宝石姫は二度死ぬ

ごろごろみかん。

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(生きてる!私はまだ、生きてる!!)

何がどうして過去に戻っているのか分からなかったが、これはチャンスだと思った。

哀れな私に神様が恵んでくれた、最初で最後のチャンス。

馬鹿は死ななければ治らないという言葉がある。まさしくその通りだ。
お飾りの姫は終わり。何をされても人形のように黙るだけの人生はもう、終わり。

私は、死んだことによってなのかーーー何も恐れを感じることはなくなっていた。

痛みを与えられる前に、潰せばいい。
殺される前に、殺せばいい。

私はこの機会をチャンスと思うことにして、状況の脱却をはかった。まずは王太子の婚約者という立場から。そして、公爵家の娘という立場から。どちらも望んでもないものだし、むしろ不要なものだ。

全てを捨て、どこかで自由に生きていく。
生まれて初めて手にした目標はとてつもなく簡単なことに見えて、そしてそんな簡単なことが今まで許されていなかった状況に少し、涙した。

聖夜祭。
やはりというべきか、王太子カインハルトは私をみなの前で呼び出した。
カインハルトの隣にはアメリアがいる。
醜悪コンビ同士お似合いだ。アメリアは酷く私を嫌っていた。両親に自分以外の子供がいる、しかも父親が望んで抱いて生まれた子だ。敵愾心が強く、何かにつけて嫌味やら、嫌がらせやら、はては真冬の雪の降る日にベランダへと出されたりした。彼女は性悪女だ。性格がゴミクズレベルで悪い。そのままゴミならゴミらしく灰に帰ってしまえばいいのに。

「お姉様、ごめんなさい。私見てしまったの」

「見た………とは、一体何をですか?」

するりと腕をまきつけながら話すアメリア。その仁美は勝ち誇っていて、正直ぶん殴りたいほどに気に触った。

「昨夜…………そこの騎士とふたりでお会いしていたでしょう。知りませんでしたわ。お姉様がそんな………………」

ちらりと「そこの騎士」を見る。
確かに彼は昨日私の部屋に来た。ただ、それだけだ。

(確か前世では私を拉致監禁して見事に既成事実を作ってくれたのよね………)

実際何も無かったとはいえ、朝まで二人でいた。その事実だけで私は放逐された。拭いきれない苦しみと苛立ちに手が震えた。
この騎士はどうせアメリアかカインハルトの息がかかっているのだろうからお咎めは無いのだろう。これは茶番だ。私を貶めるだけの。

「あら、身に覚えがございませんわ。ねぇ」

見ると、「その騎士」は至って普通に答えた。

「はい」
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