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「なっ………」
これに驚いたのはアメリアだけではない。カインハルトが大袈裟なまでに騎士に目配せをする。やっぱりグルか。というか、隠す気ないだろお前。なんだその分かりやすい仕草は。私は呆れ帰ってしまった。
この騎士は昨日、私が買収しておいた。私の宝石姫としての血はこういう時に役に立つ。
滅多にとれないオリハルコンの石。それに加えて純度の高い金にダイヤモンドを差し出せば、騎士は生活が苦しかったのかすぐに寝返ってくれた。不義理な人間には不忠なものしかついていかないのよ。私は内心笑った。
「で、でもだって私は………」
「そんなにあなたが仰るということは…………証拠でもあるのかしら………?困ったわね。私は昨日、すぐに寝付いてしまったのだから覚えがないのだけ」
「ごたごた抜かすな!アメリアが嘘をついてると言っているのか!!」
私の言葉を割って入ってきたのはカインハルトだった。顔を見るだけでぶん殴りたくなるから、そっと目線を外す。手元にある粗末な扇は、アメリアと比べられるように渡されたのだろう。私はそれをぱっと開いてカインハルトを見た。
「わたくしそんなこと仰いました?」
「お前の言い分は、アメリアが嘘をいっているというようなものだった!断じて許さん」
「僭越ながらお聞きしますけれど。カインハルト殿下にとってアメリアはどういう存在なのでしょうか。婚約者の私の言葉よりもアメリアの言葉を信じてしまわれるのは、少し………寂しいですわ」
夜会のいいところは、人目があるところだ。
前回はひそひそと陰口を叩かれるだけ叩かれてさんざんな思いをしたが、それを逆手に取れば彼らは味方にもなり得る。
私は体裁的には公爵家の令嬢だ。宝石姫であることを知るのはあのろくでもない公爵夫妻のみ。突然はじまった王太子とその婚約者、こしてその姉のやり取りに周りは混乱しているようだった。
「確かに…………あれはあまりにも酷いですわ…………」
「わたくしだったら耐えられない………」
「ねぇ、あなたはあのようなことはしないと仰ってくださる?」
ひそひそと女性の会話が流れ込んでくる。
私の懇親の演技のおかげか、扇の下に顔の下半分を隠したせいでより悲壮感が出たのか。おおむね女性陣は私に同調しているらしい。
「うるさい!!そもそも幽鬼みたいな女を俺はお前の家のところに押し付けられたんだ!お前みたいな女、趣味じゃない!」
「あら、偶然ですわね。わたくしも趣味じゃありませんわ。ゲテモノに興味はありませんの」
これに驚いたのはアメリアだけではない。カインハルトが大袈裟なまでに騎士に目配せをする。やっぱりグルか。というか、隠す気ないだろお前。なんだその分かりやすい仕草は。私は呆れ帰ってしまった。
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滅多にとれないオリハルコンの石。それに加えて純度の高い金にダイヤモンドを差し出せば、騎士は生活が苦しかったのかすぐに寝返ってくれた。不義理な人間には不忠なものしかついていかないのよ。私は内心笑った。
「で、でもだって私は………」
「そんなにあなたが仰るということは…………証拠でもあるのかしら………?困ったわね。私は昨日、すぐに寝付いてしまったのだから覚えがないのだけ」
「ごたごた抜かすな!アメリアが嘘をついてると言っているのか!!」
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「わたくしそんなこと仰いました?」
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「僭越ながらお聞きしますけれど。カインハルト殿下にとってアメリアはどういう存在なのでしょうか。婚約者の私の言葉よりもアメリアの言葉を信じてしまわれるのは、少し………寂しいですわ」
夜会のいいところは、人目があるところだ。
前回はひそひそと陰口を叩かれるだけ叩かれてさんざんな思いをしたが、それを逆手に取れば彼らは味方にもなり得る。
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「確かに…………あれはあまりにも酷いですわ…………」
「わたくしだったら耐えられない………」
「ねぇ、あなたはあのようなことはしないと仰ってくださる?」
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「うるさい!!そもそも幽鬼みたいな女を俺はお前の家のところに押し付けられたんだ!お前みたいな女、趣味じゃない!」
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