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二章
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しおりを挟む抵抗することをやめたミレイユに、ルロークレは安心したようにほっと息を吐く。
ミレイユはそんな彼を見て申し訳ないような、泣きそうな思いにとらわれる。
ミレイユがそっとべッドに寝かされると、彼女の胸はこの後に起きることを予感して音を立てる。
背中にシーツの肌触りのいい感触を覚えながらルロークレを見ると、彼は泣きそうな顔をしていた。
黙りこくるミレイユに、ヴィルヘルムが笑う。
それは彼らしくない、下手くそな笑みだった。
「このガーターベルト、とても可愛いね。可憐で清楚で、ミレイユにそっくりだ。ねぇ、キスしていい?」
「えっ、あっ、やぁ!」
ヴィルヘルムは形上ミレイユに聞いたというばかりに、ミレイユの返答を待つことなく服の裾をまくり上げて、そのままガーターベルトの上から口付けを落とした。
ちゅ、ちゅ、と服越しに柔らかな唇の感触が伝わる。
思わず手で口を抑えると、その手を取られた。
「声を聞かせてと言っただろ。声を塞ぐのはだめだ。目を瞑るのも。きみはただ、僕のことを見ていて」
「ヴィッ………ぁ、や、おねが、やめっ……」
「やめない」
ミレイユの手を掴んだ手とは反対の手が、服の裾に入り込んでくる。
そのまま妖しく下着の中に入り込んで、直接胸元に触れた。
直にひとの手に触れられる感覚に腰が揺れる。
呼吸が乱れて、足が意図せずとも動いた。
「あっ………」
きゅ、と胸元の突起をつままれて思わぬ声が出た。
目を瞑りたいけど、瞑るなと言われたばかりだ。
ルロークレを見ていると、彼と視線が絡んだ。
碧色の瞳は、どこか挑戦的で、彼の口端が持ち上がる。
「や、ぁ、舐めちゃ、」
そのままガーターベルトの上に口付けを落とした彼はぢゅぅ、と強く吸い付いた。
ミレイユの体がぴくぴくと揺れるが、身をよじることは叶わない。
そのまま彼にされるがままでいると、ぱちん、という小さな、だけど確かな音が響いた。
ガーターベルトを止めるクリップが外されたのだ、彼の舌で。
「や……!」
「ん、こうで………こう、かな」
「ヴィルヘルム、やっ、」
「ああ、もう面倒くさいな。もう充分堪能したし、脱がせるよ」
「ちょ、きゃぁ、ひゃっ………!」
「はは、何その声。可愛い。煽ってるの?」
ヴィルヘルムは残りのクリップも全て外し終わると、そのまま靴下を下ろした。
レース素材ということもあってするすると脱がされる。
ヴィルヘルムの手の行方を追っていると、彼がこちらを見た。
そして、そのまま目を伏せた彼が首を傾げて、顔を近づける。
恐ろしいくらいに美しい顔だ。
そして、相変わらずまつ毛が長い。
新雪がけぶるようなまつ毛は扇のように彼の瞳をちらちらと隠す。
彼が首を傾げたことによって、白金の髪が何本か乱れた。
「んぅ……っ、ん、っ………は、ん、んんっ」
そのまま唇を合わせて、どちらともなく舌を絡める。
その間にするすると下着を脱がされて、空気に触れる感覚にびくりとする。
少しだけ、唇が離れた。
「濡れてるね?」
「………う、」
「いいよ。可愛いニルシェ──いや。今はニルシェだったね。こっちを見て」
「………」
ルロークレの方を見ると、彼は落ち着いた様子を見せていた。
いや、落ち着いた………というよりも、ほっとしている、ような。
どこか安心したような雰囲気の彼は、そのままミレイユの目元に口付けを落とした。
「どこもかしこも白くて、キスマークが映えそうだね。こことか」
「やっ………」
ルロークレの指先がミレイユの胸元を押す。
彼は笑いながらミレイユの胸元のボタンを外し始めた。
いつの日かのような、昔のような睦みあい。
だけど、昔のようにはいられない。
ルロークレは落ち着いているように見えて、その瞳にはこらえられない激情が見え隠れしている。
それは、怒りか、それとも。
そして、ミレイユもまた、昔のように彼のことを好きだと、言うことは出来なくなっていた。
ルロークレの指先がつぷり、とミレイユの秘部に沈んだ。
微かに触れる感覚に、懐かしくて、愛おしくて、そして。
また、彼と触れ合えることが奇跡のようだ。
その奇跡を必死に感受するミレイユは、いつになく敏感に快楽を拾った。
「あっ、や、ぁ、」
「すごい濡れてる。……分かる? こんなに音がして。興奮してるんだね。そうだろ」
「ヴィ、り、ぁっ………う、ひゃ、うう」
シーツを掴んで柔らかな快楽の波に飲まれないように耐えていると、不意にルロークレが彼女を見た。
角度のせいで上目遣いとなる形になっていて、その姿は彼をいつもよりも幼く見せる。
「やっ………⁉」
ぐい、と足が開かれて、そのままルロークレが彼女の蜜部に口付けた。
ミレイユの細い腰がびくりと大きく震える。
背筋にぞくぞくとしたものが走って、ひゅ、と息を飲む。
彼女足先に力が入った。
「待っ、いや……ヴィルヘルム……!」
「言っただろ、嫌は聞かないって。きみに許されているのは、僕を受け入れることだけだよ」
彼の唇が桃色に染まるあわいに触れる。
生々しい水音がして、ミレイユは頭がどうにかなりそうだった。
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