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三章
地獄に落ちるだろう ※R18
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ミュチュスカはそんな私の眦を指先で拭う。
ちゅ、と頬に口付けが落とされた。
「メリューエルは泣き虫だ」
「あなたが泣かせるの……」
「そっか。じゃあ、俺のせいだ」
ミュチュスカはなかに自身を埋め込んだまま、再度腰を引いた。硬さを失い、柔らかくなったそれがまた、存在感を示していく。
男性の体は不思議だ。
どんな造りになっているのだろう。
ぼんやりとミュチュスカの顔を見ながら考えていると、額に口付けを落とされる。
たくさん、たくさん、口付けられる。
幸せだ。
愛されている、と感じられる。
……例えそれが、錯覚だとしても?
ふと、そんな考えが頭に浮かび、よく分からない不安に襲われた。
咄嗟にミュチュスカに抱きつくと、彼もまた私を優しく抱きしめてくれる。頭を撫でられて、彼の指先から短い髪が滑り落ちる。
「……メリューエル?」
「……だいすき。だいすき、なの。……あいしてる」
子供のような発音だった。
どうしてか、苦しくて。
涙が出そうで。
でも嬉しくて。
……離したくない。離さないで、いてほしかった。
私の言葉に、ミュチュスカが薄く笑う気配がした。
「……うん。俺ときみは、未来永劫離れることはできない。死すらも俺たちを別たない。きみが地獄に行くのなら、俺もまた地獄に落ちる。きみが天に召されるのなら、俺もついていけるよう……今からでも、努力するよ」
でも、天国に行くには少し、俺の手は汚れすぎているな、と彼は苦笑した。
だから私は、彼の首筋に甘えながら言うのだ。
「私はきっと、地獄に落ちるわ。……過去の自分が何をしたか分からないけど、わかる気がするの。きっと、私みたいな性格の悪い女は楽園になど行けないのよ」
「じゃあ、死んでもなお、俺たちは一緒にいれるね」
幸せだ、と彼は笑う。
私もまた、嬉しかった。
死してなお、その先の約束を交わすことが出来るなんて。
私の魂は彼に囚われた。
彼もまた、私に囚われてくれるだろうか。
ミュチュスカはまた、私の五指を絡めた。
彼はこの触れ方を好んでいるようだった。
腰をぐっと押し付けられる。ミュチュスカの出した液体のおかげか、先程より滑りが良くなって、さらに鋭い快楽を私に運んだ。
ミュチュスカの精液。ミュチュスカの、欲望。
私だけの。私にもたらされた──。
ぎゅ、と手を握る。ミュチュスカは私の首筋を甘く噛んで、吸って、腰を動かした。
先程より緩やかな律動だった。
ぐっと奥まで押し付けられたかと思えば、手前を浅く擦られる。
そこは、私の苦手とする場所で、快楽に弱い部分だった。
「ぁッ、ア、~~~……!」
「ここ、気持ちいい、……っ、よね?」
「あ、ぁ、っあ、ああ゛あ゛!」
ピンポイントで責められて、意味をなさない母音ばかりが口から零れた。
もうきっと、見せられ顔をしていない。口をだらしなく開いて、ひたすら喘ぐ私はきっと、不細工だ。だけどミュチュスカはそんな私を見て、端正な顔を歪めて笑う。
彼も感じて、苦しいのだろう。それなのに彼は、つぶさに私の反応を見た。
涎が零れ、涙の飛沫をまつ毛が弾く。
ぐっとそこを執拗に擦られて、絡めた手の繋がりをほどかれ、彼の指先がいたずらに胸の突起に伸びた。軽く弾かれて、くすぶっていた快楽が、弾けた。
「ぁ、ア、ん、ひゃ、や、ッぁあああ!」
「っ……は、ねえ、気持ちいい?メリューエル」
