王妃の鑑

ごろごろみかん。

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時廻り

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「話はそれだけだ」

そう言って、陛下は私に見向きもせずに部屋を出ていった。
陛下が退室されて、私はふらふらとベッドから立ち上がった。
何も感情は抱かなかった。初めて言われた時の衝撃は、もうない。
ただある感情だけが私を襲った。死ななければ。早く、死ななければまたあの未来がくる。またリリアベルが死んでしまう。
私は護身用にと仕舞われた引き戸からナイフを手に取った。鞘からそれを出し、その艶やかな刀身を目にする。
奇しくも、満月の夜だった。私は窓にそっと近づくと、月を見上げた。

「……………全て、終わりにしてしまいたい」

呟いた言葉を最後に、勢いよくナイフをふりかぶる。未練も何も無かった。ただ、強迫観念のような死への強い衝動だけが私を突き動かす。なにかに取り憑かれたとしか思えないほど、死のことしか考えられなかった。死ななければ。早く、死ななければ。時間が無い。きっと、時間をかければ死への恐怖が頭をもたげてしまう。それなら今のうちに死んだ方がいい。
死ななければ。死なないといけない。
強い強い感情のまま振り上げた手は、なんの躊躇もなかった。思い切り胸につきささったナイフはさすが王妃に渡されるだけあって切れ味が良かった。
激痛が体をさいなみ、骨が砕かれたような痛みを感じる。じんじんと傷口が痛み、身体に力が入らず私はカーペットに転がった。広がった天井は暗く、部屋には私一人だけ。
じんじんと痛む胸がだんだんと熱くなってきて感覚が麻痺する。そのまま頭にかすみがかったようなモヤが広がり、私は意識を手放した。
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