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城下(6)
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男が酒をすすりながら答える。近くにあったおつまみに手を伸ばす男を見て、もう一人の男が豪快に笑った。
「ネイヴァー、お前そんなおっかいなところにこんな嬢ちゃんが行くかってんだ。なぁ?」
視線を飛ばされる。ネアモネは答えなかった。
「わかんないだろう?なぁお嬢ちゃん、あんたは時の魔女に会いに行くのかい?」
女性ーーーネイヴァーに聞かれたネアモネは躊躇した。分からなかったからだ。行くかどうか、なんて。
魔女に会いたいかどうか。そう聞かれたのなら会いたいと間違いなく答えるだろう。だけど、魔女に会うためにわざわざ、いるかどうかもわからない場所に行くかどうか。それは分からない。
今のネアモネはまだ七歳。1人で行動するには心もとない。黙り込んだしまったネアモネに変わり、リリアベルが答える。
「魔女などおとぎ話のようなもの。さぁ、ネアモネ様行きましょう。日が落ちてしまいます」
もう店を出るつもりなのか荷物をまとめている。
リリアベルに急かされたネアモネははっとして顔を上げる。ネイヴァーは面白そうにこちらを見ていた。
どうやら訳ありのネアモネたちが面白いらしい。他人の不幸は蜜の味、とはよく言ったものだがまさにネイヴァーは他人のそういったことを面白く感じる人間なのだろう。
ネイヴァーの茜色の瞳が煌々と揺れる。
「お嬢ちゃん。
魔女の家にいくとなったら私のところにおいで。店を出てすぐの角のとこで、薬屋を営んでいるんだ。こいつらは私の用心棒」
「おいおい、お嬢ちゃんに下手なもん売っぱらうって寸法じゃねえだろうな」
男が茶々を入れる。ネイヴァーが男を睨んだ。
「うるさいな。そんなことはしないさ」
「ありがとうございます、ネイヴァーさん。……覚えておきます」
言うと、ネイヴァーは満足そうな顔をした。
いつか、なにかの役に経つかもしれない。本当をいえば、何もかも忘れてその魔女とやらを探してみたい。魔女探しの旅に、出てみたい。
だけどネアモネは公爵家の令嬢であり、王太子の婚約者である。勝手な行動が許される立場ではない。今の息抜き程度の外出ならまだしも、期間も未定の旅に出ることなどありえない。
不自由なものだと思う。王太子の婚約者という席など、王妃という席など、そこに想いがなければただの傀儡も同じ。縛られるだけの立ち位置だ。
何をしたらいいのか、わからない。何をするために、過去に戻ったのかも。
婚約を結ばなければよかったがそれが、既に婚約は結ばれてしまっている。
ネアモネはもう王太子の婚約者だ。このままだと、また前と同じ人生を送ることになる。
「ネイヴァー、お前そんなおっかいなところにこんな嬢ちゃんが行くかってんだ。なぁ?」
視線を飛ばされる。ネアモネは答えなかった。
「わかんないだろう?なぁお嬢ちゃん、あんたは時の魔女に会いに行くのかい?」
女性ーーーネイヴァーに聞かれたネアモネは躊躇した。分からなかったからだ。行くかどうか、なんて。
魔女に会いたいかどうか。そう聞かれたのなら会いたいと間違いなく答えるだろう。だけど、魔女に会うためにわざわざ、いるかどうかもわからない場所に行くかどうか。それは分からない。
今のネアモネはまだ七歳。1人で行動するには心もとない。黙り込んだしまったネアモネに変わり、リリアベルが答える。
「魔女などおとぎ話のようなもの。さぁ、ネアモネ様行きましょう。日が落ちてしまいます」
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「お嬢ちゃん。
魔女の家にいくとなったら私のところにおいで。店を出てすぐの角のとこで、薬屋を営んでいるんだ。こいつらは私の用心棒」
「おいおい、お嬢ちゃんに下手なもん売っぱらうって寸法じゃねえだろうな」
男が茶々を入れる。ネイヴァーが男を睨んだ。
「うるさいな。そんなことはしないさ」
「ありがとうございます、ネイヴァーさん。……覚えておきます」
言うと、ネイヴァーは満足そうな顔をした。
いつか、なにかの役に経つかもしれない。本当をいえば、何もかも忘れてその魔女とやらを探してみたい。魔女探しの旅に、出てみたい。
だけどネアモネは公爵家の令嬢であり、王太子の婚約者である。勝手な行動が許される立場ではない。今の息抜き程度の外出ならまだしも、期間も未定の旅に出ることなどありえない。
不自由なものだと思う。王太子の婚約者という席など、王妃という席など、そこに想いがなければただの傀儡も同じ。縛られるだけの立ち位置だ。
何をしたらいいのか、わからない。何をするために、過去に戻ったのかも。
婚約を結ばなければよかったがそれが、既に婚約は結ばれてしまっている。
ネアモネはもう王太子の婚約者だ。このままだと、また前と同じ人生を送ることになる。
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