3 / 3
嫌がらせ
しおりを挟む
ジュリアン・ザイガー。
子爵家の嫡男。兄弟はおらず、義妹のみ。
え~~~~??
格下の子爵家の分際で(言い方は悪いけど)あの態度!?
あのひと、貴族社会生きるの向いてないんじゃない?
顔が整っているだけあって、女にそれはもうとにかく好かれる。だけど彼が相手をするのは高位貴族家だけであり、そこから選ばれたのが私、シャーロット・シェーンシュティット……。
いや、選ばれたのは私、というよりシェーンシュティット家、と言うべきね。
私は従僕が持ってきた報告書をパッタン、と閉じた。
明後日は王城での夜会である。
右も左も人間関係がわからないが、とにかく行くしかない。お兄様もフォローしてくれるって言ってるものね。
シェーンシュティット公爵家の嫡男である、私の兄は私の事故当時、仕事で王都を外していたらしい。事故発生から一週間が経過した頃、イノシシのように玄関ホールに突撃した男がいた。それがお兄様だった。
最初私は賊でも入り込んだのかと身構えたが、そのひとは私と同じ黒の髪、桃色の瞳をしていたし、お父様と顔立ちが似ていたので、あ、もしかして……と思ったのだ。
思った次の瞬間、私はお兄様に思い切り抱きしめられていた。圧死すると思った。
危うく私を殺しかけたお兄様はおいおいと泣きながら、私の無事を喜んでくれたわけだ。
私は、家族に愛されている。
だからこそ、不思議なのよね。
あんな、私をまったく大事にしない男が私の婚約者であることに。
その思いをそのまま日記に綴れば、今日はもう眠るだけだ。
私はベッドに入り込んだ。
翌々日。
夜会の日が訪れた。
しかし!!
婚約者の迎えがないのである。
玄関ホールで仁王立ちする私を見て、恐る恐る、といった様子でお兄様が声をかけてきた。
「シャーロット。ジュリアン卿は……?」
「知りませんわ。来ないですわね」
もう時間がかなり押している。
お兄様の様子では、いつもは迎えに来ていたようだし、来ないのは珍しいらしい。
確かに、エスコートの約束とかそういうのは取り付けてなかったけども!!
それでも、婚約者でしょう!?それなら夜会でのエスコートはマナーじゃなくて!?
イライラする私は、はっと思い出した。
もしかして──。
(後で必ず後悔する、ってこのこと??)
だとしたらなんてみみっちい……いや、女々しい男なんだ!!
私は憤慨しながら、お兄様の手を借りて馬車に乗り込んだ。
こんな子供のような当てつけをする男とは、やはり一緒にはなりたくない。
子爵家の嫡男。兄弟はおらず、義妹のみ。
え~~~~??
格下の子爵家の分際で(言い方は悪いけど)あの態度!?
あのひと、貴族社会生きるの向いてないんじゃない?
顔が整っているだけあって、女にそれはもうとにかく好かれる。だけど彼が相手をするのは高位貴族家だけであり、そこから選ばれたのが私、シャーロット・シェーンシュティット……。
いや、選ばれたのは私、というよりシェーンシュティット家、と言うべきね。
私は従僕が持ってきた報告書をパッタン、と閉じた。
明後日は王城での夜会である。
右も左も人間関係がわからないが、とにかく行くしかない。お兄様もフォローしてくれるって言ってるものね。
シェーンシュティット公爵家の嫡男である、私の兄は私の事故当時、仕事で王都を外していたらしい。事故発生から一週間が経過した頃、イノシシのように玄関ホールに突撃した男がいた。それがお兄様だった。
最初私は賊でも入り込んだのかと身構えたが、そのひとは私と同じ黒の髪、桃色の瞳をしていたし、お父様と顔立ちが似ていたので、あ、もしかして……と思ったのだ。
思った次の瞬間、私はお兄様に思い切り抱きしめられていた。圧死すると思った。
危うく私を殺しかけたお兄様はおいおいと泣きながら、私の無事を喜んでくれたわけだ。
私は、家族に愛されている。
だからこそ、不思議なのよね。
あんな、私をまったく大事にしない男が私の婚約者であることに。
その思いをそのまま日記に綴れば、今日はもう眠るだけだ。
私はベッドに入り込んだ。
翌々日。
夜会の日が訪れた。
しかし!!
婚約者の迎えがないのである。
玄関ホールで仁王立ちする私を見て、恐る恐る、といった様子でお兄様が声をかけてきた。
「シャーロット。ジュリアン卿は……?」
「知りませんわ。来ないですわね」
もう時間がかなり押している。
お兄様の様子では、いつもは迎えに来ていたようだし、来ないのは珍しいらしい。
確かに、エスコートの約束とかそういうのは取り付けてなかったけども!!
それでも、婚約者でしょう!?それなら夜会でのエスコートはマナーじゃなくて!?
イライラする私は、はっと思い出した。
もしかして──。
(後で必ず後悔する、ってこのこと??)
