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私は第二王子であるカインハルトの婚約者だった。カインハルトは昔からの出来損ないで、ひとをひとと思わないようなクズな性格をしていた。王位は第一王子が継ぐから放っておいてもいいだろうと思っていた周囲は焦った。だけど、いいチャンスだとも思ったようだ。傀儡の王。カインハルトは操るのにちょうどいい王だった。
第一王子の婚約者は私の双子の妹であるアメリアだった。アメリアは色のない私と違い、真っ赤な髪に、赤の瞳をしている。炎の美姫として名高いのだと公爵がよく自慢していた。
父親はろくでもない男に愛娘を嫁がせるのを嫌がって、私を嫁がせることに決めた。
ただし、毎日指定通りの宝石を送ることを条件に。そうして私は婚約期間でありながら、王城へと送り込まれた。自主的に涙を出せば、痛めつけられない日々は私をとても楽にした。
だけど、カインハルトの傍若無人ぶりは酷いものだった。
(結局私は、聖夜祭の夜に大勢の前で婚約破棄を突きつけられ、不貞罪を押し付けられて身一つで城を追い出れたのよね………)
何度思い返しても苦味が込み上げてくる。
ありもしない罪をでっちあげられ、その場で私は捕らえられ。身一つで下町へと流された。殴られて気絶して、気がつけば知らぬ町。
そこでの暮らしは記憶があまりない。ただ、苦しくて、酷く喉が乾いた。お腹は減りすぎて痛みまで訴えてくる始末。私はその時初めて飢えというものを知った。
最期に見たのは綺麗なまでの青空だった。
もう歩けなくて、穢い路地裏に転がったのだ。目がチカチカして、何も見えなかった。不思議と、空腹感も渇望感もなかった。
ただ、最後に、
私の人生とは何だったのか。
それだけを考えた気がする。
そして、気がつけば聖夜祭の一週間前へと戻っていた。私はとても驚いた。
ついに頭がおかしくなったのかと思いきや、そうでもないらしい。であれば、あれは白昼夢なのだろうか?私の妄想?想像?偽りの世界?私は死んでなどなかったーー………?
そう思ったが、しかしちくりと痛む足に違和感を覚えて足元を見た。
(捻挫してる…………)
それは、路地裏に逃げ込む前、私が宝石姫の血を引いていると気づかれて男に追い回されている時に挫いた時のものだった。
「時が、巻き戻っている…………?」
恐ろしく小さな声が出た。
やがてじわじわと、実感が湧いてくる。
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何度思い返しても苦味が込み上げてくる。
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それは、路地裏に逃げ込む前、私が宝石姫の血を引いていると気づかれて男に追い回されている時に挫いた時のものだった。
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