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すれ違い / アルフェイン (4)
しおりを挟む「あら、殿下。またパーティを抜け出したのですか?お悪いこと………」
「アデライード。またきみ?いい加減鬱陶しいんだけど」
「冷たいのね。私、あなたを探してこんな所まできたのに」
「独りよがりもいい加減にしてくれないかな。僕はきみと会いたくなかった」
アデライードは、相変わらず寒そうな服を着ていた。僕の嫌そうな声に構わず、部屋の中に入ってくる。ネアモネといると、息が詰まる。
だからこそパーティを途中で抜け出すことだってよくあるし、そして抜け出した先で偶然アデライードと会うことも度々あった。
アデライードは何度言っても僕を追いかけることをやめない。そして、言葉にこそしないがおそらく僕に好意があるのだろう。それは分かっていたが、彼女との気を使わない空間はなかなか心地よかった。それが、男女のものかと聞かれると、返答には困るが。
「殿下は………相変わらずお寂しそう」
「そうかな?そう見える?だとしたら、きみの気のせいだよ。僕は今、一人の時間をきみに邪魔されてとても気分が悪い」
最初は、アデライードにも丁寧な対応をしていた。だけどある夜、彼女の策略に嵌ってまんまと素の口調で話してしまった。と言っても、手荒い言葉ひとつのみだったが。
しかも策略といっても捨て身の戦法で、彼女は突然僕に襲いかかってきたのだ。ナイフーーーに見えたそれは、ただの飾りだった。薄暗い室内で突然飛びかかってきた彼女を拘束した時、つい荒い口調がとび出た。
相手が彼女だと知り、本気で衛兵に突き出すか迷ったが、その時彼女が言ったのだ。
『飾るより、そちらの方がずっといいのでは?』
それを言われた僕は、なんだかその時点で王太子という肩書きが外れたように感じた。実際はそんなはずはないのだが、気分的なものだ。
そして、それからだ。僕も普通に話すようになった。それに、僕もいい加減アデライードのストーカー行為にはうんざりとしていた。気のない口調に幻滅すればいいとも思った。
だけど、彼女はそれからも変わらず僕に付きまとう。正直、面倒だった。ため息をつき、アデライードを見る。
「殿下はいつもつまらなそうな顔をされるのねぇ………」
「十秒以内に退室しないと衛兵を呼ぶ。今日は疲れているんだ」
「いつも疲れてるじゃない。………っと、衛兵を呼ばれたらさすがに私も困るから………あ。そうだ。ねぇ殿下?」
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