だとしたらなんてみみっちい……いや、女々しい男なんだ!!
私は憤慨しながら、お兄様の手を借りて馬車に乗り込んだ。
こんな子供のような当てつけをする男とは、やはり一緒にはなりたくない。
390
お気に入りに追加
940
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
危害を加えられたので予定よりも早く婚約を白紙撤回できました
しゃーりん
恋愛
階段から突き落とされて、目が覚めるといろんな記憶を失っていたアンジェリーナ。
自分のことも誰のことも覚えていない。
王太子殿下の婚約者であったことも忘れ、結婚式は来年なのに殿下には恋人がいるという。
聞くところによると、婚約は白紙撤回が前提だった。
なぜアンジェリーナが危害を加えられたのかはわからないが、それにより予定よりも早く婚約を白紙撤回することになったというお話です。
記憶を失くして転生しました…転生先は悪役令嬢?
ねこママ
恋愛
「いいかげんにしないかっ!」
バシッ!!
わたくしは咄嗟に、フリード様の腕に抱き付くメリンダ様を引き離さなければと手を伸ばしてしまい…頬を叩かれてバランスを崩し倒れこみ、壁に頭を強く打ち付け意識を失いました。
目が覚めると知らない部屋、豪華な寝台に…近付いてくるのはメイド? 何故髪が緑なの?
最後の記憶は私に向かって来る車のライト…交通事故?
ここは何処? 家族? 友人? 誰も思い出せない……
前世を思い出したセレンディアだが、事故の衝撃で記憶を失くしていた……
前世の自分を含む人物の記憶だけが消えているようです。
転生した先の記憶すら全く無く、頭に浮かぶものと違い過ぎる世界観に戸惑っていると……?
記憶を失くした悪役令嬢~私に婚約者なんておりましたでしょうか~
Blue
恋愛
マッツォレーラ侯爵の娘、エレオノーラ・マッツォレーラは、第一王子の婚約者。しかし、その婚約者を奪った男爵令嬢を助けようとして今正に、階段から二人まとめて落ちようとしていた。
走馬灯のように、第一王子との思い出を思い出す彼女は、強い衝撃と共に意識を失ったのだった。
【完結】好きでもない私とは婚約解消してください
里音
恋愛
騎士団にいる彼はとても一途で誠実な人物だ。初恋で恋人だった幼なじみが家のために他家へ嫁いで行ってもまだ彼女を思い新たな恋人を作ることをしないと有名だ。私も憧れていた1人だった。
そんな彼との婚約が成立した。それは彼の行動で私が傷を負ったからだ。傷は残らないのに責任感からの婚約ではあるが、彼はプロポーズをしてくれた。その瞬間憧れが好きになっていた。
婚約して6ヶ月、接点のほとんどない2人だが少しずつ距離も縮まり幸せな日々を送っていた。と思っていたのに、彼の元恋人が離婚をして帰ってくる話を聞いて彼が私との婚約を「最悪だ」と後悔しているのを聞いてしまった。
【完結済】後悔していると言われても、ねぇ。私はもう……。
木嶋うめ香
恋愛
五歳で婚約したシオン殿下は、ある日先触れもなしに我が家にやってきました。
「君と婚約を解消したい、私はスィートピーを愛してるんだ」
シオン殿下は、私の妹スィートピーを隣に座らせ、馬鹿なことを言い始めたのです。
妹はとても愛らしいですから、殿下が思っても仕方がありません。
でも、それなら側妃でいいのではありませんか?
どうしても私と婚約解消したいのですか、本当に後悔はございませんか?
もうすぐ、お別れの時間です
夕立悠理
恋愛
──期限つきの恋だった。そんなの、わかってた、はずだったのに。
親友の代わりに、王太子の婚約者となった、レオーネ。けれど、親友の病は治り、婚約は解消される。その翌日、なぜか目覚めると、王太子が親友を見初めるパーティーの日まで、時間が巻き戻っていた。けれど、そのパーティーで、親友ではなくレオーネが見初められ──。王太子のことを信じたいけれど、信じられない。そんな想いにゆれるレオーネにずっと幼なじみだと思っていたアルロが告白し──!?
【完結】愛されない令嬢は全てを諦めた
ツカノ
恋愛
繰り返し夢を見る。それは男爵令嬢と真実の愛を見つけた婚約者に婚約破棄された挙げ句に処刑される夢。
夢を見る度に、婚約者との顔合わせの当日に巻き戻ってしまう。
令嬢が諦めの境地に至った時、いつもとは違う展開になったのだった。
三話完結予定。
【完結】ええと?あなたはどなたでしたか?
ここ
恋愛
アリサの婚約者ミゲルは、婚約のときから、平凡なアリサが気に入らなかった。
アリサはそれに気づいていたが、政略結婚に逆らえない。
15歳と16歳になった2人。ミゲルには恋人ができていた。マーシャという綺麗な令嬢だ。邪魔なアリサにこわい思いをさせて、婚約解消をねらうが、事態は思わぬ方向に。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる