王妃の鑑

ごろごろみかん。

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タイムリミット(2)

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たしかに今日は帰るしかなさそうだわ………。ここで粘ったところで彼女は取り合ってくれるように見えない。話は済んだと言わんばかりの彼女を見てため息が出そうになる。せっかくここまで来たのに………。
椅子から立ち上がる。その時、ネイヴァーさんと目が合った。

「あ、そうだお嬢さん。ひとついいことを教えてあげよう」

「………?」

いいこと………?
彼女と目が合う。燃えるような赤い瞳は、妙に気迫があった。

「前提を誤っちゃぁいけないよ」

「え……?」

突拍子のない言葉に戸惑う。
青年………彼もまた、私を見ていた。
どういう意味………?問いかけようとした矢先、ネイヴァーさんは奥の方に入ってしまった。これ以上は話すことがない。帰れということなのだろう。青年も後に続き、部屋には私とリリアベルだけが残った。

「………?」

なんだったのかしら。リリアベルの方を見る。
………けれど、彼女はそれどころではなかったらしい。

「え?まさかデキてるの………?いやそんな馬鹿な」

ブツブツと呟くリリアベル。
リリアベルはどうやら考え事に夢中で聞いていなかったらしい。
私は出口に迎えながらも考えた。
私のーーー、私の推測が間違っていなければ、おそらくネイヴァーさんが魔女。可能性は低いけれど、だけど違うとも言いきれない。魔女と近しい関係、という線もあるけれど、魔女というのは得てしてとっつきにくいものだ。
もし彼女が魔女でもなんでもなく、ただの薬屋で、魔女と知り合いだもというのなら。
魔女と人との取引の橋渡し、仲介業をしているという可能性もある。
だけど、その線は低いだろう。なぜなら魔女が人間の仲介で話を聞いてくれるとは思えないからだ。どちらかというと、彼女自身が私を気に入ったからこの店に呼んだ、という方がしっくりくる気がする。

「………なんにせよ、まずは殿下よね………」

どうすればいいのかなんて分からない。分からないけれど、わからないなりにやってみないと。一から信頼関係を作るのは難しい。でも、やってみないとわからない。少なくとも私と殿下が婚姻を結ぶまでは猶予がある。まだ、タイムリミットは残されている。

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