〈完結〉意地悪な王子様に毒されて、絆されて

ごろごろみかん。

文字の大きさ
上 下
31 / 61

賽は投げられた

しおりを挟む


『親愛なるデスフォワード王女 リリアンナ様』

「さ、様……」

当てつけのようにデスフォワードの王女、デスフォワードの王女と呼ばれていたのでここにきて彼の丁寧な呼び方に動揺を隠せない。でも、そうよね。手紙なのだからある程度礼儀は必要よね。
………どんな顔をしてこの手紙を書いたのかしらね。

『思えば僕は今まで自分の人生で賭けようと思ったことは無い』

(それは当然じゃない?次期国王が賭博好きなんて国政破壊待ったナシよ)

『一度きりの人生だ。僕も、きみも、冒険してみてもいいんじゃないかと思った』

(巻き込まれた!)

どうしてそこで私の名前が入るのだろう。
まさかお父様になにかこう……面倒な連絡でもするつもり!?国同士の関係悪化に繋がりかねない書簡でも送るのかしら!?焦った私は斜め読みで手紙を読んだ。とはいえ、手紙はとても短文だった。そこは彼らしい。

『きみはなにかやらかして、生涯の呪いをかけられた。ご愁傷さまだね。きっと何をしたかまでは想像がつかないけどよっぽどのことなんだろう』

(かけられたのは私じゃないわよ!)

……って、そう言えばフェアリル殿下には言ってなかったわ。つまり私は彼の言うとおり何かやらかして全くの第三者を巻き込んで延命措置を測る悪人。罪人。自業自得な人間だと思われてるのかしら………。いや、呪われるって逆恨みの可能性もあるじゃない!なんなのよ!

『僕のことではないんだから、きみのことは放っておいてさっさと帰国させても良かったんだ』

(私を見殺しにするっていうのね!!)

酷いひとである。エルヴィノアの王太子なのに心が狭いわ……!
でも、彼の言うとおりだった。彼に、私を救う義務はない。私も巻き込まれたが、私の場合は自国の貴族が起こしたこと。それに比べ彼は完全にとばっちりというか、巻き込まれただけだ。彼は巻き込まれ体質なのかもしれない。
私は現実逃避した。

『だけど、僕はそれをしなかった』

(あなたはお人好しだものね)

『僕はきみを愛だの恋だのといった感情で思ってはいないが、面白いとは感じている。きみを助けて、きみとの未来を考えても悪くないかな、と思うほどには。だから、選択肢をあげるよ』

(面白い……褒められているのか微妙なところだわ。いや、これ淑女に言う言葉かしら?)

考えて|頭(かぶり)をふる。
いや、そもそも私は淑女の資格を既に失っているのだ。淑女であれば男性に子種をねだって飛びかかりなどはしないわよね……。
必死だったといえばそれまでだが、深窓の令嬢が取る行動ではない。

(嫌悪されてないだけ良かったとしましょう)

お前のせいで僕の生活はめちゃくちゃになった、二度と来るな、と書かれている可能性もあったと思っていたのだ。それに比べれば断然ましな内容である。

ふんふんと読み進める。
そして。

「………えっ!?」

私は思わず声が出てしまった。彼からの手紙の最後には。

『命が惜しいなら、タイムリミットが訪れる前に僕と関係を持てばいい。その時点で、エルヴィノアの次期王妃はきみに決まる』

「僕はそれを受け入れる……だけど、きみが来なかった場合。僕はきみのためになにかすることはないし、きみにもう会うことは無い………!?」

(ちょっ………え、ええ!?)

私は目を丸くして、立ち尽くした。
僕はそれを受け入れるっ……あっさり言うけども!あなたが受けいれたとして、あなたの婚約者はどうなるのよ!そっちのことも考えているのかしら!?
私が彼に会いに行けば、呪いは解ける……処女は失うけれど……。
だけど、会いに行かなければ私は死ぬことが確定している。
私は思わずよろめいてしまった。

「な、なんていう手紙をよこすのよ、あのひとは……!」

私は動揺でうまく言葉が紡げなかった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

贖罪の花嫁はいつわりの婚姻に溺れる

マチバリ
恋愛
 貴族令嬢エステルは姉の婚約者を誘惑したという冤罪で修道院に行くことになっていたが、突然ある男の花嫁になり子供を産めと命令されてしまう。夫となる男は稀有な魔力と尊い血統を持ちながらも辺境の屋敷で孤独に暮らす魔法使いアンデリック。  数奇な運命で結婚する事になった二人が呪いをとくように幸せになる物語。 書籍化作業にあたり本編を非公開にしました。

