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しおりを挟む「シェリア、今日はなぜ陰気なお前をわざわざ呼んだかわかるか………?」
分からないわけないだろボケ。
思わず口をついて出そうになる言葉を必死に飲み込んで笑みを作る。そう、こういうことは慣れてるの。何せ生まれた時からずっと身につけてきた技なのだから。
「さぁ………なんのようでございましょう?」
「ふんっ…………相変わらず頭が空っぽだな。その真っ白な見た目と言い、中身もなんもない。つまらない女だ」
うるせぇなぶっ殺すぞ。
今の私は98%殺意でできていると言っていい。目の前の彼ーーーカインハルト殿下は今年で御歳21歳になられるというのになんて可哀想な頭をしてらっしゃるのか。王族の英才教育どこいった?もしかして施されてこれなの?いや、国王が放任主義なのがいけないのだろう。それにしたって………
(こんなド鬼畜男と結婚なんて絶対いや…………!!)
私は以前の記憶がある。
それは夢物語だと言われればそれまでなのだが、その記憶と状況を照らし合わせていくと、まるで何かの予言か?というくらい夢物語の内容が当てはまるのである。例えば治水工事のことであったり、第一王子殿下の急逝であったり。突然の豪雨に百年に一度の大嵐であったり。私は夢物語の内容と現在系列で起きることが一致していることから、夢物語ではないと判断した。
夢物語ーーー私の前世は酷いものだった。私は宝石姫の血を引いていると言われている。
泣けば涙が宝石に、血を吐けばそれはルビーに、肌から血がにじめばそれはたちまちダイアモンドへと変化する。
それにいち早く気がついたのは公爵たる父親だった。私はどうやら、一夜のあやまちで出来てしまった娘らしい。
母親はどこかの国の踊り子か何かで、公爵邸で開かれた夜会の前座として余興を披露したとか。その美しさに目をつけた父親がほぼ強姦のような形で孕ませ、産ませたのが私だった。
母親………と言っても見たことも無い人だから実感が湧かないが、彼女は故郷に恋人がいたそうだ。私を孕んだことで母親は情緒不安定で、ついには産まれたばかりの私を置いて自死してしまったとか。
それを父親は親の仇を見るような目で私に話す。お前さえ生まれなければ、あれは死ななかった、とは父親の言葉。
対して義母である公爵夫人はまるで汚物でも見るような目で「いやらしい、目があの女とそっくり」と私を罵倒した。
しかし私が宝石姫の血を引き、私の涙が、血が、宝石になると知ると彼らはよってたかって私を痛めつけた。 泣かない日はなかった。
泣いて、泣いて、目が腫れて、膿んで、生傷が絶えなくとも、それは終わりを迎えることがなかった。
そんなある日の事だった。
第一王子が急逝したのだ。死因は分からない。部屋の中で閉じ込められてばかりの私の耳に、そのような詳しい話は流れ込んでこなかった。
だけど、扉の外から聞こえる「王太子殿下が」「どうすれば」という焦燥の声だけは届いていた。
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