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二章
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しおりを挟むミレイユのへたくそな愛の告白は唇が震え、越えは上ずり、ひどいものだった。
しかしルロークレはただ黙って彼女の慟哭を聞いた。
彼は強く、強くミレイユの手を握った。
「……そう。僕はそれが、聞きたかった」
「……っ」
いまだに泣き続ける彼女の頬に触れ、彼はいう。
「もう謝罪の言葉はいらない。その代わりに、うんざりするほどきみの愛の言葉を聞かせて」
ミレイユは瞳を潤ませて彼を見る。ルロークレは笑った。
「ルロークレ、って呼んで。ヴィルヘルムときみに呼ばれるのも好きだけど、今の名前はこれだから」
「ルロークレ……様」
「ルロークレでいい。いや、ルロークレって呼んで」
ミレイユの小さな頭を抱き寄せてルロークレは呟いた。
(やっと、取り戻した)
時間は非常にかかったし、さまざまなことがあった。
もう二度とこの手に戻らないかとも思った。
ルロークレもまた、胸に迫る感情にのまれ、瞳を潤ませた。
「……っ」
そのままぎゅ、と強く抱きしる。
ミレイユもまた、彼を抱きしめ返した。
「ルロークレ……」
小さい声で、だけどはっきりと彼女は彼の今の名を呼んだ。
そのままミレイユと彼は、しばらくの間抱きしめあっていた。
しばらくして、彼がそっと身体を離す。互いに目は赤い。
「ん。良かった。繋がる前に聞けて。きみの本心が聞けて、良かった……」
ようやく、ルロークレが体を起こす。
そうして、彼女と手を繋いだ。
手をからめるように五指を繋いで、そのままミレイユの左手はシーツに縫い付けられた。
彼はもう片方の手でミレイユの髪を撫でると、そのまま感覚を確かめるように彼女の太ももに触れた。
それが、再開の合図だった。
その含みのある触れ方に、ミレイユの頬がじわりと熱を持つ。
嬉しいと。幸せだと思ってもいいのだろうか?
ミレイユは彼の真っ直ぐの瞳を見返した。
「………いい?」
ルロークレが尋ねる。ミレイユは頷いて答えた。
「……ええ。して……?」
ミレイユの言葉にルロークレはわずかに固まって、そして目元だけでなく頬も赤く染めて彼女に言った。
「痛いと思う」
「それでも」
ミレイユが答えると、ヴィルヘルムは頷いた。
そして、小さく笑う。彼はミレイユの首筋に口付けた。
「痛いのは一度だけだと決めたんだけど……。痛かったら、爪を立てて。引っぱたいてもいい。ゆっくりやるから」
「大丈夫よ。二度目だもの」
「ああ、うん。……そうだね」
そう言って、ヴィルヘルムは服をくつろげると、その熱を持った。
ミレイユの太ももにぴたりと、生々しい感触が当たる。
あれが、また。
ミレイユは一度目の初夜を思い出す。
あまりの痛みに失神しかけた、あの夜のこと。
大丈夫だと告げたもののやはり体は強ばってしまって、知らずのうちにヴィルヘルムの手を強く掴んでいた。
ヴィルヘルムはそれに気づいて、大丈夫だと、安心させるようにミレイユの手を握る。
「ゆっくりやるから。力を抜いて」
「う………ん」
「ミレイユ。一度目の初夜のことを覚えてる?」
ぬちゃ、ねちゃ、と粘着質な音が絡み合って、下腹部がキスをする。
彼のものが、ミレイユの中に入るのだと、そう思うときゅう、とお腹の奥が切なくなる。
この体では知らないはずの快楽を、喜悦を思い出して、お腹の内側がきゅうきゅうと切なくなる。
思わずヴィルヘルムの手を握る。
しっかりと、固く。
「……覚えてる」
「あの日は、最悪な夜だったね。……それで」
「最高な夜だった?」
「そう。今日も、そうなるんだよ」
ヴィルヘルムはそう言うと、そのままず、と腰を押し付けてきた。
ぴりりとした感覚に息が詰まる。
そして、息をとめてしまう。
だけど一度目の初夜の時、息を止めるなと言われたことを思い出して、意識して息を吐いた。
「ん、っう……ぅ」
「痛い? もう少し、入れるよ」
一度目の初夜の時は本当に本当に痛くて、あまりの痛みに失神してしまいそうだった。
その時のミレイユがあまりにも顔が青ざめて、気絶しそうだったからか、ヴィルヘルムは半分近くまで入れて、出してという行動を何度も行った。
朝方近くまで頑張ったかいあって、何とか入ったは言いものの、入れるのが限界で、その日はその達成感とともに寝たのだっけ。
そんなことを思い出しながら深く呼吸をしていると。
「入った、んだけど。大丈夫?」
「え………」
「もう全部、入ったよ」
いつの間にか、ミレイユのなかはルロークレのものを全て受け入れていたらしい。
「えっ…………!?」
驚いて思わず腰を浮かす。
そうすると膣内を圧迫する重たい感覚と、じわりと湧き上がる甘い感覚に息が詰まった。
ミレイユが動いたことで、ルロークレは呼吸を乱した。
起き上がる反動で、ミレイユは彼のものを締め付けてしまったらしい。
「っ……こら」
ルロークレは苦し気な声でミレイユを困ったように見た。
ルロークレは眉を寄せて、辛そうにしている。
ミレイユは彼のその表情を見て、咄嗟に力を抜いた。
「嘘。ほんとうに………?」
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