3 / 6
3
しおりを挟む
(生きてる!私はまだ、生きてる!!)
何がどうして過去に戻っているのか分からなかったが、これはチャンスだと思った。
哀れな私に神様が恵んでくれた、最初で最後のチャンス。
馬鹿は死ななければ治らないという言葉がある。まさしくその通りだ。
お飾りの姫は終わり。何をされても人形のように黙るだけの人生はもう、終わり。
私は、死んだことによってなのかーーー何も恐れを感じることはなくなっていた。
痛みを与えられる前に、潰せばいい。
殺される前に、殺せばいい。
私はこの機会をチャンスと思うことにして、状況の脱却をはかった。まずは王太子の婚約者という立場から。そして、公爵家の娘という立場から。どちらも望んでもないものだし、むしろ不要なものだ。
全てを捨て、どこかで自由に生きていく。
生まれて初めて手にした目標はとてつもなく簡単なことに見えて、そしてそんな簡単なことが今まで許されていなかった状況に少し、涙した。
聖夜祭。
やはりというべきか、王太子カインハルトは私をみなの前で呼び出した。
カインハルトの隣にはアメリアがいる。
醜悪コンビ同士お似合いだ。アメリアは酷く私を嫌っていた。両親に自分以外の子供がいる、しかも父親が望んで抱いて生まれた子だ。敵愾心が強く、何かにつけて嫌味やら、嫌がらせやら、はては真冬の雪の降る日にベランダへと出されたりした。彼女は性悪女だ。性格がゴミクズレベルで悪い。そのままゴミならゴミらしく灰に帰ってしまえばいいのに。
「お姉様、ごめんなさい。私見てしまったの」
「見た………とは、一体何をですか?」
するりと腕をまきつけながら話すアメリア。その仁美は勝ち誇っていて、正直ぶん殴りたいほどに気に触った。
「昨夜…………そこの騎士とふたりでお会いしていたでしょう。知りませんでしたわ。お姉様がそんな………………」
ちらりと「そこの騎士」を見る。
確かに彼は昨日私の部屋に来た。ただ、それだけだ。
(確か前世では私を拉致監禁して見事に既成事実を作ってくれたのよね………)
実際何も無かったとはいえ、朝まで二人でいた。その事実だけで私は放逐された。拭いきれない苦しみと苛立ちに手が震えた。
この騎士はどうせアメリアかカインハルトの息がかかっているのだろうからお咎めは無いのだろう。これは茶番だ。私を貶めるだけの。
「あら、身に覚えがございませんわ。ねぇ」
見ると、「その騎士」は至って普通に答えた。
「はい」
何がどうして過去に戻っているのか分からなかったが、これはチャンスだと思った。
哀れな私に神様が恵んでくれた、最初で最後のチャンス。
馬鹿は死ななければ治らないという言葉がある。まさしくその通りだ。
お飾りの姫は終わり。何をされても人形のように黙るだけの人生はもう、終わり。
私は、死んだことによってなのかーーー何も恐れを感じることはなくなっていた。
痛みを与えられる前に、潰せばいい。
殺される前に、殺せばいい。
私はこの機会をチャンスと思うことにして、状況の脱却をはかった。まずは王太子の婚約者という立場から。そして、公爵家の娘という立場から。どちらも望んでもないものだし、むしろ不要なものだ。
全てを捨て、どこかで自由に生きていく。
生まれて初めて手にした目標はとてつもなく簡単なことに見えて、そしてそんな簡単なことが今まで許されていなかった状況に少し、涙した。
聖夜祭。
やはりというべきか、王太子カインハルトは私をみなの前で呼び出した。
カインハルトの隣にはアメリアがいる。
醜悪コンビ同士お似合いだ。アメリアは酷く私を嫌っていた。両親に自分以外の子供がいる、しかも父親が望んで抱いて生まれた子だ。敵愾心が強く、何かにつけて嫌味やら、嫌がらせやら、はては真冬の雪の降る日にベランダへと出されたりした。彼女は性悪女だ。性格がゴミクズレベルで悪い。そのままゴミならゴミらしく灰に帰ってしまえばいいのに。
「お姉様、ごめんなさい。私見てしまったの」
「見た………とは、一体何をですか?」
するりと腕をまきつけながら話すアメリア。その仁美は勝ち誇っていて、正直ぶん殴りたいほどに気に触った。
「昨夜…………そこの騎士とふたりでお会いしていたでしょう。知りませんでしたわ。お姉様がそんな………………」
ちらりと「そこの騎士」を見る。
確かに彼は昨日私の部屋に来た。ただ、それだけだ。
(確か前世では私を拉致監禁して見事に既成事実を作ってくれたのよね………)
実際何も無かったとはいえ、朝まで二人でいた。その事実だけで私は放逐された。拭いきれない苦しみと苛立ちに手が震えた。
この騎士はどうせアメリアかカインハルトの息がかかっているのだろうからお咎めは無いのだろう。これは茶番だ。私を貶めるだけの。
「あら、身に覚えがございませんわ。ねぇ」
見ると、「その騎士」は至って普通に答えた。
「はい」
19
お気に入りに追加
679
あなたにおすすめの小説
くだらない毎日に終止符を
ごろごろみかん。
恋愛
公爵令嬢フランチェスカ・ヴィヴィアナは既に何回目かの婚約破棄騒動に挑んでいた。この流れは既に知っているものである。なぜなら、フランチェスカは何度も婚約破棄を繰り返しているからである。フランチェスカから婚約破棄しても、王太子であるユーリスから婚約破棄をされてもこのループは止まらない。
そんな中、フランチェスカが選んだのは『婚約を継続する』というものであった。
ループから抜け出したフランチェスは代わり映えのない婚姻生活を送る。そんな中、ある日フランチェスカは拾い物をする。それは、路地裏で倒れていた金髪の少年でーーー

