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城下(4)
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リリアベルがそう続けたが、既にネアモネには届いていなかった。沈黙、疑惑ーーーそして、『私に答えてください』。殿下はある時から突然ラベンダーの香水を多用するようになった。それは、なにかの意味があって?それとも、意味などない?私に、何かを伝えようとしていたーーー?
わからない。私は万能じゃない。言ってくれないと、わからないわ………。
だけど、言われなければわからなかった私もまた、悪いのだろう。分かろうとしなかった、知ろうとしなかった。もっと深く、聞いてみればよかった?でも、気付かなかった………。
ネアモネが1人考え込んでいると、なにかまずいことを言ったと考えたのだろう。やや慌て気味にリリアベルがなにか言おうと口を開いた。
「あ、でもラベンダーの花言葉には他にも意味があって、」
「時の魔女?」
「んなもん、いたら苦労しないよなぁ!」
だけどリリアベルの声は悲しいことに周りのガヤガヤとした声にかき消されてしまった。突然飛んできた声にネアモネもリリアベルもそちらを見る。
「魔女なんておとぎ話みたいなもんだ。このご時世、そんな便利なもんがいたらとっくの昔に引き上げられてるよ!」
「だけどねぇ、見たものがいるんだって。その魔女は人を選ぶみたいで、なかなか会えないらしいよ?」
男ふたりと女ひとりが会話を繰り出していた。男ふたりはいかにも荒くれ者のような出で立ちだが、女は目元に赤のラインを引き、キツめの印象を覚えた。会話を半ば遮られる形で意識を持っていかれたネアモネとリリアベルは、なんとなくそちらを見てしまう。その時、その目元がきつめの女性と目が合ってしまった。
彼女は黒髪を頭の上でひとつにまとめ、ダークブラウンの肌をしていた。姉御肌、という言葉が脳裏を巡る。
「なんだい、あんたら。あんた達も気になる口かい」
「え?ええ、えっと…」
突然話しかけられたリリアベルが困惑気味に首を傾げると、しかしすぐにネアモネが反応した。僅かに身を乗り出しながら女性に問いかける。
「時の魔女とは、何ですか?」
「ネアモネ様………っ!」
小声で諌めるリリアベルに構わず、女性に質問するネアモネ。ネアモネのその反応に、女性は気を良くしたのかからりと笑うと告げる。
「それがなぁ。よく分かってねえんだよ」
「お嬢ちゃんたち、見たところいい所の出らしいが、何か訳ありかい?」
大柄な男がお酒を片手に問いかける。昼から酒盛りをしていたらしい男ふたりと、口調が粗野な女にリリアベルが警戒心を露わにする。ネアモネは公爵令嬢だ。そしてこの国の王太子の婚約者という尊い身分。万が一があってはならない。だけど、その肝心のネアモネが聞きたがっている。リリアベルは判断を迫られていた。
ちらりとネアモネを見ると、彼女は真剣な瞳をしていた。その目にはどうしても知りたい、と書かれている。
わからない。私は万能じゃない。言ってくれないと、わからないわ………。
だけど、言われなければわからなかった私もまた、悪いのだろう。分かろうとしなかった、知ろうとしなかった。もっと深く、聞いてみればよかった?でも、気付かなかった………。
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「時の魔女?」
「んなもん、いたら苦労しないよなぁ!」
だけどリリアベルの声は悲しいことに周りのガヤガヤとした声にかき消されてしまった。突然飛んできた声にネアモネもリリアベルもそちらを見る。
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「なんだい、あんたら。あんた達も気になる口かい」
「え?ええ、えっと…」
突然話しかけられたリリアベルが困惑気味に首を傾げると、しかしすぐにネアモネが反応した。僅かに身を乗り出しながら女性に問いかける。
「時の魔女とは、何ですか?」
「ネアモネ様………っ!」
小声で諌めるリリアベルに構わず、女性に質問するネアモネ。ネアモネのその反応に、女性は気を良くしたのかからりと笑うと告げる。
「それがなぁ。よく分かってねえんだよ」
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