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ごめんあそばせ 2

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「みすぼらしくてお姉様にピッタリ!私だったら絶対に着られないわ、そんな古びたドレス!」

娘の弾けるような笑い声が聞こえてきて、ミレイユは呆然とする。
はっとしてそちらを見れば、彼女の義理の妹、ロザリアがおかしそうに姉を嘲笑していた。

「……どうして」

震える声でミレイユは言った。
妹は怪訝な顔をして眉を寄せる。

「何かしら?」

ミレイユは何も言葉が出ない。

あのとき、ギロチンの刃は落ちたはずだ。
ミレイユは、死んだはずだ。ギロチンの刃が落ちてきたことまでは覚えている。そして、身を焼き尽くすほどの憎悪が体を襲ったことも

それなのに、なぜ?

──しゃら

「!」

その時、胸元のネックレスが華奢な音を立てて揺れる。
ミレイユの実母の唯一の遺品である首飾りだった。
処刑の日、唯一身につけることを許された首飾りだ。普通ならありえないことだが、ミレイユが嘆願すると、それを哀れと取ったのか、それとも最期の施しくらい与えてやってもいいと見下されたのか。首飾りの着用は許された。
首飾りは、ペンダント時計のものだった。随分前に針は止まっているが、彼女に唯一残された遺品なので、彼女はそれを大切にしていた。

「なあに……?ついに気が狂ったの」

義妹の侮蔑すら耳に入らない。
ミレイユは蒼白な顔で、呼吸を浅くして、縋るように胸元を握りしめた。生きてる。生きて、いる──?

「聞いてるのったら、お姉様!!」

焦れたロザリアがミレイユに手を出す前に、彼女は弾かれたようにその場から退いた。その怯えたような動きに、ロザリアの方が困惑する。

「なによ……気持ち悪い……」

ロザリアが異様なものを見る目でミレイユを見るが、彼女はそれどころではなかった。なぜなら。

(針の音)

確かに、聞こえたのだ。聞こえてくるのだ。
止まったはずの時計が、音を、時を刻む音を──。
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