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絶望が巣食った日(2)
しおりを挟む「痛っ………やめてください!」
「どうしたらお前は従順になる?望むものはやっただろう。髪を切り、他のものに犯され尽くせば静かになるか?」
「いやっ………!」
「無垢でもないくせによく言う」
吐き捨てるように言うと、陛下は私の髪から手を離した。苦しくて、悲しくて、怖くて、そして絶望が胸を襲って、陛下の言葉は何一つ耳に届かなかった。
だけどそのまま膝が折れてカーペットに沈み込む。陛下の顔は見れなかった。見ることなどできなかった。涙が滲む。
「…………金輪際アデライードには会うな。次会ったら首を刎ねる」
冷たい声で言うと、ようはそれだけだと言わんばかりに陛下は部屋をあとにした。
その後に入ってきたリリアベルは私を見るや否や慌てたようすで走ってきた。
「殿下!」
「うっ………ふっ…………ぅああ………!」
もう限界だった。耐えられなかった。
どうしてここまでされなければならないのか。どうして突然陛下は冷たくなってしまったのか。元々ああいう人だったのか。分からない。分からないけれど、もう耐えられなかった。
嗚咽が零れて、声を抑えることは出来なかった。目元を抑えて泣き崩れる私の背を、リリアベルがずっとさすってくれた。
しかし、これよりももっと深い絶望があると私をせせら笑うように、私に教えるように。暗闇が私の足を掬った。
それから一ヶ月が経過した。
アデライード様とも陛下ともお会いしなくなり、鬱々した気をなんとか払おうと庭園に足を運んだ。
もう少して庭園に出る。そう思って廊下を横切った時。
首に衝撃を感じた。
驚く暇もなく、私の意識は闇にまみれた。
そのまま意識を失った私は、見知らぬ場所で目が覚めた。
そして………その後のことは思い出したくもない。
目元は覆われ、体を暴かれた。誰に無垢を奪われたかは分からない
だけどその日。間違いなく私は処女を散らした。相手は誰かもわからないまま、泣いても叫んでも誰も来なかった。
相手は一人ではなかったようで交代交代に陵辱される短いとは言えない時間。
深い、深い絶望と失望が胸を満たした。暗闇だけが脳を支配した。痛みも感情も全てを失った。頬にぬるいものがあたり、自分が泣いているのだと呆然に理解した。
いつの間にか意識を失ったのだろう。
夢を見た。まだ陛下と………アルフェイン様と仲がよかった頃のもの。
いや、仲がよかった訳では無い。そう見せていたのだ。誰でもない、アルフェイン様が。
目が覚めた時、私は見知らぬベッドに寝かされていた。
体が、殴られた頬が。切られた髪が、蹴られた腹が、全てが痛い。目眩がして視界がぶれる。
キリキリとした痛みが心臓を襲う。吐き気がした。
信じられなかった。
信じたくなかった。
怖かった。恐ろしかった。朝日が窓から差し込む。見る限り、部屋には誰もいない。
まるで山小屋のような部屋の中、私は一人きりだった。
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