【完結】男装令嬢、深い事情により夜だけ王弟殿下の恋人を演じさせられる

千堂みくま
恋愛
ある事情のため男として生きる伯爵令嬢ルルシェ。彼女の望みはただ一つ、父親の跡を継いで領主となること――だが何故か王弟であるイグニス王子に気に入られ、彼の側近として長いあいだ仕えてきた。 女嫌いの王子はなかなか結婚してくれず、彼の結婚を機に領地へ帰りたいルルシェはやきもきしている。しかし、ある日とうとう些細なことが切っ掛けとなり、イグニスに女だとバレてしまった。 王子は性別の秘密を守る代わりに「俺の女嫌いが治るように協力しろ」と持ちかけてきて、夜だけ彼の恋人を演じる事になったのだが……。 ○ニブい男装令嬢と不器用な王子が恋をする物語。○Rシーンには※印あり。 [男装令嬢は伯爵家を継ぎたい!]の改稿版です。 ムーンライトでも公開中。

私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。

石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。 自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。 そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。 好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。 この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

白い結婚はそちらが言い出したことですわ

来住野つかさ
恋愛
サリーは怒っていた。今日は幼馴染で喧嘩ばかりのスコットとの結婚式だったが、あろうことかバーティでスコットの友人たちが「白い結婚にするって言ってたよな?」「奥さんのこと色気ないとかさ」と騒ぎながら話している。スコットがその気なら喧嘩買うわよ! 白い結婚上等よ! 許せん! これから舌戦だ!!

婚約解消から5年、再び巡り会いました。

能登原あめ
恋愛
* R18、シリアスなお話です。センシティブな内容が含まれますので、苦手な方はご注意下さい。  私達は結婚するはずだった。    結婚を控えたあの夏、天災により領民が冬を越すのも難しくて――。  婚約を解消して、別々の相手と結婚することになった私達だけど、5年の月日を経て再び巡り合った。 * 話の都合上、お互いに別の人と結婚します。白い結婚ではないので苦手な方はご注意下さい(別の相手との詳細なRシーンはありません) * 全11話予定 * Rシーンには※つけます。終盤です。 * コメント欄のネタバレ配慮しておりませんのでお気をつけください。 * 表紙はCanvaさまで作成した画像を使用しております。   ローラ救済のパラレルのお話。↓ 『愛する人がいる人と結婚した私は、もう一度やり直す機会が与えられたようです』

呪われて

豆狸
恋愛
……王太子ジェーコブ殿下の好きなところが、どんなに考えても浮かんできません。私は首を傾げながら、早足で館へと向かう侍女の背中を追いかけました。

【完結】嫌われ令嬢、部屋着姿を見せてから、王子に溺愛されてます。

airria
恋愛
グロース王国王太子妃、リリアナ。勝ち気そうなライラックの瞳、濡羽色の豪奢な巻き髪、スレンダーな姿形、知性溢れる社交術。見た目も中身も次期王妃として完璧な令嬢であるが、夫である王太子のセイラムからは忌み嫌われていた。 どうやら、セイラムの美しい乳兄妹、フリージアへのリリアナの態度が気に食わないらしい。 2ヶ月前に婚姻を結びはしたが、初夜もなく冷え切った夫婦関係。結婚も仕事の一環としか思えないリリアナは、セイラムと心が通じ合わなくても仕方ないし、必要ないと思い、王妃の仕事に邁進していた。 ある日、リリアナからのいじめを訴えるフリージアに泣きつかれたセイラムは、リリアナの自室を電撃訪問。 あまりの剣幕に仕方なく、部屋着のままで対応すると、なんだかセイラムの様子がおかしくて… あの、私、自分の時間は大好きな部屋着姿でだらけて過ごしたいのですが、なぜそんな時に限って頻繁に私の部屋にいらっしゃるの?

伯爵は年下の妻に振り回される 記憶喪失の奥様は今日も元気に旦那様の心を抉る

新高
恋愛
※第15回恋愛小説大賞で奨励賞をいただきました!ありがとうございます! ※※2023/10/16書籍化しますーー!!!!!応援してくださったみなさま、ありがとうございます!! 契約結婚三年目の若き伯爵夫人であるフェリシアはある日記憶喪失となってしまう。失った記憶はちょうどこの三年分。記憶は失ったものの、性格は逆に明るく快活ーーぶっちゃけ大雑把になり、軽率に契約結婚相手の伯爵の心を抉りつつ、流石に申し訳ないとお詫びの品を探し出せばそれがとんだ騒ぎとなり、結果的に契約が取れて仲睦まじい夫婦となるまでの、そんな二人のドタバタ劇。 ※本編完結しました。コネタを随時更新していきます。 ※R要素の話には「※」マークを付けています。 ※勢いとテンション高めのコメディーなのでふわっとした感じで読んでいただけたら嬉しいです。 ※他サイト様でも公開しています

処理中です...