宝石姫は二度死ぬ

ごろごろみかん。

文字の大きさ
上 下
4 / 6

4

しおりを挟む
「なっ………」

これに驚いたのはアメリアだけではない。カインハルトが大袈裟なまでに騎士に目配せをする。やっぱりグルか。というか、隠す気ないだろお前。なんだその分かりやすい仕草は。私は呆れ帰ってしまった。
この騎士は昨日、私が買収しておいた。私の宝石姫としての血はこういう時に役に立つ。
滅多にとれないオリハルコンの石。それに加えて純度の高い金にダイヤモンドを差し出せば、騎士は生活が苦しかったのかすぐに寝返ってくれた。不義理な人間には不忠なものしかついていかないのよ。私は内心笑った。

「で、でもだって私は………」

「そんなにあなたが仰るということは…………証拠でもあるのかしら………?困ったわね。私は昨日、すぐに寝付いてしまったのだから覚えがないのだけ」

「ごたごた抜かすな!アメリアが嘘をついてると言っているのか!!」

私の言葉を割って入ってきたのはカインハルトだった。顔を見るだけでぶん殴りたくなるから、そっと目線を外す。手元にある粗末な扇は、アメリアと比べられるように渡されたのだろう。私はそれをぱっと開いてカインハルトを見た。

「わたくしそんなこと仰いました?」

「お前の言い分は、アメリアが嘘をいっているというようなものだった!断じて許さん」

「僭越ながらお聞きしますけれど。カインハルト殿下にとってアメリアはどういう存在なのでしょうか。婚約者の私の言葉よりもアメリアの言葉を信じてしまわれるのは、少し………寂しいですわ」

夜会のいいところは、人目があるところだ。
前回はひそひそと陰口を叩かれるだけ叩かれてさんざんな思いをしたが、それを逆手に取れば彼らは味方にもなり得る。
私は体裁的には公爵家の令嬢だ。宝石姫であることを知るのはあのろくでもない公爵夫妻のみ。突然はじまった王太子とその婚約者、こしてその姉のやり取りに周りは混乱しているようだった。

「確かに…………あれはあまりにも酷いですわ…………」

「わたくしだったら耐えられない………」

「ねぇ、あなたはあのようなことはしないと仰ってくださる?」

ひそひそと女性の会話が流れ込んでくる。
私の懇親の演技のおかげか、扇の下に顔の下半分を隠したせいでより悲壮感が出たのか。おおむね女性陣は私に同調しているらしい。

「うるさい!!そもそも幽鬼みたいな女を俺はお前の家のところに押し付けられたんだ!お前みたいな女、趣味じゃない!」

「あら、偶然ですわね。わたくしも趣味じゃありませんわ。ゲテモノに興味はありませんの」
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

くだらない毎日に終止符を

ごろごろみかん。
恋愛
公爵令嬢フランチェスカ・ヴィヴィアナは既に何回目かの婚約破棄騒動に挑んでいた。この流れは既に知っているものである。なぜなら、フランチェスカは何度も婚約破棄を繰り返しているからである。フランチェスカから婚約破棄しても、王太子であるユーリスから婚約破棄をされてもこのループは止まらない。 そんな中、フランチェスカが選んだのは『婚約を継続する』というものであった。 ループから抜け出したフランチェスは代わり映えのない婚姻生活を送る。そんな中、ある日フランチェスカは拾い物をする。それは、路地裏で倒れていた金髪の少年でーーー

あなたの赤い糸は誰と繋がってるんですか!?

ごろごろみかん。
恋愛
公爵令嬢エレノアはある日突然、人の赤い糸を見ることができるようになった。では自分の婚約者はどうだろうと思って見てみると、最近どこぞの侯爵令嬢と仲良くしているらしい王太子の赤い糸はどこにも伸びていなかった。 「…………!?赤い糸が………ない!?」 まあ自分に伸びてるわけはないだろうと思ったが、しかし誰にも伸びてないとは!! エレノアの野望は深い森でひっそり暮らす自給自足生活である。貴族社会から逃げ出す手がかりになるかもしれないとエレノアは考え、王太子と侯爵令嬢の恋を(勝手に)応援することにした! *これは勘違い&暴走した公爵令嬢エレノアが王太子の赤い糸を探すだけのお話です。ラブコメディ

婚約者の心の声が聞こえてくるんですけど!!

ごろごろみかん。
恋愛
公爵令嬢ミレイユは、婚約者である王太子に聞きただすつもりだった。「最近あなたと仲がよろしいと噂のミシェルとはどんなご関係なの?」と。ミレイユと婚約者ユリウスの仲はとてもいいとは言えない。ここ数年は定例の茶会以外ではまともに話したことすらなかった。ミレイユは悪女顔だった。黒の巻き髪に気の強そうな青い瞳。これは良くない傾向だとミレイユが危惧していた、その時。 不意にとんでもない声が頭の中に流れ込んできたのである!! *短めです。さくっと終わる

公爵令嬢は婚約破棄を希望する

ごろごろみかん。
恋愛
転生したのはスマホアプリの悪役令嬢! 絶対絶対断罪なんてされたくありません! なのでこの婚約、破棄させていただき…………………できない!なんで出来ないの!もしかして私を断罪したいのかしら!? 婚約破棄したい令嬢と破棄したくない王太子のじゃれつきストーリー。

もう我慢する気はないので出て行きます〜陰から私が国を支えていた事実を彼らは知らない〜

おしゃれスナイプ
恋愛
公爵令嬢として生を受けたセフィリア・アインベルクは己の前世の記憶を持った稀有な存在であった。 それは『精霊姫』と呼ばれた前世の記憶。 精霊と意思疎通の出来る唯一の存在であったが故に、かつての私は精霊の力を借りて国を加護する役目を負っていた。 だからこそ、人知れず私は精霊の力を借りて今生も『精霊姫』としての役目を果たしていたのだが————

嫌われ聖女は決意する。見限り、見誤り、見定める

ごろごろみかん。
恋愛
母親に似ているから、という理由で婚約者にされたマエラローニャ。しかし似ているのは髪の色だけで、声の高さも瞳の色も母親とは全く違う。 その度に母と比較され、マエラローニャはだんだん精神を摩耗させていった。 しかしそんなある日、婚約者の王太子から婚約破棄を告げられた。見ればその隣には、マエラローニャ以上に母に似た娘が立っていた。 それを見たマエラローニャは決意する。

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない

一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。 クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。 さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。 両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。 ……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。 それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。 皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。 ※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

王妃の鑑

ごろごろみかん。
恋愛
王妃ネアモネは婚姻した夜に夫からお前のことは愛していないと告げられ、失意のうちに命を失った。そして気づけば時間は巻きもどる。 これはネアモネが幸せをつかもうと必死に生きる話

処理中です...