「気持ちっ、い……ひ、ぁ、やぁああ……ッ!」
達したところを立て続けに狙われて、彼は緩やかに腰を動かした。奥を突かれて、鈍い痛みが走るのに胸元を舐められ、口付けられ。
胸の突起を指で弾かれればもう快楽に乱れるしかなかった。繋がった方の指は縋るように力を込めて、もう片方はミュチュスカの頭に触れ、髪を撫でた。さらりとした、髪。
まるで金糸のような光沢を帯び、光を編んだかのような。
……その光に、手が届いた。
私がミュチュスカの髪をさらさらと撫でると、彼はちらりとこちらを見て──嗜虐的な、攻撃的な笑みを瞳に乗せると、ぐっぐっと奥を執拗に狙った。鈍い痛みのほかに、じわりじわりとこみ上がる快楽があった。
思わず、ミュチュスカの髪を撫でる手が止まり、彼の頬を滑り落ちた。その手をミュチュスカに捕まえられて、腰の律動が早くなる。
ぱちゅぱちゅ、と淫らでいやらしい音が響いた。
ひっきりなしに私の声が上がり、ミュチュスカの艶っぽい息が混ざる。
「ぁっ、アぁっ……ひ、ぁ、あ、だめ、ミュチュスッ……ミュチュ、ぁ、あ───!」
びくびくと体が震える。
ミュチュスカは私をぎゅっと抱きしめて、耳朶を噛んだ。
「出すから……っ、受け止めて。メリューエル。俺の子を……孕んで」
彼はそれだけ言うと、グッと腰を押し付けて、液を注いだ。また、熱の飛沫を受ける。
それをぼんやりと眺めていると、ミュチュスカは腰を引き、中から抜け出ると私のそこからこぼれ落ちた欲望の証をすくいあげては、なかに塗りこんだ。
「……?」
ぐったりしていて、起き上がる気にはなれない。
だけど、不思議に思ってミュチュスカを見ると、彼と目が合った。
「……全部飲んで、メリューエル」
そういうミュチュスカの瞳は仄暗く、病んだ色を宿していた。それを見て、私は腹の底が疼くのを感じた。
ミュチュスカも堕ちてくれた。
ここまで──私と、同じくらいまで。
そう、思ったから。
ちゅ、と頬に口付けが落とされた。
「メリューエルは泣き虫だ」
「あなたが泣かせるの……」
「そっか。じゃあ、俺のせいだ」
ミュチュスカはなかに自身を埋め込んだまま、再度腰を引いた。硬さを失い、柔らかくなったそれがまた、存在感を示していく。
男性の体は不思議だ。
どんな造りになっているのだろう。
ぼんやりとミュチュスカの顔を見ながら考えていると、額に口付けを落とされる。
たくさん、たくさん、口付けられる。
幸せだ。
愛されている、と感じられる。
……例えそれが、錯覚だとしても?
ふと、そんな考えが頭に浮かび、よく分からない不安に襲われた。
咄嗟にミュチュスカに抱きつくと、彼もまた私を優しく抱きしめてくれる。頭を撫でられて、彼の指先から短い髪が滑り落ちる。
「……メリューエル?」
「……だいすき。だいすき、なの。……あいしてる」
子供のような発音だった。
どうしてか、苦しくて。
涙が出そうで。
でも嬉しくて。
……離したくない。離さないで、いてほしかった。
私の言葉に、ミュチュスカが薄く笑う気配がした。
「……うん。俺ときみは、未来永劫離れることはできない。死すらも俺たちを別たない。きみが地獄に行くのなら、俺もまた地獄に落ちる。きみが天に召されるのなら、俺もついていけるよう……今からでも、努力するよ」
でも、天国に行くには少し、俺の手は汚れすぎているな、と彼は苦笑した。
だから私は、彼の首筋に甘えながら言うのだ。
「私はきっと、地獄に落ちるわ。……過去の自分が何をしたか分からないけど、わかる気がするの。きっと、私みたいな性格の悪い女は楽園になど行けないのよ」
「じゃあ、死んでもなお、俺たちは一緒にいれるね」
