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初めて同士なので ①*
しおりを挟む恥ずかしくて、恥ずかしくて、本当に死んでしまいそうだ。
嘘でしょう……!?みんなこんなことしてるというの?というか、私、本当に身を任せてしまってよかったの?
処女を失うということが、どういうことか。王族として教育を受けているのだ。知らないわけではない。だけど、これ以上の最適解が見つからないのも事実だった。
それに──
(嫌じゃ、ない)
触れられて嫌悪感はない。
ただただ恥ずかしくて、胸が痛い。心拍数が上がっているのだ。え、脱ぐの?脱がしてしまうの?早くない?動揺しているうちにネグリジェは肩から落とされた。現れた鎖骨に、首に、胸元のふくらみに口付けを落とすフェアリル殿下は恐ろしく色っぽくて、性的に見えて仕方ない。
いやおうなく、性的なことをしていると突きつけられている感じがして、くらくらする。
なにか口にすれば、それはこの雰囲気をぶち壊すものになるだろうことは自覚していたから、意図してくちびるを引き結んだ。
そのせいで、私の荒い呼吸と、彼の口付けの音しか聞こえない。
(頭がバカになりそうだわ………)
ついに胸元が完全にさらけ出された時はいい加減耐えきれなくなって目を瞑った。
「僕たちに……会話は不要なんじゃないかと言ったけど、こうも静かなのは僕好みではないんだけど?」
──と思ったら、彼から話し始めた。
声をかけられたので仕方なくフェアリル殿下を見る。頬は紅潮していて、瞳は色気に濡れていて、吐息が熱っぽくて、全体的に卑猥だ。
「卑猥だわ……」
やはり、雰囲気をぶち壊す発言しかできなかった。思わずぽつりと呟きをこぼすと、フェアリル殿下が目に見えて眉をしかめた。ほんの少し、色っぽい表情が崩れた。それでも、性的なことには変わらないけど。
「あのねぇ……。こういうことをしていれば当然でしょ」
「んっ……」
胸元の突起をつままれて、変な声が出る。
恥ずかしくてやはりどうにかなりそうである。
「やっ……ね、ねえ」
「なに?」
まだ少し怒ってるような声でフェアリル殿下が答える。私は重たい手を動かして目元を隠して、ようやく声を出した。
「わたし──私、覚悟を決めたわ」
「は?」
「いつまでも恥ずかしがってる場合ではないわね。やるときめたのならやり通さなければ。ええ、そうよ。私は誇り高きデスフォワードの王女ですもの。いつまでもグズグズしてられないわ」
目元を覆い、早口で捲したてる。
そうしてから──手をのけて、じっとフェアリル殿下を見た。彼は困惑しているようだった。
「私はこのとおり、寝たきりだわ。つまりまな板の上の鯉ね」
「……そう。腹が据わったのなら良かったよあとやっぱりきみは黙っておいた方がいいかもね」
息継ぎもせずに彼はそう続けると、問答無用で私の言葉を塞ぐようにくちびるを重ねてきた。
「んん!」
彼の手がするすると動いてふとももに触れる。びくりと体が揺れた。ちゅ、ちゅと、鳥がつつくように短い口付けを繰り返しながら、彼がふ、と笑った気がした。
そのままその指先が割りいるように太ももの間に入り込んでくる。とんとん、と指で叩かれて足を開くように指示される。
なにせ満身創痍なので少し動くだけでも結構しんどい。そう思ってじっと見つめ返せば、私の意を汲んだのか、彼はまつ毛を伏せて、もう片方の手でぐっと私の太ももをおしひらいた。
なんだか、とんでもないことをしている気がするけど、腹は括ったのだ。
女は度胸!呟いて、重たい手を持ちあげて彼の背中にまわした。びっくりしたような気配を感じる。
それが腹立たしくて、今度は私から。噛み付くようなキスをした。
「──……」
また、フェアリル殿下が笑った気配がした。
そのままする、する、と確かめるように下着に触れられる。触り方に焦らされている気がする。
一思いにやってほしい。そう言いたかったが、口付けは続いていて言葉にならない。
じっと意志を込めて見つめてみたが、フェアリル殿下は涼しい顔で私の視線を受け流していた。
彼の指先がようやく下着の中に入り込んでくる。
そのままくるくるとなかを触れられる感覚がする。違和感。それと同じくらいの──くすぐったさにもにた、変な感覚。
今触れてるのがフェアリル殿下なのだと思うと、なんだか妙に落ち着かなくてソワソワする。
「んっ……ん、ぁっ……んん……!」
喘ぎ声のたいはんは彼に吸われるから、それだけは良かった。自分の声など聞くに絶えない。しっかりお彼に捕まって、私の声を塞いでもらおう。ちょっと息苦しいが、まあ、仕方ないわよね。うん。
「っ……ん、んん、ん……!」
指圧マッサージかのようになかを押し広げられる。それをバカ正直にいえばきっとフェアリル殿下はまたうんざりした顔をするのだろうなと思うと、少し面白くなった。
だけど、話さずにいるためか感覚に集中する他なく、やがてじわじわとしたくすぐったさにもにた快楽を感じとり始めた。
「ん………ん、ぅ」
ぴくぴくと足が揺れる。目をきつく瞑ってはあけ、その度に鮮やかな翡翠の瞳と視線がぶつかった。ぞく、と痺れにも似たなにかが背筋を走る。
(やだ、これ、わたし)
今、本当にそういうことをしているんだ。
あのフェアリル殿下と。信じられない。本当に。
そう思うとますます逃げ出したくなるけど、それを押さえ込んで彼を見つめ返した。
は、と息を吐いたタイミングでぬるりとしたものが口内に入り込んでくる。
「んん……!?」
驚いて危うく噛みそうになった。それが彼の舌だとあとから気づいて噛まなくてよかったと安堵する。流石に舌を噛むのはまずい。死んでしまう。私が目を白黒させていると、フェアリル殿下は私の首の裏に手を回してぐっと顔を寄せて、舌を深くからめた。
「んんぅ………!ん、は、ぁっ」
まつ毛が長い。肌が白い。
色っぽい、瞳が濡れているように見える。頬が赤い。
(あら……?耳まで、赤い?)
それに気づくと、私の視線はそのまま彼の首元まで降りた。
(首も赤い)
思って、思わずにんまりとしてしまう。
どうやら恥ずかしくてどうにかなりそうなのは私だけではないようだ。彼の性格上それを言うことは無いようだけど、きっと気持ちは同じ。そう思うと一気に安心感が込み上げて、自分から舌を絡めてみた。
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