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2回目の人生の終わり
しおりを挟む「大罪人テレスティア・レベーゼを捉えよ!!」
結果として、私はウィリアム様に相談すると逆に私が怪しまれるという下手を踏んでしまった。
我ながら焦りすぎていたとも思う。そして恐らく現実離れした経験に忘れていたのだと思う。ここが、何事も思い通りにはならない現実だということを。どこか浮ついていた。なんでも出来る気になっていたのだ。
ここにきて自分の失敗を痛感した私だが、しかしもう遅い。
ウィリアム様に爆発事故の件を相談したところ、あっという間に。本当にあっという間に拘束されてしまった。えっ、私の話って聞かれないの?そんなことある?もちろん夫のセレベークは我関せずと速攻離婚の手続きをとった。
セレベークの思考など分かりきっている事だけれど相手からその手を取られたことに殺したいくらいの殺意が湧いた。
半日の間で私は牢に拘束される手筈となり、その日のうちに毒を仰ぐよう言われた。
悔しい。せっかく戻ったのに、また死んでしまう。正直怒りとか焦燥とかで死への不安はなかった。だけど私は思った。
ーーーもしかしたらまた、戻れるかもしれない
そうすれば、私はまたやり直せる。
大丈夫、以前やり直したのだから、きっとまたやり直せる。そう思わないとこの怒りと苦しみから抜け出せなかった。しかし、爆発事件の関与を疑われたにしてもあまりにも運びが早い。私はそれに違和感を覚えた。しかも、重役の人間には一切あわされないという徹底ぶりと、私に話を聞くことすらしない。本当に私が犯人だと思っているのなら、手口などを聞き出すはずでは?
私はここに来て、ひとつの失敗に気づいた。
ーーー恐らく、ウィリアムが犯人なのかもしれない。
そうだとすれば全て辻褄が合う。不自然なまでに早い拘束、話を聞き出すことすらせず、仮にも騎士団長の妻、貴族の女だと言うのに誰も面会にはこない。ただ、牢の前でひたすら見張りの男が立つのみ。
そして私の隣には今か今かと毒を飲むのを待つ男。ウィリアムである。
私は彼を睨むようにして見た。
色素の薄い金髪を腰あたりまで伸ばし、どこか吟遊詩人の雰囲気を漂わせるウィリアムが笑う。
「何か?時間が押してるのですが」
「あなたね……?あなたが爆発事故を企て………」
そこまで言った時、私は自分の頬に酷い衝撃を感じた。殴られたのだ。それを知ると同時に、猛烈な怒りを覚えた。思わず立ち上がりそうになったが、何とか踏ん張った。じわじわと痛む頬。思わず頬を抑える私に、ウィリアムはやはり優しい声で告げた。
「何の話をしているのか………。ほら、早く飲んでください、大罪人の死はこれだと古より決まっているのです」
「私の話すら聞かず、証拠もないのに、それを捕まえて大罪人?笑わせるのね。どんだけ無能なのよ」
そう言うと、酷い打撃音が続いた。どうやら椅子ごと蹴飛ばされたらしい。私は内心舌打ちしながら口元に手を当てた。口が切れて血が出ている。
「それ以上仰るのであれば、国への不敬とみなし刑を重くいたしますよ、あなたも辛い思いはしたくないでしょう?」
ーーーこの、サイコパス野郎
ウィリアムの目は笑っていなかった。ただ、楽しそうに言っていることから彼ならば何をしてもおかしくない狂気を感じとった。
人選を間違えた。それが一番の過ちだ。私はこれ以上口に出さないのが自分のためだと思い、勢いよく毒を煽った。喉を通過する、凄まじいまでの痛みーーー。
ついで、頭を殴られたような感覚に陥り、視界が黒くなった。
ーーーこれが、2回目の人生の終わりである。
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