幸せだ、と彼は笑う。
私もまた、嬉しかった。
死してなお、その先の約束を交わすことが出来るなんて。
私の魂は彼に囚われた。
彼もまた、私に囚われてくれるだろうか。
ミュチュスカはまた、私の五指を絡めた。
彼はこの触れ方を好んでいるようだった。
腰をぐっと押し付けられる。ミュチュスカの出した液体のおかげか、先程より滑りが良くなって、さらに鋭い快楽を私に運んだ。
ミュチュスカの精液。ミュチュスカの、欲望。
私だけの。私にもたらされた──。
ぎゅ、と手を握る。ミュチュスカは私の首筋を甘く噛んで、吸って、腰を動かした。
先程より緩やかな律動だった。
ぐっと奥まで押し付けられたかと思えば、手前を浅く擦られる。
そこは、私の苦手とする場所で、快楽に弱い部分だった。
「ぁッ、ア、~~~……!」
「ここ、気持ちいい、……っ、よね?」
「あ、ぁ、っあ、ああ゛あ゛!」
ピンポイントで責められて、意味をなさない母音ばかりが口から零れた。
もうきっと、見せられ顔をしていない。口をだらしなく開いて、ひたすら喘ぐ私はきっと、不細工だ。だけどミュチュスカはそんな私を見て、端正な顔を歪めて笑う。
彼も感じて、苦しいのだろう。それなのに彼は、つぶさに私の反応を見た。
涎が零れ、涙の飛沫をまつ毛が弾く。
ぐっとそこを執拗に擦られて、絡めた手の繋がりをほどかれ、彼の指先がいたずらに胸の突起に伸びた。軽く弾かれて、くすぶっていた快楽が、弾けた。
「ぁ、ア、ん、ひゃ、や、ッぁあああ!」
「っ……は、ねえ、気持ちいい?メリューエル」
「気持ちっ、い……ひ、ぁ、やぁああ……ッ!」
達したところを立て続けに狙われて、彼は緩やかに腰を動かした。奥を突かれて、鈍い痛みが走るのに胸元を舐められ、口付けられ。
胸の突起を指で弾かれればもう快楽に乱れるしかなかった。繋がった方の指は縋るように力を込めて、もう片方はミュチュスカの頭に触れ、髪を撫でた。さらりとした、髪。
まるで金糸のような光沢を帯び、光を編んだかのような。
……その光に、手が届いた。
私がミュチュスカの髪をさらさらと撫でると、彼はちらりとこちらを見て──嗜虐的な、攻撃的な笑みを瞳に乗せると、ぐっぐっと奥を執拗に狙った。鈍い痛みのほかに、じわりじわりとこみ上がる快楽があった。
思わず、ミュチュスカの髪を撫でる手が止まり、彼の頬を滑り落ちた。その手をミュチュスカに捕まえられて、腰の律動が早くなる。
ぱちゅぱちゅ、と淫らでいやらしい音が響いた。
ひっきりなしに私の声が上がり、ミュチュスカの艶っぽい息が混ざる。
「ぁっ、アぁっ……ひ、ぁ、あ、だめ、ミュチュスッ……ミュチュ、ぁ、あ───!」
びくびくと体が震える。
ミュチュスカは私をぎゅっと抱きしめて、耳朶を噛んだ。
「出すから……っ、受け止めて。メリューエル。俺の子を……孕んで」
彼はそれだけ言うと、グッと腰を押し付けて、液を注いだ。また、熱の飛沫を受ける。
それをぼんやりと眺めていると、ミュチュスカは腰を引き、中から抜け出ると私のそこからこぼれ落ちた欲望の証をすくいあげては、なかに塗りこんだ。
「……?」
ぐったりしていて、起き上がる気にはなれない。
だけど、不思議に思ってミュチュスカを見ると、彼と目が合った。
「……全部飲んで、メリューエル」
そういうミュチュスカの瞳は仄暗く、病んだ色を宿していた。それを見て、私は腹の底が疼くのを感じた。
ミュチュスカも堕ちてくれた。
ここまで──私と、同じくらいまで。
そう、思ったから。
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