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魔女(2)
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良かった。これで却下されてたら全ての計画がおじゃんだった。こうして、私はヨエンの谷に行くまでの権利を勝ち取った。
ちなみにーーーなぜこのために一年かかったかというと。殿下との関係を測りたい、と言うより彼のことを知る必要があったと思った。恋愛にかまけて曇ったレンズ越しに見るのではなく、ただの少年として彼を見る。その必要があったと思ったし、殿下との関係性を変えていく必要もあった。
それに何より、去年。ネイヴァーさんと話した時点では私の誕生日は既にすぎていた。
プレゼントとしてねだるにはやはり誕生日が一番だろう。
×××
それから、私はネイヴァーさんの元に行きヨエンの谷に行くことを告げた。彼女は相変わらず楽しそうな顔をして、私に言った。
「じゃあ、あれを連れていくといいよ。きっと役に立つ」
ーーーあれ?
不思議に思ってネイヴァーさんの指すほうを見たと同時。薬屋の扉が開く。軽やかな鈴の音がして、銀髪が目に入った。
「あの時の………」
「やっほ。ヨエンの谷に行くんだって?俺も実は用があるんだよね。お供させて貰えない?お姫様」
その類まれなる容姿にすぐに気づいた。あの時のうさんくさい男だわ………!
私が訝しんでネイヴァーさんを見ると、彼女は手を振って答えた。
「大丈夫、こう見えてコイツは腕がたつ。それにお嬢ちゃんは少人数で行くんだろう?ヨエンの谷は、暗くて深い。人数は多い方がいいさ」
「…………でも、」
「だぁいじょうぶ、きみの邪魔はしないから」
あっけからんと彼が告げる。
相変わらずの見目麗しさぶりだが、その口調は以前よりも軽くなっていた。軟派男、という印象を覚える。
「それに俺、きみと魔女の話も気になるんだよね。ちょっと、興味あるというか」
「ただの好奇心から来る発言であれば………結構です」
彼の軽い物言いにそう返せば、青年は「違うよ~」と間延びした声で返した。
ちなみにーーーなぜこのために一年かかったかというと。殿下との関係を測りたい、と言うより彼のことを知る必要があったと思った。恋愛にかまけて曇ったレンズ越しに見るのではなく、ただの少年として彼を見る。その必要があったと思ったし、殿下との関係性を変えていく必要もあった。
それに何より、去年。ネイヴァーさんと話した時点では私の誕生日は既にすぎていた。
プレゼントとしてねだるにはやはり誕生日が一番だろう。
×××
それから、私はネイヴァーさんの元に行きヨエンの谷に行くことを告げた。彼女は相変わらず楽しそうな顔をして、私に言った。
「じゃあ、あれを連れていくといいよ。きっと役に立つ」
ーーーあれ?
不思議に思ってネイヴァーさんの指すほうを見たと同時。薬屋の扉が開く。軽やかな鈴の音がして、銀髪が目に入った。
「あの時の………」
「やっほ。ヨエンの谷に行くんだって?俺も実は用があるんだよね。お供させて貰えない?お姫様」
その類まれなる容姿にすぐに気づいた。あの時のうさんくさい男だわ………!
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「大丈夫、こう見えてコイツは腕がたつ。それにお嬢ちゃんは少人数で行くんだろう?ヨエンの谷は、暗くて深い。人数は多い方がいいさ」
「…………でも、」
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「それに俺、きみと魔女の話も気になるんだよね。ちょっと、興味あるというか」
「ただの好奇心から来る発言であれば………結構です」
彼の軽い物言いにそう返せば、青年は「違うよ~」と間延びした声で返した。
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