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兎の反撃 * 3
しおりを挟む(ロベートは……やっぱり私の体にはあまり興味が無いのかな)
なにせ、ティナは悲しいくらいに平坦な胸をしている。
ロレリーナくらい起伏があれば、彼もやる気になってくれるだろうに。
それに、ティナは彼より四つも年下だ。
小娘には欲情などしないのかもしれない。
以前の交わりは、一度目はティナを逃がさないように、という名目があったし、その次は自分から彼を強請った。
三回目はなし崩しに──彼と体を重ねたが、実際彼はあまり自分に魅力を感じなくて、ティナがねだるから渋々相手をしてくれていたのでは……。
ティナは自分に自信がない。
βだから、という理由で迫害されていたのも理由のひとつだし、何より彼女は自分の体が魅力的だと思わなかった。
(ロレリーナは、口付けをすればその気になってくれるって言ってた……)
ロベートは、ティナを愛おしんでくれている。
それは、自分に自信の無いティナにもわかった。
だから、きっとティナが魔法をかけようとしたら、彼は彼女の気持ちを汲み取ってくれるだろう。
「ティナ?」
声をかけられたティナは、じっとロベートを見つめた。
そして、息を吐いてよし、と覚悟を決めた。
「ティ──」
彼がふたたび彼女を呼ぶ前に、ティナは口付けで彼のくちびるを塞いだ。
「!」
彼はとつぜんの口付けに驚いたようだったけど、すぐにティナの腰に手を回し、彼女のつたない口付けに応えた。
目を細めて、ティナの様子を探りながらうすくくちびるを開く。
そうするといつになく積極的な彼女が舌を差し入れてきた。
(ど、どうすればいいの……?いつもロベートは、たしか)
ティナは記憶を頼りに、ぎこちなく舌を動かした。
ロベートは、とつぜんいたずらを仕掛けてきた兎に目を細めたが、すぐに彼女の口付けに反撃を返す。
舌を絡め取り、逃がさないように吸いあげればびくりと彼女の体が震える。
「ん、んんっ……!」
朝とは思えない濃厚な口付けを交わす。
水音があやしく響き、兎の耳が忙しなく、快楽の度に揺れる。
互いに互いを食むようにして、ようやく銀糸の橋を作りながらも口付けを解いた。
「……どうしたの?」
ロベートの声はあまりにも優しく、いたわりに満ちていた。
ティナのすべてを許容しているかのような、そんな声だ。
ティナはそんな声を聞くと、体の力が抜けてしまいそうになる。
だけど、ここでいつものようにふにゃふにゃになるわけにはいかないのだ。
(えっと、まずは、そう──。服を、服を脱がせて……)
ティナは視線をそろそろと下ろした。
訝しげに彼女を見る彼の視線を受けて、ちいさな、蚊の鳴くような声で彼に答えた。
「いつも……私ばかりだから。あなたにも良くなって欲しいの」
「え?いつもって──ティナ!?」
彼女はぐっと手を伸ばして彼のズボンを軽く引き下げた。
ためらいはない。
一度でも躊躇してしまえば、もう動けなくなることを彼女は理解していた。
ズボンの中から、恐る恐る熱に触れた。
まだすこし、やわらかい、ような気がする。
ティナはそれを目にするのも、触れるのも初めてだ。
ロベートが息を詰めるのがわかった。
心臓の音があまりにもうるさすぎて、口から飛び出てしまいそうだ。
とんでもないことをしているように感じる。きっと、あとから思い出したらティナは羞恥心のあまり死にたくなるだろう。
それは分かっていたが、それでも手を止めることは出来なかった。
それを取り出せば、その形はティナの想像を超えていた。
驚きに一瞬、息を飲むがここまできて後には引けない。
(大丈夫、大丈夫……予習だけは何度も行ったんだから……)
ロレリーナには、練習にはバナナやなすを使うといいと言われたので、ティナは恥を忍んで厨房からそのふたつを拝借し、ロベートの目を盗んでレッスンを行っていたのだ。
自己流だが、その時のことを思い出せば大丈夫……
(こわい……ような気もするけど、でも……不思議。見てるとどきどきする……)
その怒張は、ほんとうに人体の一部なのか。
赤黒く、筋が浮かんでいる。
こんな摩訶不思議な部分がロベートにあるなどと彼女は思ってもみなかった。
取り扱いは全く分からないが、友人にが言うのはそれはとても繊細なので、強く握ったりしてはいけないらしい。
(やさしく、やさしく……)
「っ……ティナ、もういいから」
「や、やだ……」
ちいさな震えた声で答えて、ティナはそっとそれを指の腹で撫でる。あたたかくて、滑らかだ。
すべすべとしていて、中に芯が入ってるかのごとくかたい。
ティナは勇気をだしてそれをそっと握ると、ロベートがちいさく呻いた。
「ティナっ……」
(え、ええと?これをどうすればいいんだっけ……)
確か、そう。
これを口に含んでしまえばいいのだった。
なすやバナナは何度も口に含み、歯を立てないように練習を繰り返した。
その時のことを思い出してティナは必死に舌を絡ませた。
それを口に含むと、あっという間に口の中はいっぱいになってしまう。
すこし苦しい。
舌でなぞりながら口をすぼめれば、ロベートの焦りを帯びた声が聞こえてきた。
「……っ、ティナ、ほんとに」
「……ひもひ、い?」
この行為に快楽を感じるのか、彼女には疑問でしかない。
顔を上げて彼を見れば、彼は目を細めて眉を寄せ、苦しげに呼吸を繰り返していた。
「きもち、いいよ……。でも、どうしたの?俺、こんなこと教えてないよね……」
彼の手が、ティナの頭を撫でてやさしく髪をかきまぜたから、彼女も口からそれを出し、くちびるをつけるだけに留める。
「私もロベートに、なにかしたいなって思ったの……。間違えてない?」
「……………誰の入れ知恵か気になるところだけど。ありがとう。すごく嬉しい」
ロベートは困ったような、苦笑するようなため息を落とした。
そして、彼女の頬を両手で掴み顔をあげさせる。
「でも、されるばかりなのは納得がいかないな。俺にもティナを可愛がらせて」
ぐい、と脇の下をつかまれて持ち上げられると彼女はそのままベッドに倒された。
びっくりして目を丸くするティナに、彼が嫣然とした笑みを浮かべる。
「朝だけど初夜、しちゃおうか」
彼がティナの手を持ち上げて、その手の甲に口付けを落とした。
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