王妃の鑑

ごろごろみかん。

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時を戻す(2)

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今が『現在』である証明など、どこにもない。ネアモネは頭に痛みを覚えた。まだ七歳の頭では、難しいことを考えるのに向いていないのかもしれない。

「なんて言うんですかね………。えーと、パラレルワールド……。そう!パラレルワールドって、ネアモネ様ご存じですか?」

「………平行世界、よね。選択肢が連続して続く、異世界、とも言われてる」

異世界………だっけ?でも確かにパラレルワールドって別の世界線だよね。じゃあほぼほぼあってるか!ーーーとリリアベルは思った。実を言うとリリアベルはそこまでパラレルワールドに詳しくなかった。神妙な顔をしたネアモネに対し、リリアベルは思ったことをそのまま告げていく。

「そうなんですね。ネアモネ様は何でもご存知で素晴らしいですわ。先生が関心されるのもよくわかります」

先生に、感心される………。ネアモネはふと思い出した。昔はなんとしてでも褒めてもらいたくて、姉と同列に見て欲しくて。何事にも一生懸命だった気がする。結局、何も変わらなかったけれど。
ネアモネはさまよう視線を誤魔化しながら震えた声で告げた。

「私は…………私は、何も知らないわ」

リリアベルが怪しむ。だけど、取り繕う余裕は今のネアモネにはなかった。
どうしたら、未来は変わる?どうしたら、救いは見つかる?
まるで砂の上を歩くような心もとない世界。ネアモネの進めべき道は、まだ見つからない。

「ふふ、ネアモネ様はまだ七歳ですもの。知らないことが沢山あったって何も不思議じゃありません」

違う、違うの。リリアベル。私は本当はもう成人していて、本当は七歳なんかではない。それでも、知らない。わからない。どうしてあの未来になってしまったのかも。殿下がいつ、私を嫌ったのかすら、私にはわからない。私には、何も見えてなかったーーー
あの未来を回避するすべは、ないのかしら…?

「それで、そうでした。話がそれちゃいましたね。時を操る……って怖くないですか?人智を超えるといいますか。だってそれ、思い出を壊す行為ですし」

「思い出を壊す?」

予期しない言葉にリリアベルは何度も頷く。

「はい、私は例えどんなに悲しい過去も、苦しい過去も、消しちゃいけないと思うんです。それは、人間が関わるところではない………と思います。それに、過去を消すってつまり、楽しかった記憶も、事実も無くなっちゃうってことですよね?それって寂しくないですか?」
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