あなたの赤い糸は誰と繋がってるんですか!?
ごろごろみかん。
恋愛
公爵令嬢エレノアはある日突然、人の赤い糸を見ることができるようになった。では自分の婚約者はどうだろうと思って見てみると、最近どこぞの侯爵令嬢と仲良くしているらしい王太子の赤い糸はどこにも伸びていなかった。
「…………!?赤い糸が………ない!?」
まあ自分に伸びてるわけはないだろうと思ったが、しかし誰にも伸びてないとは!!
エレノアの野望は深い森でひっそり暮らす自給自足生活である。貴族社会から逃げ出す手がかりになるかもしれないとエレノアは考え、王太子と侯爵令嬢の恋を(勝手に)応援することにした!
*これは勘違い&暴走した公爵令嬢エレノアが王太子の赤い糸を探すだけのお話です。ラブコメディ
婚約者の心の声が聞こえてくるんですけど!!
ごろごろみかん。
恋愛
公爵令嬢ミレイユは、婚約者である王太子に聞きただすつもりだった。「最近あなたと仲がよろしいと噂のミシェルとはどんなご関係なの?」と。ミレイユと婚約者ユリウスの仲はとてもいいとは言えない。ここ数年は定例の茶会以外ではまともに話したことすらなかった。ミレイユは悪女顔だった。黒の巻き髪に気の強そうな青い瞳。これは良くない傾向だとミレイユが危惧していた、その時。
不意にとんでもない声が頭の中に流れ込んできたのである!!
*短めです。さくっと終わる

公爵令嬢は婚約破棄を希望する
ごろごろみかん。
恋愛
転生したのはスマホアプリの悪役令嬢!
絶対絶対断罪なんてされたくありません!
なのでこの婚約、破棄させていただき…………………できない!なんで出来ないの!もしかして私を断罪したいのかしら!?
婚約破棄したい令嬢と破棄したくない王太子のじゃれつきストーリー。

もう我慢する気はないので出て行きます〜陰から私が国を支えていた事実を彼らは知らない〜
おしゃれスナイプ
恋愛
公爵令嬢として生を受けたセフィリア・アインベルクは己の前世の記憶を持った稀有な存在であった。
それは『精霊姫』と呼ばれた前世の記憶。
精霊と意思疎通の出来る唯一の存在であったが故に、かつての私は精霊の力を借りて国を加護する役目を負っていた。
だからこそ、人知れず私は精霊の力を借りて今生も『精霊姫』としての役目を果たしていたのだが————

嫌われ聖女は決意する。見限り、見誤り、見定める
ごろごろみかん。
恋愛
母親に似ているから、という理由で婚約者にされたマエラローニャ。しかし似ているのは髪の色だけで、声の高さも瞳の色も母親とは全く違う。
その度に母と比較され、マエラローニャはだんだん精神を摩耗させていった。
しかしそんなある日、婚約者の王太子から婚約破棄を告げられた。見ればその隣には、マエラローニャ以上に母に似た娘が立っていた。
それを見たマエラローニャは決意する。

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない
一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。
クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。
さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。
両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。
……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。
それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。
皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。
※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

王妃の鑑
ごろごろみかん。
恋愛
王妃ネアモネは婚姻した夜に夫からお前のことは愛していないと告げられ、失意のうちに命を失った。そして気づけば時間は巻きもどる。
これはネアモネが幸せをつかもうと必死に生きる話
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる