったエリーヌ・ブランシェ。
皆の憧れの的だった彼女はある夜会の日、親友で同じ歌手だったロラに嫉妬され、彼女の陰謀で歌声を失った──
ロラに婚約者も奪われ、歌声も失い、さらに冤罪をかけられて牢屋に入れられる。
そして王太子の命によりエリーヌは、『毒公爵』と悪名高いアンリ・エマニュエル公爵のもとへと嫁ぐことになる。
仕事を理由に初日の挨拶もすっぽかされるエリーヌ。
婚約者を失ったばかりだったため、そっと夫を支えていけばいい、愛されなくてもそれで構わない。
エリーヌはそう思っていたのに……。
翌日廊下で会った後にアンリの態度が急変!!
「この娘は誰だ?」
「アンリ様の奥様、エリーヌ様でございます」
「僕は、結婚したのか?」
側近の言葉も仕事に夢中で聞き流してしまっていたアンリは、自分が結婚したことに気づいていなかった。
自分にこんなにも魅力的で可愛い奥さんが出来たことを知り、アンリの溺愛と好き好き攻撃が止まらなくなり──?!
■恋愛に初々しい夫婦の溺愛甘々シンデレラストーリー。
親友に騙されて恋人を奪われたエリーヌが、政略結婚をきっかけにベタ甘に溺愛されて幸せになるお話。
※他サイトでも投稿中で、『小説家になろう』先行公開です
愛なんてどこにもないと知っている
紫楼
恋愛
私は親の選んだ相手と政略結婚をさせられた。
相手には長年の恋人がいて婚約時から全てを諦め、貴族の娘として割り切った。
白い結婚でも社交界でどんなに噂されてもどうでも良い。
結局は追い出されて、家に帰された。
両親には叱られ、兄にはため息を吐かれる。
一年もしないうちに再婚を命じられた。
彼は兄の親友で、兄が私の初恋だと勘違いした人。
私は何も期待できないことを知っている。
彼は私を愛さない。
主人公以外が愛や恋に迷走して暴走しているので、主人公は最後の方しか、トキメキがないです。
作者の脳内の世界観なので現実世界の法律や常識とは重ねないでお読むください。
誤字脱字は多いと思われますので、先にごめんなさい。
他サイトにも載せています。
もう尽くして耐えるのは辞めます!!
月居 結深
恋愛
国のために決められた婚約者。私は彼のことが好きだったけど、彼が恋したのは第二皇女殿下。振り向いて欲しくて努力したけど、無駄だったみたい。
婚約者に蔑ろにされて、それを令嬢達に蔑まれて。もう耐えられない。私は我慢してきた。国のため、身を粉にしてきた。
こんなにも報われないのなら、自由になってもいいでしょう?
小説家になろうの方でも公開しています。
2024/08/27
なろうと合わせるために、ちょこちょこいじりました。大筋は変わっていません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる