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βの兎獣人はαの王子に食べられる *
しおりを挟む噛み付くような口付けが落とされる。
いつものやさしさはなく、まるでティナ自身を食べてしまいそうな、そんな口付け。
「んっ……」
ティナが苦しげな声を出すと、彼は彼女の背に手を差し入れて、ぐっとふたりの距離を縮めた。
未だネグリジェに覆われているティナのささやかな胸が、彼の胸板に潰される。
そのままふたりは互いの体を押し付けるようにしながら口付けを交わしていたが、やがて熱いため息を吐いてロベートは口付けを解いた。
「恥ずかしいって嫌がってもやめてあげないよ。誘ったのはティナなんだから」
「……わたし、うまく誘えていた?」
ティナは自分自身、あれが彼を誘惑するだけの魅力があったのかわからない。
なので、確認がてら彼に尋ねたのだが、彼女の言葉を耳にしたロベートは言葉につまり、目元を赤く染めた。
「……きみは、もっと自覚した方がいい。君自身が、俺にとって劇薬だよ。きみに誘われたら、俺の理性なんてあってないようなものだ」
「……不安、だったの。ロベートはいつも余裕があるし、大人びているから……私で満足しているのかなって……」
それでもティナが不安を隠せない目で彼を見上げると、彼は眉を寄せて考え込むように黙り込んだ後──息を吐いた。
「いいよ。きみがわからないというなら、俺が教えてあげる。もう二度と、こんな危ないことをしないように」
ティナの先程の行為は、ロベートから見たら兎がせっせと自身に塩を塗り、胡椒を振り、自らまな板の上に上がるような行いだった。
それだというのに、彼の兎はそれが食事の準備を手ずから行っているという自覚が無さすぎる。
これはもう、ロベートに食べられて知ってもらうほかない。
(余裕?そんなものあるはずがない)
たとえ、ロベートが|女王アリ(ティナ)と交尾したら数日で死んでしまう|雄のアリ(ドローンアント)だとしても、彼は彼女の肌に触れる誘惑には抗えられなかっただろう。
そんな、余裕どころ切羽詰まってると言ってもいい男が、彼女には余裕があり、落ち着いているように見えるのか。
何度も体を重ね、その度に彼は彼女にみっともないところを見せたというのに、彼女はそれを覚えていないらしい。
彼女がほかの男を知らなくてよかった。
もし、知っていたら鈍い彼女ですら気がつくだろう。落ち着いて、余裕ぶった顔をしてみせる男が、ほんとうは常にぎりぎりでいることを。
ただ、年下の好きな女の子の前で格好つけているだけで、それはハリボテに過ぎない。
ここ半年、ティナは寝る間も惜しみ勉強に励んでいたし、結婚式当日はロベートですら時間が早く感じたほどに忙しかった。
社交界慣れしておらず、体力もあまりないティナにはロベート以上に体力を消耗したはずだ。
だから、昨日は眠りに落ちたティナを前にしても彼は彼女を起こすことなく、自身の欲望を半ばむりやり抑えこみ、なんとか眠りにつこうとベッドに入ったのだったが──。
すっかりその気になってしまった体を宥めるのは難しく、結果、彼が眠りについたのは朝方近い時間だった。
でも、ティナのこの反応を見るに昨日は彼女を起こしてあげた方が良かったのかもしれない。
そんなことを考えながら彼は彼女の首筋にくちづけを落とす。
以前彼が咲かせた花はすっかり失われてしまっている。
彼はそれを取り戻すように口付けを深め、赤い花を残していった。
片方の手で彼女の胸元のリボンを解く。
さすが、初夜仕様のネグリジェだ。
リボンを解いてしまえばすぐに胸元があらわになり、彼女が気にするささやかなふくらみが露になった。
彼はやわらかな白肌に指先を沈めると、肌をなぞったり、くるくると円を描いたりして彼女を焦らす。
「やぁっ……」
「自分から進んで食卓に上がることを望んだ兎さん。ここも支度は整ってるみたいだね?」
彼の指先が彼女の太ももを割って、その先を示す。
そこは、彼女自身自覚できるほどそこを熱く濡れていた。ドロワーズは色を変え、肌に張り付いている。
ロベートの言葉にティナは顔を真っ赤にして瞳を潤ませた。
そんな彼女を見て、ロベートは苦笑する。
決して、いじわるをしたいわけではない。
わけではないのだが、いじわるをすると彼女はとても可愛い顔をするから──なかなかやめることができないのが実態だった。
ドロワーズ越しに指を差し込むと、ティナが甘く喘ぐ。
「ひぁっ……」
「もうぐしょぐしょだね。脱いじゃおう。ティナ、腰あげて?」
ロベートの言葉に、ティナは大人しく腰をうかし、彼の手助けをする。彼女は恥ずかしさのあまりそちらを見ることが出来ない。
彼はドロワーズを脱がせると、それをベッドの上に放り投げて、彼女の秘められた部分を指先でなぞりあげた。
びくりと彼女の手足が揺れる。
今すぐいれても構わないくらい、中はとろけているようだった。
「ティナ、足を上げられる?」
「え……?」
彼女が困惑して声を出すと、彼はティナの返事を聞く前に彼女の両足をそれぞれ肩にかけてしまった。
そうすると、必然、彼の正面に秘所がさらけ出されてしまうわけで。
「やっ……!ロベート、これいや!」
「大丈夫。ティナもさっきしてくれたでしょ?」
「それはっ」
先程のことを引き合いに出されると、ティナは弱い。口ごもる彼女にこれ幸いと彼は嗜虐的な笑みをみせ、そっと顔を伏せた。
「や……!」
「だめ。聞かない」
抵抗する彼女の腰をしっかりと押さえ込んで、彼は液があふれる秘所に口付けた。
次から次にひっきりなしに零れる雫は、味などないはずなのに甘く感じる。
それはきっと、ロベートが彼女を愛おしく思っているからそう感じるのだろう。
筋を舐め上げて、期待にふくらむ蕾にくちびるをつければ、甲高い兎の悲鳴が上がった。
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