宝石姫は二度死ぬ

ごろごろみかん。

文字の大きさ
上 下
5 / 6

5

しおりを挟む
「それにお前には先程知らないと言ったが不貞の疑いがー……………なに!?」

カインハルトのいきりたった声が聞こえる。
私はもう演技はこの辺でいいかと思いながら、扇を投げ捨てた。足元に。
令嬢同士であるなら相手にそれを拾わせようとするーーーつまり侮辱の仕草となる。
私はただ邪魔だったから捨てたに過ぎないのだけど。

「ねぇ、カインハルト殿下」

「な、なんだ………!?」

扇を投げ捨てられたことで狼狽えたのか、カインハルトの声は少し上ずっていた。
薄水色の髪に黄色の瞳。一度はこんな人の愛を乞おうとした自分が馬鹿らしくなってくる。土に穴掘って埋まりたいくらい恥ずかしい過去だ。 

「王家が公爵家に立て替えてもらっている金額がおいくらか、ご存知ですか?」

「は………?」

「まさかそんなことすら知らないとか………仰りませんわよね?王太子殿下」

「そ、それは……………」

カインハルトが黙ってしまう。それを見かねてか、アメリアが悲鳴のような声を出した。

「突然なんですか!そんなの今何が関係あるって…………」

「2800'ミリン」

私の声はそこまで大きくなかったはずだが、会場にざわめきが広がっていく。
それも当然だろう。2800'ミリンとなれば莫大な金額だ。それを全て公爵家に用立ててもらっているのだから、この事実が晒されてしまえば王家の面目は丸潰れだ。
私はにこりと微笑んでから腰をかがめた。すっと扇をてにとり、ぱしりと自分の掌に打ち付ける。

「では、質問です。それを用立てていたのは?」

「は!それが今何に関係ある!お前はそうやって話の方向を」

どいつもこいつも同じことしか言わないのね。
やっぱりカインハルトとアメリア、お似合いだわ。

「わたくしです」

「…………は!?」

「わたくしが、その金を用立てていました」

「お前が?はっ、どうやって」

鼻で笑うカインハルト。
話の行方がようやく掴めたアメリアがはっとしたように慌ててカインハルトの服の裾を引っ張る。だけどアホなカインハルトはアメリアが怖がったと勘違いしたのか「大丈夫だ」とキメ顔で言っていた。気持ち悪くて吐きそうになったしその頭のお天気具合に目眩すらした。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

くだらない毎日に終止符を

ごろごろみかん。
恋愛
公爵令嬢フランチェスカ・ヴィヴィアナは既に何回目かの婚約破棄騒動に挑んでいた。この流れは既に知っているものである。なぜなら、フランチェスカは何度も婚約破棄を繰り返しているからである。フランチェスカから婚約破棄しても、王太子であるユーリスから婚約破棄をされてもこのループは止まらない。 そんな中、フランチェスカが選んだのは『婚約を継続する』というものであった。 ループから抜け出したフランチェスは代わり映えのない婚姻生活を送る。そんな中、ある日フランチェスカは拾い物をする。それは、路地裏で倒れていた金髪の少年でーーー

あなたの赤い糸は誰と繋がってるんですか!?

ごろごろみかん。
恋愛
公爵令嬢エレノアはある日突然、人の赤い糸を見ることができるようになった。では自分の婚約者はどうだろうと思って見てみると、最近どこぞの侯爵令嬢と仲良くしているらしい王太子の赤い糸はどこにも伸びていなかった。 「…………!?赤い糸が………ない!?」 まあ自分に伸びてるわけはないだろうと思ったが、しかし誰にも伸びてないとは!! エレノアの野望は深い森でひっそり暮らす自給自足生活である。貴族社会から逃げ出す手がかりになるかもしれないとエレノアは考え、王太子と侯爵令嬢の恋を(勝手に)応援することにした! *これは勘違い&暴走した公爵令嬢エレノアが王太子の赤い糸を探すだけのお話です。ラブコメディ

婚約者の心の声が聞こえてくるんですけど!!

ごろごろみかん。
恋愛
公爵令嬢ミレイユは、婚約者である王太子に聞きただすつもりだった。「最近あなたと仲がよろしいと噂のミシェルとはどんなご関係なの?」と。ミレイユと婚約者ユリウスの仲はとてもいいとは言えない。ここ数年は定例の茶会以外ではまともに話したことすらなかった。ミレイユは悪女顔だった。黒の巻き髪に気の強そうな青い瞳。これは良くない傾向だとミレイユが危惧していた、その時。 不意にとんでもない声が頭の中に流れ込んできたのである!! *短めです。さくっと終わる

公爵令嬢は婚約破棄を希望する

ごろごろみかん。
恋愛
転生したのはスマホアプリの悪役令嬢! 絶対絶対断罪なんてされたくありません! なのでこの婚約、破棄させていただき…………………できない!なんで出来ないの!もしかして私を断罪したいのかしら!? 婚約破棄したい令嬢と破棄したくない王太子のじゃれつきストーリー。

もう我慢する気はないので出て行きます〜陰から私が国を支えていた事実を彼らは知らない〜

おしゃれスナイプ
恋愛
公爵令嬢として生を受けたセフィリア・アインベルクは己の前世の記憶を持った稀有な存在であった。 それは『精霊姫』と呼ばれた前世の記憶。 精霊と意思疎通の出来る唯一の存在であったが故に、かつての私は精霊の力を借りて国を加護する役目を負っていた。 だからこそ、人知れず私は精霊の力を借りて今生も『精霊姫』としての役目を果たしていたのだが————

嫌われ聖女は決意する。見限り、見誤り、見定める

ごろごろみかん。
恋愛
母親に似ているから、という理由で婚約者にされたマエラローニャ。しかし似ているのは髪の色だけで、声の高さも瞳の色も母親とは全く違う。 その度に母と比較され、マエラローニャはだんだん精神を摩耗させていった。 しかしそんなある日、婚約者の王太子から婚約破棄を告げられた。見ればその隣には、マエラローニャ以上に母に似た娘が立っていた。 それを見たマエラローニャは決意する。

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない

一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。 クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。 さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。 両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。 ……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。 それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。 皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。 ※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

王妃の鑑

ごろごろみかん。
恋愛
王妃ネアモネは婚姻した夜に夫からお前のことは愛していないと告げられ、失意のうちに命を失った。そして気づけば時間は巻きもどる。 これはネアモネが幸せをつかもうと必死に生きる話

処理中です...